果物は「旬」に食べよう!
そもそも果物の「旬」とはどういうものなのでしょうか。
両角さんによると「旬」と呼ばれるのは露地栽培で育った果物が収穫される時期を指すのだそう。例外として、ハウス栽培しかできない果物の場合は一年の中で最もおいしい時期を「旬」としているとのことです。
果物を旬に食べるメリットは?
「旬の時期はどの果物も出荷量が多くなるため流通が安定し、価格も他の時期に比べて安くなります。そして、果物は旬の時期が一番おいしいんです」と両角さん。
果物の旬を知っておけば、果物をおいしくリーズナブルに楽しむことができそうです。
健康増進法に基づく厚生労働省の「健康日本21」では、2023年の改訂で果物の1人1日あたりの目標摂取量を200グラムと以前より大幅に増やしています。
家族の健康のためにも、旬の果物をたっぷり食生活に取り入れたいですね。
「旬」別のおすすめ果物
ハウス栽培されたものや海外からの輸入品などを含め、日本では一年を通してさまざまな果物が手に入ります。そのため「この果物の旬はいつ? 今が食べ頃なの?」と疑問を感じることがあるかもしれません。
両角さんに日本で栽培されている代表的な果物を旬別に教えていただきました。
冬〜春が旬の果物
寒い時期から3月~4月あたりまでに旬を迎える果物をご紹介します。
いちご
クリスマスケーキによく使われているため冬のイメージが強いいちごですが、クリスマスシーズンのいちごはハウス栽培されたもの。露地栽培の旬は3〜4月です。
品種「女峰」で知られる香川をはじめ、「とちおとめ」の栃木や愛知、熊本も産地として有名です。
【選び方と保存のコツ】
「赤みの強いものを選ぶことをおすすめします。冷蔵庫で長期保管すると、果肉が冷たさに負けてしまうのでNG。常温で保存し、食べる2時間くらい前に冷蔵庫に入れて冷やすのがいいですよ。購入日か翌日には食べきるようにしてください」(両角さん)
柑橘類
柑橘類の果物のうち、日本を代表する柑橘のうんしゅうみかん、いよかんなどは冬~早春が旬。和歌山や愛媛、静岡、長崎などが有名な産地です。
両角さんによると、柑橘類の果物は基本的には収穫後すぐに出荷されているそう。ただし、酸が強い品種もあるため、産地、品種、生産者によっては酸を抜くために貯蔵してから出荷される場合もあるそうです。
「酸っぱさの元となる酸がある程度抜けてから出荷するので、店頭にあるものは食べ頃になっています」(両角さん)とのこと。
【選び方と保存のコツ】
「凹凸の少ないツルンとした皮のもののほうがジューシーでおいしいです。保存は乾燥を避け、風通しの良い冷暗所に保管しましょう。食べる前に冷蔵庫で2~3時間冷やすのがおすすめです」(両角さん)
春〜夏が旬の果物
春から初夏(5月〜6月頃)には、露地栽培だけでなく、ハウス栽培の果物にも旬を迎えるものがあります。
マンゴー
日本ではマンゴーは露地栽培ができず、主に宮崎や沖縄でのハウス栽培が主流です。ハウス栽培でも日本の冬の気候では生育できないため、この時期に出荷されるものが旬となります。
「宮崎産マンゴーは完熟してから出荷するので特に日持ちしない果物と思ってください」(両角さん)
【選び方と保存のコツ】
「丸々としたふくらみのあるものを選ぶとよいでしょう。宮崎産のマンゴーは冷蔵庫での保存が難しく、日に日に味が落ちていくので、購入したその日に2時間ほど冷蔵庫で冷やして食べるのがベスト。柔らかくなりすぎると、甘味が抜けてしまいます」(両角さん)
さくらんぼ
佐藤錦などの品種が有名なさくらんぼ。山形産が国内収穫量の約7割を占めています。
4、5月に店頭に並ぶさくらんぼはハウス栽培のものがほとんどで、6月頃から露地栽培のさくらんぼが出荷されます。
「6月以降のさくらんぼは値段も下がるし、とにかく味がフレッシュ。春のうちは我慢して、ぜひ6月以降に味わってほしいですね」(両角さん)
【選び方と保存のコツ】
「実全体が太陽に当たって育ったものは色ムラがなく味も良いです。新鮮なものを見分けるポイントはツル。青い方が新鮮で、鮮度が落ちるほど茶色くなります。
さくらんぼはデリケートなので冷やしすぎはNG。食べる少し前に冷蔵庫に入れて冷やすようにしてください」(両角さん)
メロン
アムスメロン、アンデスメロン、夕張メロンなど多彩な品種があるメロン。果肉の色も緑やオレンジ色など多彩です。
高級フルーツとして知られるマスクメロンは通年温室栽培されているため旬がありませんが、それ以外のメロンは4月~7月が旬。生産量が多いのは茨城、熊本、北海道などです。
【選び方と保存のコツ】
「メロンはどっしり重さがあるものを選ぶといいでしょう。ネットメロン(表皮に網目模様があるタイプ)では、網目模様が全体的に均等なものを選びます。メロンは常温で保存し、熟して香りが強くなってきたら食べ頃です。」(両角さん)
おいしいメロンの選び方や食べ頃の見分け方は、以下の記事でも詳しく紹介しています。参考にしてみてくださいね。
農家に聞く! メロンの食べ頃の見分け方や正しい保存方法。種類や栄養なども合わせて紹介!
夏〜秋が旬の果物
暑さとともに最盛期を迎える果物や、初秋においしい果物を紹介します。
スイカ
7〜8月に露地栽培の最盛期を迎えるスイカは、熊本、鳥取、山形、千葉などが主産地です。食べ頃になったものが流通するため、購入後はなるべく早く食べるようにしましょう。
【選び方と保存のコツ】
「外からだと味の判別が難しいスイカですが、形がいびつなものは避けるべき。全体に太陽が当たって育った色の濃いスイカを選ぶといいですよ」(両角さん)。
おいしいスイカの見分け方、切り分け方について以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひチェックしてみてくださいね。
スイカの切り方はこれが正解! 甘さが均等で種も取り除きやすい【プロのコツ】
桃
山梨や岡山、福島などが一大産地である桃は品種ごとに収穫時期が異なり、6〜8月末に露地栽培のピークを迎えます。「桃は品種やシーズンによって甘さや果肉の質感が違うので、自分の好みの品種を見つけてください」と両角さん。また、桃は食べ頃になってから日持ちがしないため早めに店頭に並ぶので、購入した時にはまだ食べ頃ではないことも多いそうです。
【選び方と保存のコツ】
桃は品種特性にもよりますが、全体的に着色が良く、左右対称でふっくらと丸みを帯びたものを選ぶと良いでしょう。
「購入後、食べ頃を待つ間は日光の当たらない場所で常温保存してください。食べ頃のサインは桃の凹んでいる下の部分を指の腹で触ったときに、少し柔らかくなったら。桃の中で一番固いこの部分が柔らかくなってきたら食べ頃です」(両角さん)
ぶどう
山梨や長野、岡山などが主産地であるぶどう。大粒の品種なら6月はマスカット・オブ・アレキサンドリア、7〜9月はピオーネ、8〜10月はシャインマスカットと、時期に合わせて旬を迎える品種が異なります。
【選び方と保存のコツ】
「ぶどうの栽培はとても難しいのですが、粒の大きさが揃っているものは味のバランスがとてもいいと思います。店頭で選ぶときにぜひ意識してみてください」(両角さん)
秋〜冬が旬の果物
果物狩りなども盛んな秋から冬にかけては旬を迎える果物も豊富です。
梨、洋梨
9月には豊水、11月にはにっこりなど、品種によって最盛期が異なるため、梨は長期間にわたって旬が楽しめる果物です。また洋梨も9月頃から旬を迎え、山形名産として知られるラ・フランスは10月頃から収穫されます。
【選び方と保存のコツ】
「梨は持ったときに重いほうがおいしいといわれています。洋梨は甘味が下に下がっていくため、ふっくらしたフォルムのものを選ぶとよいでしょう。黄色い洋梨は熟した状態で販売されているので購入後すぐに食べるのがおすすめ。緑色のラ・フランスは食べ頃が本当に短く見極めが難しいのですが、常温で追熟させ、少し弾力を感じたらすぐ食べるといいですよ」(両角さん)
柿
秋を代表する果物である柿の旬は10〜11月中旬。和歌山、奈良、福岡、岐阜などが産地として有名で、次郎、富有などの甘柿はそのまま、平核無、刀根早生などの渋柿は渋を抜いて店頭に並びます。
「固いまま食べるのが好き、とろとろになるくらい熟してから食べたいなど、柿は好みがとても分かれる果物です。そのために人によって食べ頃が変わります」(両角さん)
【選び方と保存のコツ】
「柿は品種により選び方が異なります。好みの品種を見つけることが大事です。細長い形の柿は少し柔らかくしてから食べるのがおすすめで、葉っぱのついていた凹んでいる部分を、指の腹で触ったときに少し柔らかくなってきたら食べ頃です」(両角さん)
りんご
青森、長野などが主産地で、ふじ、シナノスイート、王林、つがるなど、品種によって収穫時期が異なりますが、主に11〜12月に旬を迎えます。りんごは追熟の必要はなく、店頭に並んでいる時点で食べ頃です。
【選び方と保存のコツ】
「スイカやさくらんぼと同じように、全体に太陽が均等に当たって育った色ムラがないものがおいしいです。保存は乾燥を避け、風通しの良い冷暗所に保管してください。食べる前に冷蔵庫で2~3時間冷やすといいですよ」(両角さん)
外国産の果物の旬は?
日本ではバナナのようにポピュラーなものから稀少なものまで輸入フルーツも多く販売されています。外国産の果物にも旬はありますが、例えばバナナやパイナップル、パパイヤなどには旬はなく、通年輸入されています。また、南半球が産地の果物の場合、現地の旬である夏に収穫されても日本で店頭に並ぶのは冬になります。
輸入マンゴーは、産地によって旬が異なり、メキシコ産は4月~9月(種類により移り変わる)、タイ産が11月~6月、台湾産が5~6月となっています。
両角さんによると「外国産の輸入の果物は、ほとんどが追熟が必要です」とのこと。食べ頃を待って、おいしくいただきたいですね。
果物を買うときに気をつけたいポイント
両角さんによると、日本では、一部の果物を除いて、食べ頃になっていない果物が店頭に並んでいることが多いそうです。出荷する側も果物が食べ頃前の状態で店頭に並ぶように収穫しているのだそう。
「基本、果物はそれぞれ食べ頃がありますので、“私たち”ではなく、“果物”の都合に合わせてください」(両角さん)
おいしい食べ頃を逃さないように、しっかり心に留めておきたいですね。
おわりに
健康のためにも積極的にとりたい果物。味が良くなり価格が安くなる旬の時期がいつなのかを知っていると、より豊かに楽しむことができますね。
そして、両角さんに教えてもらったように、自分好みの品種や熟し加減を見つけることができれば、きっと毎年、旬が待ち遠しくなるでしょう。