意外と簡単! 生らっきょうの下処理

提供:小島香住
毎年5~6月頃には、旬を迎えた生のらっきょうが店頭に並びます。
生のらっきょうかららっきょう漬けを作るのは手間がかかりそうに思えますが、小島さんによると、下処理さえ終えれば作業の8割は終わったようなものなのだそう。しかも、土付きの生らっきょうでもポイントを知っていれば下処理はそれほど大変ではないとのこと。
「市販されている生のらっきょうには、土や根がついたままの『土付きらっきょう』と、『洗いらっきょう』があります。土付きらっきょうは、収穫したらっきょうの茎と根を短めに切った状態のもので、新鮮なものしか流通しないので食感や香りがよいのが特徴です。下処理が必要になりますが、案外簡単なんですよ。でも、より手間を省くなら、洗いらっきょうを活用するのがよいでしょう。洗いらっきょうは、下処理をして塩水に漬け込み、芽止めをしてある状態のものなのでそのまま漬けることができます」(小島さん)
「土付きらっきょう」の簡単下処理法
【手順】
1.流水で土を洗い落とす
2つ以上がくっついているものは1個ずつバラしながら、流水で表面の土を洗い流す。
2.先端と根をカット
上はくびれのあたり、根の部分も薄めにカット。

提供:小島香住
3.皮をむく
水でもみ洗いしながら皮を1枚程度むく。

提供:小島香住
4.再度水洗いし、必要なら塩もみする
再度水洗いをして薄皮やゴミを取り去る。
写真のように、らっきょうの巻きが甘い場合(皮が浮いているような感じ)は、軽く塩もみをするとキュッとしまる。塩もみに使う塩の量は、1kgのらっきょうに対して20gが目安。

提供:小島香住
5.水気を取る
水洗いしたらっきょうをざるにあげて水気を切る。その後、キッチンペーパーの上に、重ならないように広げ、上からキッチンペーパーで押さえてしっかり水分を取る。
「洗いらっきょう」なら下処理はほぼなしでOK

提供:小島香住
「洗いらっきょうは基本的にそのまま漬けられますが、まれに表面が痛んでいる場合があります。漬けてある液を流してから軽く水洗いをし、表面にとろみが出て半透明に溶けるような状態になっているものがないかをチェックしてください。小さな茶色の傷があったり、こすれた跡がある程度ならそのまま漬けて大丈夫ですよ。傷から中まで傷みが広がっていたら外した方がよいでしょう」(小島さん)
洗いらっきょうを買う際には、なるべく漬け液が透明でらっきょう自体も全体的に白いものを選ぶとよいそうです。
【洗いらっきょうの下処理手順】
- ざるにあげ、漬け液を切る
- 水洗いをして、傷んでいるものがあれば取り除く
- 土付きらっきょうと同様、キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取る
らっきょう漬けに使うベストな容器の選び方は?

提供:小島香住
「らっきょうを漬けるなら、匂いもれのないように密封できる保存容器を用意してください。甘酢漬けを作るなら、酸に強いガラス製の保存容器を使ってくださいね。
塩や味噌で少量を漬ける場合は密封できる袋類でも漬けることは可能ですが、厚みのあるものを選ぶか2枚を重ねて使うとよいでしょう。厚手で自立するラミネート袋を用意することをおすすめします」(小島さん)
小島さんによると、1kgのらっきょうを漬けるには2Lの保存瓶がベスト。ガラス製の保存容器がおすすめとのこと。
漬ける前に保存容器の消毒を !

提供:小島香住
「安全に長期保存をするためにも、忘れずに保存容器の消毒をしてくださいね。ある程度の量を漬けられる容器は大きくて煮沸消毒は困難なので、アルコールスプレーで消毒をするのが手軽です」(小島さん)
らっきょう漬けの作り方3選

提供:小島香住
下処理が終わったら、早速らっきょうを漬けてみましょう。今回は、定番の甘酢漬け、さっぱりとした塩漬け、ご飯のお供にぴったりな味噌漬けの3種類の漬け方を、小島さんに教えていただきました。
【らっきょう甘酢漬け】の作り方

PIXTA
らっきょう漬けの定番といえば「甘酢漬け」。まずは王道の甘酢漬けの作り方を小島さんに教えてもらいました。
【材料】
土付きらっきょう・・・1kg
酢・・・300ml
砂糖・・・100g
塩・・・20g
赤唐辛子・・・1〜2本(お好みで)
【手順】
1.酢、砂糖、塩を合わせ砂糖が溶けるまでよく混ぜる

提供:小島香住
「今回は純米酢と、砂糖にきび糖を使用したので、漬け汁が少し茶色がかっています。調味料は普段使っているものを好みで使用して大丈夫ですよ」(小島さん)
2.消毒した保存容器に下処理したらっきょうを入れる

提供:小島香住
3.種を抜いた赤唐辛子を入れ、1を注ぐ

提供:小島香住
「唐辛子は、辛みを付けるというより味を引き締めるイメージ。あと殺菌効果もあります。お好みによっては入れなくても大丈夫です。辛いのが好きな方なら、輪切りにして入れてもよいですね。ただし長期保存をすると、唐辛子から色が出てしまうので、様子を見て取り除くのがおすすめです。漬け汁が上がってきたら、軽くゆすって混ぜると全体が均一に漬かりやすくなりますよ」(小島さん)
漬け上がりまでの期間
「らっきょう自体は生でも食べられる野菜なので、3〜5日後でも浅漬けのように食べることは可能です。程よく漬かってくるのが2週間後くらいでしょう。常温でも1年程度、冷蔵庫なら1年以上保存もできますが、1年を目安に食べ切るのが安心です。また、常温保存をすると、らっきょうの色が濃くなってきますが、冷蔵保存に切り替えると色変化のペースを抑えることができます」(小島さん)
【らっきょう塩漬け】の作り方

提供:小島香住
甘酢漬けの甘さが苦手な方におすすめなのが塩漬けです。塩味のまま食べることもできますし、甘酢漬けや味噌漬けに転用することもできます。小島さんによると甘酢漬けの下漬けとして塩漬けにする人もいるそうです。
「甘酢漬けや味噌漬けの下漬けとして塩漬けにする場合は、4日〜1週間程度でそれぞれの漬物に手順を進めるとよいです。漬物は下漬けをすると水分が抜けて、それ以外の味が入りやすくなるメリットがありますが、砂糖の甘みは塩味の上には入りにくいという特徴があります」(小島さん)
ちなみに和食では調味料は「さ(砂糖)、し(塩)、酢(す)、醤油(せ)、味噌(そ)」の順で入れると味の浸透がよくなるといわれています。塩より砂糖の方が分子構造が大きいため、先に塩味を入れると甘みは入りにくくなるのだそう。
「生のらっきょうで、直接甘酢漬けを作る時と比べて、塩漬けをしてから漬けた場合は、同じ砂糖の量でも甘みが入りにくいと感じるかもしれません。ただしベストな甘みは好みによるので、好きなバランスを探すのも楽しいですよ」(小島さん)
【材料】
土付きらっきょう・・・1kg
塩・・・約80g(下処理をしたらっきょうの総量に対し10%)
【手順】
1.ボウルに下処理したらっきょうと塩を入れ、混ぜ合わせる

提供:小島香住
2.消毒した保存容器に1を入れる
3.ボウルに残った塩も上から入れる
4.数日おきにフタを開けてガス抜きをする
5.週に1度程度、上下を返すように混ぜる
漬け上がりまで期間
「甘酢漬けと同様に、3〜5日後で浅漬け、程よく漬かってくるのが2週間後くらいでしょう。また保存方法や期間も甘酢漬けと同様です。塩漬けは、甘酢漬けや味噌漬けと比べると乳酸発酵が進みやすいため、ガスが溜まるので、ガス抜きをするとよいでしょう。また、時々混ぜると漬かり具合が均一になります」(小島さん)
らっきょうの塩漬けは、塩抜きもポイント
「塩漬けとして食べる場合は、食べる前に2時間程度、水にさらすとよいでしょう。塩漬けから甘酢漬けや味噌漬けを作る場合は、水に3時間ほどさらして塩抜きをします。一度味見をして、塩味が強いようなら水を換えて、さらに2時間ほど水に浸してください。塩味を薄く感じるくらいがちょうどよいでしょう」(小島さん)
小島さんによると、塩抜きした塩漬けを甘酢漬けや味噌漬けにする場合、塩分を減らす必要はなく、生のらっきょうを漬けるときと同じ分量で大丈夫だそうです。
【らっきょう味噌漬け】の作り方

提供:小島香住
ご飯のお供として、また副菜にもなる、らっきょうの味噌漬け。甘じょっぱい風味が好きな方におすすめです。
【材料】
土付きらっきょう・・・1kg
味噌・・・700g
砂糖・・・150g
【手順】
1.ボウルに下処理したらっきょう、味噌、砂糖を入れ、混ぜ合わせる

提供:小島香住
「今回は味噌に米の甘味噌を使用しました。味噌は地域によっても定番が変わりますし、好みに合わせてどんな種類の味噌でも使えます。辛口味噌を使う場合は、こちらもお好みですが、砂糖の量を増やすなどの調整をしてもよいと思います」(小島さん)
2.消毒した保存容器に1を入れる
3.ボウルに残った味噌も上から入れる
漬け上がりまでの期間
「甘酢漬けと同様に、3〜5日後で浅漬け、程よく漬かってくるのが2週間後くらいでしょう。また保存方法や期間も甘酢漬けと同様です。材料の砂糖はザラメを使っても構いません。分量は砂糖と同じでOKで、ザラメが溶け切ったら食べ頃です。最初から全体が味噌に覆われているため、混ぜたり上下を返したりはしなくても大丈夫ですよ」(小島さん)
らっきょう漬けのアレンジレシピ
らっきょう漬けは、そのまま食べてもおいしいですが、実はアレンジしても重宝するのをご存じですか? すぐにでも試してみたくなる、おすすめのアレンジレシピを小島さんに聞いてみました。
らっきょうタルタルソース

提供:小島香住
【材料】
らっきょうの甘酢漬け・・・5〜6粒程度
マヨネーズ・・・大さじ2
甘酢(らっきょうの漬け汁)・・・小さじ1
ゆで卵・・・2個
【手順】
- らっきょうの甘酢漬け、ゆで卵、パセリを細かく刻む
- 1.にマヨネーズ、らっきょうを漬けていた甘酢を加えて混ぜる
「お好みでフライなどに合わせてどうぞ。甘酢を多めに入れてドレッシングのように使ってもおいしいですよ !」(小島さん)
洋風なめろう

提供:小島香住
【材料】
らっきょうの甘酢漬け・・・2〜3粒程度
スモークサーモン・・・1パック(60〜70g)
クリームチーズ・・・20g
醤油・・・小さじ1/2
トッピング用の葉ネギ、またはイタリアンパセリやディルなど
【手順】
- らっきょうの甘酢漬け、スモークサーモンを刻む
- 1.にクリームチーズ、醤油を加えて包丁でたたく
- お好みで葉ネギや、イタリアンパセリやディルなどのハーブをトッピング
「クリームチーズは冷蔵庫から出して、常温に戻しておくと混ぜやすいです。ハーブは他の材料と一緒にたたきながら混ぜ込んでもおいしいですよ」(小島さん)
ホイル焼き

提供:小島香住
【材料】
らっきょうの塩漬け
オリーブオイル
ブラックペッパー
【手順】
- 塩漬けしたらっきょうの塩抜きをして、アルミホイルにのせる
- オリーブオイルを軽く回しかけて、ホイルで包んでトースターで10〜15分程度焼く
- ホイルを開き、軽く焼き目をつけたらブラックペッパーをふる
そのほかにも手軽なアレンジ方法はたくさん !
「みじん切りにした甘酢漬けと、その漬け汁をカットしたトマトにかけてもおいしいです。甘酢漬けの漬け汁は、すし酢の代わりにもなります。みじん切りにした、らっきょうを混ぜ込んだ、ちらし寿司もおすすめです。また、塩漬けを塩抜きし、粗みじん切りしたらっきょうをチャーハンに入れるのもおいしいですよ!」(小島さん)
おいしい土付きらっきょうの見分け方

PIXTA
らっきょうの旬は5〜6月。おいしい生らっきょうの選び方と、すぐ使えない場合の保存方法も小島さんに教えていただきました。
【おいしい生らっきょうの選び方】
- 土がついているもの
- 見た目の傷が少ないもの
- 芽が伸びすぎていないもの
「土付きの生らっきょうは、緑色の部分が短く、伸びすぎていないものを選ぶとよいでしょう。らっきょうはすぐに漬けるのがおすすめなので、できれば漬ける日に買いに行くのがベストです。もし保存するなら、新聞紙に包んでビニール袋に入れ、野菜室に立てて保存してください。とはいえ2〜3日以内に使用することをおすすめします」(小島さん)
らっきょうの栄養素や健康に役立つ効果は?

PIXTA
「らっきょうは生薬として使われるほど、栄養が豊富な野菜です。特に整腸作用のある水溶性食物繊維や、ビタミンB1の吸収を助ける硫化アリルが豊富です。代謝が上がり、胃腸の調子が整うので、食欲増進にもつながります。またカリウムも豊富に含まれているので過剰な水分の排出を助け、むくみ防止にも役立ちますよ」(小島さん)
おわりに
らっきょうは、まさに夏バテ予防にもぴったりの野菜。面倒そうに感じていた土付きらっきょうの下処理も、全容を把握すると意外にも簡単なことが分かりました。
一度仕込めば長期保存ができますし、アレンジ方法も多彩なので、きっと重宝するはず。甘酢、塩、味噌と、さまざまな味に漬け込んでおけば、一年を通して食卓を彩ってくれそうです。