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梅シロップが発酵した場合の対処法や失敗しない作り方

梅シロップが発酵した場合の対処法や失敗しない作り方

初夏に出回り始める生の梅。梅シロップにするのが人気ですが、気づいたら発酵してしまった・・・という声も。発酵したら廃棄しなくてはならないのでしょうか? 薬膳・発酵料理家の山田奈美さんに梅シロップが発酵した場合の対処方法や飲用できる目安、あわせて梅シロップの上手な作り方について伺いました。

最終更新日:2024.9.27

目 次

手作りの梅シロップが発酵してしまったら・・・

手作りの梅シロップが発酵してしまったら

uchicoto

梅シロップ作りでよく聞く悩みは、途中で発酵してしまうこと。ブクブクっと泡が出てきたら廃棄しなくてはいけないのでしょうか? 飲めるかを見極める目安や発酵しないための対策について、薬膳・発酵料理家の山田奈美さんに詳しく伺いました。

「梅シロップが発酵してしまう原因は酵母です」と山田さん。

酵母菌は糖分を原料にアルコールと炭酸ガスを生成する性質があります。そのため、梅シロップがそのまま発酵し続けるとアルコールになってしまうのだそう。「梅から作ったアルコール」と聞くと、梅酒のような印象があるかもしれませんが、実際には酵母菌や乳酸菌で発酵しても美味しくはならず、その上、アルコールの密造は酒税法違反になります。また、雑菌による腐敗のリスクもあります。

しかし、発酵して泡が出てきたらもう飲めないのかというと、そうではないとのこと。ただし、味も落ちてしまうので、なるべく早く対処すると良いです。泡が出てきたら、酵母菌が生成する炭酸ガスで瓶が破裂する可能性があるため、まずはふたをゆるめてガスを抜き、すぐにふたを閉めます。その後、以下の方法のどれかで対処していきましょう。

【梅シロップが発酵してきた場合の対処法1】酢、砂糖、はちみつを足す

梅シロップを作っている

PIXTA

山田さんによると「酢には発酵を止める作用があります。大さじ1ほどの酢を足しましょう。ほんの少しなので味にはほとんど影響は出ません」とのこと。その他、砂糖やはちみつを足すのも同様の効果が期待できます。量はどれも大さじ1杯程度でOKです。

【梅シロップが発酵してきた場合の対処法2】冷蔵保存する

梅シロップ

PIXTA

冷蔵室の温度は約2℃〜6℃(※)で、酵母菌が活性する温度よりかなり低めです。冷蔵庫に入れることで発酵が止まることが多いそう。

※メーカーにより設定温度は異なります。

【梅シロップが発酵してきた場合の対処法3】実を取り出してシロップに火を通す

梅シロップを煮沸する様子

PIXTA

冷蔵保存しても発酵が止まらない場合には、火を通して酵母菌の働きを止める方法もあります。フレッシュな香りは失われてしまいますが、梅特有の風味や酸味は残ります。実を取り除いたシロップを一度沸騰させ、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。その後、冷蔵保存して飲み切りましょう。

これって飲める? 梅シロップの発酵とカビを見分ける

梅シロップの発行とカビを見分ける

uchicoto

梅シロップがブクブクと発酵してきた場合の対処法はわかりましたが、白い膜が張ってしまったり、ぶつぶつしてきたらカビかもしれません。カビだった場合には対処法が異なります。

山田さんによると、白い膜は産膜酵母といって身体に害はないのだそう。ただ、味が落ちるので白い膜の部分は取り除き、その後、シロップを煮沸させて冷蔵保存する必要があるとのこと。

上の写真のように白っぽく見えても、よく見ると緑色だったり、白くない箇所がある場合は、体に害を及ぼすカビの疑いがあります。残念ですが、上の部分の実は全部取り除き、カビた実が浸かっていた部分のシロップも廃棄した上で煮沸消毒した方が良いそうです。

梅シロップのカビを防ぐ方法

カビを避けるために、瓶を密閉しふたの開け閉めの回数を減らしたり、糖類を多めにする方法があります。また、砂糖を一度にすべて入れず、途中で何度か足す方法も効果があるそうです。

実が梅シロップから飛び出ていると、カビやすくなります。8割くらいエキスが出てきたらラップで表面を覆ってあげるのも効果的です。

梅シロップを発酵させないための注意点

梅わり器

uchicoto

梅のエキスを抽出するのに時間がかかると、梅シロップが発酵しやすくなります。通常、5日間ほどで砂糖が溶けますが、瓶を振ったりしてできるだけ早く砂糖を溶かすと良いそうです。瓶を振る頻度は1日2〜3回。以下の点も注意が必要です。

エキスを濁らせないように注意する

梅から出てくるエキスが濁ると発酵しやすくなるため、梅肉が溶け出すのを防ぐ必要があります。梅の実に傷をつけて梅のエキスを速く抽出する手法がありますが、完熟梅や梅が柔らかい場合、梅割り機で割ると梅肉が溶け出しやすくなってしまうので、山田さんのおすすめは竹串やフォークで穴を開ける方法なのだそう。梅割り機を使いたいのであれば、硬い青梅の方が適しているのではないかとのことです。

実を乾いた布でよく拭き取る

梅だけでなく果実の皮には酵母菌が付着しています。水で洗い、乾いた布でよく拭いて乾燥させてから瓶に入れましょう。

瓶や調理器具を殺菌する

瓶や調理器具に雑菌が付着していると、発酵の原因になります。よく洗い殺菌してから使用します。

失敗しない梅シロップの作り方

【手順1】青梅の場合は1〜2時間あく抜きのために水に漬ける
 ※完熟梅の場合は水に漬ける必要はない

【手順2】梅を洗い、ふきんなどで丁寧に水気を切る

梅の実

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【手順3】竹串でヘタを取り、表面に10カ所ほど穴を開ける
 ※冷凍梅を使う場合はエキスが出やすいので、穴あけは不要

竹串で梅の実のヘタ取り

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【手順4】氷砂糖、てんさい糖やはちみつなどの糖類と梅の実を交互になるように重ねる
 ※米麹を追加したい場合はここで追加します。山田さんは試したことがないそうですが、おそらくカビを防ぐ効果があるのではないかとのことです。

梅の実と砂糖

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【手順5】果汁が出始めたら瓶ごとゆすって梅の実にエキスを行き渡らせる

【手順6】5日ほどでエキスに梅の実がすべて浸かる状態になる

【手順7】さらに2週間以上常温で置いておくと風味が増す

実践! 発酵させない梅シロップ作り!

様々な砂糖に浸かった梅の実

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山田さんに習った方法で実際に梅シロップ作りに挑戦しました。上の写真は1日目のものです。左から青梅をそのまま氷砂糖、はちみつ、黒砂糖で漬けたもの、黄梅をそのまま氷砂糖で漬けたもの、青梅を冷凍してから氷砂糖で漬けたものの5種類です。はちみつは漬けた瞬間からエキスがにじみ出てきました。

梅シロップ2日目

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上の写真は2日目。冷凍した青梅(氷砂糖)も少しずつエキスが染み出しています。はちみつと冷凍した青梅(氷砂糖)以外、エキスが少ししか出ていませんが、瓶をゆすり全体にエキスを行き渡らせるようにします。

梅シロップ3日目の状態

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3日目。エキスがなかなか出てこず、カビが心配なので重しをすることにしました。山田さんによると、梅の頭がシロップから出ている状態ならラップで表面を覆うだけで良いとのことですが、今回ははちみつと冷凍した青梅(氷砂糖)以外エキスが出てこないので、重しが良いとのことです。ポリ袋やラップに塩など重しを入れて梅の上に載せていきます。念の為、5つの瓶すべてに重しをしました。

梅シロップ5日目の状態

uchicoto

上は5日目の状態です。重しをしてから2日間でかなりエキスが出てきたのがわかります。

梅シロップ10日目の状態

uchicoto

10日目です。梅の実は完全にシロップに浸かり、もうカビの心配はなさそうです。山田さんによると2週間以上置くと風味が増すとのことですが、少し早めに味見をしてみました。

黒砂糖をそのまま氷砂糖で漬けたもの

梅の酸味や香りは薄らぎ、黒糖の風味が強い。下の方にたまった黒砂糖は、瓶をゆすってもなかなか溶けず、一度スプーンで全体をかきまぜる必要があった。

はちみつをそのまま氷砂糖で漬けたもの

はちみつ特有の濃厚な味わいと梅の酸味のバランスが良い。エキスは早い段階で出てきたが、下の方にたまりやすいので、定期的に振る必要があった。

青梅をそのまま氷砂糖で漬けたもの

ほんのりした酸味で甘さが強く残る。生の青梅はエキスが出てくるのが一番遅く、空気に触れている場所から茶色に変色していった。重しをしてから変色が収まった。

青梅を冷凍してから氷砂糖で漬けたもの

酸味が一番強かった。氷砂糖で漬けたものの中で、冷凍青梅が一番早く砂糖がなじんだ。徐々に実が黄色く変化したが、変色の仕方も一定で安心感があった。

黄梅をそのまま氷砂糖で漬けたもの

芳醇な香りとフルーティーさが感じられ、甘みは強め。漬け込んでいる間に実とシロップの色味が赤く変化した。生の青梅に比べ、生の黄梅の方がエキスが出てくるのが早かった。

途中で気温が高くなったこともあり、発酵やカビが心配でしたが、3日目に重しをしたところ、無事完成させることができました。

仕上がりでは、5種類の香りや味わいがかなり違ったことに驚きました。糖類はお好みで選ぶと良いですが、甘み強めが好きな方は、黒砂糖、酸味が好きな方ははちみつか氷砂糖が良さそうです。とにかく失敗せずに早く作りたい方には、生の青梅より冷凍青梅がおすすめです。

梅シロップQ&A

梅酒と梅シロップと梅の実

PIXTA

Q:青梅と完熟梅、どちらが梅シロップに向いている?

A:青梅と完熟梅どちらでも梅シロップを作ることができます。風味や味わいが違うのでお好みで選んでください。青梅はフレッシュで爽やかな香りやキリリとした酸味が特徴。完熟梅には芳醇な香りにまろやかなうまみやコクがあります。また完熟梅の場合、あく抜きも不要で、実の甘みがあるので、糖類は控えめでOKです。

Q:梅シロップを作った後の実は活用できる?

A:2週間ほどで梅シロップができあがると、実はしわしわになりますが、そのまま漬けておくとシロップを吸ってふっくらしてきます。取り出した実はそのまま食べたり、ゼリーやジャムに使えます。

Q:氷砂糖、白砂糖、てんさい糖、黒糖やはちみつなど糖類は何を使うのが良い?

A:どれが良いということはなく、好みになります。それぞれ以下のような特徴があります。

  • 氷砂糖や白砂糖は精製された砂糖なので純度が高く、雑味が少なくてクリアに仕上がります。こうした純度の高い砂糖の場合、保存性が高く発酵を防ぐ効果も高くなります。また、氷砂糖の場合は、粉状の砂糖のように下にたまらず、全体にばらけた状態で止まってくれるので、振る頻度を減らすことができます。一方、溶けるのに時間がかかるので上の方が傷みやすいというリスクもあります。
  • てんさい糖や黒糖などコクのある砂糖だと、味に深みが出たり、まろやかに仕上がりますが、糖度が低いので、氷砂糖や白砂糖に比べると傷みやすくなります。
  • はちみつは殺菌作用があり、カビが生えにくいのがメリットです。ただ、酵母菌がたくさん含まれているはちみつもあり、発酵しやすくなることもあります。発酵したら上からはちみつを足し、濃度を上げます。

Q:冷凍梅を使う方法とメリットについて教えてください。

A:青梅をあく抜きして洗った後、冷凍し凍ったまま梅シロップを作る方法があります。冷凍梅は繊維が壊れるので、すぐにエキスが染み出し、仕上がりが早いという特徴があります。早く仕上がると発酵やカビも発生しにくくなります。

Q:梅シロップに向く品種は?

A:白加賀(しらかが)や紅映梅(べにさしうめ)など固めの品種が向いています。でも手に入る梅なら何でも作れると思います。

  • この記事取材先

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    薬膳・発酵料理家。国際中医薬膳師。食べごと研究所主宰

    山田奈美

    大学卒業後、東京で編集・ライター業を経て神奈川県の葉山へ移住。現在は葉山の自宅兼スタジオで料理教室を開催。「旬を楽しむ梅しごと」「菌とともに生きる発酵暮らし」など著書多数。

    Youtube「山田奈美の発酵暮らし」にて梅仕事や発酵食について動画で配信。


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公開日:2024.9.27

最終更新日:2024.9.27

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