マンションが停電するとどうなる? 戸建て住宅とは違う大変さも!

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マンションが停電になると、どんなことが起こるのでしょうか。
防災士として被災地での活動も行っている篠原さんは、「今やわれわれの暮らしは、電気なしでは成り立たないといえるでしょう。手洗い場のセンサーから自動ドアまで、あらゆる場所で電気が使われているので、マンションの停電は私たちの日常生活に予想以上の影響を及ぼします」と話します。特に、共用部分と専有部分の両方に影響が出ることで、戸建て住宅の場合とは異なる問題も起こることを知っておきましょう。
共用部分で起こること
マンションが停電すると、共用部分ではどんなことが起こるのでしょうか。
※バルコニーやポーチ、窓などは「共用部分」の「専用使用部分」になりますが、共用部分として入れています。
※給水配管は縦管は共用、横配管は専有なので入れていません。
マンション全体の出入り口が作動しない
「マンションの出入り口のオートロックや暗証番号式のキーなどが作動しなくなります。多くのマンションでは、防犯対策として電気式の入退出管理システムを採用していますが、これらは停電時には機能しなくなるのです」(篠原さん)。
出入りができなくなって困らないよう、もしものときに備えて、手動での開閉方法を確認しておくことが重要ですね。
エレベーターが停止する
停電するとエレベーターは停止して、閉じ込められる可能性もあります。
「バックアップ電源の有無も関係しますが、停電した場合に最寄り階で止まるようになっている仕様のエレベーターもあります。エレベーターが停止した場合の対応方法は、各マンションで異なります。管理会社を通じて、自分の住むマンションのエレベーターの仕様や、非常時の対応方法を事前に確認しておくことが大切です」(篠原さん)
駐車場が使えなくなる
マンションに付属する立体駐車場などの機械式の駐車場は、電源がないと作動しないため、停電すると車の出し入れができなくなる可能性があります。
「平常時から、非常用電源の有無、非常電源による使用可能時間、手動での操作方法の確認などを把握しておくことがおすすめです」(篠原さん)
専有部分で起こること
マンションの専有部分とは、個人が所有している部分で、コンクリートの壁や天井の内側(部屋)部分になります。停電すると専有部分ではどのようなことが起こるのでしょうか。
部屋が真っ暗になる
夜間に停電すると、普段経験することのない真っ暗な状態になります。
「部屋の電気だけでなく、パソコンやLED表示など、普段は気にしていない光すべてが消えてしまうので、時刻によっては本当に鼻先も見えないほどの暗さになることもあります。停電をあまり経験したことがない方にとっては、単に不便さを感じるだけでなく、精神的にパニックを引き起こす可能性もあります」(篠原さん)
水が供給されなくなる
マンションでは通常、電気を使ったポンプで水をくみ上げているため、停電すると水が出なくなります。
「受水槽や高架水槽を使用している場合でも、電気がないと水の供給ができません。水の供給が不能になることは、手洗い・歯みがきや洗濯などの清潔を保つことが難しくなったり、調理や食器洗いなどに支障をきたして普段通りの食事ができなくなったりします。そして、何と言ってもトイレを流せないのが最も困ることといえます」(篠原さん)
共用部分が停電したときの注意
「共用部分が停電するということはエレベーターが停止するため、特に高層階にお住まいの方は、階段の使用を最小限に抑える工夫が必要です。水の供給が不能なために、給水所で水をもらったり、マンションの共同水栓から水を入手するなどの対応が必要ですが、階段を使って水を運搬すること自体が難しい可能性もあります。普段から共同水栓の場所などを確認しておきましょう」(篠原さん)
停電時に備えた飲料水や生活用水の備蓄について、改めて考えておく必要があります。
停電と断水に備えて
生活用水というのは、予想以上に大量に必要なものです。
「トイレは流すために意外と多くの水を使っています。節水型でも1回の使用で数リットルの水が必要です。人は1日に平均して5回〜7回トイレに行くとされています。トイレだけでも1人1日で少なくとも20リットル以上の水を使っていることになります」(篠原さん)
停電になると、水道から水が出なくなったり、トイレの水が流せなくなったりする場合があります。その場合の対処法を知っておきましょう。
「停電時の断水では、便器にゴミ袋を被せて用を足したり、専用の凝固剤で固めたりするなど、水で流す以外の方法を知っておきましょう。また、食器を洗う水を節約するために、使い捨ての紙皿やプラスチックトレイを使用したり、食器にラップを被せて食品をのせ、使用後はラップを交換して使うなどの方法も有効です」(篠原さん)
マンションが停電!? まずは状況の確認を

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マンションの停電には、いくつかのケースがあります。
まずはどのような状況で停電しているのか、周囲を確認してみましょう。
マンション周辺も停電している場合
自宅マンションを含め、周辺が停電している場合は、自然災害による停電が最も一般的だそうです。
「地震、落雷、豪雨による浸水などが主な原因として考えられます。この場合、まず電力会社のホームページで地域の状況を確認できます。ただし、貴重なスマートフォンのバッテリーを消費することになるため、家族がいる場合は、全員がそれぞれ確認するのではなく、誰か1人の端末で確認するなど、節電を意識しながら効率的な情報収集を心がける必要があります」(篠原さん)
マンション(棟)だけが停電している場合
「自分のマンション棟だけの停電というのは、マンションの引き込み配線の問題が考えられますが、非常にまれなケースです。このような停電は、定期点検で防止できることが多いためです。まずは、管理室で状況を確認することをおすすめします」(篠原さん)。
このような場合に備えて、日頃からマンションの管理会社の連絡先を把握しておくことも大切だそうです。
専有部分(自宅)だけが停電している場合
自宅の専有部分だけが停電している場合は、ブレーカーが落ちている可能性が高いそうです。
「ブレーカーが落ちる原因は、たこ足配線による過負荷や、老朽化した電気機器の使用が考えられます。電気の容量管理は安全面でも重要なので、日頃から適切な使用を心がける必要があります」(篠原さん)
マンションの自宅が停電したときにやるべきことは?

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どのような状況の停電かを確認した上で、マンションの自宅が停電したときに、やるべきことや考えなければならないことを篠原さんに伺いました。
安全確認を行い、原因がブレーカーなら復旧する
「まず何よりも、自身と家族の安全確認が最優先です。特に地震による停電の場合は、ガス漏れの可能性もあるため、むやみに電気のスイッチを入れないようにしましょう。安全が確認できたら、すべての電気機器のコンセントを抜いてからブレーカーを上げることをおすすめします」(篠原さん)
また、自宅のブレーカーが落ちて停電になった場合は、単に復旧するだけでなく、原因を特定することも必要とのこと。
「すべての電気機器のコンセントを抜いてから、ブレーカーを上げ、その後、機器を一つずつ接続していくことで、どの機器が原因でブレーカーが落ちたのか特定することができます」(篠原さん)
電気以外のライフラインにも注意する
「停電が起きた場合は、安全のために、ガスや水道についても栓を閉めるようにしてください。水道やガス機器に電気を使っている場合があるからです」(篠原さん)
専有部分(自宅)が停電したときの注意
「真夏や真冬にエアコンが使えないと、命にかかわることもあります。健康優先で一時避難する対応も考えた方がよいでしょう」(篠原さん)
特に高齢者や小さなお子さんのいる世帯では、共用部分、専有部分ともに停電が長引く場合は、避難を検討するのがよさそうです。
マンションの停電に備えよう

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いつ起こるか分からないマンションの停電。ここでは、停電に備えて用意しておきたいグッズや情報収集の方法などについて解説します。
用意しておきたいグッズ
- 懐中電灯やランタン
「懐中電灯やランタンは部屋の数に加えてトイレや脱衣所の分、もしくは家族の人数分のどちらか多い方を用意しましょう。特に窓のないトイレは昼間でも真っ暗になるため、必ず懐中電灯を設置することをおすすめします」(篠原さん)
また、懐中電灯用の予備の電池も十分に用意しておく必要があります。
- トイレ対策グッズ
「凝固剤と専用の袋がセットになった非常用トイレと、防臭のための密封できるコンテナなどの専用ゴミ箱の準備も重要です」(篠原さん)
- ポータブル電源・モバイルバッテリー
「ポータブル電源はいざというときに使えるよう、普段から充電状態を維持しておきましょう。また、ポータブル電源ですべての電気機器をまかなうことは難しいため、優先順位を考えて使う必要があります。
電気機器の中でも、照明やラジオは電池式を選んだり、調理にはカセットコンロを使用して電子レンジや電気ポットなどは使用しない前提で考えることが大切です。さらに、スマートフォンの充電用に複数のモバイルバッテリーを用意し、充電しておくことをおすすめします」(篠原さん)
情報収集手段の確保
情報収集のためにスマートフォンを使うのが一般的ですが、ラジオも停電時や災害時の重要な情報源となります。
「最近では、ラジオの選局方法やニュースの放送時間帯などを知らない世代が多いようです。普段から実際にラジオを聴く機会を作り、使い方に慣れておくことが大切です。地域のコミュニティFM局も、よりローカルな情報を得られる貴重な情報源です。お住まいの地域にどのような放送局があるか、事前に確認しておくことをお勧めします」(篠原さん)
マンション組合で停電時のことを話し合っておく
「災害対策として、防災組織の有無、備蓄の方針、トイレの使用ルールなどを事前に決めておくことが重要です。特に、機械式駐車場やエレベーターなど、停電時に使えなくなる機能やその対応方法について、管理組合で情報共有するのもよいでしょう」(篠原さん)
さらに、マンションの住民同士のつながりも大切です。
「同じ建物に住む以上、住民はある意味、運命共同体といえます。マンションならではの利点として、管理組合という公式な組織があることで、停電に備えた取り組みを進めやすい環境にあるともいえるでしょう。日頃からのコミュニケーションが、緊急時の助け合いにつながります」(篠原さん)
おわりに
停電は予期せぬときにも起こります。特にマンションでは共用部分と専有部分が密接に関連しているため、個人での備えと、管理組合を通じた共同での備えの両方が必要になります。状況に応じた適切な判断ができるよう、マンションが停電するとどんなことが起こるのか、どう対応するべきかを知っておき、いざというときに慌てないようにしたいですね。