災害が発生するとわたしたちの生活はどうなる?

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災害というと、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨(広島県などで土砂崩れや浸水による被害が相次ぎました)、そして2024年の能登半島地震を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、災害は、都市部に住む人にとっても決して人ごとではないのです。
例えば、2019年の台風第15号では、関東地方で猛烈な風が吹き、千葉県を中心に、最大約93万戸※の停電が発生しました。約16日間※にわたる停電の影響で、携帯電話網や市町村防災行政無線などが使用できなくなり、住民への情報伝達が困難となる通信障害が発生しました。さらに、最大約14万戸※での断水が起き、鉄道の運休などの交通障害も発生するなど、住民生活に大きな支障を及ぼしました。
※出典:内閣府「令和2年版 防災白書」
さらに、人口が集中する東京で「首都直下地震」が起きると、耐震性の低い建物の倒壊、木造密集地域などでの火災が発生し、街は多くの犠牲者や帰宅困難者であふれます。電気・ガス・水道・通信などのライフラインが被害に遭い、復旧までに長期間を要する恐れがあります。当たり前だった暮らしは、地震が起きたその日から一変します。
「在宅避難」とは?

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災害が起きると、安全な場所に避難することになります。ニュース番組などでは、被災した人々の避難所での様子を目にすることが多いですが、避難所は、災害で家が倒壊したり、焼失したりして住めなくなった人のための一時的な生活場所です。
東京都には、避難所が約3,200カ所、福祉避難所が約1,600カ所ありますが、避難所の収容人数は約310万人※と、都の人口の約5人に1人しか入れません。災害が起きても自宅に被害や危険がなければ、避難所ではなく自宅で生活を続けます。これが「在宅避難」で、ライフラインの復旧を待つ避難方法です。ライフラインの復旧まで、自宅で安全に過ごすための備えが重要です。
※出典:東京都防災ホームページより、2023年4月1日現在の数字
災害経験者の声
ライフラインが停止すると、わたしたちの生活にどのような影響があるのでしょうか。実際に経験した人の声をご紹介します。
- 電気が使えないと・・・
― マンションに雷が落ちて停電になりました。夏の暑い日だったので、熱中症になりかけました。(40代男性)
- ガスが使えないと・・・
― 阪神淡路大震災の際、あたたかいものを食べられるようになるまで2週間かかりました。フリーズドライの食品等も、お湯がないと満足に食べられませんでした。(50代女性)
- 水道が使えないと・・・
― 東日本大震災の時、水道が使えなくなりました。スーパーからも自販機からも水が消え、パニック状態でした。(40代女性)
- 通信が使えないと・・・
- 阪神淡路大震災では電話もつながらず、まったく情報が入ってこないため、何がおこっているのかわからず不安でした。(50代女性)
出典:東京ガス都市生活研究所「防災に関するインタビュー調査」(2024年7月)
ライフラインが止まると、日常生活に大きな影響を及ぼします。自然災害が起きることを止めることはできません。だからこそ、正しく恐れる、非常時もできるだけ普段と同じ生活ができるよう、備えることが大切です。
在宅避難の備えは進んでいない!
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出典:東京ガス都市生活研究所「ライフラインの備えに関する調査」(2025年7月)
1都3県在住の男女1,200名に調査を行ったところ、在宅避難で最も不安なことは「トイレが使えないこと」「ライフラインの停止」でした。一方、在宅避難を想定した備えを行っている人の割合は約3割にとどまり、備えが進んでいないことがわかりました。具体的に何を備えたらよいのか、電気・ガス・水道・通信それぞれの備えについて見ていきましょう。
“電気が使えない”に備えよう

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家の中を見渡すと、多くの場面で電気・ガス・水道が使われています。ライフラインが停止するということは、これらがすべて使えなくなるということです。特に、停電になると、電源を必要とするガス機器も使えなくなってしまいます。マンションに住んでいる人は、上層階まで水を送る際に電気を使うため、水道が使えなくなる可能性があります。エレベーターも使えなくなってしまいます。
懐中電灯・LEDランタンなど、明かりを確保しよう

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スマートフォンでライトをつけることもできますが、その分貴重なバッテリーを消耗してしまいます。懐中電灯やLEDランタンを用意し、電池切れにならないよう、定期的に確認するようにしましょう。太陽光で充電するソーラーライトは、電池や燃料を必要としないので重宝します。
寒さ・暑さに備えよう

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夏の暑い時期や冬の寒い時期に停電になった場合、冷暖房なしで過ごすことになります。暑さには、うちわや冷却材などを用意しましょう。寒さには、使い捨てカイロやアルミシートなどが役立ちます。電気を使わずに涼・暖を取るための備えをしておきましょう。
“ガスが使えない”に備えよう

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ガスも、家の中のさまざまなところで使われています。ガスが使えなくなると、ガスコンロで調理ができないだけでなく、お風呂やシャワーなど、お湯が使えなくなってしまいます。
カセットコンロを備えよう

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非常食には、開けてすぐ食べられる缶詰など、加熱しなくても食べられるものもあります。一方で、ストレスの多い避難生活では、あたたかい食事は生きる気力になります。災害時の熱源として、カセットコンロとカセットボンベがあれば、食品をあたためることや調理することができます。
4人家族1週間でカセットボンベは5本必要!

出典:東京ガス都市生活研究所「防災食に関する調理実験」
カセットコンロとカセットボンベを使い、非常食の調理にかかるガス量を測定したところ、4人家族で、1週間調理するためには最低5本のカセットボンベが必要でした。家族の人数にあわせて用意しましょう。
ローリングストックで備えよう

画像:東京ガス都市生活研究所
災害時にはじめて食べたら口に合わなかったということがないように、いつも食べているものや、お気に入りの食品をストックしておきましょう。使った分だけ買い足す「ローリングストック法」で、災害時にも“いつもの味”“お気に入りの味”を食べることができます。
実践! ポリ袋調理でご飯を炊いてみよう

画像:東京ガス都市生活研究所
ポリ袋調理とは、ポリ袋を使った調理法のことで、鍋を汚さず、いくつかの料理を1つの鍋で同時に作れるエコな方法です。
無洗米の炊き方
材料(1合分)
米(無洗米)・・・1合(150g)
水・・・1カップ(200ml)
作り方
1. おわんにかぶせた高密度ポリエチレン製のポリ袋に米と水を入れて、空気を抜きながら根元からねじり上げ、上の方で結びます。

写真:東京ガス都市生活研究所
2. 鍋の中に皿を敷き、1を入れて、水(分量外)を袋が浸かる高さまで入れ、ふたをして火にかけます。

写真:東京ガス都市生活研究所
3. 沸騰したら中から弱火にして20分加熱し、火を止めて10分蒸らしたらできあがり。熱いのでトングがあると便利です。
ポリ袋調理の注意点
- 高密度ポリエチレン製以外のポリ袋は、溶ける場合があります。中でも厚手(0.025mm以上)のものか、湯煎で調理可と明記されているものを使いましょう。
- 鍋で作る場合、鍋底の熱で穴があかないように皿を敷きましょう。
- たくさん作るときは1袋に量をたくさん入れず、袋の数を増やしましょう。
“水道が使えない”に備えよう

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断水になると、飲料水や生活用水の確保に大きな影響を受けます。さらに、下水道が損傷すると、復旧までトイレの水を流すことができません。自宅で避難生活を送るためには、「食料」と「水」そして「トイレ」をセットで考え、備えることが重要です。
飲料水を備えよう

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成人が1日に必要な飲料水の量は3リットル、1週間で21リットルです。同居家族の人数分用意しましょう。また、自宅近くの災害時給水ステーションの場所を確認しましょう。東京都ではおおむね半径2km内に1カ所※開設されます。水を運ぶための道具(清潔な空のペットボトルやリュックサックなど)は各自で用意しましょう。
※出典:東京都「東京くらし防災」(2023)
携帯トイレを備えよう

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携帯トイレは、主に以下の2タイプがあります。
- 吸水シートで吸収するタイプ
- 凝固剤などで固めるタイプ
どちらもトイレの便器に取り付けて使うことができます。携帯トイレがない場合の応急処置として、ポリ袋におむつやペットシートなどを入れて代用することもできます。また、災害時はごみの収集が滞ることが予想されます。においに配慮するため、密閉機能のある袋や箱を準備しておきましょう。
水道なしで体を清潔に保つための備えをしよう

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手を清潔に
災害時は不十分な手洗いや不衛生なトイレの使用で、ノロウイルスなどの感染症になる可能性が高まります。アルコール消毒液などを用意し、手を清潔に保ちましょう。
入浴できないとき
体拭きシートやドライシャンプーを備えましょう。拭き取り化粧水などは洗顔の代わりになります。女性は、おりものシートやデリケートゾーン用ウェットシートを備えておくと、不快感が和らぎます。
口腔(こうくう)ケア
避難生活では、虫歯や歯周病になりやすくなります。液体歯磨きなどを備え、口腔内をしっかりケアしましょう。
“通信が使えない”に備えよう

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電気・ガス・水道に加え、通信も重要なライフラインです。災害で通信が途絶えると、大切な人との連絡・安否確認や、災害・避難情報を得ることができなくなります。
東日本大震災では、地震や津波による損壊・水没や、長時間の停電などにより、通信設備に甚大な被害が出ました。その結果、復旧には約1カ月半※かかりました。災害時を想定した連絡手段を確認しておくと、安心です。
※出典:NTTドコモの災害対策
モバイルバッテリーを用意しよう

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スマートフォンは、災害時の連絡手段や情報収集に欠かせません。充電したモバイルバッテリーを持ち歩く習慣をつけるほか、停電の長期化に備え、ソーラー式や乾電池式の充電器も用意しましょう。1人1台用意しておくと安心です。
災害用伝言ダイヤル・伝言板を利用しよう

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災害時には電話がつながりにくくなることが想定されます。災害用伝言板などを利用できるよう、大切な人と“キーとなる電話番号”を確認しておきましょう。スマートフォンが使えない場合に備えて、家の近くの公衆電話の場所や使い方を確認しておくと安心です。携帯用災害時連絡シートをお財布などに入れて持ち歩くのも有効です。
※携帯用災害時連絡シートは「サバイバルナイト」をダウンロード!
災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板の体験サービス
毎月1日、15日、1月1日〜3日、防災週間(8月30日〜9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日〜1月21日)に、災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板の体験ができます。
サバイバルナイトにチャレンジ!

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ここまで、在宅避難に向けた備えについて学んできました。学んだことを踏まえて、電気・ガス・水道・通信を使わずに、在宅避難を想定したサバイバルナイトにチャレンジしてみましょう。
サバイバルナイトの実践例
18:00:START! ポリ袋調理やストック食材(レトルト食品、缶詰など)で食事を用意
<POINT>
- カセットコンロを使う(ない場合は、普通のコンロで代用)
- 調理をする際は、ウェットシートなどで手を消毒する
- 食器はラップに包んで、洗い物が出ないようにする
19:00:照明を消し、スマホ・PCの電源をオフにし、食事
<POINT>
- 懐中電灯やLEDランタンを使う
- 家族が参加しない場合は自室で食べる
19:30:水を使わずに体を清潔にする
<POINT>
- 体拭きシートを使って、体を拭く
- 歯磨きシートを使って、歯を磨く
- 携帯トイレを使う(使った後の処理も行う)
- 必要に応じて照明をつけても可
20:00:FINISH!
計画を立てよう!

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サバイバルナイトの後は、実践を通して気づいたことを振り返り、今後の計画を立ててみましょう。
サバイバルナイト実践者の声
実際にサバイバルナイトに取り組んだ方の声をご紹介します。
― ポリ袋調理でご飯を炊いたらお米が淡白に感じ、飽きてしまう。ふりかけを揃えておくことで、味変できる!
― スマホを触らないのは苦痛だった。毎日のスマホ時間を見直して、脱スマホ依存!
― 暗い中での食事はテンションが落ちる。懐中電灯は多めに用意し、不安を和らげるためにラジオを用意しておく!
出典:東京ガスと東京家政大学との共同研究(2024年10月)
ご飯に飽きてしまうことや、スマートフォンに触れない辛さ、暗い中での食事のメンタル面への影響など、これらはすべて実際に取り組んだからこそ得られた気づきです。サバイバルナイトを実践することで、在宅避難生活の具体的なイメージを持つことができ、“自分にとって本当に必要な備え”が見えてきます。
災害に強い家とは?

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災害に伴うライフラインの停止への備えについて学んできましたが、在宅避難時の電源確保は非常に重要です。太陽光発電と蓄電池を備えておくと、停電時でも照明や通信機器など、一部の生活必需家電を使用できます。そのため、より安心して過ごせます。
蓄電池ユーザーの声
実際に蓄電池を導入している方のお声をご紹介します。
- 電気が止まっても、蓄電池があると太陽光で発電した電気を貯められる。(30代男性)
- いざという時に助かる。冷蔵庫に電気がきていると安心、ということになって、停電した時に冷蔵庫に電気が流れるように設定してもらった。(50代女性)
出典:東京ガス都市生活研究所「防災に関するインタビュー調査」(2024年7月)
蓄電池があることで、電気をためることができ、停電時にはその電力を家の中の家電製品等に使用することができる、といったメリットを感じているようですね。
おわりに
今回は、在宅避難を想定したライフライン(電気・ガス・水道・通信)の停止への備え方をご紹介しました。
「サバイバルナイト」を実践することで、在宅避難生活について具体的なイメージを持つことができ、新たな課題や、本当に必要なものが見えてきます。
防災を“自分ごと”にするきっかけとして、ぜひ家族で実践してみてください。
文筆:東京ガス都市生活研究所 主任研究員/エコ・クッキングナビゲーター/省エネ・脱炭素エキスパート/防災士 笹岡恵梨
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