今さら聞けない・・・「脱炭素」や「カーボンニュートラル」って何?
地球温暖化や気候変動という言葉はみなさんも聞いたことがあると思います。またここ数年、増え続けている記録的な豪雨や熱帯夜、真冬日や降雪量の減少なども温暖化の影響だと言われています。こういった問題に取り組むために今求められているのが温室効果ガスの削減、そして、「脱炭素社会」の実現です。
「脱炭素社会」とは、CO₂などの温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にする社会のこと。排出量そのものを減らすことはもちろんですが、排出したCO₂の処理や再利用、新しいエネルギーの開発などが進められています。実質ゼロにするという意味で、「脱炭素社会」を説明するときに、必ずといって良いほどセットで登場する言葉に「カーボンニュートラル」があります。
「カーボンニュートラル」=「温室効果ガスを実質的にゼロ」にすること
2020年に日本は、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
これは、温室効果ガスの「排出量」から、植林や先端技術によって増やすことができる「吸収量」を差し引き、合計を実質的にゼロにすることです。
エネルギー資源が限られた日本では、さらなる省エネへの取り組みも重要とされています。そのため今後は、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーの利用や、電気自動車、ITによる新しい交通システムが整備され、脱炭素社会を実現するために生産や物流の仕組みも変化していくでしょう。
省エネで家計も楽に!? 個人でできることとは
「脱炭素社会」に向けて、まずは排出量そのものを減らすために私たちができることはたくさんあります。
「例えば『旬の野菜を食べる』こともその一つです。夏が旬のトマトを冬に栽培するには、夏の10倍のエネルギーが必要です。旬の食べ物は栄養価が高く、おいしい、安いというだけでなく、栽培時のエネルギー削減にも役に立つのです。また、食材を選ぶ際に輸送エネルギー削減に貢献できる『地産地消(地域生産地域消費)』の食材もおすすめです。他にも、衣類を長く着られる工夫をする、使わない割り箸やスプーンはもらわないなどのゴミを減らすといった取り組みも、社会全体でCO₂を削減していくことにつながります」(三神さん)
エネルギーを必要以上に使わないエコな行動が「脱炭素」に向けた第一歩になるということ。
もっとたくさんできることがありそうです。
次に、家庭で出来ることとして、大きく分けて3つの取り組み方があります。
簡単に実践できる順に、下記の通りです。
- 設定を変える
- 毎日の行動を変える
- 機器を変える
「1つ目の『設定を変える』は、1回の行動でクリアできるものも多いですから、ぜひチャレンジしてみてください」(三神さん)
STEP1:設定を変える
まずは、家の中にある機器の設定を変えることから挑戦してみましょう。
お風呂の設定温度を下げる
冬に入浴するときはお風呂の設定温度を高めに設定しがちです。設定温度を2℃下げ、約40℃に設定することで約9%の省エネになります。
シャワーの設定温度を下げる
お風呂と同様、シャワーの設定温度を2℃下げ、40℃に設定することで、約9%の省エネになります。
簡単ですのでさっそく試してみてください。
キッチンの給湯の温度を下げる
キッチンでお湯を使うときには、お湯の温度設定を見直してみましょう。温度を下げると省エネ、節約につながります。
冷蔵庫の設定を「中」や「弱」にする
冷蔵庫の冷やしすぎもエネルギーの無駄遣いにつながります。冷凍庫やチルド室などを個別に設定できる場合はさらに省エネが可能です。食材の状態などに気をつけながら取り組んでみてください。
洗濯機をエコ&節水モードにする
使っている洗濯機にエコモードや節水モードがあればぜひ活用してみてください。モードがなくても、洗う時間を短くしたり、すすぎ回数を減らしたりすれば省エネにつながります。
テレビも設定で省エネモードに
テレビの設定でも省エネができることをご存じですか? 必要以上に画面が明るかったり、音を大きくしたりするのは電力の無駄遣いです。省エネモードが選べない場合は、画面の輝度を下げると良いでしょう。
夏の室温は28℃、冬は20℃を目安に
クールビズ、ウォームビズという言葉が定着し、夏や冬の室温設定も下げすぎたり、上げすぎたりしないほうが省エネになるということは知っている・実践しているという人も多いかもしれません。エアコンを使う時は、カーテンや雨戸を閉めるなど、外気の影響を極力受けないようにするのもポイントです。
STEP2:毎日の行動を変える
続いて毎日の習慣も省エネを意識して変えていくと、さらに光熱費の削減に。小さな行動でも続けることで大きな節約につながります。簡単に実践できる8つの方法をご紹介します。
使っていない場所の照明は消す
使っていない部屋や廊下の電気がつけっぱなしになっていませんか? こまめに消して照明の使用時間を短くすれば、それだけで省エネに。
見ていないテレビは消す
照明と同様、テレビをなんとなくつけている人はいませんか? テレビをつけている時間を意識することも節約につながります。
トイレの大小レバーを使い分ける
トイレを流す時、流水量を意識したことはありますか? 最近では節水型のトイレも登場しています。「大」「小」を上手に使い分けることで使う水の量を減らせるので省エネにつながります。
トイレのふたを閉める
自宅のトイレが温水洗浄便座なら、使い終わったらふたをして、便座からの放熱を防ぎましょう。ふたを閉めてから流せば、洗浄水の飛沫飛散を防止することもできますよ。
シャワーを使う時間を1分短縮
お風呂に入った時、ついつい出しっぱなしにしがちなシャワーですが、1日1分短縮するだけで大きな節約が期待できます。シャンプー中はシャワーを止めるなど、こまめに節水するのがコツです。シャワーの湯量が10L/分だと仮定すると、4人家族が一人1日1分短縮するだけで、40リットルの水とあたためるためのガスの両方を節約できます。
お風呂のふたはこまめに閉める
お風呂を出る時、浴槽のふたを閉めていますか? お風呂のお湯を沸かす時や、後で入浴する人がいる場合、ふたをしておけばお湯が冷めにくくなり、追いだきに必要なエネルギーが少なく済むのがポイント。
お湯は必要な量だけ沸かしたほうがエコ
お湯を電気ポットで沸かして常時保温している人は、使いたいときに使う分だけガスで沸かすようにすれば省エネに。
鍋のふたをすると省エネ&時短に!
鍋で煮炊きする時、ふたをするだけで、なんとガス使用量を約11%も減らすことができます。ふたをすると熱が逃げにくくなるためです。
STEP3:機器を変える
もし家電製品や給湯器の買い替えを検討するタイミングがあれば、ランニングコストを削減するチャンスです。
上の図から分かるように、家庭で消費されるエネルギーは「動力・照明他」が一番大きく、次いで「給湯」、「暖房」となります。
「動力・照明他」に関しては、買い替えのタイミングでは家電製品を省エネ性能が高いもの、例えば白熱電球や蛍光灯電球をLED電球に変えたり、エアコンを省エネモデルに買い替えたりするのがおすすめです。
次に大きいのが「給湯」で使うエネルギーです。
「家庭で消費するエネルギーの中で、給湯が占める割合の多さに驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ガス給湯器ひとつとっても、『エコジョーズ』など、少ないガス量で効率よくお湯を沸かす省エネ性の高い給湯器だけでなく、発電と同時にお湯も作る家庭用燃料電池『エネファーム』などもありますので、お湯やエネルギーの使い方に合わせて選んでいただくのがおすすめです。壊れたときに慌てて買い替えるのではなく、次に買い替える時にはどうしようかとこの機会に一度考えてみていただくといいと思います」(三神さん)
発電と同時にお湯をつくる「エネファーム」
家庭で無駄なくエネルギーを使いたいと考えるなら、家庭用燃料電池「エネファーム」を導入するという選択肢もあります。
燃料電池とは、ガスから取り出した水素と、空気中の酸素を反応させて電気をつくる装置のこと。さらに発電する際に発生する熱でお湯を沸かし、給湯に使います。
発電所でつくる電気は、家庭に送電する間にロスが出るほか、発電時に発生する熱もあまり活用されていません。
「エネファーム」は電気を使う場所でつくり、熱も有効活用するので無駄なくエネルギーを使うことができます。マイホーム新築やリフォームを考えている方はぜひ検討してみてください。
脱炭素につながる「新しい豊かな暮らし」とは!?
「脱炭素社会に貢献したい」けれど何からはじめたらよいのか、家庭でできることは限られると感じている人が多いのではないでしょうか。
でも実は、日本のCO₂排出量の実に約6割以上が私たちが生活で消費するモノやサービスをつくる過程で排出されているのです。例えば使い捨ての製品を作っているのは企業ですが、それを使うのは私たちです。そうした製品を買えば買うほど生産するときのエネルギー排出量もCO₂排出量も増えてしまいます。
しかも、2050年のカーボンニュートラルを実現させるために掲げられた目標では、2030年までに家庭から出るCO₂を、2013年から比較して約66%削減する計画が立てられています。
「カーボンフットプリント」とは「炭素の足跡」のこと。製品をつくるための原材料調達から始まり、流通し廃棄・リサイクルされるまでに排出されるCO₂量を示しています。どの過程でどのくらいCO₂を排出されたかを細かく分析し、減らす対策を考えるために活用されています。
こういった取り組みを推進するため、環境省は2023年10月から新しい国民運動「デコ活」をスタートしました。
「デコ活」とは「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称。二酸化炭素(CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(eco)を含む「デコ」と、「活動(生活)」を組み合わせた新しい言葉なのだそう。脱炭素につながる具体案を提案し、取り組みを後押ししていきます。
「私たちの暮らしの中のさまざまな分野で、脱炭素を後押しする施策が動き出しています。脱炭素と言葉は知っていても、意識して行動に移している人はまだ少ないようです。私たちにできること、私たちができることがたくさんありますので、まずはどういう行動や選択が脱炭素につながるのかをたくさんの方に知っていただき、一つでも二つでも暮らしに取り入れてみていただけたらと思います」(三神さん)
おわりに
地球温暖化を食い止めるためにも「脱炭素」が重要と知ってはいるものの、いまいち「自分ごと」としてピンとこない人は多いでしょう。しかし、ここ数年増え続けている豪雨や異常なほど暑い夏、生態系の変化による漁場や漁期が変わるなど、確実に地球温暖化の影響は身近な危険として現れています。光熱費も上がり家計を圧迫している今こそ、エコ生活の始めどき。小さくでも確実に節約できることを習慣にしつつ、脱炭素社会実現のために貢献してみませんか。