エアコンのスイッチはこまめに切るより、連続運転をした方が電気代は節約できる?
――インターネット上でよく見かけるエアコンの電気代節約術といえば、「エアコンのスイッチはこまめに切るより、連続運転をした方が電気代は節約できる」というもの。このことについて、専門家としてどうお考えですか?
矢野:エアコンメーカーのダイキンが、エアコンを「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」のどちらがお得になるのか検証しているのですが、つけっぱなしとこまめに入り切り、必ずしもどちらか一方が安くなるわけではありません。
夏のエアコンと冬のエアコンで電気の消費量は違いますし、つけっぱなしにする時間やエアコンの性能によって電気代に差が出てしまうからです。
ダイキン工業株式会社「夏のエアコンつけっぱなし検証|空気のお悩み調査隊」
――夏の場合、「9:00~18:00は、30分程度の外出であればつけっぱなしの方が電気代が安い」「18:00~23:00は、こまめに入り切りする方が電気代は安い」という検証結果が出ていますね。一概に「外出時もつけっぱなしにしておくべき! 」とは言えないということですね。
矢野:その通りです。ですから、「エアコンのスイッチはこまめに切るより、連続運転をした方が電気代は節約できる? 」がウソかホントかと聞かれたら、“ウソ”になります。
このエアコンの電気代節約術が広まった原因は、数年前にSNSで「エアコンのスイッチはつけっぱなしにした方が安くなる」という投稿が話題になったからでしょう。
エアコンの電気代、4つの節約ポイント
エアコンの電気代を節約するポイントは次の4つです。
・冬の暖房時の室温は20℃を目安にする
・夏の冷房時の室温は28℃を目安にする
・エアコンのフィルターは定期的に掃除する
・暖房は早めにスイッチを切る
これらのポイントについて矢野さんに解説してもらいました。
“室温”を目安にした温度設定と扇風機の夏と冬の使い方の違い
矢野:冬の20℃は寒い、夏の28℃は暑いと思うかもしれませんが、エアコンの設定温度ではなく、室温が目安になっているところがポイント。
エアコンの“設定温度”と“室温”は違います。そして、部屋の位置によって室温は差があります。人がいるところに温度計を置いて計測してみると、「冬の暖房時の室温は20℃を目安にする」「夏の冷房時の室温は28℃を目安にする」は快適に過ごせる温度設定だということが実感できるはずです。
それでも寒い、暑いと感じるようであれば、扇風機を上手に使いましょう。暖気は上に、冷気は下にいく性質がありますから、扇風機を使ってエアコンから出ている温風、冷風を人がいる位置に誘導するのです。
エアコンと扇風機の併用で間違っているのは、部屋全体に風を送ること。ただ風を送るのではなく、「人がいる場所に風を誘導する」が正解です。
エアコンのフィルター掃除は月1回の掃除機で問題なし!
矢野:エアコンのフィルター掃除は、こまめにやっている家庭とやっていない家庭で電気代に差が出ます。何年も掃除をしないと、フィルターにほこりの層が積み重なるんですね。それを掃除するだけで、クーラーの効きが驚くほど良くなり、電気代の節約につながります。最低でも1ヶ月に一度はやった方がいいですね。
半年から1年以上エアコンのフィルター掃除をしていない場合は、まず掃除機で吸った後に、食器洗い用の洗剤できれいに洗いましょう。フィルターに付着している油分を取ってから、しっかり乾かします。その後は月に1回の掃除機で問題ありません。
もうひとつ、クーラーをつけた最後の日、もう今シーズンはこれ以上冷房を使わないという日に、暖房か送風を半日かけることも徹底しましょう。これをしないとエアコンの中に水滴が溜まり、カビが生えてしまいます。夏の終わりにそのままにしておくと、冬になって暖房を使うと、カビの菌が飛び散ってしまうんです。
暖房といっても、低い温度設定で構いません。よく「除湿」をされる方がいますが、除湿は冷房と同じで、湿気を吸ってしまいます。この2点を徹底してもらえれば、エアコンの掃除を業者にお願いする回数はぐっと減らせるでしょう。
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タイマー付きコンセントや断熱材を賢く使おう
矢野:「暖房は早めにスイッチを切る」は、エアコンだけでなく、消し忘れの多いこたつやホットカーペットも気をつけましょう、ということです。私のおすすめは、ダイヤル式のタイマー付きコンセントを使い、消し忘れを防止すること。暖房はスイッチを切った後もしばらく暖気が残りますから、使い終わる少し前にスイッチを切る習慣をつけるといいですよ。
また、こたつやホットカーペットの下に断熱材を1枚敷くと、保温力がグッと上がります。特に、1階の家庭は床が冷たくなりがちですから、ぜひやってみてください。節約したいからといって寒さを我慢せず、賢く節約することがポイントですね。
おわりに
矢野さんによると、ご紹介した方法に加え、冬場は家の中でもダウンベストを着るなど、保温性の高い服装を心がけることで暖房の電気使用量が減り、節約につながるそうです。
また、現在は電力自由化の影響で電力会社が増え、各社さまざまな料金プランを打ち出しています。電気代とガス代をまとめるなど、一度公共料金の見直しをすることで、さらに電気代を節約できるかもしれません。
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