1990年に毎日洗髪する人は、冬は2割、夏は4割しかいなかった
東京ガス都市生活研究所では、1990年から3年ごとに「生活定点観測調査」を実施しています。第1回から2023年の第12回調査まで、同じ質問を繰り返して聞くことで、暮らしの変化をとらえてきました。この調査の中から、洗髪に関するデータを見てみると、毎日洗髪している人の割合がここ30年間で大きく増えていることが分かります。
調査を開始した1990年の洗髪頻度を見てみると、冬は週に「3回以下」が最も多く、過半数を占めています。洗髪は毎日するものではなく、2~3日に1回洗う人が多数派だったのですね。
「毎日(7回以上)」の割合は、1990年は夏39.3%、冬19.0%でしたが、2023年には夏74.3%、冬64.7%となり、33年間で夏35%、冬約45%も増加しました。今では多くの人が毎日洗髪するようになったことがわかります。
この変化を年代別にみると、すべての年代で同じように洗髪頻度が増えたわけではないようです。
若い年代ほど以前から洗髪頻度が高く、1990年に「毎日(7回以上)」洗っていた割合は、20代では冬4割、夏7割近くでした。30代以上とは差があり、特に20代は髪をよく洗っていたことがわかります。
その後30代で毎日洗う人が増えたことから20代との差が小さくなり、20代・30代は2002年にはほぼ現在と同程度の割合となっています。次いで40代も増えてきて、2008年に20代・30代に追いつきました。
50代以降は増加のスピードが遅く、年代差は大きいままです。とはいえ、2023年には50代は40代以下と近い割合まで増えており、もうすぐ追いつくと思われますし、近年の60代の伸びは大きいです。70代以上も着実に増加しており、今後は年代差が縮小していくことが予想されます。
毎日髪を洗うと、ドライヤーの光熱費も上がる?
生活定点観測調査のデータで見てきた通り、全年代で毎日髪を洗う人が増えています。髪を洗った後はドライヤーで乾かす人が多いと思いますので、ドライヤーの使用時間も増えていると考えてよいでしょう。
家庭用ドライヤーの消費電力は平均600W~1200Wといわれており、家の中で使う電化製品として消費電力が大きいもののひとつです。毎日使うものだけに、光熱費が気になりますね。
東京ガス都市生活研究所では、東京家政大学との共同研究の一環として、ドライヤーの消費電力を計測し電気料金を算出しました。1200Wのドライヤーを「強」で使用した場合、3分間の電気使用量は0.059 kWh(4回計測した平均値)であり、算出した電気料金は3分間で2.3円※でした。
※東京ガス基本プラン料金表第2段階 2023年1月現在の燃料費調整後の電力量料金で算出
たとえば、洗髪後にドライヤーを10分間「強」で使うとすると、1回8円前後の電気料金がかかることになります。1年間、毎日10分間ドライヤーをかけるとすると約3,000円、4人家族では約12,000円です。1回あたりの電気代は少額のように見えますが、1年間でみてみると大きな金額になっていますね。
さて、この電気料金を節約する方法はあるでしょうか? 電気料金を節約できるということは、省エネにつながるエコな方法ということです。みなさんのご家庭でも、これからご紹介するちょっとした工夫を取り入れて、エコな暮らしを実践してみてはいかがでしょうか。
ドライヤーのエコな使い方1 タオルドライをしっかりと
髪を洗った後、どのくらいタオルで拭いているでしょうか? あまりよく拭かずに、髪に水分が多いままドライヤーをかけたら、なかなか乾かないことは想像できますよね。そうです、タオルドライはとても大切なのです。しっかりとタオルで水分をとることで、ドライヤーをかける時間を短くすることができ、省エネにつながります。
前述の共同研究では、マネキンの髪をぬらした後、20%の水分をタオルで拭き取ってからドライヤーをかける「通常法」と、35%の水分をタオルで拭き取ってからドライヤーをかける「省エネ法」を比較しました。
その結果、「通常法」での髪が乾くまでの所要時間(髪のブロッキングなどドライヤーを使っていない時間を含む)は14分45秒であり、消費電力は0.19 kWhでした。一方で、「省エネ法」での髪が乾くまでの所要時間は13分であり、消費電力は0.13 kWhでした。(いずれも4回計測した平均値)
電気料金で比較すると、「通常法」は1回約7.4円、「省エネ法」は1回約4.8円でした。わずかな差のように見えますが、1年365日毎日行ったとすると、「通常法」は約2,700円であるのに対し、「省エネ法」は約1,800円。1年間で約900円の節約になります。4人家族であれば約3,700円の節約です。
ぜひ、今日から試してみてはいかがでしょうか。ただし、髪が傷まないよう、ゴシゴシこすらずにやさしくタオルドライを行ってくださいね。
ドライヤーのエコな使い方2 最後の仕上げは冷風で
洗髪後にドライヤーで髪を乾かす際に、最後まで温風で使っていませんか? ある程度乾いたら、最後は冷風で仕上げると髪が冷まされ、髪形をキープしやすくなるそうです。そしてこの方法、省エネにもつながり、電気料金の節約にもなるので、一石二鳥なのです。
この方法も、前述の共同研究で実験を行いました。マネキンの髪をぬらした後、100%乾くまでドライヤーの温風を使用する「通常法」と、95%まで温風で乾かし、その後100%乾くまで冷風を使用する「省エネ法」を比較しました。(髪をぬらす前のマネキンの重量と、髪をぬらした後の重量から、何%乾いたかを測定しながら実験を行いました)
その結果、「通常法」の消費電力は0.19 kWh、電気料金は7.1円でした。「省エネ法」では消費電力が0.16 kWh、電気料金は6.1円でした。ただし時間は「通常法」が11分02秒、「省エネ法」は12分21秒と、「省エネ法」のほうが1分と少し長くなっています。(いずれも4回計測した平均値)
1年365日毎日行ったとすると、「通常法」は約2,600円、「省エネ法」は約2,200円。1年間で約400円の差、4人家族では約1,600円の節約です。小さな金額かもしれませんが、環境にもよく、髪にもよいのであれば、試してみるのもよいのではないでしょうか。
おわりに
洗髪頻度の33年間の変化、意外に感じられた方も多いのではないでしょうか。当たり前のように毎日髪を洗っている方からすると、3日に一度しか髪を洗わないなんて信じられないかもしれません。しかし、現在の高齢者の幼少期は、銭湯の料金に洗髪料金が別途追加されていた時代があったり、家にお風呂があってもシャワーがついていなかったり、シャワーがあっても非常に水圧の弱いものだったりと、髪を洗うこともちょっとした苦労だった時代があるのです。
清潔志向の高まりと家庭の浴室設備の充実によって、多くの人が毎日洗髪するようになった今だからこそ、日々のちょっとした工夫で、環境にも家計にも優しいエコな洗髪の方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
洗髪や入浴の際のエコな工夫としては、「シャワーを1分短くする」「節水シャワーヘッドを使う」「お風呂の設定温度を下げる」などがあります。これらの方法や省エネ効果については、東京ガス都市生活研究所「ウルトラ省エネブック」をご覧ください。
※東京ガス都市生活研究所「ウルトラ省エネブック」
洗髪の後のドライヤーの使い方については、この記事で紹介した「タオルドライをしっかりと」「最後の仕上げは冷風で」をぜひ試してみてください。
小さくても確実に節約できることを取り入れて、エコな暮らしを習慣にしてみませんか。