今年の自由研究テーマは「保温・断熱」で決まり!
コロナ禍や国際情勢の変化は光熱費にも大きな影響を与えました。また、地球温暖化による気候変動問題も深刻です。毎年、台風や大雨などの災害が日本のいたるところで起きています。さらに、地球温暖化ではなく、地球“沸騰化”といわれるほど、夏の暑さも年々厳しくなってきています。
光熱費を抑えるために夏の冷房を我慢することは難しいですよね。そこで、「保温・断熱」をテーマに自由研究に取り組むことで、我慢やムリをせずにできる省エネについて、親子で考えてみませんか。
お風呂のお湯や料理のために沸かしたお湯は、上手に保温することで、沸かし直しをせずに済むので、その分省エネになります。また、夏を涼しく過ごすために、断熱の工夫をすることで、室内の温度上昇を防ぐことができます。実際にどれくらいの効果があるのか、実験を通して見ていきましょう。
さっそく自由研究に取り組んでみよう!
では早速、自由研究の内容をご紹介していきます。
実験①保温:お湯の温度を比較しよう
実験②断熱:グリーンカーテンの効果を確認しよう
まとめ:生活の中で、温度がかかわるもの調べよう
夏休みの自由研究としてそのまま使えるワークシートもダウンロードできるようになっていますので、ぜひ活用してみてくださいね。
ワークシートをダウンロードしよう!
実験結果を記録するためのワークシート「保温と断熱チャレンジシート」は以下からダウンロードできます。
保温実験や断熱実験の記録だけでなく、生活の中で温度がかかわるものをリスト化したり、日常生活で取り組みたいことも記録したりできるようになっています。
実験①保温:お湯の温度を比較しよう
それでは早速実験を始めていきましょう。保温実験に必要な道具は以下になります。
【用意するもの】
- 同じサイズのふたつきの容器・・・3個
- 温度計・・・1本
- キッチンタイマー・・・1個
- タオル・・・1枚
- 軍手・・・1組
- お湯を沸かせるもの(コンロ・やかん・ポット・電気ケトルなど)・・・1個
- 湯・・・600ml
お湯の温度を比べてみよう!
- 3個の容器(A, B, C)にお湯を200mlずつ入れましょう。やけどをしないよう注意してください。お湯を入れたら、それぞれの温度を測ります。
- 下記の通り10分待ちます。
A. ふたをしないで10分おく。
B. ふたをして10分おく。
C. ふたをして、さらにタオルでくるんで10分おく。
3. 10分後、お湯の温度がそれぞれ何℃まで下がったかを温度計で測り、シートに記録しましょう。
実験をしてみて、温めたお湯はそのままにしておくとすぐに冷めてしまうこと、また、少しの工夫で温かい温度を保つことができることに気付けたのではないでしょうか?
実験②断熱:グリーンカーテンの効果を確認しよう
保温の工夫について学んだら、次は「グリーンカーテン」で「断熱」について考えてみましょう。グリーンカーテンは、直射日光だけでなく、強い日射を受けて表面温度が高くなった窓付近の地面や壁からの放射熱も遮ることで、室内の温度の上昇を防ぎます。グリーンカーテンの表と裏では温度が3~4℃違います。
ゴーヤの成長記録をつけてみましょう
まずはゴーヤを朝顔などのつる植物を育てて、窓辺にグリーンカーテンをつくります。ゴーヤは5~6月上旬に苗を植えると、7月から収穫できます。毎日の温度、成長の様子、実の成り方、収穫数を記録しましょう。
グリーンカーテンが出来上がったら、表と裏で温度を測ってみましょう。温度を測るときは、地面からの高さを変えて、いくつかのポイントで測ってみるとよいでしょう。
育てたゴーヤは、先が薄黄色になる前に収穫します。実の成長が止まり、表面のつぶつぶが大きくはっきりした頃が収穫時です。上手に成長すると1つの苗から20個以上収穫できます。
また、台風の前に忘れずに撤去するようにしましょう。
ゴーヤを育てる代わりに、すだれやよしずを使っても良いです。
【用意するもの】
- グリーンカーテン(ゴーヤもしくはすだれ、よしず)
- 温度計
【記録シートの書き方】
- 観察する日時、天気やゴーヤの成長の様子、収穫した実の数などを記録する。
- グリーンカーテンの表と裏で温度をはかる。いつもはかる場所を決めておく。
- グリーンカーテンの表と裏の温度差を計算する。
- 写真を撮り、観察記録を通して気づいたことを書く。
【グリーンカーテンの作り方】今年の夏はエコな生活を!
まだまだある! 断熱の工夫
グリーンカーテンの実験で、断熱の効果を実感してもらえたと思いますが、他にも家の断熱性能をアップする工夫はたくさんあります。特に、熱の約7割は窓から逃げていってしまいますので、カーテンを閉めたりすることも効果があります。また、今ある窓に内窓を取り付けるリフォームしたり、窓ガラス、サッシ、ドアを断熱性・気密性の高いものに取り換えたりすると、外からの熱が部屋の中に伝わりにくくなります。冷房で冷やされた空気も外に逃げにくくなるので、室内の温度を保ちやすくなります。
約3倍の断熱性能!Low-E複層ガラス
Low-E複層ガラスは、2枚のガラスとその間にある中空層、内側にコーディングされたLow-E膜でできています。中空層とLow-E膜が熱を遮断するため、1枚ガラスと比べて約3倍の断熱性能となっています。
まとめ :生活の中で、温度がかかわるものを調べよう
ここまでは、ふたをすることであたたかさを保つ工夫、グリーンカーテンで暑さを防ぎ、部屋の中を涼しく保つ工夫について見てきました。実験で学んだことを活かして、省エネにつなげるためにはどのような行動をすればよいでしょうか。毎日の生活を振り返って、できる行動を考えてみましょう。
生活の中で温度がかかわるものを書き出してみよう!
まずは、上のイラストを参考にしながら、衣生活・食生活・住生活の中で温度がかかわるものを書き出してみましょう。リビングルーム、自分の部屋、洗面所やトイレ、台所など、場所ごとに考えてみてください。
温度を保つためにできることを考えてみよう!
毎日の生活のどのような場面で、温度を保つための工夫ができるか考えてみましょう。どんなアイデアが思い浮かびましたか? すぐに実践できる保温の工夫による3つの省エネ行動とその効果をご紹介します。
1. 鍋を火にかけるときにはふたを
鍋を火にかける場合には、ふたを忘れずに。ふたをすると熱が逃げることを防ぐため、ガス使用量を約11%減らすことができます。
2. お風呂のふたを閉める
お風呂を沸かすときや入浴後はお風呂のふたを閉めましょう。ふたをするとお湯が冷めにくくなるので、お湯を沸かすエネルギーが減らせます。ふたをするだけで、年間約4,000円もの節約になります。
3. 温水洗浄便座のふたをする
温水洗浄便座のふたが開いていると、便座から放熱して、エネルギーを消費してしまいます。使っていないときにはふたを閉めましょう。
「わたしのエコ宣言」を決めて実践しよう!
3つの容器に入れたお湯の温度を比較する保温実験を通し、「ふた」を上手に使うことで温度を保つことができることを学びました。そして、グリーンカーテンの実験を通して、外からの熱をさえぎることで、温度上昇を防ぐことができることを実感できたと思います。さらに、日常の生活の中で、温度を保つためにできることを考え、取り組むことでどれくらい省エネになるかを確認しました。次は、実践に移すことが大切です。お家の人と取り組むこと、「わたしのエコ宣言」を決めて、見えるところに貼りましょう。
おわりに
今回は、3つの容器に入れたお湯の温度を比較する実験とグリーンカーテンの実験を通して、「保温・断熱」について考えるアイデアをご紹介しました。
実際に自分たちの暮らしを見直してみると、さまざまな場面で保温・断熱の工夫ができることに気が付きます。保温・断熱を意識することは、夏の暑さを和らげたり、寒い冬を暖かく過ごしたりするためにも役立ちます。省エネにもなって、快適な暮らしにつながって一石二鳥ですね。今回の実験をきっかけに、家族で暮らし方を見直してみてはいかがでしょうか。
文筆:東京ガス都市生活研究所 研究員/エコ・クッキングナビゲーター/省エネ・脱炭素エキスパート 笹岡恵梨