グリーンカーテンってどんなもの?
グリーンカーテンとは、ツル性の植物をカーテン状に育てたものです。一般的には屋外の窓辺で育てることが多く、室内への直射日光を遮る役目を果たします。
株式会社サカタのタネの藤田さんによると、グリーンカーテンが流行し始めたのは2011年くらいからなのだそう。
「2011年に東日本大震災があり、節電しようという気持ちが日本全体に広がりました。その年からグリーンカーテンを作り始めた人も多いようで、当社への取材なども多かったです」(藤田さん)
グリーンカーテンにはいろいろなメリットが!
グリーンカーテンを作ることは、私たちの生活にうれしいメリットがあるのだそう。藤田さんに詳しく教えていただきました。
グリーンに癒やされる
サカタのタネさんが実施したアンケートでは、グリーンカーテンの良い点として「植物を育てることが楽しかった」という声も多くあったそう。グリーンカーテンは面積も広いため庭の緑が一気に増えて、癒やし効果も多く感じられそうです。
家庭菜園として楽しめる
グリーンカーテンに使う植物に野菜を選べば、果菜などを収穫して「食べる楽しみ」も味わうことができます。
藤田さん「夏野菜としておなじみのゴーヤやキュウリは、初心者でも育てやすく、グリーンカーテンに使う植物としても非常に人気がありますよ」
節電や暑さ対策ができる
藤田さんによると、窓の外にグリーンカーテンを作ることで、直射日光が屋内に入ることを防げるそうです。
「室内の温度が上がりにくくなるため、エアコンの設定温度をわずかですが上げることができ、節電につながります。また、植物は主に葉の裏から二酸化炭素と水を空気中に排出する『蒸散』をします。この『蒸散』による気化熱で周囲の温度が下がります。そのため緑があるとその周りが涼しくなるのです。グリーンカーテンが自宅にあれば、夏でも室内やお庭で少し涼を感じられます」(藤田さん)
また、窓の外にグリーンカーテンを作ると目隠しにもなるので、窓を開けておくことができ、植物の間から入りこむ風も気持ち良く感じられそうです。
そして、グリーンカーテンによって緑を増やすことは、地球温暖化の防止にも役立ちます。植物の光合成が二酸化炭素を吸収。また直射日光を遮るので建物に熱を蓄積させにくくするため、ヒートアイランド現象の緩和にもつながります。
グリーンカーテンにおすすめの植物
藤田さんによると、グリーンカーテンを作るのにおすすめの植物はいくつかあるのだそう。詳しく教えていただきました。
初心者におすすめ「ゴーヤ」
藤田さんによると、初心者に最もおすすめなのはゴーヤだそう。
「ゴーヤは病気に強いため育ちやすく、葉の大きさもグリーンカーテンに適しています。初めてグリーンカーテンを作る人でも、失敗しにくく育てやすい植物です」(藤田さん)
育ちやすいのでおすすめ「キュウリ」
キュウリも育ちやすくておすすめとのことですが、うどん粉病という病気になってしまう可能性があるため、キュウリでグリーンカーテンを作りたいなら、うどん粉病に強い品種の種や苗を選ぶと良いと藤田さんは言います。
その他の初心者におすすめ植物
他にもヘチマやひょうたん、花だとアサガオやフウセンカズラもグリーンカーテンを作る植物として初心者向けとのことです。
上級者におすすめ「メロン」
逆に上級者向けなのはメロン。
「当社のネットメロン『ころたん』でもグリーンカーテンを作ることができます。ただ、水やり、受粉などの手間も多く、実をならせるのはなかなか難しいので、メロンに挑戦するのはグリーンカーテンを作ることに慣れてからがおすすめです」(藤田さん)
グリーンカーテンの作り方~実際にやってみた!~
今回は、初心者でも挑戦しやすいグリーンカーテンの作り方を藤田さんに教えてもらいました。
それに沿って、ウチコト編集部が実践してみた様子を画像とともにご紹介します!
設置する場所を選ぶ
まず初めに、設置する場所を選びます。グリーンカーテンを作るのは一般的には窓の前などが多いですが、日当たりがよい場所を選ぶことが重要です。
藤田さんによると、選んではいけない場所もあるそうで「マンションなどのベランダで作る場合は避難はしごの上や、隣の部屋との境目にある避難用の壁の前にプランターを置くのは避けるべきです。また排水溝もふさがないように気をつけましょう」とのこと。
グリーンカーテンを作る際には、安全に配慮し、周囲に迷惑をかけない心遣いが求められます。
【やってみた】
強い日差しが入ることで最も困っていた南向きの縦長窓の前に、グリーンカーテンを設置することにしました。
材料を用意する
グリーンカーテンを作るためには以下の材料が必要です。
※基本的には作りたい場所の面積に合わせて材料を用意します。
・30リットル以上の横長のプランター
・鉢底石
・土と肥料
・網目が10cm×10cm程度のネット
※作りたいカーテンの大きさ(幅×長さ)に合わせて選ぶ
・カーテンの長さ(高さ)の支柱
※プランター1つにつき、ネットの上下左右+1本ずつ程度
・結束バンドなどネットとプランターを結びつけるもの
・苗(または種)
プランターは1つでもいいですが、カーテンらしくするためには、2つ以上用意して横長に作るのがおすすめです。
【やってみた】
今回の設置場所は縦長の窓辺で幅は狭いため、プランターは1つで。ただし高さはあるので支柱は160㎝のものを用意。また支柱はジョイントでつないでみました。
苗はゴーヤを選びましたが、売っていたのは既に結構育っているものばかりでした。
ネット組み立てと植え付け
初めてでも必要なものをそろえておけば、グリーンカーテンは一人でも1時間程度あれば作ることができます。
1. プランターを用意する
プランターを用意したら、水はけをよくするために底に鉢底石を敷き詰め、その上から土を入れます。後で苗を入れるので、入れすぎないように注意しましょう。
「初心者の場合、土と肥料を混ぜるのは大変なので、肥料が入っている野菜用の土などを買うといいですよ」(藤田さん)
【やってみた】
鉢底石は取り扱いが簡単な袋入りを選び、その上に培養土を八分目程度まで入れました。
2. ネットを組み立てる
上下左右の支柱にネットを結束バンドでくくりつけます。高さがあるので、上と下の真ん中にもう1本支柱を加えると安定感がアップ。
ネットをつけたら、左右の支柱をプランターの右端と左端の土の中に入れて固定しましょう。窓側に向けて、少し角度をつけて倒すのがポイント。
「苗を先に植えてしまうと、ネット取り付けのときに誤って苗を傷つけてしまうリスクがあるので気をつけましょう」(藤田さん)
【やってみた】
左右の支柱はジョイントでつなぎ、ネットを張ってくくりつけました。
窓に向かって傾斜するようにして、プランターにネットを張った支柱を立てています。
3. 植物を植える
次にプランターに植物を植えます。
植物は、種から育てる方法と、苗を植える2つの方法があります。
藤田さん「初心者は苗から始めて、上手にできたら翌年は種から育ててみるのがおすすめ。種の場合はゴーヤ、キュウリ、ヘチマなどはゴールデンウィーク明けにスタート。苗も4月頃から売られています」
種から育てる場合は、まず指で土に穴を開けて種をいれます。2~3粒まき、本葉1~2枚の時に間引きし、丈夫なものを1本残します。本葉が3~4枚出てきたら、プランターに植え替えます。
種はプランターに直接まくのではなく、まずはポットにまきます。ポットに種をまいて育てると環境を整えやすく、丈夫な苗を育てることができます。
苗の場合は、ホームセンターや種苗店などで買ってきてすぐにプランターに移し替えて問題ありません。
【やってみた】
今回はゴーヤの苗で。少し育ってしまっているため、つるを切らないように注意して植え付けました。
つるをネットに沿わせて、植え付け完成。
順調に育ってグリーンカーテンになるのが楽しみです。うまくいけばゴーヤもたくさん食べられるかも!?
グリーンカーテン育成中の注意事項
グリーンカーテンをうまく作るためには、日々のお世話が大切です。以下のポイント4つに注意しましょう。
1. しっかり水やりをする
グリーンカーテンが育つ時期は暑さも厳しいため、水やりがポイントとなります。土の表面が乾いているかどうかが水をやる目安で、基本的には毎朝たっぷりの水をあげましょう。
2. 肥料を追加する
植え付けに肥料入りの土を使用しても、定期的に肥料を追加する必要があります。植物の元気がないなと思ってからでは遅いので、その前に追肥することが大切です。
藤田さん「ゴーヤの場合なら、苗を植えて30日くらい経ったら、その後は7日ごとに追肥するのがおすすめ。植物ごとにタイミングは異なり、園芸書に載っている栽培方法は執筆者によって少しずつやり方が違うため、たくさんのWEBサイトや本を読んでいるとかえって混乱してしまうことがあります。自分の中のバイブルを1冊見つけてそれに沿うのがいいでしょう」
3. 伸びすぎたら切る
植物の成長が進むと、茎やつるが予想しない方向に伸びてしまうことも。その場合は、伸ばしたい方向に茎やつるを導き、麻ひもなどでネットに結びつけます。
また、茎やつるがあまりに伸びすぎたり多くなってしまった場合は、茎の先端部分をカットしましょう。茎の先端には植物の生長点があり、生長点を切ることで植物を横に成長させることができます。ネットいっぱいに生い茂らせるにも大切な作業ですので忘れずにやりましょう。
4. 台風のときはグリーンカーテンを倒す
せっかく育ってきたのにもったいないと思うかもしれませんが、台風のときは安全第一。プランターごと倒れてしまうと、窓が割れたりお隣に迷惑がかかるなど、大変なことになってしまう可能性があります。
「台風のときは一度支柱を抜いて、グリーンカーテンを倒しておきましょう。台風後に再度うまく育つかは分かりませんが、とにかく安全が優先です」(藤田さん)
5. 虫や病気を見つけたらすぐに対応する
できるだけこまめに観察をして、異変があったときは書籍やWEBを参考にすぐに対応しましょう。
ゴーヤの場合は、虫はつきにくいですが、もし見つけた場合は薬などを使わず葉ごと取り除くのがおすすめです。
グリーンカーテンの取り外し方
グリーンカーテンを取り外すタイミングは、植物が枯れてしまう前。
実がならなくなったり、花が咲かなくなったら、取り外して片付けるようにしましょう。
「枯れて茶色くなってからだと、ゴミが散らばりやすくなり片付けが大変です。植物がまだ緑のうちに片付けた方が、ゴミも散らばらずスムーズです」(藤田さん)
おわりに
最近ではオフィスビルや公共施設などでも多く見かけるようになったグリーンカーテン。家庭サイズのものであれば、初心者でも簡単に作ることができます。今年の夏は自然のカーテンで、涼を呼びこんでみませんか?