ペットボトルの水、賞味期限切れでも飲める! お茶やジュースと違う理由とは?
一般的なイメージとして、「賞味期限が切れたものは飲んだり食べたりしないほうがいい」と考えてしまいがちですが、ペットボトル入りの水については例外のようです。日本ミネラルウォーター協会の専務理事・事務局長の渡辺健介さんに詳しくお話を伺いました。
「水が他のドリンクと大きく違うのは、その安定性です。お茶やジュースは酸化したり成分変化していきますし、コーヒーは分離します。水は化学的に単一の物質なので変化しません。ミネラル分が沈殿する程度なんです」と渡辺さん。
適切な保存環境に置いておけば、ペットボトルの水はほとんど成分変化しないのだそうです。
特に、日本のメーカーのミネラルウォーターは、加熱殺菌かろ過除菌を経てボトリングしているものがほとんどで、微生物が含まれていないと言います。
災害などの非常時、ペットボトルの水しかないことも・・・
人間の体の約6割は水分(成人の場合)。厚生労働省のページによると、60kgの男性の場合、1日に2.5Lの飲み水が必要とされています。体の水分の5%を失うと、脱水症や熱中症のリスクが上がります。
災害が起きて水が不足すると、命の危機にもつながります。災害時には自治体から水の配給がありますが、災害発生から救援体制が整うまでには、およそ3日間を要すると言われています。それまでの間、飲み水が全くないと大変なことに。
「ペットボトルの水は、多少賞味期限が切れても飲める」と覚えておけば、いざという時に安心ですね。
ペットボトルの水の備蓄は不可欠です。なお、飲み終わった後の空容器は、災害時に水の配給を受ける際にも使うことができます。
※出典:厚生労働省「健康のため水を飲もう推進運動」
ペットボトルの飲料もローリングストックがおすすめ
ペットボトルの飲料は保存性に優れていて大変便利ですね。特に水は災害時や他に手元に飲料がない時に「多少賞味期限が切れても飲める」と覚えておくと安心です。
ただ、日本ミネラルウォーター協会さんとしては「ご家庭において普段はなるべく賞味期限切れの前に飲み切ること」を推奨しているそう。これは、ペットボトルの品質は保管状態にも左右されますし、後述する通り、殺菌されずにボトリングされている場合もあるためです。
そこで便利なのが「ローリングストック」でペットボトル飲料を保管する方法です。ローリングストックとは、その名の通りストック(備蓄)をローリング(回転)させること。普段から使うペットボトル飲料を少し多めに備蓄しておき、使った分だけ定期的に補充していく方法です。この方法なら無理なく、賞味期限内に使い切ることができますね。
ペットボトルの水は賞味期限が切れた後、いつまで飲める?
渡辺さん「成分が変化しにくいにもかかわらず、ペットボトルの水に賞味期限がある理由は、容器から水分が徐々に蒸発し、量が減っていくからです。賞味期限内で表示された量を下回らないように、期限が決められています」
例えば、2リットルのペットボトルの水は、賞味期限までの間は2リットルを下回らないよう、多めに詰められています。それ以降は量が2リットル未満になる可能性があるのです。
量が減ったとしても、水は水。成分の変化がなければ安心して飲めます。ミネラルが分離し沈殿していても身体への影響は考えにくいそうです。
そのため、適切な環境で保存していれば、賞味期限の過ぎたペットボトルの水を飲んでも問題ありません。ただし、どんな環境で保存されるかに大きく左右されますし、またボトリング前に消毒・除菌しているかなど、商品の製造工程にもよるため、「賞味期限切れ◯◯カ月までは飲用可」などのように、賞味期限からどれくらいの期間、飲用可能かを名言することは厳しいのだそうです。
ヨーロッパのミネラルウォーターは加熱殺菌しないことも
渡辺さんによると、日本のメーカーでは、ミネラルウォーターをボトリングする前に加熱殺菌やろ過除菌を行うものの、ヨーロッパのミネラルウォーターの場合、こうした処理をしないことも多いのだそう。
ヨーロッパの水は硬度が高く、ミネラル分を減らさないようにそのままボトリングすることが多いのだと言います。日本では、古来より生水は沸かしてから飲む文化がありましたが、ヨーロッパでは水を沸かす文化はなかったようです。
水自体には栄養分が少ない上に、ボトリングされる際に酸素濃度も下がり、微生物が繁殖しにくい環境になるため、「おそらくヨーロッパのミネラルウォーターでも、賞味期限が過ぎても影響は少ないのではないか」と渡辺さん。
それでも、こうした違いがあることは認識し、以下にお伝えする情報もチェックした上で、飲むかどうかは慎重に判断した方が良いかもしれません。
ペットボトルの水が飲めなくなると、どんな状態になる?
ペットボトルの水が、カビたり腐ってしまった場合の見分け方はあるのでしょうか。
渡辺さんによると、ペットボトルの水が以下の状態になっていたら、飲用を控えた方が良いと言います。
- ボトルのキャップが緩んでいる状態
- 水の表面の浮遊物など異物が見られる状態
- ボトルのキャップを開封した際に、不快なニオイが感じられる
- 1年以上たったペットボトルなのに、ボトルにへこみが見られない
渡辺さん「キャップが緩んでいたらもうやめた方がいいです。キャップが緩み、空気が入ってくる時にカビの胞子なども入ってくる可能性があります」
また、ペットボトルの水は1年以上たつと、ボトル内の圧力が下がり、へこんでくるのだそう。へこんでこなかったら要注意。キャップが緩んでいる可能性が高いのだそう。キャップの状態をよく確認しましょう。
ペットボトルのジュースやお茶など、水以外のソフトドリンクの賞味期限
ジュースやお茶、コーヒーなど水以外のソフトドリンクの場合、賞味期限が切れるとどうなるのでしょうか。
食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)の井出留美さんは次のように話しています。
「ミルクなどが入った飲料やコーヒー・お茶類・ジュースなどのペットボトル飲料の賞味期限は、水とは異なります。水の場合の賞味期限は『記載されている内容量が担保される期限』という意味ですが、その他のソフトドリンクの場合、記載されている賞味期限はあくまで『おいしさの目安』という意味になります」
水以外のソフトドリンクの場合には、賞味期限以内に飲み切る必要があります。
ただし、「1日過ぎたらすぐ飲めなくなるのか」というと、そこまで厳密なものでもないようです。
井出さんの書籍「賞味期限のウソ」(幻冬舎新書)によると、食品ロス問題を解消するために、飲料品メーカーでは賞味期限を日付表示から年月表示に変更する動きがあるそうです。2リットルサイズのミネラルウォーターに関しては、2013年5月以降、アサヒ飲料や伊藤園などの大手メーカー5社で、年月表示が標準化されました。
例えば「2023年8月31日」のように日付で記載されていた賞味期限が、「2023年8月」のように月までの表示になります。※
このことからも、多くのペットボトル飲料は殺菌・除菌処理を経て詰められているので、生鮮食品のように1日でも過ぎたら捨てなくてはならない訳ではないことが分かります。賞味期限の月内であれば安心して飲むことができますね。
※賞味期限を、年月日表示から年月表示にする場合、8月1日と書いてあったら「1日」は切り捨てになり「2023年7月」となります。月末以外の日にちは「8月30日」であっても、30日が切り捨てになり、「2023年7月」となります。そこで農林水産省は、賞味期限そのものを1カ月以上延長し、その上で、年月表示に切り替えることを各企業に薦めています。
ペットボトルの水の適切な保存環境とは?
渡辺さんによると「直射日光が当たらず、気温が高すぎない場所」が良いと言います。
冷蔵庫など温度が低い場所に置かなくても良く、室外の物置などでもOK。ただし、置く場所のニオイには注意が必要です。防虫剤の樟脳(しょうのう)など、ニオイの強い物を近くに置いてしまうと、ニオイ移りしてしまうそうです。
開封したペットボトル、飲まないほうがいいの?
ここまで、未開封のペットボトル飲料の賞味期限についてご紹介してきました。一度開封してしまったペットボトルの水やお茶、ジュースなどはどうなのでしょうか。
開封後のペットボトル飲料は冷蔵庫で保管し、半日〜1日以内で飲み切る必要があります。水でも他の飲料でも同様です。開封した後は空気中の雑菌が中に入るリスクがあり、品質が変化しやすくなります。口をつけて飲んだ場合はさらに傷みやすいので注意が必要です。できるだけ早く飲み切るか、飲み切れない場合には破棄した方がよさそうです。
おわりに
私たちは毎日、手洗いやトイレ、風呂などに1人1日3リットル以上の水を使うといわれています。せっかく水を備蓄していたのに「賞味期限が切れたから」というだけで捨ててしまうのはもったいない。状態に応じて無駄なく活用していきたいですね。