防災グッズの収納を考えるときはまず「ハザードマップ」でリスク確認を

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「防災グッズの準備や収納の前に、まずは、災害のリスクを把握しましょう。一番のリスクが水害なのか、地震なのかによって収納場所は変わります。わが家の場合だと、一番のリスクは地震です。在宅避難になる可能性が高いと思われるので、持ち出し用よりも備蓄に力を入れた方がベターだと判断できます」(大森さん)
もちろん、地震リスクが高いからと持ち出し用のアイテムを用意しないということではなく、どちらも備える必要はあります。しかし、特に多く用意した方がよいアイテムや収納場所を考える上では、立地のリスクを知ることが重要です。
「例えば、川が氾濫するリスクがあるなら、備蓄用防災グッズは1階ではなく2階に収納した方がよい。避難所に避難する可能性が高い場合は、すぐに取り出せる場所に持ち出し用のアイテムを備えておく方がよいだろう、というように考えていきます」(大森さん)
■ハザードマップの確認方法についてはこちら
国土交通省:ハザードマップポータルサイト
ハザードマップについては下記の記事も参考にしてみてください。

防災情報をチェックしよう! 「ハザードマップ」ってどんなもの?
防災グッズは「持ち出し用」と「備蓄用」に分けて収納しよう
Tomomi Omori
大森さんによると、防災グッズを収納するときのポイントはずばり「持ち出し用と備蓄用を分けて収納すること」。ひとまとめにして収納しがちですが、持ち出し用と備蓄用は用途だけでなく内容物も異なるため、分けて収納することが大切なのだそう。
そのほかにも、防災グッズの収納に関して知っておきたいことと、実際の収納例を大森さんに教えていただきました。
防災グッズの収納に適したアイテムは?
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まずは備蓄用・持ち出し用それぞれに適した収納用アイテムについて教えていただきました。
持ち出し用防災グッズを収納するなら

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自宅に危険が迫り、避難所に向かう際などに、サッと取り出したい持ち出し用グッズ。
「持ち出し用グッズを収納するのは両手が自由になるリュックサックがベスト。キャリーケースも持ち出すのには便利ですが、災害時には道路が水浸しになっていたり、がれきが落ちていたりすることもあるので、背負えるリュックの方が便利でしょう」(大森さん)
また、夜間避難で片手に懐中電灯を持つ、子どもと手をつなぐといったことを想定すると、リュックがベストというのは納得です。
「市販の非常用持ち出し袋も中身が十分であれば活用できるとは思います。より使いやすく、自分の体格に合ったもの(リュック)を用意すると安心です。また、防災グッズを入れるリュックを購入するなら、防水素材のものを。濡れてしまうと使えなくなるアイテムもありますから」(大森さん)
防災リュックの作り方や中身については、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね!
備蓄用防災グッズを収納するなら
基本的に持ち出さないものなので、重量がある収納用アイテムを使っても問題ありません。
- ポリプロピレン製のコンテナボックス
「備蓄用防災グッズ用の収納アイテムとしては、ポリプロピレンという頑丈な素材でできたコンテナボックスなどが便利です。コンテナボックスの大きさの目安としては、収納場所や家族人数、備えるものと日数によっても変わってきます。まずは収納場所を確保し、何をどのくらい入れられるかをおおよそ決めてから容量を選ぶことをおすすめします。見当がつかない場合は、まずは1週間の備蓄を目安としてアイテムがどのくらいになるかを考えてみるとよいと思います。テーブルや椅子としてアウトドアで使用することもできますし、空間を有効に使いたい場合は積み重ねることもできますよ」(大森さん)
ポリプロピレン製のコンテナボックスにはさまざまな種類があり、ホームセンターや生活雑貨を取り扱うショップなどで1,000~3,000円台で販売されています。同じシリーズのコンテナボックスを買い揃えて「このコンテナボックスの中には備蓄用アイテムが入っている」と決めておけば、家族で情報を共有しやすいかもしれません。
「ちなみに、防災用備蓄ですが、あれもこれもと大量になると管理が大変になります。日常の延長という意味で、日用品や食品等も、いつも使っているもの、食べているものを1~2個多めにストックすると管理しやすいです。例えばわが家ではないと困る生理用品だったり、袋やラップ類も1~2個多めに備蓄も兼ねてストックしています。食品もよく使う乾物や海藻類など、お気に入りのおやつなども1つ多めにストックすると、気楽に備蓄できます。プラスする感覚で備蓄すると、ローリングストックしやすいので、管理しやすいですよ」(大森さん)
- キャスター付きボックス
「キャスター付きボックスは簡単に移動できて、置いている場所の掃除がしやすいのでおすすめです。ただし地震の揺れなどで動いてしまわないよう、普段はロックをかけておきましょう」(大森さん)
防災グッズの収納場所は家族全員で共有しよう

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「子どもだけで留守番をしているときに被災することもあるので、どこに防災グッズがあるのかを家族全員で共有することが大切です。わが家は中2、小6、小2の子どもがいますが、子どもでも取り出しやすい場所に持ち出し用防災グッズを収納し、どこに何があるかを知らせています」(大森さん)
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上の写真は大森さん宅の子ども用の持ち出し用グッズ。
備蓄用アイテムもどこにあるかを家族全員が知っていることで「使える備え」になります。
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【持ち出し用防災グッズ】の適切な収納場所
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大森さんのお宅では、家族の人数分の持ち出し用防災グッズを玄関に収納していました。子ども用はサコッシュ、大人用は下のリュックです。
「家の間取りによって差はあるかもしれませんが、多くのお宅の場合、持ち出し用防災グッズは玄関に収納するのが最適です。外出しているときに地震が起き、一旦帰宅してから避難所に行く場合でも、持ち出し用リュックが玄関に置いてあればすぐに取り出せます。玄関に収納がない場合は、玄関につながる廊下など、避難経路に沿った場所に置くことをおすすめします」(大森さん)
大森さん宅の持ち出し用防災リュックは、収納の扉を開けてすぐ、ワンアクションで取れる位置に置かれています。
「防災グッズは普段使わないのでクローゼットの奥まったところに置く方が多いのですが、持ち出し用グッズはサッと取り出せる位置に収納することが重要です」(大森さん)
持ち出し用防災グッズを用意している方は、取り出しやすい場所にあるかどうかを確認してみましょう。
数カ所に分散して保管するのもおすすめ
「もしできるのであれば、車や寝室の枕元、職場のロッカーなどに、最低限の水や携帯用トイレを入れたサコッシュを用意しておくとよいでしょう。ほかにはメガネのスペアや持病の薬など、自分の必須アイテムを入れておくと安心です」(大森さん)
「日常でアクシデントに巻き込まれる場面を想像してみてください。急に電車が動かなくなってしまった、帰宅難民になってしまった、渋滞に巻き込まれたなど。自然災害でなくても、体調不良や疲労もミニ災害といえるのでは? そんなとき、何かしらの備えがあると心強いものです」(大森さん)
日常の中で誰もが体験しているミニ災害。こうした備えがあると役立ちそうですね。
避けた方がよい収納場所は?
「イザというときに取り出しにくい奥まった場所、避難の妨げになる場所や、近くにある家具が倒れてきたら取れなくなるような位置に収納するのは避けてください。収納場所を考えるとき、災害時にその場所がどのような状態になるかを想像してみるとよいでしょう」(大森さん)
持ち出し用リュックで避難場所まで行ってみよう
ハザードマップで避難所を確認した上で、持ち出し用リュックを背負い、一度避難所まで行ってみるのもおすすめです。あれもこれもと詰めがちですが、実際に背負ったときの重さを体感し、選別するのも大切なこと。
また、普段何気なく歩いている道路でも、このビルの前は危ないなど、注意したいスポットに気づくかもしれません。
【備蓄用防災グッズ】の適切な収納場所
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「持ち出し用とは違い、備蓄用防災グッズは多少取り出しにくい場所でも問題ないでしょう。例えばわが家では飲料水のストックはクローゼットの空いたスペースに入れています(上の写真)。子ども部屋のクローゼットも、手前は子どもの衣類、その後ろに長期保存できる水のストックを置いて、空きスペースを活用しています」(大森さん)
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「トイレットペーパーのストックは玄関の上部に収納しています。高い場所であっても、紙類であれば落下してしまった場合でも安全です」(大森さん)
できるだけ分散して収納する
大森さんによると、備蓄用防災グッズはできるだけ数カ所に分散させておくことがポイントだそう。
「1カ所にまとめて収納していると、その場所が浸水したり壊れたり、収納扉が開かなくなったりして、せっかくの備蓄用品がまったく利用できなくなるリスクがあるためです。
特に重要なのは水・食品・携帯用トイレ。万一、地震などで部屋に閉じ込められてしまっても、これらがあれば何とかしのげるので、各部屋に収納しておくことをおすすめします。ワンルームの方は取り出しやすい場所に収納しましょう」(大森さん)
ただ、バラバラに収納すると、どこに何があるのか把握しづらそうです。せっかく備えていても使用(賞味)期限が切れてしまったり、収納したことすら忘れてしまうかも。
そんな心配に、大森さんは「収納スペースをしっかり決めて、そこだけを見返すなどすると、モノの量が把握しやすいので、管理しやすいですよ」とアドバイスしてくれました。
避けたい収納場所
「落下の危険があるため、高い場所に重いものを収納するのは避けましょう。また、食品などを適切に保存するためには、湿気や直射日光を避けられる場所で保管することは大切です」(大森さん)
家が狭い場合に防災グッズ収納場所を確保するには?
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「ベッド下が空いている場合は、キャスター付きボックスなどに収納するとよいでしょう。わが家も子ども部屋のベッド下には、キャスター付きボックスに非常食を保管しています。
また、収納スペースの中に不要なものが入っていないか確認を。空箱を保管されている方が多いのですが、空箱は使わない場合がほとんど。他にも紙袋や着なくなった服など不用品があれば廃棄して、収納スペースに余裕を作ってください」(大森さん)
片付けは一番の防災!?
収納スペースを確保するための工夫に加えて、大森さんは「家の広さにかかわらず、片付けは一番の防災だと知ってほしい」と言います。
「モノが少なければ少ないほど危険度は下がるんです。ぐらっと揺れたとき、足元にモノがあったら危ないですよね。また、いくらしっかり防災アイテムを揃えていても、不用品だらけではイザというときに持ち出すべきモノが見つからないことも考えられます。片付けほど大切な災害対策はありません。片付けにデメリットは一つもありません。被災後、家の中を復帰させる場合も不用品が少ない家の方がラクです」(大森さん)
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すべてが整然と収納されている大森さんのお宅は、居心地のよさが感じられます。
被災して心身にダメージがあるときは、よりありがたみを感じそうです。「片付けが一番の防災」というお話も心の底から腑に落ちました。
【防災グッズの収納】これも覚えておきたい!
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防災グッズの収納を考えるときに、知っていると役立つ知識を大森さんに教えてもらいました。
就寝中の被災に備えた防災グッズの収納
「眠っているときに被災した場合を想定しておきましょう。停電していたらまずライトが必要ですし、避難するときに破片などでケガをしないよう防災用のスリッパもあった方がよいでしょう」(大森さん)

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大森さん宅では、スリッパ・ライトは手提げにまとめて枕元にかけているとのこと。
これなら必要なときにすぐに使えそうですね。
取り出しにくい場所に収納する防災備蓄品の選び方
「防災備蓄として日用品を取り出しにくい場所に置くなら、日ごろ使っているアイテムではなく、トイレットペーパーなら5倍巻きのもの、水なら10年保存水といった長期保存できるものを選ぶのもアリです」(大森さん)
普段使いでローリングストックしている品を取り出しにくい場所に収納すると不便なので、「防災備蓄用」として別に考えるのはよいアイデアですね。
半期に一度、使用期限のチェックを
「防災用備蓄品でも賞味期限がある食品などは6月と12月など期日を決めて、使用期限や内容のチェックをおすすめします。賞味期限の迫っているものは収納から出し、キッチンの近くなど目につく場所に保管して積極的に消費しましょう」(大森さん)
おわりに
防災グッズは用意するだけでなく収納も重要です。「持ち出し用は取り出しやすい場所に」「備蓄用は各部屋に分散させて、空きスペースを活用」といった大森さんの生きたアドバイスを参考に、防災グッズの収納を見直してみませんか。この機会に収納の整理をするのもおすすめです。イザというときに私たちを守ってくれる防災グッズ、実力を発揮できるようスタンバイしてもらいましょう。