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防災用品が並べられた机に集まって楽しそうな雰囲気を作りながら防災会議を行う三人家族

【防災士と作る】マイタイムラインってどんなもの?

最近、天気予報などでも耳にするようになった「マイタイムライン」という言葉。 マイタイムラインとは、災害が発生しそうなとき、災害が発生したときに自分の身を守るための避難行動計画のことです。あらかじめ作成しておくことで、いざという時にも慌てることなく避難行動をとることができます。防災士が実際にマイタイムラインを作りながら、作成のポイントを解説します。

最終更新日:2024.11.20

目 次

「マイタイムライン」ってなに?

マイタイムライン

提供:徳山理恵

「マイタイムライン」とは自然災害から命を守るために、避難に備えた行動を一人ひとりがあらかじめ決めておく「防災行動計画」です。

マイタイムラインを作成しておくことは、大雨や台風など、気象情報をもとにある程度予測のできる災害には特に有効です。
災害が予想されるときに、「いつ」「何をする」などを事前に決めておくことで、いざという時にもあわてずに落ち着いて避難することができるからです。

気象情報や自治体から発令される情報、ハザードマップなどを活用しながら、避難を開始するタイミングなどを考えてマイタイムラインを作成しますが、それに併せて、平時から災害が起きた時に必要なものや連絡手段などの備えをしておくことも重要です。

マイタイムラインを作成することは、日ごろの防災意識を高めるとともに、災害からあなたや家族・身近な人の命を守ることにつながります。

災害時に「マイタイムライン」を確実に役立てるには  

ハザードマップ

PIXTA

災害時、特に台風や大雨など予測できる災害の時、役に立つといわれる「マイタイムライン」。ただし、確実に役立つマイタイムラインを作るにはいくつかのポイントがあります。

地域の災害リスクを知っておく

地域によって発生する災害の種類や災害が発生するまでの時間も異なります。自分が住んでいる地域や、通勤・通学などで滞在する地域がどのような場所なのかを知っておくことが、実際に役に立つマイタイムラインを作るためには不可欠です。

例えば、大雨や台風のとき、居る場所によって危険の種類や大きさが異なることを知っておきましょう。

河川氾濫(外水氾濫)

河川付近で、河川の水位が上昇して堤防の高さを越えたり、堤防が決壊したりして水があふれ出す

土砂災害

山や崖の付近で、地盤のゆるみからくる土石流、地すべり、がけ崩れなど

高潮

海岸付近で、気圧の低下による海面上昇や、風が海面を吹き上げる

都市型水害(内水氾濫)

都市部で、降水量が排水能力を超えることで、道路や地下施設、建物が浸水する

といったように地域によってさまざまな危険が考えられます。

「ハザードマップ」で地域の災害リスクを調べよう

 ミニチュアの家と洪水ハザードマップ

PIXTA

ハザードマップとは、地域の災害リスクを地図上に表示したものです。「洪水」「内水」「高潮」「津波」「土砂災害」「火山」「地震防災・危険度」という7種類があり、主に市区町村などの自治体によって作成されます。
ただし、地域によってリスクが異なるため、用意されているハザードマップの種類も地域によって異なります。

ハザードマップでは、被害が想定されている場所が視覚的に分かりやすいように色分けして示されており、市町村が指定する避難場所や避難所の位置も記載されています。

確実に役に立つマイタイムラインを作成するには、あらかじめ住んでいる地域のハザードマップを確認し、災害リスクを把握して、避難先や避難経路を考えておくことが大切です。

ハザードマップは、自治体の窓口やホームページのほか、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも入手することができます。

情報を正確にキャッチする

台風情報イメージ

PIXTA

作成したマイタイムラインを実際に使うことになった時、災害に関する情報をしっかりキャッチし、正しく理解していることも大切になってきます。
災害時に必ずチェックしたい「気象情報」と「避難情報」について、知っておくと役に立つ知識をまとめました。

気象情報「注意報・警報・特別警報」の違いについて

気象情報「注意報・警報・特別警報」の違いについて

uchicoto

天気予報で耳にする様々な気象情報は、気象の影響で発生する災害を防止・軽減するために気象庁が発表する情報です。
「注意報」「警報」「特別警報」には、それぞれ異なる基準があり、危険度や対応の緊急性によって区別されています。
警報、注意報を正しく理解することで、状況判断や次に取るべき行動が見えてきます。

避難情報の「5段階の警戒レベル」とは

避難情報の「5段階の警戒レベル」とは

uchicoto

災害時、住民が取るべき行動を明確に示すために定められた避難情報には、5段階の警戒レベルがあります。避難情報は災害時に住民が取るべき行動を明確に示すために定められた防災情報で、5段階の警戒レベルがあります。

警戒レベル3で避難に時間がかかる要配慮者(高齢者、障がい者、乳幼児等)とその支援者は避難を開始。警戒レベル4「避難指示」が発令された際は、全員が速やかに避難行動をとる必要があります。そして、警戒レベル5になると、自分の命を守る行動を取ることが最重要になります。

市町村が災害の状況を確実に把握できるわけではないので、警戒レベル5は必ず発令されるという情報ではありません。警戒レベル5の発令を待つのではなく、警戒レベル4までには避難しましょう。

防災士と一緒にマイタイムラインを作ってみよう

徳山理恵

提供:徳山理恵

自治体や国土交通省、気象庁などのサイトなどには、ダウンロードして使う書き込み式のマイタイムラインシートや、サイト上で作成するシステムも用意されていますが、家族単位でのマイタイムライン作成も大切です。
そのため、今回は防災士である筆者がマイタイムライン作成のポイントを整理しながら、実際に自分の家族のマイタイムラインを作っていく様子を紹介します。
家庭にあるものを使って、家族構成やライフスタイルに合わせたオリジナルの「我が家のマイタイムライン」を簡単に作ることができるので、ぜひ参考にしてください。

準備するもの

準備するもの

提供:徳山理恵

準備するのは、次の3つだけ。

  • 自治体から配布される「ハザードマップ」。パソコンやスマートフォンなどで確認できるハザードマップでも可
  • 白紙。A4コピー用紙など、自宅に掲示できるサイズがおすすめ
  • 筆記具。カラーペンがあると色分けができてさらに見やすい


以下にマイタイムラインのフォーマットをご準備してます。必要に応じてこちらを活用ください。

【マイタイムライン作成1】ハザードマップを確認

【マイタイムライン作成1】ハザードマップを確認

提供:徳山理恵

災害リスクの確認

最初にハザードマップで自宅周辺の災害リスクを確認します。

例えば、筆者の自宅があるエリアでは、河川の氾濫(洪水)、内水氾濫、高潮、津波が想定されていました。
自宅周辺は、高潮の場合には5~10mの浸水想定。東南海・南海地震の場合には津波の被害はありませんが、南海トラフ巨大地震が発生した場合には5~10mの浸水の想定です。

避難所の確認

次に、地域の避難所の位置と、それぞれの災害リスクを確認して、どこに避難するのがよいかを考えます。
避難所も自宅と同等の災害リスクがある場所であったり、避難所までの経路が危険であるなど、災害の種類によっては自宅の近くの避難所が避難に適さないことも考えられます。

我が家の場合、近隣の避難所を含む一帯は、自宅の災害リスクと同様だったので、浸水が想定される災害の場合は避難には適さないようです。その代わり、近くに高潮や津波の浸水から避難できる「津波避難ビル」が複数箇所定められているので、ここに避難するのがよいとわかりました。

避難経路の確認

最後に、避難経路の確認です。
避難する場所まで安全に行くことができる経路を確認します。

我が家の場合、避難する場所までの経路はいずれも浸水する想定なので、早めの行動が必要になりそうです。そして、もし浸水してしまった場合は、自宅マンションでの在宅避難がのぞましいと考えられます。

【マイタイムラインの作成2】家族構成・ライフスタイルの確認

三世代ファミリー

PIXTA

一人暮らしなのか、家族と一緒に住んでいるのか。
また、家族に高齢者や乳幼児などの要配慮者がいるかということも、マイタイムラインを作る際に考える必要があります。

筆者の家族は、夫、私、高校生の3人が同居。それと、別に一人暮らしの大学生がいます。
要配慮者はいませんが、家族がバラバラの場所にいることが多いので、連絡手段の確認、合流場所や災害時の行動などを互いに把握しておくことが重要になります。

【マイタイムラインの作成2】家族構成・ライフスタイルの確認

提供:徳山理恵

要配慮者が一緒に住んでいる場合

家族に高齢者や乳幼児などの要配慮者がいる場合には、避難に時間がかかるなどの理由から早めの避難行動が必要になります。避難所までの距離が遠い、避難経路に段差や危険な場所があるなどの心配があれば、警戒レベル3の高齢者等避難情報を待たずに、予防的避難をすることも有効です。
避難するときには要配慮者だけではなく、一緒に暮らす家族や支援者も同じタイミングで避難しましょう。避難所まで安全にたどりつくこと、避難所でのサポートなど、家族や支援者が一緒にいることで安心につながります。

高齢者だけの世帯の場合

高齢者だけの世帯の場合は、各自治体の「避難行動要支援者名簿」に登録をすることで、地域の民生委員などから支援や見守りが得られます。災害が起きた時に困らないように、地域や周りの人の助けを得る方法を考えておくことも大切です。

離れて暮らす家族がいる場合

同居している場合はもちろん、離れて暮らしていても、マイタイムラインを共有しておけば、いざというときに、いつどんな行動をすればいいかを促すことができます。離れて暮らす高齢の親や一人暮らしの子どもなどと一緒にマイタイムラインを作ることもおすすめです。

【マイタイムラインの作成3】避難行動を決める

【マイタイムラインの作成3】避難行動を決める

提供:徳山理恵

マイタイムラインを作る目的は、災害から自分や身近な人の命を守ること。一人一人が「いつ」「何をする」を考え、行動計画を決めることが重要です。
今回は家族と一緒に「誰が」も加えて、我が家のマイタイムラインを作成していきます。

マイタイムラインは、警戒レベルが上がって避難が必要になった時だけでなく、その前の段階からの行動計画です。それぞれの段階について作成しておきましょう。

1. 平時の備え

  • 家族みんなで話し合い、「避難場所(合流場所)」「避難経路」「連絡手段」を決める
  • 携帯電話が使えなくなることもあるので、家族や職場、学校などの電話番号をメモして全員が持っておく
  • 避難するときの服装や持ち出すものを、各自で準備しておく。(乳幼児や高齢者など自分で用意できない家族がいる場合、定期的に内容を見直しながら準備し、家族全員が把握できる場所にまとめておく)
  • 在宅避難に備え、備蓄品を準備しておく

2. 警戒レベル1

  • 気象情報の確認
  • 非常持ち出し袋、備蓄品の再確認。必要なものの買い出し
  • 家の周りの点検とベランダの片付け
  • マイタイムラインの再確認

3. 警戒レベル2

  • 携帯電話やモバイルバッテリーなどの充電
  • ハザードマップの再確認
  • 各人が必ず必要なものを出かけるときに持ち歩くバックに入れる

4. 警戒レベル3

  • 家族へ行動の情報共有
  • 避難所の開設状況の確認 ※乳幼児や高齢者などがいる場合は避難開始
  • 非常持ち出し袋や避難時の服をリビングに準備

5. 警戒レベル4

  • 避難所へ移動開始。すでに浸水などがおきている場合には在宅避難を選択
  • 家族へ避難状況の情報共有

共有と定期的な見直し

共有と定期的な見直し

提供:徳山理恵

マイタイムラインを作成したら、家族全員が目にする場所に掲示するなど、日ごろから内容を共有できるようにしましょう。いざというときに何をすればいいのか、どこに行けばいいのかなど全員が同じ意識を持つことで、慌てずに行動することができるとともに、家族がバラバラにならない安心につながります。

家族構成やライフスタイルによって、準備しておくものや、連絡手段なども変わってくるので、マイタイムラインは、家族で一緒に作成し、全員で情報を共有することが大切です。
一人ひとりの行動計画である「マイタイムライン」を家族で一緒に考えることで「いつ」「何をする」に、「誰が」が加わります。

そして、マイタイムラインは一度作ったらそれで終わりではありません。家族の成長や生活環境が変化すると、いざという時にとるべき行動も変わってくるので、家族の安心安全のために、定期的な見直しを行いましょう。

おわりに

災害に備えるための「マイタイムライン」について、防災士である筆者が作った実例を交えながら、その必要性や作成方法、そしてポイントをご紹介しました。
あなたと家族の命を守るために、あなたと家族の「マイタイムライン」を作ってみませんか。

  • この記事執筆者

    徳山理恵

    防災士・1級危機管理士

    徳山理恵

    3人の子を持つ母であり、防災士、一級危機管理士等の資格を持つ防災・防犯のプロ。家族が安心して暮らせる環境を整えるため、女性の視点から仕事・子育て・家事のほか組織づくりやまちづくりまで、さまざまなリスク管理を提案している。講演やワークショップなどのほか、執筆や商品監修なども行う。

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公開日:2024.11.20

最終更新日:2024.11.20

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