家の中の地震対策が必要な理由

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地震大国とも呼ばれるほど、地震が多い日本。
地球の表面はプレートと呼ばれる固い岩盤で覆われており、プレートは年間数センチ程度ですがゆっくりと動いています。このプレートが重なる境目で地震が起きやすいのですが、日本列島は4つのプレートの上に位置するプレートの密集地帯です。なんと、世界中で発生するマグニチュード6以上の地震の20%超が日本で起きているのです。
実は、震度1程度の体に感じない地震は、毎日のようにどこかで起きています。
震度7を超える大地震は日本各地で発生しており、2024年に発生した「能登半島地震」、2018年「北海道胆振東部地震」、2016年「熊本地震」、2011年「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」、2004年「新潟県中越地震」、1995年「兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)」など、いつどこで大きな揺れが起きてもおかしくない状態なのです。
出典:内閣府 防災情報「日本の地震 」
出典:内閣府 防災情報「災害を受けやすい日本の国土 」
地震が起きると家の中はこうなる!

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筆者は、2016年に起きた熊本地震で震度7を超える揺れを経験しました。
自宅の家具や収納は転倒防止などの地震対策をしていたので、幸いなことに大きな被害はありませんでした。
しかし、対策をしていなかった職場では、普段筆者が座っている場所の背後にある棚が転倒し、デスクがへこんでいました。もし仕事中だったらと想像すると、血の気が引く思いをしたことが忘れられません。ほかにも、照明器具が落下してガラス片が飛散し、キャビネットの書類ファイルはガラスを破って散乱。パソコンのモニターや電話機なども落下し、中には壊れているものもありました。
また、物が壊れただけではなく、修理業者の手配が困難であったため、震災後2カ月ほどはオフィスが使えない状況が続きました。
このように、大きな地震が起こると、物の破損被害だけではなく、落下物にぶつかる、ガラスや陶器などが落ちて割れたものでケガをするなど、人身にも危険が及ぶ恐れがあります。
また、直接的なケガがなくても、飛散物によって避難経路が妨げられたり、転倒した家具や散乱物が邪魔をしてドアが開かなくなり、閉じ込められてしまう可能性もあります。
そればかりか、地震への対策をしておかないと、地震後の生活にも大きな影響を及ぼすことがあるのです。
家具・家電の配置を見直そう

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地震が起きた時に、家の中でケガをする原因になるのは、家具や家電の転倒や落下が最も多いといわれています。
危ない! と思っても、大きな揺れの最中にはとっさに動くことができないものです。普段生活に欠かせない家具や家電を凶器にしないために、まずは自宅の現状を確認し、家具や家電の配置を見直してみましょう。自宅の中の安全を守る「防災」の第一歩です。
まずは、チェックするポイントを以下にまとめてみました。
普段よく過ごす場所に危険はないか

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背の高い棚や、壁掛けの家具や時計などは、揺れによって転倒や落下する恐れがあります。
リビングのソファやダイニングテーブル、寝室のベッド、子ども部屋の勉強机など、「普段よく過ごす場所」の周辺には、転倒しやすい家具や落下しやすいものを置かないようにしましょう。
もし、配置を換えることが難しいのであれば、揺れた時に転倒するであろう方向や、収納物が落下する場所を想像し、体に被害が及ばないように向きを変えることも有効です。
窓ガラス周辺は特に要チェック

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地震で窓ガラスが割れてしまうと、ガラス片でケガをする恐れがあるだけではなく、災害後の復旧に時間がかかることが予想されるので、その後の生活にも支障がでてしまいます。
家電や家具は、転倒した場合に窓ガラスにぶつかる可能性がある場所には置かないようにしましょう。出窓のスペースに観葉植物やインテリア雑貨を置くのも、揺れによって窓ガラスにぶつかってしまう可能性があるので、避けた方がよいでしょう。
また、室内だけでなく、ベランダや庭の植木鉢や置物などが窓ガラスの周辺にないか、確認することも大切です。
玄関までの避難経路は確保できているか

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地震が起きた時には、避難することを想定しなければなりません。
避難所までの避難経路を確認しておくことはもちろんですが、まずは自宅から安全に外に出ることが重要です。
揺れによって家具や家電が転倒し、玄関までの廊下をふさいでしまったり、飛散したものや割れたガラス片や陶器片などで、ケガをしてしまう恐れがあります。自宅内の避難経路を確保するために、廊下には物を置かないようにしましょう。
また、玄関だけではなく各部屋のドア付近にも注意が必要です。家具や家電が倒れたり、揺れて移動することで、ドアが開かなくなる(閉じ込められる)可能性があります。このような危険を回避するために、ドア付近には家具を置かないようにしましょう。
自宅内に安全エリアが確保できているか

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地震に備えて自宅内に「安全エリア」を確保することも重要です。
地震が起きたとき、すぐに屋外に避難するのではなく、揺れが収まるまでは一時的に自宅で身の安全を守る必要があります。そのために、家の中に「転倒の恐れがある家具や家電、落下する危険物がない空間=安全エリア」を確保しておきましょう。
家具や家電の転倒防止対策

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家具や家電の配置を見直したら、次に転倒を防ぐための対策をしましょう。
家具や家電の転倒防止は、普段の生活を快適に過ごしながら、いざという時の備え、身を守るための重要な「防災」です。
大型家具の対策

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L字金具など直接ねじで固定する方法
家具の転倒防止に効果が高いのは、L字金具などを使う壁や床などに直接ねじで固定する方法です。両端と中央の3カ所を固定するのがおすすめです。
ただし、注意しなければならないのが壁の強度です。壁の下地がないボードだけの場所は強度が弱く、そのような場所に家具を固定してしまうと、揺れで家具が倒れるときに壁ごと壊れる危険があります。ねじ止めする前には、壁をたたいてみるなどして、下地がある場所かどうか、壁の状態を確認しましょう。
突っ張り棒や家具下ストッパーで固定する方法

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賃貸住宅などで壁に固定できない場合や、冷蔵庫などのねじ止めができない家電や家具は、つっぱり棒や家具下ストッパーを使って固定します。
収納ラックやケースなど、積み上げるタイプの家具は、上下の家具がずれないように連結してから、壁に固定しましょう。
また、重心を意識した配置も重要です。重心が高いと揺れた時に倒れやすくなります。重い物を下に、軽い物を上に配置するよう、普段から意識しておくとよいでしょう。
テレビやパソコンなどの対策

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薄型のテレビやパソコンのモニターなどは、倒れやすい家電です。
粘着マットを敷いた上に設置する、転倒防止ベルトでデスクやテレビ台、壁などに固定するといった転倒対策をしましょう。
照明器具の対策

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頭上にあって、落下すると危険だと分かっているのに、対策を忘れがちなのが照明器具です。
特につり下げタイプの照明器具は、地震が起きると大きく揺さぶられます。落下や揺れによる破損を防ぐために、落下防止ワイヤやチェーンなどで天井に複数箇所固定をしましょう。
管タイプの蛍光灯などは揺れで外れないよう、耐熱テープで両端をしっかりと固定することで、落下を防止できます。
地震に強い収納の工夫を

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家具や家電の配置を見直して、固定が終わったら、地震に強い収納を行いましょう。
家具や家電が転倒しなかったとしても、収納物が飛散してしまうことでケガをしたり、避難経路を防いでしまう恐れがあります。そうならないためにも、収納を工夫することで、地震が起きた時の被害を少なくできます。
重心を低くして転倒を防ぐ
家具の転倒防止と同様、収納物に関しても重心を低くすることがポイントです。
重いものを下に、軽いものを上に収納することが、転倒防止に役立つと同時に、落下物でのケガを防ぐことにつながります。
たとえば、食器棚の場合、土鍋や鉄製の調理器具、陶器やガラスの食器など大きくて重いものを下に、プラスチック製の食器や弁当箱などの軽いものを上に収納します。本棚ならば、辞典や図鑑などの重い本を下段に収納すると、家具の重心が下がり倒れにくくなります。
収納物の飛び出しを防ぐ

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扉が開いて中の物が飛び出さないように、揺れが加わった時に自動的にロックする耐震ラッチを設置することがおすすめです。
耐震ラッチの取り付けができない場合には、取手がない開き戸には安全ロックを設置する、取手がある場合にはS字フックで固定するなども有効です。引き出し式収納にはストッパーを設置する、ガラスを使った扉にはガラス面に飛散防止フィルムを貼るなど、形状にあった工夫をしましょう。
物の散乱を防ぐ
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食器棚や本棚など、中に「滑り止めマット」を敷くだけでも、物の散乱を防ぐことができます。キッチンやデスクの引き出しの中に敷くのもおすすめです。
オープンタイプの棚やカウンターなどに物を置く際にも、滑り止めマットを使うと揺れによる落下や散乱を防ぐのに効果があるので活用しましょう。
物が落下した場合の被害を防ぐ
大きな揺れが起きたら、どんなに対策をしていても物が落下してしまうことがあります。
落下したときの散乱を最小限にするために、ボックス収納がおすすめです。物を分類して箱に収納しておくと、地震の揺れで落下しても内容物が散乱することを防げます。
防災用品の収納方法にも注意が必要

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備蓄品や避難持ち出し袋など、災害が起きた時に必要となるものは、いざという時に取り出せないと意味がありません。そのため、災害時にすぐに取り出せる場所に収納することが大切です。
また、災害はいつ起きるかわからないものです。必ず家族が一緒にいるときに、被災するとは限りません。
備蓄品や避難持ち出し袋などの防災用品の収納場所は、家族全員で共有しておきましょう。
分散収納のすすめ
災害に備えて普段から準備しておいたものが、地震の揺れで家がひずみ収納場所の扉が開かない、収納場所の上に物が散乱して取り出せないといったことも起こり得ます。
さまざまなケースを想定し、特に備蓄品は、玄関、リビング、キッチン、寝室のクローゼットなどに分けて分散して収納することをおすすめします。
おわりに
地震は予測が難しく、いつどこで発生するかわかりません。だからこそ、日頃の備えが重要になります。
「もしも」に備えて、まずは自宅の家具の配置を確認することから始めてみませんか。自宅を安心で安全な場所にするため、そして自分と大切な人の命を守るために、できることから早速取りかかりましょう。