台風大国、日本。平均で年間26件も台風が発生

出典:気象庁「台風の発生数(1951年〜2024年)」よりウチコト編集部にて作成
1年を通して台風が発生する日本。特に夏から秋、または春から夏の季節の変わり目に台風が接近し、暴風雨をもたらす傾向があります。気象庁の発表によると、年間発生する台風の件数は、平均26.0件にも上ります。上陸するのは平均で2.9件と多くはないものの、接近するのは平均で11.5件となっています(2025年6月時点)。
台風では豪雨による浸水被害、土砂災害、洪水に加え、交通機関の運休、停電などが起こりますが、あわせて建物への被害も多くあります。
例えば、2019年9月の台風第15号では、小笠原近海から伊豆諸島を北上し、千葉市付近に上陸して茨城県沖に抜けていくルートで、伊⾖諸島や関東地⽅南部に暴風雨をもたらしました。国土交通省の現地調査では、住宅への被害として、「窓ガラスの破損」「屋根やふき材の脱落・飛散」などの被害がみられました。
出典:国土交通省「令和元年台風第15号に伴う強風による建築物等被害 現地調査報告(速報)」
出典:内閣府防災情報「2019年(令和元年)令和元年度台風第15号」
台風時、窓ガラスが破損するとけがの原因に・・・

PIXTA
住宅で台風被害のリスクが高い場所は、窓ガラスです。強風で飛来した物が窓に当たってガラスが割れると、ガラスの破片が室内に飛び散り、けがをする危険があります。また、割れたガラスの隙間から強風や雨が入り込み、室内のインテリアにも被害が生じます。
YKK AP株式会社の竹原さんによると、 特に被害が多いのは『戸建て住宅』だと言います。
竹原さん「戸建てで見晴らしの良い2階も被害が多く報告されています。風速24m/sを超えるような台風では、秒速12mくらいのスピードで、飛来物が飛んできます。物干し竿や鉢植え、スコップなどを庭やベランダに置いておかないよう注意が必要です。窓ガラスが割れると、家の中にガラス破片や物が飛散して大変危険です」

出典:YKK AP
上の写真はYKK APさんにて、木材を12.2m/sの速度で窓ガラスに衝突させた際の状況です。木材が窓ガラスに当たった瞬間、ガラスが室内の広い範囲に飛び散っています。窓の近くに人がいたら非常に危険な上、ガラス破片が広がった床を歩くのもけがの原因になります。
竹原さんによると、マンションよりも戸建て住宅での被害報告が多いため、とりわけ戸建て住宅に注意が必要とのこと。マンションでは、強風で飛びそうな物を室内に収納し、周辺への二次被害を防ぐことが重要です。
それでは、窓ガラスへの被害を防ぐためにどのような対策が有用なのでしょうか。
窓に養生テープ、実は意味がなかった!?

PIXTA
台風のニュースが流れると、店頭で姿を消すことも多い養生テープ。窓ガラスに養生テープを貼ると、ガラスが割れても室内に飛び散りにくくなり、けがのリスクを減らせるのではないかと考えられ、話題になっています。

PIXTA
しかし、竹原さんによると、この方法はあまり効果が期待できないそうです。

出典:YKK AP
竹原さん「養生テープを窓ガラスに貼るのは手軽ですが、あまり効果は期待できません。我々の実験でもガラスの飛散防止効果はほとんどありませんでした。養生テープを使うのであれば、段ボールを重ね貼りするなど工夫する必要があります。応急的な対策としては、カーテンを閉める方法もあります。その際は風でめくれ上がらないような工夫も必要です。台風対策で一番確実なのは、耐風シャッターや雨戸など窓ガラスに飛来物がぶつかることを避ける方法でしょう」
【台風時の窓ガラスへの対策1】養生テープと段ボールを組み合わせる

出典:YKK AP
養生テープ単体では、ガラスの飛散防止効果があまり期待できません。養生テープを使い、段ボールを何枚も重ね貼りすることで、ガラスの飛散量が低減することがわかりました。
上の写真は、木材が窓ガラスに当たったところです。窓ガラスの一部に割れがありますが、室内にはほとんどガラスが飛び散っていません。

出典:YKK AP
外から見るとこのように木材は窓ガラスを貫通していますが、段ボールでとどまっています。これだけ大掛かりな対策を個人で行うのはかなり難しいかもしれませんが、小さな窓なら自分でも対応できるかもしれませんね。
【台風時の窓ガラスへの対策2】カーテンを閉め、巻き上がらないように止める

出典:YKK AP
カーテンを閉めるだけでは効果を確認できなかったため、カーテンの巻き上げ防止策を施したのが上の写真です。レースカーテンと遮光カーテンのカーテン2枚を閉めて、ロープとクリップで留めた上で、2リットルのペットボトル4本を結びつけておもりにしています。
窓ガラス自体は木材の衝突で破壊されているものの、木材はカーテンでとどまり、ガラスの飛散がかなり減っています。

出典:YKK AP
外から見た様子が上の写真です。ガラスは大きく割れているものの、木材の衝撃が緩和されていることがわかります。
【台風時の窓ガラスへの対策3】シャッターや雨戸を導入する

出典:YKK AP
上の対策2つは、窓ガラスに当たった後の衝撃を和らげ、室内へのガラス飛散を防ぐための対策でした。最も有効なのは、窓ガラスに物が当たるのを手前で遮断する対策です。
シャッターや雨戸などを窓の外側に取り付け、台風の時には閉めておけば、窓ガラスに当たるのを防ぐことができます。
竹原さん「暴風時、雨戸やシャッターは風の力でレールから外れてしまうことがありますが、耐風圧性能が高いシャッターであれば、そういったリスクを軽減できます」
耐風圧性能とは、風に引っ張られる力に耐える性能を指します。2020年に開発されたYKK APの耐風シャッターは耐風圧性能1,200Paとのこと。風速62m/s時の風に耐える性能だそうです。
【台風時の窓ガラスへの対策4】割れにくい窓ガラスに交換する

出典:YKK AP
ガラスとガラスの間にフィルムを挟んで貫通を防ぐ安全合わせ複層ガラスを導入する方法もあります。割れても飛散しにくいので、室内の安全性を保ちます。

PIXTA
より手軽な方法として、飛散防止フィルムを窓に貼ることもできます。ただし、直射日光や冷暖房の影響で部分的にガラス表面の温度差が生じて割れてしまう、「熱割れ」という現象が起こることも。また、安全合わせ複層ガラスほどの強度は期待できません。
おわりに
近年、台風による被害が深刻化することが増えています。家の中で安心な暮らしを保つためにも、早めに対策しておきたいですね。少しコストはかかりますが、耐風シャッターや安全合わせ複層ガラスなど効果の高い対策なら、防犯効果も期待できます。