【保存期間の目安:2〜3カ月】まずは基本! 失敗しないじゃがいもの「常温保存」
新常識として冷凍保存に注目が集まっているじゃがいもですが、「手間いらずの常温保存でも、2〜3カ月長期保存することができます」と小島さん。まずは基本の保存方法を伝授してもらいました。
【常温保存のポイント】
- 緑化を防ぐため、直射日光に当たらない場所に保存する
- 通気性が確保できる場所を選ぶ
- 表面が傷つくのを防ぐため、不織布を敷いたり、不織布の袋に入れる
- 保存する室内の温度が高くなると芽が出やすくなるので、20℃を超えたら冷蔵保存に切り替える
新じゃがも常温保存できる?
スーパーなどで売られている新じゃがは、みずみずしいうちに食べ切れる量を購入することが多いでしょう。しかし、芋掘り体験や家庭菜園で採れたてのじゃがいもがたくさん手に入り、保存方法に迷った経験はありませんか?
「スーパーで新じゃがとして売られているじゃがいもは水分量が多く、柔らかいので傷がつきやすいのが特徴。また採れたてのじゃがいもも水分量が多いので傷つきやすいです。どちらも、エチレンガスによる処理をしていないので、通常のじゃがいもと比べると芽が出やすい状態といえます。そこで、エチレンガスを多く発生させるりんごを活用して保存するのがおすすめです」(小島さん)
【手順】
- 段ボールなどに新聞紙を敷く(クッション代わり)
- じゃがいもとりんごを一緒に入れる
- 新聞紙でふたをし、光の当たらないところで保存 ダンボールのふたを閉めると蒸れるので開けておく
「段ボールを使用するのは、芋掘りなどでいつもの保存場所に入らないケースを想定しています。入るのであれば、いつもじゃがいもを入れている場所に保存してOK。ただし、通常のじゃがいもより傷が付きやすいので、新聞紙などクッション性の高いもので保護することをお勧めします。室内照明の下でもゆっくりと緑化していくので、必ず光を遮るようにしてください」(小島さん)
ちなみにりんごはしなびたら取り替えるのだそう。ただ、りんごを何個もじゃがいも保存のためだけに使うのはもったいないですよね。新じゃがはやはり新鮮なうちに食べてこそ、そのおいしさを味わえるので、早めに食べ切るのがおすすめです。りんご1個に対し、ダンボールの大きさは80サイズくらいまでが目安だそう。
緑化してしまったじゃがいもは食べられる?
保存中に日光に当たるなどして、緑色に変色してしまったじゃがいもを見たことはありませんか? この緑色の部分にはソラニンやチャコニンという食中毒の原因となる成分が多く含まれるため、注意が必要だと小島さんは言います。
「ソラニンやチャコニンは加熱しても分解されません。家庭菜園で収穫したものやスーパーで買ったじゃがいもが緑がかっていたり、保存中に緑ぽくなってしまった場合は、その部分を大きめに切り落とせば食べることができます。皮を剥く程度だと食中毒の危険性があるので避けてください。また家庭菜園などで見かける、小さくて未成熟のじゃがいもにもソラニンやチャコニンが多く含まれるので、食べるのは避けた方が良いでしょう」(小島さん)
【保存期間の目安:1カ月】梅雨や夏季は「冷蔵保存」に切り替えて
「室温が上がる夏場にじゃがいもを常温保存すると劣化が早まるので、冷蔵保存に切り替えることをおすすめします。ただし低温障害が起きるケースがあるため、保存期間は短めにしましょう」(小島さん)
【手順】
- じゃがいもを紙に包む(新聞紙を使うなら数個まとめて、キッチンペーパーなら1個ずつ)
- ビニール袋、ポリ袋、保存袋などに入れ、袋の口を閉じる
- 野菜室の中でゴロゴロ転がらないようにして保存する
調理中のじゃがいもを保存するなら
「うっかり切り過ぎてしまったなど、調理途中で中途半端に残ったじゃがいもは、比較的すぐに使うなら冷蔵保存、しばらく使わずに保存したい場合は冷凍保存にするのがおすすめです。保存したい期間に合わせてベストな方法を選んでみてください」(小島さん)
【当日中に使う場合】
- ラップをぴっちりと巻き、冷蔵庫で保存
【翌日くらいまでに使う場合】
- じゃがいもがかぶる程度の水に浸して、冷蔵庫で保存
「皮付きの場合は皮をむいた切り口が水に浸かるように、皮なしなら全体が浸かるように注意してください」(小島さん)
【長期保存をしたい場合】
- 下記で紹介する「冷凍保存」がおすすめ
【保存期間の目安:3〜4カ月】じゃがいも保存の新常識! 「冷凍保存」を成功させるコツ
「じゃがいもはでんぷんを多く含むため、今まで食感が悪くなるなどの理由から冷凍保存は向かないとされてきましたが、最近は生のまま冷凍保存する方法が注目を集めています。むしろ保存中に芽が出ない、短時間で火が通る、常温保存よりも長期間保存ができるというメリットがあります。冷凍保存すればフードロスなどの心配が少なくなるかもしれません」(小島さん)
でんぷん質を多く含む食材でも、解凍や調理の工夫で冷凍が可能だということが広く知られるようになり、じゃがいもの冷凍保存にも注目が集まったのではないか、と小島さん。
また、まとめ買いをする家庭が増えたり、食品ロスへの問題意識も高まってセカンド冷凍庫を持つ人が増えてきていることなど、社会的なニーズにマッチしたことから話題になったのかもしれません。
保存方法は丸ごと・皮付き・皮なしの状態に合わせて
「じゃがいもを生のまま冷凍すると組織が壊れるため、短時間で、水っぽくならずにホクホクとした食感に仕上がるのが特徴です。加熱後にマッシュする料理やそのままじゃがバターなどに使うなら、丸ごと冷凍するのが手間要らずでおすすめですね」(小島さん)
丸ごとじゃがいもを冷凍する方法
【手順】
- 洗って水を拭き取り、芽を取り除く
- 1個ずつラップで包む
- 保存袋に入れて冷凍する
「丸ごと冷凍したじゃがいもは、凍ったまま電子レンジで加熱するほか、そのままゆでることも可能です。電子レンジで加熱するなら、まず600wで2分加熱したのち、上下をひっくり返して再度2分の加熱を目安にしてみてください」(小島さん)
皮付きでカットしたじゃがいもを冷凍するなら
【手順】
- 洗ってくし切り(フライドポテトの形)にして水にさらす
- 水を拭き取り保存袋に入れる
- なるべく平らなるようにして袋の中の空気を抜いて冷凍する
「カットしたのち水にさらすのは、表面のデンプンを洗い流してくっつきを防止するため。2〜3回水を換えて濁らなくなるまですすいでください。できる限り空気を抜いて冷凍するのがポイントです。この状態で冷凍しておくと皮付きのフライドポテトにするのに便利ですね。」(小島さん)
皮をむいたじゃがいもの冷凍方法は
【手順】
- 皮をむいてひとくち大に切り、水にさらす
- 水をきり(ふかない)、保存袋に入れる
- なるべく平らになるようにして、袋の中の空気を抜いて冷凍する
「皮をむいてカットしたじゃがいもを冷凍するときは、冷凍保存中の乾燥を防ぐため、グレーズと呼ばれる氷の膜をまとわせるのがポイント。これはよく冷凍のむきエビなどにも用いられている手法です。家庭で冷凍する場合は、くっつき防止のために水でさらした後、水分を拭き取らずにじゃがいもの表面に水分が残った状態で冷凍してください。調理をする際は、凍ったまま煮込んだりゆでたりできますよ」(小島さん)
じゃがいもの栄養素や健康に役立つ効果は?
「じゃがいもは意外にもビタミンCが豊富です。一般的にビタミンCは熱に弱いとされていますが、じゃがいもの場合、でんぷんに守られるため加熱調理をしても壊れにくいという特徴があります。またカリウムも豊富で、フランスでは健康効果が高い果実として知られるりんごになぞらえて、大地のりんご(pomme de terre:ポム ドゥ テール)と呼ばれるほどなんですよ」(小島さん)
以下の記事でもじゃがいもの栄養素について詳しくご紹介してます。参考にしてみてくださいね。
じゃがいもは実はカロリー低めで栄養豊富! 栄養素を逃さない食べ方とは?
おいしいじゃがいもの見分け方
最後に、スーパーなどで購入する際に、おいしいじゃがいもを見分ける方法を小島さんに伺いました。下記の3点をチェックして選ぶと良いそうです。
- 芽が出ていないもの
- 皮にシワができていないもの
- 緑色になっていないもの
「皮にシワができているものは水分が抜けているサイン。芽がでている、緑色になっているものは中毒の危険性があるので十分に注意してください」(小島さん)
切ったら中が茶色! そんなじゃがいもは食べられる?
「じゃがいもを切ってみたら中が黒ずんでいたり、茶色く変色していることがあります。さらに中心部分が空洞になっているケースも。黒色や褐色に変色するのは、栽培中の水分不足や保存中の酸素不足が原因です。また空洞は、じゃがいもが急激に大きく生育することで発生します。これらは変色した部分や空洞の周辺を取り除けば食べることができます」(小島さん)
じゃがいもを使ったおいしいレシピ
今すぐ試したい、じゃがいもを使ったおすすめレシピはこちら!
おわりに
和・洋・中と家庭の食卓で幅広く活躍するじゃがいも。常温でも長期保存ができますが、油断すると驚くほど芽が伸びていたり、腐っていることに気付かなかったりと失敗も少なくありません。まとめて手に入ったときは、半分冷凍保存に回すなど、保存方法の使い分けをするのも良さそうですね。またホクホクとした食感が好きな方や、火が通るまでに時間がかかることをネックに感じていた方は、あえて冷凍してから調理するのも良いかもしれませんね!