そもそも「むくみ」とは?
むくみ(浮腫)とは、体の中の血管外に水分がたまった状態のことをいいます。体に水がたまると冷えが起きやすくなり、冷えるとむくみが起きやすくなります。顔が腫れぼったくなる、時間によって脚の太さが変わるなどは、むくみが起きているサインです。
むくみが起こる原因は? 生活習慣にも注意が必要!
赤澤先生によると、「むくみの原因は人生のステージや性差によっても異なりますが、運動不足による血行不良、睡眠不足、水分摂取の不足、アルコールや塩分の取り過ぎ、野菜や果物の摂取不足、血糖値の上昇などが考えられます。また月経のある女性では、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンが多く分泌される黄体期におこりやすいです」とのこと。また、病気が原因のこともあるので、注意が必要です。
女性ホルモンの乱れ
女性は月経の周期に合わせて、生理前にあたる黄体期には便秘になりやすかったり、体の中に水分をためこむことがあります。さらに、赤澤先生によると、更年期になると女性ホルモンが乱れやすくなり、よりむくみが起こりやすくなるということもあるそうです。
水分・塩分の取りすぎ
水分をとらなければむくみは軽減すると思われがちですが、体は十分な水分量を保てないと水分をため込もうとします。そのため水分をとらないと、かえってむくみが起こりやすくなることに。腎臓の悪くない人は、積極的に水分摂取を心がけると治りやすいそうです。
また、血糖値が上昇しているときや、塩分を取りすぎた場合などは、体内の糖分や塩分の濃度を下げようとして体の中に水をため込んでしまうので、むくみが起こる原因となります。
過度のアルコール摂取
過度にアルコールを摂取すると血管にダメージが起こり、血管外に水分が漏れて、むくみやすくなってしまいます。
生活習慣
睡眠不足や運動不足など、生活習慣でもむくみが起こりやすくなることがあります。
睡眠不足
睡眠時間が足りていないと自律神経が乱れやすくなります。それにより血流が滞り、リンパの流れも悪くなりむくみの原因になってしまうことも。1日6〜8時間の睡眠をとるのが理想的です。
運動不足
長時間同じ姿勢でいるなど、体を動かさないと血液の流れが滞って血行不良となり、むくみにつながります。運動不足には注意が必要です。
「1日に心臓は約10万回拍動して、1回の拍動について60〜130mlの血液が動きます。運動をすると心拍が上昇するため、血液の循環が良くなり、むくみが起こりにくくなるのです」(赤澤先生)
病気が原因で起こるむくみには要注意
むくみが深刻な病気のサインになっていることもあります。
「考えられるのは心不全や弁膜症などの心疾患、腎疾患、肝臓疾患、甲状腺機能の低下、がんなどが原因となるリンパ浮腫です。気になる場合は、ただのむくみなのか病気の可能性があるのか、セルフチェックしてみてください」(赤澤先生)
セルフチェックの方法のひとつとして、舌の縁や裏側の色を確認する方法があります。舌の縁や裏側に白いこけのようなものがある場合は、注意が必要だと赤澤先生は言います。
「もうひとつはすねや足の甲にむくみがある場合、その場所を指で押して跡が残るか確認する方法です。押した跡が深く残る場合は、心臓や腎臓に異常があることも。一週間以上むくみが続く場合も肝臓の病気の可能性があるため、早めの受診を心がけましょう。血液検査などでわかりますよ」(赤澤先生)
医師が教えるむくみ予防&解消法
むくみ対策としては、普段からむくまない体作りをすることが大切です。日常生活でできる予防法と、むくんでしまったときの解消法を赤澤先生に教えてもらいました。
その1 温熱刺激または寒冷刺激で循環(めぐり)をつくる
赤澤先生は、体の冷えは血行を悪くし、むくみの原因になるので、普段から体を温める生活を心がけることが大切だといいます。
「入浴をシャワーだけで済ませる人も多いですが、日頃から湯船に浸かるようにしましょう。体が温まって気持ちいいだけでなく、お湯の水圧や浮力による刺激で血液の流れが良くなります。毛細血管が広がると血流が良くなり冷えが改善されるだけでなく老廃物の回収に役立つため、疲労回復にも効果的ですよ」(赤澤先生)
入浴の効果については、以下の記事も参考にしてみると良いでしょう。
赤澤先生によると、入浴はもちろん、サウナも脱水に注意しながら適度な使い方をすれば体を温めるのにおすすめなのだそう。温熱刺激または、寒冷刺激で血液を循環させるのがいいそうです。
「他にも、ぬれタオルを電子レンジや60℃くらいのお湯で温めてから適温に冷やして、顔や首、背中、前胸部、おなかなどに当てて体を温めるのもグッド。入浴できないタイミングでも、簡単に血流をよくしてむくみを改善することができます」(赤澤先生)
その2 塩分や糖分のとりすぎに注意し、カリウムを多めに摂取する
塩分や糖分を取りすぎて、血管内の塩分や糖分の濃度が高くなると、口渇(のどのかわき)が起こり、たくさんの水分を飲んでしまいます。これによって体の中に水をため込んでむくみやすくなると赤澤先生は言います。そのため、普段から塩分や糖分の取りすぎに注意することが大切です。
「うどんやラーメン、おでん、スナック菓子などは塩分が多いので注意が必要。塩分を取りすぎないのはもちろんですが、ナトリウムを排出する働きのあるカリウムを含んだオレンジ、バナナやリーフレタス、海藻類などを取るのもおすすめです。同時に末梢血管の循環の働きを助けるビタミンEを取ることも大切です。アーモンドやアボカド、くるみやカシューナッツには両方が含まれていますよ。
また、カフェインの取りすぎもむくみやすくなる原因です。コーヒーやエナジードリンクなど、カフェインに依存しないといけない状態の人は疲れていて、睡眠不足や倦怠感の強い人が多いです。つい1〜2杯がクセになっている人は、飲み過ぎに注意が必要です」(赤澤先生)
朝食にコーヒーを飲む方は、一緒に水をたくさん飲むか、塩分を排出するフレッシュオレンジジュースなども飲んでおくといいそうです。
その3 意識して体を動かす・運動する
「むくんでしまった場合、体全体の血流をよくすることが、むくみの改善につながります。歩ける状況ならウォーキングや階段の上り下りなど、しっかりと運動することがおすすめです。運動によって自律神経が安定し、循環の改善が期待できます。
歩くことでふくらはぎで滞っている血流が押し上げられ、むくみ解消につながります。デスクワーク中などで歩くのが難しいときは、1時間ごとに立ち上がり、かかとを上げ下ろししてみましょう。ゆっくり10回行うだけで、むくみが改善されていきます」(赤澤先生)
また、足の指を開いたり閉じたりする動きを繰り返し行ったり、足首を回したりするだけでも効果があるとのこと。
「上肢の拳上で手のひらをキラキラ星のように動かす体操で、血液の流れをつくってください。これは『キラキラ星体操』として、講演会で私がいつもお伝えしている方法です」(赤澤先生)
時間がなくても簡単に行える方法なので、試してみるとよさそうですね。
その4 着圧靴下を身につける
赤澤先生によると、血行を促すように設計されている着圧靴下は、むくみ防止に効果を発揮するとのこと。ただ、サイズの選び方によっては逆効果になってしまうこともあるので注意が必要なのだそう。
「自分の脚にぴったり合ったものや、少しサイズに余裕のあるものであればいいですが、小さすぎると心臓に戻る流れが妨げられて、むくみやすくなります。購入するときにサイズをきちんと確認するようにしましょう」(赤澤先生)
その5 リンパマッサージをする
赤澤先生「全身運動はもちろんですが、顔のむくみが気になるときはリンパの流れを改善させるために、マッサージをするのがおすすめ。顔のマッサージでは下顎のブルドッグラインに注意しながら、プレート状のマッサージ器具『カッサ』などを使うとより効果的です」
今回、むくみで困る方が多い「顔」と「脚」のマッサージ法を、赤澤先生に教えていただきました。
顔のリンパマッサージ
1.指の腹の部分で、鎖骨のあたりを強めに押します。
2.指の腹で耳の周辺を押しながら、3回ほど回します。逆方向にも回し、温かさを感じるまで繰り返します。
3.髪の生え際を指の腹で押します。
4.第2関節で曲げた人さし指で、目の周囲や顔のツボを刺激しながら押します。ただし眼球圧迫はしないよう注意! 不整脈の原因となります。
5.親指で首の上から下をやさしく押していきます。
6.親指をアゴの下から耳の下にかけて、動かします。耳の下をしっかり押したら、アゴの下に親指を戻していきます。
脚のマッサージ
脚のむくみが気になるときは、入浴中にマッサージをするのがおすすめです。
1.湯船につかって体育座りをしながら、足首から膝にかけて、両手でねじるようにマッサージを行っていきます。
2.膝裏をしっかり押して、滞っていた血流を押し流します。
3.太ももから足の付け根まで、膝下と同じようにねじるようにマッサージを行います。
1回目は全体的にやさしく触ってリンパを流し、2回目は1回目より力を入れて血流を流し、3回目はさらに強く心臓に向けてマッサージし、4回目は、1回目と同じようにやさしくさするようにして終了です。片足15回ずつ行うと効果的です。
赤澤先生によると、リンパ管の滞りは膝裏やそけい部に起きやすいため、しっかりマッサージして疲れを取り除き、リフレッシュしたいですね。
おわりに
誰でも起こりがちなむくみですが、普段の生活で少し意識を変えるだけで、簡単に予防することができます。またもし起こってしまったときも、解消法を知っておくと安心です。すぐに始められることもあるので、悩んでいる方は試してみてくださいね。