「温活」ってなに?
医師の石原新菜先生は「体を温めて健康を維持する活動。これが『温活』です」と言います。
近年は、昔に比べて、平熱が低い「低体温」の人が増えているのだそう。
日本人の平熱は、36.55~37.23度というデータ※がありますが、これは1957年の研究報告。「最近は35.8~36.2度ぐらいの人が多い」というのが石原先生の実感です。そうすると、この70年間でおよそ1度も下がったことになります。
「温活では、低体温から来る不調に対して、体を温めて平熱を上げることで健康になろう、と考えます。服装や食事に気を付けて体を外側から温めることと、代謝や血流アップにつながるよう体の内側から温めることの両方を同時に行うことが温活になります」(石原先生)
※参考: 田坂定孝ら「健常日本人腋窩温の統計値について」日新医学第 44巻第12号
医師でもある専門家が温活をすすめるのはなぜ?
漢方医でもある石原先生は、体の冷えがさまざまな不調を引き起こすと考えています。
「漢方では『冷えは万病のもと』と言います。それくらい、体が冷えるといろいろな不調が起こるということ。体が冷えると、体温を逃したくないので血管が縮み、血流が悪くなります。体に必要な酸素や栄養は血液によって運ばれるので、血流が悪いと、体内の臓器やお肌のすみずみまで栄養が届きにくくなります。その結果、体に不調が出てくるのです。
血流が悪くなって起こる不調には、手足の冷えをはじめ、頭痛や腹痛、腰痛、生理痛などの痛み、下痢や便秘など腸の不調、肩こり、むくみなどさまざまあります。お肌の乾燥やシミ、くすみなどもそう。美容も健康も、血流に影響されています」(石原先生)
また、人の体は、体温が1度上がると代謝が約13%上がるといわれています※。
「つまり、同じものを食べても、体温が低い方がエネルギーに変えにくく、太りやすかったり、むくみやすかったりします。また免疫力は、体温が1度違うと30%変わるといわれています。低体温の方が、風邪を引きやすく治りにくい、アレルギーになりやすい、ということです」(石原先生)
※参考:中山昭雄・入來正躬編「新生理化学体系」第22巻(エネルギー代謝・体温調節の生理学)
体の「冷え」の原因とは?
体の冷えを感じやすいかどうかは、生活スタイルが関係していると石原先生は考えます。
「昔に比べると何でも便利になり、体を動かす機会が少なくなりました。運動不足は『冷え』の大きな原因です。また、入浴も湯船につからずにシャワーだけで済ませてしまうと体が冷えやすくなります。
食事についていえば、パンやスムージー、バナナやパイナップルなど、漢方では体を冷やすといわれる食材を取るようになってきました。こういったことが、低体温の人が増えていることに関わっているのだと思います」(石原先生)
運動不足が体の冷えにつながるのは、体を動かして熱をつくり出すことだけが関係しているわけではありません。
「体の熱の40%は筋肉がつくっています。もともと女性は男性に比べて筋肉が少ないので、運動不足で筋肉が落ちれば熱をつくり出す力がますます弱くなります」(石原先生)
冷え対策の温活 カンタンにできる方法はこれ!
冷えを改善するため、「温活」としてどんなことに取り組めばよいでしょうか。
「私がいつも大事にしている温活は『食事』『腹巻き』『お風呂』そして『運動』の4つ。これらを意識するだけで、体調の変化が実感できるはずです! 」(石原先生)
温活を始める前に、まずは自分の体温を測ってみましょう。
「朝起きてすぐではなく、午前10時ごろ、起きて3~4時間経ってから、わきの下の体温を測ってみてください。これで簡易的に平熱が測れます。できれば36.5度、低くても36度あってほしい。もし35度台なら、しっかり温活して平熱を上げましょう」(石原先生)
以下は、石原先生のお話をもとに作成した「冷えチェックリスト」です。あてはまる項目が多いほど体は冷えています。また、色が濃くなるほど冷えが進行している症状を表します。
チェックすると、自分では自覚がなくても冷えている場合があります。どうすれば対策できるでしょうか。石原先生おすすめの4つの温活(食事・腹巻き・お風呂・運動)についてご紹介します。
カンタン温活【食事編】薬味のちょい足しで血流アップ!
日常の食事に温活を取り入れるなら、体を温める食材を取るのが基本。漢方では、色の濃いもの、原産地が北方のものなどがこれに当たると考えますが、例外もあります。そこで石原先生は「難しく考えず、毎日の食事に『薬味のちょい足し』を心掛けて」とアドバイスします。
薬味になる香味野菜や、スパイスは取り入れやすい温活食材。
「例えばうどんなら、ネギとショウガをたくさんのせて、七味唐辛子をかけて食べる。パスタなら、ニンニクと唐辛子が入ったペペロンチーノにするとか。こしょう、シナモン、ニラなども体を温めてくれます」(石原先生)
朝、白湯を飲む場合にも「ちょい足し」がおすすめとのこと。
「水の飲み過ぎは体を冷やします。冷たい水よりましですが、体の中で冷めれば白湯も水になってしまうので飲み過ぎには注意が必要です。温活するならショウガやシナモン、ハチミツを加えて。みそも体を温めますので、朝のみそ汁はおすすめです」(石原先生)
根菜や発酵食品は体を温める食材なので、食べると温活になります。
以下の記事で温活レシピを紹介していますので、こちらも参考にしてください。
腸活&温活レシピで身体の中からキレイになろう!【料理教室講師のコトコト小話 第24回】
カンタン温活【生活習慣編】「腹巻き」でおなかを温めよう!
石原先生がおすすめする2つ目の温活は「腹巻き」。
「健康とは『臓器がきちんと働いてくれること』なんですね。ほとんどの臓器が集まっているのがおなかなので、おなかを温めることは大事です。特に腸は『最大の免疫器官』といわれていて、体の約7割の免疫細胞が腸にあります。腸を冷やさないよう、温めて血流を良くすることは免疫力を上げることにつながります」(石原先生)
そんな石原先生は、1年間365日、入浴時以外は腹巻きを欠かさないのだそう。
「昼間は薄手、夜は少し厚手の腹巻きをつけます。もちろん夏も腹巻きは必須。ノースリーブのワンピースを着ても、その下には必ず腹巻きを。それだけで体調が全然違います」(石原先生)
生地の厚みや素材の違いのほか、パンツと一体になったものなど、腹巻きのバリエーションも広がっているので、季節や好みに合わせて選べば温活とおしゃれが両立できそうです。
また、グッズや設備を有効活用する方法もあります。
「温めるといえば、湯たんぽも良い温活です。例えば、寝る時に体が冷えたままだと寝つきが悪くなりますが、湯たんぽのほど良いぬくもりで心地よく眠りにつけます」(石原先生)
以下の記事で、湯たんぽの使い方を紹介していますので、こちらも参考にしてください。
節電にも! 芯から温まる湯たんぽの正しい使い方
また、床暖房も温活になるのだとか。
「寒いと、無意識のうちに体の動きが鈍くなり、高齢の方では筋力低下につながることも。足元が暖かいことは健康につながります」(石原先生)
床暖房とエアコン暖房の「ふく射熱」「熱伝導」「対流」を組み合わせ、その相乗効果により、部屋の空気だけでなく、足元からも部屋が暖まります。※
※お部屋の暖まり方は、「住宅の断熱性能」「温水マットの敷設率」「エアコン性能」「お客さまの使用状況」などにより異なります。
床暖房は床面全体をほぼ均一に暖めるので、お部屋をムラなく暖めます。
床暖房なら床そのものが暖房なので、こたつやストーブのような暖房機器を置く必要がなく、お部屋を広く使えるのも特長です。
東京ガスでは、床暖房シーズンのガス料金がお得になる料金プラン「暖らんぷらん」もご用意していますよ。 この機会にぜひご検討ください。
カンタン温活【入浴編】湯船で芯から温まろう!
3つ目の温活はお風呂です。「何十分も長時間入る必要はありません。40~41度のお湯に10~15分つかるのが目安。目の下、頬の上の辺りに汗がぷつぷつ浮いてきたら十分温まった証拠なので、できればそれまでつかってください」(石原先生)
時間に追われた生活をしていると、入浴もシャワーだけで済ませがちですが、体を温める効果が高いのはやはりシャワーよりお風呂。
「これまでシャワーで済ませてきたなら、湯船に3分つかるだけでも全然違います。お風呂では必ず湯船につかっていただきたいですね」(石原先生)
サウナも、お風呂と同様、体を温めて血流を良くする温活。石原先生もサウナで定期的に汗を流しているそうです。
ミストサウナは、高温で低湿度のドライサウナと異なり、低温・高湿度で息苦しくならず、全身がじんわりと潤いに包まれます。
上のグラフは、入浴後の体の温かさを比較したものです。
ミストサウナ浴はシャワー浴よりも体の中まで入浴後の温まりが続きます。
浴室全体を温めるので、洗い場にいても寒くありません。洗い場で体や髪を洗いながら、同時にミストサウナで体の中まで温められるので、湯船にゆっくり浸かる時間がない時や、忙しい方にもおすすめです。
○各効果は個人により異なります。
○浴室の大きさにより、浴室のミスティの立ち上がり時間や浴室内の乾燥時間等が異なります。
○ミスティの注意事項等は取扱説明書をご参照ください。○画像はイメージです。実際の商品とは異なります。
カンタン温活【運動編】効果絶大! まずはスクワット30回から
「実は、温活に最も効果的なのは運動です」と石原先生は強調します。
「お風呂や腹巻き、食べ物など他の3つの温活は体の外から温める取り組みなので、続ける間は効果が持続しますが、やめると効果がなくなってしまいます。一方、運動によって筋肉量を増やせば、自分の体で熱をつくれるようになるのです」(石原先生)
とはいえ、4つの温活の中で取り組むハードルが一番高いのも運動といえそうです。石原先生は「運動することに慣れていない人は、始める前に諦めてしまいそうですよね。でも、無理にスポーツジムに行く必要はありません。できる範囲で頑張ってみて!」とエールを送ります。
運動初心者のための温活は、最初はスクワットを1日30回から。「それだけなら1分くらいでできますよ。 朝・昼・晩に10回ずつでも大丈夫」(石原先生)
あるいは、外出のついでに家の周りを1周ウォーキングすることから始めてもOK。他にも、食事の支度をしながらつま先立ちをしたり、片足立ちしたりするのもふくらはぎの筋力アップにつながります。何かのついでやすきま時間など、自分に合った方法で運動を習慣化しましょう。
カンタン温活【特別編】ウチコト読者に送る石原先生オリジナルの温活メニュー!
温活をしようと思っても、仕事や子育てに追われる中ではなかなか・・・という人も。石原先生が、そんな人でも取り組みやすい温活メニューを提案してくれました。
「短時間で効率よく温活しましょう。2週間続けると効果が出てくると思います。毎日忙しいと思いますが、ちょっとだけ頑張ってみてください! 」(石原先生)
石原先生の温活メニューは、入浴する前後の時間を使って行います。
- 入浴前にスクワットを30回(約1分)
- お風呂で湯船につかる(頬の上に汗が浮いてくるまで)
- お風呂を上がったら腹巻きを着用
- 体を冷やさない格好でストレッチ、腹式呼吸など
「入浴前の運動で体を温めておけば、お風呂に長くつからなくても体が温まります。入浴と運動をセットにすると時短になり、効率よく温活できます。大事なのは、不調なく元気に過ごすこと。冷えに悩む女性は多いと思います。温活を続けることが体質改善につながるので、日々の生活に取り入れてほしいですね」(石原先生)
おわりに
医師で温活の専門家でもある石原先生から、冷えの原因となる生活習慣や、冷えを改善するために必要なことを伺いました。短時間で取り組める温活なら続けやすそうです。冷えの悩みが少しでも軽くなるように、この記事を参考に温活に取り組んでみてください。