そもそも「おいしい氷」とは?

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今回、おいしい氷の作り方を教えてくれたのは、冷凍食品メーカーとしておなじみの株式会社ニチレイフーズで、冷凍食品の研究開発を行っている「氷博士」こと石井寛崇(ひろたか)さんです。

提供:株式会社ニチレイフーズ
そもそも「おいしい氷」とは、どのようなものなのでしょうか。
「おいしい氷とは、飲み物や食材本来の味を邪魔しない、『味のない氷』と考えるのが良いでしょう。氷のもととなる水にミネラルやカルキ(塩素)などが含まれていると、氷を入れた飲み物や料理の味に影響が出てしまいます。つまり、雑味のない純度の高い氷こそが、おいしい氷だと言えるでしょう」(石井さん)
純度の高い氷は、見た目にも透明度が高くなると石井さんは話します。
市販のかち割り氷などと比べると、家庭の冷蔵庫で作った氷は中心に白い部分ができることがあり、透明度が下がります。石井さんによれば、あの白い部分は水に含まれる空気やミネラルなどの不純物が閉じ込められてできたものなのだそう。
「家庭用冷蔵庫の製氷器は、上下左右から冷気を当てて凍らせるため、不純物が氷の真ん中に閉じ込められて白くなります。一方、市販の氷は不純物を取り除きながら、ゆっくりと凍らせているので透明なんですよ」(石井さん)
透明度が高い大粒の氷は、雑味が少ない上に、溶けにくいため、飲み物の味が薄まりにくいのも魅力です。
おうちでおいしい氷を作るためのコツ

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家庭用の冷凍冷蔵庫で「おいしい氷」を作ることはできるのでしょうか?
石井さんに、透明で純度の高い氷の作り方を教えていただきました。
1. 水はできれば軟水を。水道水でもOK
おいしい氷を作るにはおいしい水を使う必要があるのかと尋ねたところ、「水の種類は氷の味にあまり影響しません」と石井さん。ただ、ミネラル分が多い硬水を使うと氷に雑味が出やすいため、軟水を使うのがおすすめとのことです。
日本の水道水や国産のミネラルウォーターはほとんどが軟水なので、水道水で氷を作っても問題ありません。ただし、海外のミネラルウォーターには硬度の高いものもあるため、注意したほうが良さそうですね。

硬水と軟水の違いは? 水道水はどっち? 水の専門家が使い分け方も解説
2. 大きくて浅い容器に入れて凍らせる

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透明度の高い氷を作るには「ゆっくり凍らせる」ことがポイント。
そのためには、容器選びにコツがあると石井さんは話します。
「水は容器の側面から凍っていくため、深さのある容器で作ると、透明な部分が少なくなり、白っぽい氷になる可能性があります。透明度の高い氷を作るには、水が1リットル以上入る、できるだけ浅めの容器を選ぶのがおすすめです。また、容器の耐冷性にもご注意ください」(石井さん)
家庭用冷凍庫は一般的に約マイナス18度に設定されているため、それ以上の耐冷性を持つ容器を選びましょう。
3. 水の表面が先に凍らないように工夫する
「家庭用の冷凍庫は、上からも冷気が当たる構造になっている場合が多いため、製氷用の容器の上にタオルなどをかけて、上面が先に凍らないように注意してください。上面から凍ってしまうと、水に溶けている空気が逃げられなくなり、氷が白く濁る原因となります」(石井さん)
4. 半分凍ったら水を捨てて氷を取り出す
「水は純度の高い部分から凍るため、ゆっくりと時間をかけて凍らせると、ミネラル分が凝縮された水が残ります。そのため、容器の半分ほどが凍った時点で残りの水を捨てて氷を取り出すと、雑味のない氷が作れます」(石井さん)
残った水は捨てずに使うこともできますが、ミネラル分が高いので、やや雑味を感じる場合もあるそうです。
5. 使いやすい大きさに砕いて保存する
できあがった氷が大きすぎる場合は、アイスピックなどを使って使いやすい大きさに砕きます。
「半分ほど水を捨てた後、すぐに砕き、製氷室があれば製氷室で、なければ容器に入れて冷凍庫で保存するとよいでしょう」(石井さん)
砕いた氷をそのまま製氷室に入れると、氷同士がくっついてしまいませんか? と尋ねると、「砕いた氷同士が接する面積はそれほど多くないので、アイススコップなどで軽く叩けば、すぐにバラバラになりますよ」とのこと。
ちなみに、市販の氷も袋のまま冷凍庫に入れるのではなく、袋から出して製氷室で保存すると、氷同士ガチガチにくっつくのを防げるそうです。
実践!「おいしい氷」を作ってみよう
石井さんのアドバイスを参考に、ウチコト編集部が家庭用冷蔵庫で透明な氷作りに挑戦しました。
普段飲料水として使っている浄水器を通した水道水と、冷凍庫対応の保存容器を用意し、分厚いタオルを容器の上にかぶせて冷凍庫に入れました。
凍り加減を定期的にチェック

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途中で様子を確認したところ、容器がやや深く、さらに上から冷気が当たるタイプの冷凍庫だったため、分厚いタオルをかけていても容器の上部から凍ってしまうことがわかりました。

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そこで、定期的に中身をチェックし、水面が凍り始めていた場合は、スプーンで氷を砕いて水の上部を塞がらないようにしてみました。3時間後、6時間後、その後は約1時間ごとに様子を見ました。
半分ほど凍るまでにかかる時間は約8時間!
実験した冷凍庫では、1リットルの水が半分程度凍るまでに8時間程度の時間が必要なようでした。
実はこの所要時間の長さを把握していなかったことが原因で、1回目の氷作りは失敗してしまいました。開始時間が遅かったため、就寝前には半分も凍っておらず、翌朝確認したときにはすべて凍ってしまい、中心部分が白い氷になってしまったのです。
とはいえ、氷の中心部は白く濁っているものの周囲は透明な氷ができていたので、うまく砕けば透明な部分だけを取り出すことは可能でした。

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2回目の氷作りでは、就寝前に「半分ほど凍った」状態になるよう、作り始めるタイミングを調整しました。
上の写真は、約10時間凍らせた様子で、中央部分がまだ凍っていない状態です。ここから凍っていない水を取り出してはかると、約300mlでした。
凍った部分は少し白くなっている部分はあるものの、全体的には透明度の高い氷になっていました。
透明な氷は無味無臭! 残った水の味は?

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左から、ゆっくり凍らせた透明度の高い氷、1度目に失敗してすべての水が凍ってしまった巨大な氷の「白い部分」、そして一番右が、今回と同じく浄水器を通した水道水を製氷皿に入れて凍らせた、いつもの氷です。見た目の違いは一目瞭然。いつもの氷には気泡が入り、中央部分が白く濁っているのがわかります。真ん中の失敗した氷は、気泡は少ないものの、全体的に白く濁っています。
透明度の高い氷を口にすると、しっかり無味無臭でした。一番雑味を感じたのは、やはり真ん中の白い氷です。普段の氷よりも不純物が凝縮されて凍っているように感じました。
また、凍らずに残った水が飲めるかどうか味見してみましたが、やはり独特のニオイや味が気になり、おいしいとは思えませんでした。残った水は思い切って捨てたほうが良さそうです。
おうちで作る氷Q&A
「こんなときはどうしたらいい?」「こんなもの作れる?」など、家庭で氷を作る際に気になることについて、石井さんに教えていただきました。
丸い氷の特徴と作り方は?

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「丸い氷は四角い氷に比べて、飲み物などに触れる表面積が小さくなるため、球に近いほど溶けにくいという特徴があります。バーなどでウイスキーに丸い氷を入れるのは、氷が溶ける速度をゆるやかにし、お酒をゆっくり楽しむため。ご家庭で丸い氷を作りたい場合は、市販の球体専用製氷ケースを利用するのがおすすめです」(石井さん)
飲み物などを早く冷やしたいときにはどんな氷を使えばいい?

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「粒の小さい氷を使うと、飲み物を素早く冷やすことができます。また、水筒にも入れやすくて便利です。家庭で細かく砕くのが大変な場合は、市販のものもあるのでチェックしてみてください」(石井さん)
氷は作りっぱなしでOK?
「製氷室に氷を入れておくと、昇華現象によって水蒸気として気化していくので、氷は徐々に小さくなります。小さくなっても氷に含まれるミネラル分はそのまま残るため、雑味を感じやすくなるなど、味に影響が出てきます。そのため、作った氷はできるだけ早く使い、こまめに作り直すことをおすすめします」(石井さん)
ちなみに、純度の高い市販の氷は、製氷室で保存している間に徐々に小さくなっても、味が変わらないというメリットがあるそうです。
雑味のないかき氷を作るための「硬い氷」はどうやって作る?
「飲食店などで使われる本格的なかき氷機で削りやすい『硬い氷』は、空気をできるだけ含まないように、さらに純度を高めることで作ることができます。完璧なものを求めるなら、プロが作った氷を使うのがベストですが、家庭で作る場合は、先ほどご紹介した透明な氷の作り方に加え、水を一度煮沸してから使うというひと手間を加えると良いでしょう」(石井さん)
おいしい氷の作り方を活用して、アレンジ氷を楽しもう

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水だけでなく、さまざまな飲み物や食材を凍らせて氷を作ってみませんか? 飲み物の味を薄めずに楽しめる「コーヒー氷」や「お茶氷」、「ジュース氷」、さらに冷たい料理に使える「出汁氷」などもおすすめです。
味付きの氷は「急速凍結」がポイント
「液体を凍らせると水から先に凍り、味がついている部分は最後に凍ります。溶けるときはその逆で、味がついている部分から溶け出すため、最初は味が濃く、最後は薄くなりすぎるという味ムラが起こります。家庭でアレンジ氷を作る場合は、できるだけ早く凍らせるのがポイントです」(石井さん)
なお、炭酸飲料はほとんどの場合、冷凍不可と表示されているため、凍らせるのは避けましょう。
早く凍らせるためのチェックポイント
- 小さなセルに分かれている製氷皿を使い、氷を一つひとつ小さくして早く凍らせる
- 冷蔵庫の急速冷凍機能を使う
- アルミカップなど熱伝導率の良い容器を使う
- アルミトレイの上に置き、容器同士の間隔を十分に空けて冷気がしっかり当たるようにして凍らせる
「冷凍可能な容器に入れて販売されているスポーツドリンクなどを凍らせた場合、凍らせる量が多いため、家庭で急速冷凍するのは難しく、どうしても味ムラは起きやすくなります。味がついている部分から溶け出すため、飲む前に容器ごと水につけてしばらく置くなど、ある程度溶かしてから飲むと、味ムラを和らげることができるでしょう」(石井さん)
おいしい氷で、ひんやりレシピの味わいをワンランクアップ
透明度が高く、純度の高いおいしい氷を作って、冷たい料理やスイーツを楽しんでみませんか? おすすめのメニューは、ぜひこちらをご覧ください。
「ひんやりスイーツレシピ」まとめ

おいしい氷が完成したら、お家でかき氷シロップも手作りして、贅沢かき氷はいかがですか? その他にも夏におすすめのひんやりスイーツレシピをご紹介します。
おわりに
透明度の高い氷はおいしいだけでなく、見た目にも涼しげで格別です。凍らせるのに時間はかかりますが、手間はそれほどかからず、ちょうどよい量を作れば早いペースで使い切ることもできます。冷凍庫にスペースさえあれば、意外と日常的に楽しむことができそうです。氷の特性を知って、シンプルな氷やアレンジ氷など、目的に合わせておいしい氷作りに挑戦してみませんか。
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