なぜ毎日睡眠が必要なの?
私たちは毎日一定の時間、眠りについています。なぜ毎日眠っているのでしょうか。
睡眠には主に3つの役割があります。①疲労回復、②修復成長、③記憶の整理です。それぞれどのようなことをしているでしょうか。
- 疲労回復:エネルギーを使う時間を減らし、疲労を回復させています。
- 修復成長:睡眠中、成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、骨や筋肉の成長を促進し、免疫力を増強し身体組織を修復しています。
- 記憶の整理:脳内にある不要なものを整理して、必要な情報を固定しています。
睡眠は人間の生活に必要不可欠なことがわかりますね。
心地よい眠りに影響するものとは?
心地よい眠りにはどのようなことが影響しているでしょうか。大きく分けると、人間の内部の要因と外部の環境からの要因の2種類があります。
内部要因はストレスや心の落ち着きですが、これらを整えより良い眠りを助けるものとして、睡眠前の瞑想やマインドフルネス、健康補助食品、医薬品などがあります。
一方、睡眠に影響を与える外部要因には、着衣、温度、湿度、音、光、部屋の大きさなどがあります。これらの環境を整えることで良い睡眠につながります。
みんな良く眠れているの?
世の中の人は睡眠をうまくとれているのでしょうか。東京ガス都市生活研究所の調査結果から、寝つき、寝起き、睡眠重視度について、見ていきましょう。
「寝つき」の良くない人が増えている
Q.寝つきは良い方だと思いますか
「寝つきは良い方だと思う」と答えた人は2008年から2023年まで徐々に少なくなってきています。また、寝つきが良くない人も年々増えているようです。
「寝起き」が良い人も減っている
Q.寝起きは良い方だと思いますか
一方、「寝起きは良い方だと思う」と答えた人も2008年から2023年まで徐々に少なくなっています。寝起きが良い人も、減ってきていることがわかります。
睡眠への重視度が増加している
Q.あなたが現在の生活の中で重視して行っていることは何ですか(睡眠)
東京ガス都市生活研究所が行った生活定点観測調査によると、2023年の「生活の中で睡眠を重視している人の割合」が、どの年代でも増えてきています。
就寝前に過ごす部屋が眠りに影響する!?
東京ガス都市生活研究所の調査で、「冬に睡眠の質を高めるために環境を整えている部屋」を聞いたところ、寝室と回答した人が82%と最も多く、居間は21%、脱衣室や廊下は5%未満という結果でした。寝室に気をつかうことはあっても、それ以外の部屋まで気にする人は少ないことがわかります。
また、「良い睡眠のために気をつけていることは?」という質問に対しては、「暖かい布団を使う」、「湯たんぽを使う」、「足を冷やさないようにする」、「お風呂に入る」という回答が多く見られ、寝つきを良くするために、身体を冷やさないようにしている人が多いようです。
就寝前の2時間、居間が寒いほど寝つきにくい
寝つきを良くするために、身体を冷やさないようにしている人が多いことがわかりましたが、そのためには、寝室だけでなく、就寝前に過ごす居間も重要なようです。
国土交通省が約4千人に対して実施したスマートウェルネス住宅等推進調査によれば、入眠にかかる時間(入眠潜時)が長い人ほど、就寝前に過ごす居間の室温が低いという結果が得られています。
寝つきの良い群と寝つきの悪い群(入眠にかかる時間が長い人たち)の各部屋の室温をみてみると、寝室と脱衣所については、寝つきの良い群と寝つきの悪い群で室温の差は小さいことがわかります。しかし、就寝前の居間の室温をみてみると、寝つきの悪い群よりも寝つきの良い群のほうが、室温が高くなっています。このことは、就寝する寝室の室温ではなく、就寝前の居間の室温に寝つきの良さが影響を受けることを示しています。寝つきの課題を抱えている人は就寝前、居間を暖かくして過ごすようにしましょう。
居間が寒いと眠りにも影響する
「睡眠障害」は睡眠に関連したさまざまな病気の総称ですが、就寝前の居間の室温が低いと、睡眠障害の改善が0.7倍にとどまり、治りにくくなるのだそう。さらに、就寝前の居間の室温が低いと、睡眠障害の発症率が1.4倍に増加するといわれています(出典2)。
また、夜間頻尿や尿漏れ等のいわゆる過活動膀胱症状でお困りの人もいるかと思いますが、就寝前の居間を暖めることにより、睡眠の質が改善するだけでなく、このような症状も改善するという報告もあります(出典2)。
特にご高齢の方の場合、夜間に尿意のために目が覚めて、トイレに移動する際の転倒リスクが気になるところ。就寝前の居間では暖かく過ごすという、簡単にできることから対策を始めてみるのもいいですね。
居間も寝室も最低でも18℃以上がおすすめ
それでは、冬の部屋の温度は何℃くらいにすれば良いのでしょうか。2014年に厚労省から出された睡眠指針では、寝室の温度を13~29℃にするように推奨されています。また、英国保健省が循環器系疾患、呼吸器系疾患等の健康障害への対策として定めた指針では、居室温度は18℃以上にすることが推奨されています(出典3)。
おわりに
良い睡眠をとるために必要なことを調べてみると、寝室の温度も重要でしたが、それだけではなく就寝前の居間の暖かさも重要であることがわかりました。これにより、睡眠の質が向上し、関連する健康問題のリスクも低減されることが期待されます。
就寝前は暖かい居間で過ごすことで、睡眠の質を上げて寒い冬を乗り切りましょう。
出典1. 久米村秀明、高柳英明:睡眠空間の大小が就寝時の生理現象に与える影響、日本インテリア学会論文集、31号、pp.17-22、2021年3月
出典2. 国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査第4回中間報告会報告書」
出典3. イングランド公衆衛生庁「イングランド防寒計画(Cold Weather Plan for England)2015.10
文責:東京ガス都市生活研究所 主任研究員 博士(環境情報学) 久米村秀明