◯割が疲れを自覚!? 疲労回復に効く入浴法が注目される訳
東京ガス都市生活研究所の調査において、心と身体がどれほど疲れているかを20代〜50代の働いている男女に質問したところ、身体については6〜7割、心については6割弱の方が「疲れている」と回答しています。
疲れの原因はさまざまですが、「職場の人間関係」や「仕事の量や難しさ」等、仕事上でのストレスを抱えた人が多い事が分かります。
そうした疲労への対処法としては、家でゆっくりとくつろぐ、一人の時間を持つ等プライベートの時間を確保する事がカギになっているようです。その一環として「お風呂にゆっくり入る」が上位に選ばれています。
お風呂に浸かると心も身体もリラックスできるのが、多くの人にとって実感できているという事ですね。何も考えずに浸かるよりも、効果的な入浴法を知って実践すれば更に疲労回復につながります。
あなたの疲労は何タイプ? 疲労の種類別「効果的な入浴法」
一言で「疲れ」といっても、普段の生活や思考によって危険度や症状の兆候は変わってきます。
今回、事前に生活の実感を問う40項目の質問を行い分析したところ、
「仕事量・時間過多」
「対人関係の負担」
「生活の乱れ」
「生活のメリハリ不足」
「睡眠の質の悪さ」
「パソコンの長時間利用」
の6つの項目が疲労要因として浮かび上がりました。これらの項目の強弱の特徴から、疲労タイプを分けました。関西福祉科学大学 倉恒弘彦らが定めた自己診断疲労度チェックで危険度が高い順に紹介します。
自分に適した入浴法を選ぶために、下記の6つの項目チェックによる【疲労タイプ判定ツール】で、簡易的に自分の疲労タイプを知りましょう。
【疲労タイプ判定ツール】
1:仕事頑張りすぎタイプ
仕事量や拘束時間が長く、生活のバランスが崩れているタイプです。今回の調査では、全体の6%の割合で存在しました。対人関係のストレスは高くありませんが、自身の健康維持に対する意識は低く、喫煙率も高くなっています。
このタイプで申告が多かった悩みは以下です。
・肩こり腰痛
・手足の冷え
・眼の疲れ
・身体のむくみ
2:隠れ疲労タイプ
特に20代〜30代に多いタイプです。今回の調査では、全体の35%の割合で存在しました。忙しい生活の中で疲労が蓄積し、自分の健康に無頓着になりがち。職場やプライベートでの対人関係において、ストレスがやや高い傾向にあります。
このタイプで申告が多かった悩みは以下です。
・肩こり腰痛
・手足の冷え
3:疲れ慢性タイプ
20代〜50代まで同程度の割合で存在しているタイプです。今回の調査では、全体の31%の割合で存在しました。疲れの実感が強く、対人関係や生活習慣等の要因が絡み合って、心身に悪影響を及ぼしています。まずは生活習慣を見直し、体調を整える事がカギです。
このタイプで申告が多かった悩みは以下です。
・肩こり腰痛
・疲れが溜まりやすい
・目の疲れ
・手足の冷え
・眠りが浅い
4:疲れコントロールタイプ
40代と50代が中心で、既婚者の割合が全てのタイプの中で一番多いです。今回の調査では、全体の19%の割合で存在しました。仕事とプライベートを上手く調整し、負荷を減らす事で疲労をコントロールしています。ただ加齢のために「日中眠くなる」といった形で疲労が現れる事も。対人関係の負担は少なく、生活のメリハリも程よくついています。
このタイプで申告が多かった悩みは以下です。
・肩こり腰痛
・手足の冷え
・眼の疲れ
5:疲れ予防タイプ
20代と50代に多いタイプで、今回の調査では、全体の9%の割合で存在しました。生活習慣が良く、睡眠のバランスも取れているため健康的な身体を維持できています。疲れを予防するお手本と言えます。対人関係のストレスも少ないです。
このタイプで申告が多かった悩みは以下です。
・手足の冷え
・花粉症、アレルギー
【効果的な入浴法】疲れの予防と緩和には全身浴とシャワー浴!
疲労回復の手段として、睡眠を真っ先に思いつく方が多いかもしれません。しかし「効果的な入浴法」を知り実践する事が、心身に有効である事を認識している割合は、比較的少ないようです。また身体を温めたりコリをほぐす事で、睡眠の質の向上にもつながります。
上記の図は、それぞれの疲労タイプに合った入浴法をまとめたものです。入浴は、それぞれの疲労タイプに見られた肩こりや眼の疲れに対する改善だけでなく、注意力低下の緩和や朝の目覚めを良くする等、さまざまな症状に効果的だという事が分かります。
【効果的な入浴法】疲労回復に有効! 入浴の「3つの効果」とは?
1. 温熱作用
お風呂に浸かるとお湯の「温熱作用」によって身体が温まります。血管が広がり血流が増え、体内の老廃物が除去されたり筋肉のコリがほぐれたりします。
2. 水圧作用
お湯が身体に適度な圧をかける事で、マッサージのような効果があります。血の巡りやリンパの流れを良くしてくれます。
3. 浮力作用
普段身体を支えている関節や筋肉が、重力から開放されて緊張がほぐれます。
【効果的な入浴法】睡眠の質改善には「全身浴」
「隠れ慢性タイプ」と「隠れ疲労タイプ」は全身浴を毎日続ける
この2つのタイプは、全身浴の頻度を上げる事で睡眠の質の改善につながる可能性があります。
実験によって、シャワー浴より全身浴を続けた方が、1ヶ月後の睡眠の質が向上した事が分かっています。長い時間気長に続けましょう。
「隠れ疲労タイプ」はまずは自分の健康維持に関心をもつことです。「疲れ慢性タイプ」にはオーディオブックを聴くなど、入浴中に自分の好きな事を行い、徐々に習慣づけると良いですよ。
「仕事頑張りすぎタイプ」「疲れコントロールタイプ」「疲れ予防タイプ」は寝る3時間前に40℃で全身浴
この3つのタイプは、「深部体温」を下げる工夫をする事で、更に睡眠を改善できる可能性があります。
ポイントは以下の2つです。
・就寝直前に入浴する場合は、40℃以上の熱いお湯は避ける
・就寝の2〜3時間前に40℃10分程度で、肩まで湯船に浸かり温まる
人間は「深部体温」と呼ばれる身体の内部の体温が下がると眠気を感じる仕組みになっています。就寝前に入浴や運動で体温を上げると、手足からの放熱が進み深部体温がスムーズに下がります。
寝る直前よりも3時間程度前に入っておくと、深夜の深部体温もより低く、睡眠も深くなりますよ。
【効果的な入浴法】肩こりの緩和には「40℃10分の全身浴」
どのタイプにも共通して見られる「肩こり」の改善にも全身浴が有効です。
お湯の温度は、38℃よりも熱めの40℃の方が肩の筋肉が柔らかくなっています。また半身浴や中間浴(全身浴と半身浴の中間の水位)よりも、肩まで浸かる全身浴の方が温熱作用によりコリがほぐれます。時間も5分よりも10分の方が効果的でした。
【効果的な入浴法】精神疲労には「全身浴」
入浴前と入浴後に行った実験によると、全身浴を行うことで精神疲労が少なくなる事が分かっています。図のフリッカー値というのは、高頻度で点滅する光が「どのくらいチラついて見えるか」によって、被験者のストレスを測っています。
グラフを見ても入浴なしよりもシャワー浴、シャワー浴よりも全身浴、といった順で効果が上がっていますね。
【効果的な入浴法】隠れ慢性タイプは朝の「シャワー浴」
シャワーのお湯を浴びるのは、身体の目覚めを促すのに効果的です。特に朝の時間がない時は手軽に実践できる便利な方法と言えます。
人間の身体は、日中と夜間で交感神経と副交感神経がそれぞれ優位になる事で、活動的になったりリラックスしたりします。シャワーの水流や熱によって交感神経が活発になり、朝の目覚めを促してくれるのです。
特に「疲れ慢性タイプ」のように、目覚めが悪い人にオススメの入浴法です。
【効果的な入浴法】眼精疲労の緩和には「熱めのシャワー浴」
PCやスマホを長時間見すぎると、眼精疲労の原因になります。「仕事頑張りすぎタイプ」は主に仕事で、「疲れ慢性タイプ」はプライベートで目を酷使しがちです。
また比較的疲労度の低い「疲れコントロールタイプ」であっても、テレビを観る割合が多いため目に疲れが溜まる傾向にあります。
眼精疲労に有効なのは、42℃程度の熱めのシャワーで片目に3分ずつお湯をあてる事です。実践前後で比べると、一時的に低下していた視力が回復しています。32℃だとさほど効果が得られなかったので、42℃のお湯による温熱効果の作用だという事が分かります。
おわりに
東京ガス都市生活研究所の調査から、疲労タイプ別の効果的な入浴方法をご紹介しました。
忙しい日々を過ごしていると、知らぬ間にストレスが溜まりがち。是非ご自身の疲れに合った、効果的な入浴法を試してみてくださいね。