現代人は日常的に目を酷使している!
宇佐美先生によると、現代に生きる私たちは想像以上に目を酷使しているといいます。
「目が疲れる大きな原因は、目とスマホやパソコンの画面の距離が近すぎることです。ある研究結果ではスマホを見るときの画面と目の距離は平均20~30センチといわれています。ところがこの距離は、私たち人類がかつて経験をしたことがない、ものすごく近い距離なのです。しかも画面を長時間見ていることが多い。これは目にとっては、ただただ酷使されていて、とてもしんどい状態です。
そもそも目には水晶体という、ピントを調節する機能が備わっています。そしてピントを合わせるために水晶体の厚みを調節する筋肉を毛様体筋(もうようたいきん)といいます。『目の疲れ』というのは言い換えるとこのピント調節能力のまひというか、一時的に機能が低下している状態なのです」(宇佐美先生)
目の筋肉も身体の筋肉も同じで、使い続けると疲れてこり固まってくると宇佐美先生は言います。
「例えば、運動をして身体を酷使すると筋肉痛になりますね。また、長時間パソコン作業を続けると肩こりにもなります。それと同じで、スマホに顔を近づけて長時間見て毛様体筋を酷使し続けると、こり固まってピントをうまく合わせられなくなり、結果として近くが見えづらくなります。この状態が『スマホ老眼』といわれるものです」(宇佐美先生)
スマホ老眼は、仮性近視や偽近視ともいうそうです。
「私たちが近くの物を見るときは、目を真ん中に寄せて物を見る、いわゆる『より目』の状態になっています。これを『眼球運動』といいますが、この時は眼球を動かすための『外眼筋』という筋肉を使っています。加えてピントを合わせるために毛様体筋も使っているので、近くを見るときはこの2つの筋肉を使いっぱなしで酷使しているわけです。それによって目の疲れが起こります」(宇佐美先生)
目を疲れさせないためには、普段からスマホやパソコンの画面と目の距離が近すぎないかを意識して生活する必要がありそうですね。
ドライアイも目の疲れの原因に
宇佐美先生によると、まばたきの回数が少ないと目が乾きやすく、ドライアイの症状を引き起こすことになり、それも目の疲れにつながるそうです。
ドライアイになると、黒目などが傷つきやすくなり、その結果、疲れ目や目の充血、乾燥感、目のかすみなどの症状があらわれるのだそう。
ドライアイは、きちんとセルフケアをすることで症状は緩和されるそうですが、スマホの見すぎには注意が必要とのこと。
「普段私たちは、1分間に20回程度のまばたきをしています。ところが、スマホを見ているときのまばたきは、1分間で5回くらいに減ります。例えば読書をしているときは10回程度ですから、スマホを見ているときのまばたきが、いかに少ないか分かりますね」(宇佐美先生)
目の疲れと眼精疲労の違い
「眼精疲労」という言葉を耳にしたことはありませんか? 目の疲れ=眼精疲労と思われがちですが、そうではないと宇佐美先生はいいます。
「眼精疲労の場合、目の疲れの症状に加えて肩の凝り、倦怠感、頭痛、吐き気、めまいなどの症状を伴います。眼精疲労の原因のひとつは自律神経の乱れです。つまり、目以外の全身症状が出てくると眼精疲労と呼ばれます」(宇佐美先生)
眼精疲労と目の疲れは「別物」という認識が必要のようです。
手軽にできる目の疲れ解消法5選
宇佐美先生に、目の疲れを解消するための方法を5つ教えていただきました。どれも日々の中で気軽にできることなので、目が疲れていると感じた時にはぜひ試してみてください。
目の疲れ解消法その1:目を温める
宇佐美先生によると、目の疲れを解消する方法で最もおすすめなのは、目を温めることだそう。
「目を温めることで、目の周りの血管が拡張して血流が良くなります。また目の周りを温めた状態にすると、目のピント調節筋である毛様体筋への血流も増えますし、目の周りの外眼筋の血流も増えてこりがほぐれるのです。これを温罨法(おんあんぽう)といいます」(宇佐美先生)
しかも目は温めることで、ドライアイの改善も期待できるそうです。
「涙腺で作られた涙はサラサラしていますが、まつげの近くにある『マイボーム腺』から出る油が混ざり合うことで、目の表面に涙の層ができるようになり、目が乾かないようになっています。ドライアイになると、このマイボーム腺からの油の出が悪くなり一層目が乾いてしまうのです。しかし目を温めるとマイボーム腺から油がスムーズに出るようになり、目の乾きを防いでくれるので、結果的に目の疲れが改善されるのです」(宇佐美先生)
目を温める具体的な方法
「手軽にできる目を温める方法は、まず両手を10秒間くらいこすり合わせてください。手が温かくなったら、目のあたりに優しく10秒間くらい乗せてください」(宇佐美先生)
また、ホットタオルで温めるのもおすすめですよと宇佐美先生。
【ホットタオルの作り方】
- タオル2枚とラップを用意する
- タオル1枚を水でぬらして絞る
- 水でぬらしたタオルを電子レンジ500Wか600Wで30秒~60秒くらい温める
- 温まったタオルをラップでくるむ(この時やけどに注意)
- ラップで巻いたタオルを、もう一枚の乾いたタオルでくるんで完成
ホットタオルを使って目を温める方法は、1日に2回行うのが理想的だそう。
宇佐美先生は、ホットタオルをバージョンアップした「ホットアイマスク」も商品開発しています。詳しくはこちら
目の疲れ解消法その2:目のツボ押しトレーニング
次におすすめの方法は、目のツボを押す「ツボ押しトレーニング」です。このツボ押しトレーニングは、毎日繰り返し行うことで、目の疲れの予防になります。さらにツボ押しは体の負担が少なく、いつでもどこでも簡単に行えるメリットがあります。注意点として、眼球を絶対に触らないようにしましょう。
【基本のルール】
- 自分の好きなタイミングで行う
- 目の周りの皮膚に負担がかかるため、トレーニングは1日に1種類のみ
- 前日とは別のトレーニングを行う
【ツボの押し方】
- 遠くを見ながら、もしくは目を閉じて行う
- 両手の好きな指で軽くマッサージをしながらそれぞれのツボを押す(このときツボがずれないように注意)
- 押す強さは痛気持ちいいを意識する
10秒ツボを押して5秒休憩を1セットとし、1つのツボには3セットのトレーニングを行うのがよいそうです。
今回、宇佐美先生おすすめのツボ押しを3種類教えていただきました。
それぞれ詳しくご紹介します。
ツボ押しトレーニング【1】
ツボの位置は、「承泣(しょうきゅう)」。
黒目の真下にある骨のくぼみがツボの場所。基本は中指で押し、他の指は顔を支えるように行います。
ツボ押しトレーニング【2】
ツボの位置は「太陽」。
眉尻と目じりの真ん中から外側にたどっていくと、くぼみがあり、そのくぼみはこめかみ。つまり太陽の場所とは、こめかみのこと。親指を太陽にあてながら後ろに少し引くように押します。
ツボ押しトレーニング【3】
ツボの位置は「風地(ふうち)」。
耳の後ろの出っ張った骨と、頭の後ろの中心との間にあるくぼみがツボの場所。親指に力を入れてグッと押し上げるイメージで行います。
参考:宇佐美 欽通「大人気YouTuber眼科医ヨシユキの視力回復ブック」マキノ出版
目の疲れ解消法その3:目に良い食材を意識してとる
目の疲れを解消する方法の3つめは、目に良いと考えられる食材を積極的にとることです。
中でも宇佐美先生のおすすめは「ブルーベリー」だそう。
「ブルーベリーは、目に良いとされているアントシアニンを豊富に含んでいて、目の疲れにはおすすめです。1日に食べる個数としては20個から30個を目安にしてください」
また、ほうれん草も目に良いとされるルテインやビタミンを多く含んでいるのでおすすめとのこと。
「ほうれん草を食べる目安は1日2株が目安です。2株とは小鉢一杯分くらいですね。ほうれん草だけでなく、他の緑黄色野菜も食事に取り入れるといいでしょう」(宇佐美先生)
「血液循環をよくするオメガ3系脂肪酸が含まれるさばやさんまなどの青魚、疲労回復効果のあるタウリンを豊富に含むたこ、イカ、あさり、ほたて、かきなどの海産物もおすすめです。
ナッツ類は栄養価が高く、ビタミンEも含まれており、抗酸化作用があるだけでなく、血行促進作用もあります。中でもおすすめはピスタチオで、糖質も少なくおやつに最適です。ピスタチオにはルテインやアントシアニン、ゼアキサンチンという成分が多く含まれています」(宇佐美先生)
目に良いとされる食材を使ったレシピは下記を参考にしてみてください。
意識してバランスよく食べることを心掛けたいですね。
甘み&栄養たっぷり「ほうれん草」を使ったレシピまとめ
バリエーション豊富! 秋が旬「鯖(サバ)」レシピまとめ
あさりの旨味が美味しい! 人気の「あさりレシピ」まとめ
塩焼きだけじゃない! アレンジいろいろ「さんま」レシピまとめ
目の疲れ解消法その4:遠くを見る時間を増やす「20-20-20ルール」
4つめの解消法は、遠くを見る時間を増やすことです。普段から酷使している目の筋肉を休ませるために重要なのが、ある程度の時間、遠くを見ることだと宇佐美先生は言います。
「米国眼科学会で推奨されている『20-20-20ルール』というものがあります。具体的な方法は「『20分ごと』に『20フィート(約6メートル)先』を『20秒以上見る』というものです。厳密に20分ごとに実行するとか20秒間計る必要はなく、ただ目が疲れたと感じたら、窓の外の景色を20秒以上見れば、目はかなり休まります」(宇佐美先生)
目のストレッチと組み合わせて効果UP!
宇佐美先生によると、遠くを見る時間を増やすことと目のストレッチを組み合わせて行うのも効果的だそう。手軽にできる目のストレッチの方法を先生に教えていただきました。
- 両手を伸ばして親指を立てる
- 親指を見たあとに遠くを見る
理想的な距離は6メートル以上(少なくとも2メートル以上、遠くの景色を見ること)
その場ですぐできるストレッチなので、日頃から意識して実践できるといいですね。
目の疲れ解消法その5:スマホやパソコンを使う時は姿勢や画面の明るさに注意する
スマホやパソコンの画面の明るさや、画面と目の距離に気を付けることで目の疲れを軽減できるそうです。
スマホ
スマホを見る時は部屋の明るさを十分保った状態で、画面が明るすぎないように注意が必要だそう。
「スマホの明るさ設定の方法で個人的におすすめしているのが、スマホの明るさ機能をメーターの中心部分よりちょっと低いくらいに設定します。これだと明るすぎず、暗すぎずちょうどよいですよ」(宇佐美先生)
さらに、スマホを見るときの姿勢も重要なのだとか。
「スマホを見る時は背筋を真っ直ぐにした状態で、画面を目から30cmくらい離しましょう。また、寝転がってスマホを見ないことも重要です。寝転がってスマホを見ると、まぶたに相当の負荷をかけるのでおすすめしません。あとはスマホを見るときの角度ですね。右手でスマホを持つとすると、脇に手をグーにした左手をはさむだけで姿勢がよくなります」(宇佐美先生)
パソコン
パソコンを見るときも、画面との距離が近くなりすぎている人が多いと宇佐美先生は言います。
「パソコンを見るときは、目と画面との距離を40cmくらいは取りましょう。40cmというのは、だいたい手を伸ばしてもぶつからないくらいの距離です。それを常に意識してほしいですね。
あとは椅子に深く腰かけて、姿勢をよくすること。キーボードを打つ時の、肘の角度も意識しましょう。
具体的にいうと、肘の角度が90度で、膝の角度も90度です。足底(そくてい)部分がピタッと地面に着くようにして座れば、肘も膝も90度の状態に近づきます。厳密に絶対こうでないといけないというわけではありませんが、これが一番良い姿勢ではないかなと考えています」(宇佐美先生)
目の疲れは眼科を受診すべき?タイミングは?
目が疲れていると感じたらすぐに眼科を受診した方がよいのでしょうか? 宇佐美先生に聞きました。
「病気が潜んでいる可能性もあるので、気になる時は眼科に行くことをおすすめします。でも実際は忙しくて、それができないという人も多いと思います。そこで病院へ行くタイミングとしては、今回ご紹介した内容でセルフケアをしてみて、それでも目の疲れが改善しないようであれば受診して、検査や治療を受けていただければと思います」(宇佐美先生)
おわりに
眼科医の宇佐美先生に、目が疲れる原因や目の疲れを解消するための方法を教えていただきました。幅広い年齢の人がスマホを利用する今、目は私たちが考える以上に酷使されています。目を温める、遠くを見る、目に良いとされる食べ物を意識してとる、目のツボ押しトレーニングを続けるなど、自分に合った方法で目のセルフケアをしていきましょう。