鶏肉の部位ごとの特徴や調理法が知りたい

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ヘルシーでお手頃な鶏肉は手軽で使いやすい食材ですが、「鶏むねを煮込んで固くなってしまった・・・」「揚げ物で中まで火が通らなかった」など失敗することも。部位ごとにどんな特徴があり、何に向いているのでしょうか。
料理研究家のしらいのりこさんに、鶏肉の部位ごとの特徴や失敗しない調理法についてお話を伺いました。
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】鶏むね・ささみはサラダチキンや蒸し鶏に

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鶏むねやささみは鶏の胸、翼の付け根から肩に当たる部分です。白っぽくて脂肪分が少なく、あっさりした味わいが特徴です。

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「鶏むねやささみは優秀なたんぱく質を多く含んでおり安いのですが、火加減が難しく、火を入れすぎると硬くなりやすい特徴があります」としらいさん。
おすすめは短時間で火を入れてやわらかく仕上げる調理方法だそう。スジ肉などと異なり、鶏むねやささみは加熱を続けてもやわらかくなることはありません。たんぱく質が凝固し、水分が失われてさらに固くなります。
しらいさん「鶏むねやささみは臭みが少なく、スープにするのもおいしいですよ」
実は扱いが難しい鶏むねやささみ。調理の際にはちょっとしたコツがあります。
- スープにする時:1cmくらいの薄切りして片栗粉や小麦粉をまぶしてから煮る
- サラダチキンにする時:鍋の中に水を張って肉を入れ沸騰したら火を止め、予熱で調理する。
- 唐揚げ・フライ・炒め物:下処理で1cmくらいの薄切りにする
なお、サラダチキンにする場合は塊のままお湯に入れる方法が一般的ですが、鶏むねは中央が分厚く、左右に薄くなっているため、そのまま加熱すると火の通りにムラが出ることがあります。
厚みが均一になるように中央から左、中央から右、と包丁を入れて観音開きになるように開き、全体の厚みを均一にしておくのもオススメです。

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【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】鶏ももは唐揚げ、煮込み、炒め物と万能選手

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鶏ももは足の付け根から腿(もも)の部分。適度に脂がのっていて、ジューシーでコクとうまみのある味わいと筋肉質で弾力のある食感が特徴です。

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しらいさん「一番失敗が少なくて安心の部位です。加熱しすぎても固くなりません。短時間で煮るとしっとりと仕上がり、長時間煮るとホロホロと崩れて別のおいしさがあります。揚げ物、煮込み、スープ、何でもおすすめです」
失敗が少なく、初心者にもおすすめの部位だそう。ニオイが強い時には、下処理でお酒に漬けたり、にんにくやハーブを使って調理するのが良いそうです。

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【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】せせりは焼き鳥や青椒肉絲に

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せせりは鶏の首回りの部位です。ネックとも呼ばれています。弾力がありジューシーな食感が特徴。
しらいさん「なかなか手に入りにくい部位ですが、脂が強くやわらかい部位です。焼き鳥もおいしいですし、炒め物にもおすすめです」
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】やげん軟骨は刻んで食感を楽しむ

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やげん軟骨とは、胸骨の先端部分に位置する希少部位です。同じ軟骨でもやげん軟骨はひざ軟骨よりやわらかく、骨と肉のうまみを同時に味わえます。
しらいさん「コリコリした食感が特徴でアクセントに使います。刻んでつくねやハンバーグに入れると食感が楽しめますよ」
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】手羽元は揚げ物や煮込みに

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鶏の羽の部分から取れる、手羽元と手羽先。付け根に近い方が手羽元、関節から羽先までが手羽先です。手羽先から揚げは名古屋のご当地フードとして人気ですね。濃厚なうまみがあるため、だしに使われることも多い部位です。

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しらいさん「手羽元の揚げ物は見た目が華やかに仕上がります。手羽元は手羽先に似ていますが、火が入るのには時間がかかります。フライドチキンなど揚げ物を作ると、真ん中まで火が入るのに8〜9分は必要です」
骨からだしが出るのでスープにもおすすめなのだそう。手軽なのは煮込み。フィリピン風煮込みの「アドボ」やカレーなど煮込みが向いているそうです。

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【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】手羽先はグリルや塩焼きに

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手羽先は鳥の羽の羽先に近い部分です。ちなみに根元に近い手羽元と羽先に近い手羽先の間は手羽中といいます。

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しらいさん「手羽先は脂が乗っている部位です。塩を降って焼くかグリルにすると、皮がパリッと焼けておいしいですよ」
火が通りやすいので、短時間でサッと調理できるのもうれしいですね。

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【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】鶏皮は用途いろいろ

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鶏皮とは、胸や腿(もも)の部位の皮です。鶏皮だけ購入してきて調理する方法もありますし、鶏むねや鶏ももから皮だけはがして使う方法もあります。
しらいさん「皮だけ冷凍しておくのも便利ですよ。塩を振って焼き鳥にしたり、ニンニクと醤油で炒めておけば、フライドオニオンみたいに使えます」
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】砂肝は揚げ物や焼き物、オイル煮に

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砂肝(すなぎも)は「肝」という漢字が使われていますが、肝臓ではなく胃の一部です。コリコリとした食感が特徴。レバーほどクセがなくあっさりした味わいです。

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しらいさん「砂肝はヘルシーで食感があるのでいろいろな使い方ができます。コンフィなどオイル煮にしたり、定番の焼き鳥はもちろん、レバニラのレバー代わりにも使えます。フライやカレー粉まぶしてから揚げにするのもおいしいですよ」
臭みが強いのでだしには使えません。揚げ物や焼き物、オイル煮が良いそうです。
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】ハツ

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ハツは鶏の心臓の部位です。レバーよりクセや臭みが少なく、弾力のある歯応えが特徴です。

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しらいさん「ハツは真ん中に血合いがあるので、半分にカットして血合いを取り除いてから使いましょう。焼き鳥にしたり、塩焼きがおすすめ。レバニラ炒めのようにオイスターソースと炒めるのもおいしいですよ」
【鶏肉の部位ごとの特徴・調理法】レバーはペーストで!

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レバーは鶏の肝臓です。柔らかくてふわっとした食感が特徴です。

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しらいさんが「今一番、可能性を感じている部位」だと言います。
レバーは安い上に、女性に必要な栄養を豊富に含みます。新鮮なものを選べば、臭みもなく、濃厚なうまみとまったりとしたなめらかな舌触りが味わえます。またしっとりとした食感もおいしさの1つですが、火を通しすぎるとボソボソに。予熱でやわらかく仕上げるのがポイントです。
しらいさん「おすすめはレバーペーストです。購入時には新鮮なものかどうか、赤くてツヤがあるかどうかを確認しましょう。しっかり洗って血合いを取り除き、沸騰したお湯の中にニンニクと塩とレバーを投入します。再度、沸騰させたら火を止めて20分間、予熱調理します。粗熱が取れてから、ブレンダーでペースト状にすれば、おいしいレバーペーストになります」
もちろん、レバニラ炒めや焼き鳥にも。なお、レバーフライも人気ですが、水分が多いので揚げ物にするとかなりはねるので気をつけてください。
しらいさん監修! ニンニクと鶏レバーだけで作るレバーペースト
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水洗いしたレバーを沸騰したお湯の中に、ニンニクと塩とレバーを一緒に入れます。レバーを入れた瞬間、沸騰が落ち着くので、そのまま火にかけ続けます。再沸騰したら、火を止めます。
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ふたをして20分たった後、お湯を捨てます。しらいさんによると、レバーのゆで汁には臭みがあり、だしには使えないとのことなので、すべて捨ててOKです。
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粗熱が取れたらブレンダーでペースト状にしてできあがりです。
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レバー特有の臭みもなく、ふわっとした食感でほんのりニンニクが香ります。子どもも大人もおいしくいただけます。コツは新鮮なレバーを選ぶことと、洗った際に血合いを丁寧に取り除くことだそうです。
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なお、しらいさんによると、つぶす過程でカッテージチーズやタイム、ミント、ディル、パセリなどお好きなハーブを入れるとよりリッチな味わいになるとのこと。今回はレバーの約半量のカッテージチーズとディルを加えてみました。こちらはレバー単体の時より潰しやすく、よりなめらかな仕上がりで、酸味を感じるさわやかな味わいでした。カッテージチーズはカロリーも控えめなので、ヘルシーなのがうれしいですね。
詳しいレシピはしらいさんのブログでも見ることができます。
https://note.com/shirainoriko/n/n2dbb072f4adc
【鶏肉の部位ごとの特徴】鶏もも、鶏むねなど、9種類の栄養価・カロリー

(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」(むね/皮つき/生, もも/皮つき/生, ささみ/生, 手羽さき/皮つき/生, 手羽もと/皮つき/生, 心臓/生, 肝臓/生, すなぎも/生, なんこつ(胸肉)/生)よりウチコト編集部にて作成
ヘルシーで高タンパクだと人気の鶏肉。スポーツやダイエットには、鶏むねやささみを使った鶏ハムや蒸し鶏が定番ですね。実際、どれくらいのタンパク質が含まれているのでしょうか。
たんぱく質の含有量が多いのは、ささみ、鶏むね、レバー、砂肝、手羽元、手羽先、鶏もも、ハツ、軟骨の順でした。特にたんぱく質が多いのが、ささみと鶏むね。どちらも20gを超えます。次に多いのがレバー、砂肝、手羽元で18gくらいのたんぱく質を含んでいます。

(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」(むね/皮つき/生, もも/皮つき/生, ささみ/生, 手羽さき/皮つき/生, 手羽もと/皮つき/生, 心臓/生, 肝臓/生, すなぎも/生, なんこつ(胸肉)/生)よりウチコト編集部にて作成
鶏肉は豚肉や牛肉と比較して、脂質が少なくてヘルシーなことも特徴。低カロリーな順に並べると、軟骨、砂肝、ささみ、レバー、鶏むね、手羽元、ハツ、鶏もも、手羽先の順になります。
上の表から鶏肉の部位の中で、たんぱく質の含有量が多くて低カロリーなのは、ささみと鶏むねだとわかりますね。鶏むねは皮を取り除けば、よりヘルシーにいただけます。

(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」(むね/皮つき/生, もも/皮つき/生, ささみ/生, 手羽さき/皮つき/生, 手羽もと/皮つき/生, 心臓/生, 肝臓/生, すなぎも/生, なんこつ(胸肉)/生)よりウチコト編集部にて作成
鉄や亜鉛は、ミネラルの中で現代人が不足しがちといわれる重要な栄養素。レバーやハツ、砂肝に多く含まれています。

出典:文部科学省「食品成分データベース」(むね/皮つき/生, もも/皮つき/生, ささみ/生, 手羽さき/皮つき/生, 手羽もと/皮つき/生, 心臓/生, 肝臓/生, すなぎも/生, なんこつ(胸肉)/生)よりウチコト編集部にて作成
ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、パントテン酸など、ビタミンB群が多く含まれるのは、レバー、ささみ、鶏むねです。ビタミンB群はエネルギーの代謝を助け、疲労回復や免疫力を高める働きがあります。
おわりに
健康志向の中で注目を集める鶏肉。それぞれの部位の特徴を上手く生かして、おいしくいただきたいですね。