ここから本文です。

牛肉

バラ、もも、肩ロースなど牛肉の部位とその活用法をプロに聞く

バラ、もも、肩ロースなど手に入りやすい牛肉の部位は、いろいろありますね。しかし、それぞれの部位の特徴や適した調理法は、どのようなものなのでしょうか。料理研究家のしらいのりこさんに各部位の特徴や下ごしらえの方法、調理法についてお話を伺いました。

最終更新日:2025.7.14

目 次

牛肉の部位、赤身と霜降り、調理法はどう違う?

牛肉

PIXTA

牛肉の部位は、大きく赤身肉と霜降り肉に分けられます。霜降り肉は、サシと呼ばれる脂肪が、網目状に入っているやわらかいのが特徴です。代表的な部位には、肩ロースやサーロインなどがあります。赤身肉は脂肪分が少なく、しっかりとした食感と肉本来の味わいが特徴です。赤身肉の中でも、あまり動かさないやわらかい部位(ヒレやランプなど)と、よく動かすため筋肉質で硬い部位(スネや肩など)に分かれます。

料理研究家のしらいのりこさんによると、牛肉の調理法は基本的にシンプルなものが多いそうで、ステーキ、ローストビーフ、焼き肉、しゃぶしゃぶなど肉本来のうまみを味わえる一品がおすすめとのこと。

和牛の部位 国産牛

PIXTA

「赤身肉の中で硬い部位は、じっくり煮込んでやわらかくしたり、薄切りにして焼くのが良いでしょう」としらいさん。また、やわらかい赤身肉や霜降り肉は、ステーキやローストビーフなど、焼く調理法が良いとのこと。レアな焼き加減も楽しめます。さらに詳しく、牛肉の部位ごとに伺いました。

【牛肉の部位ごとの特徴】赤身肉や霜降り肉の特徴、調理法

牛の部位のイラスト

PIXTA

牛肉の部位には、主に肩、肩ロース、リブロース、サーロイン、バラ、もも(うちもも)、そともも、ランプ、ヒレ、すねなどがあり、肉屋などの専門店では、多様な部位が手に入りやすくなっています。

牛肉切り落とし肉

PIXTA

背中に近い「肩ロース」と「スネ」の間にある部位で、肩甲骨周りから前脚の付け根あたりまでを指します。「肩(カタ)」または「ウデ」と呼ばれます。運動量が多く筋肉質のため、肉質は筋が多くて硬め。ゼラチン質が多く煮込むと濃厚なスープが取れます。

お手頃価格で食べ応えがあり、牛特有の滋味深い味わいも特徴。薄切りにして、すき焼きや肉じゃがにする方法もおすすめです。

ミスジ

PIXTA

なお、肩肉の中でも内側の希少部位、ミスジは運動量が少ないため、サシが入って非常にやわらかいです。ステーキなど、焼いて食べることも可能です。

肩ロース

肩ロース

PIXTA

肩から背中にかけての顔に近い部位です。適度に動かす部位のため、やや筋があるものの、霜降りでやわらかさもあります。脂肪分と赤身のバランスが良く、キメが細かいため、どんな料理にも使いやすいのが特徴です。塊ならローストビーフに、薄切りならしゃぶしゃぶにと幅広い料理に使えます。やわらかいので厚切りで焼いてもおいしくいただけます。

リブロース

 リブロース

PIXTA

牛肉の高級部位といえば、「ヒレ」、「サーロイン」、「リブロース」の3種。ステーキの部位としても人気ですね。リブロースは背中の肉で、肩ロースとサーロインの間に位置します。運動量が少ないので、霜降りでやわらかい部位です。網目の細かいサシが特徴で、上品なうまみがあります。

リブロース

PIXTA

「肩ロース」「リブロース」「サーロイン」の3部位は、まとめてロース肉とも呼ばれます。ロース肉の語源は、英語の「ロースト(焼く)」であり、大きな塊肉が取りやすく、あぶって食べるのに適した部位とされてきました。

サーロイン

もも肉 サーロイン

PIXTA
(手前がサーロイン、奥がもも)

牛の背中で頭に近い側から肩ロース、リブロースの次に位置する部位です。腰に近くて運動量が少ないので、やわらかく筋が少ないのが特徴です。脂身部分が、赤身部分をぐるりと囲む形で分かれています。上の写真では、奥が脂身の少ないもも、手前がサーロインです。脂身が周りを囲い、全体にもサシが入っているのが分かります。

しらいさん「脂身のおいしさをしっかり味わいたいなら、サーロインがおすすめ。サーロインの脂身は、白い方が新鮮です」

ステーキ肉といえば「ヒレ」「サーロイン」「リブロース」! どう違う?

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー
(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」([和牛肉]/かた/脂身つき/生, かたロース/脂身つき/生, リブロース/脂身つき/生, サーロイン/脂身つき/生, ばら/脂身つき/生, もも/脂身つき/生, そともも/脂身つき/生, ランプ/脂身つき/生, ヒレ/赤肉/生)よりウチコト編集部にて作成

カロリーの高い部位は、リブロース、バラ、サーロインの順です。一方、ヒレはカロリーが低く、9位と最もヘルシーな部位です。

ヒレステーキは、しっとりとしたやわらかい食感が特徴です。脂っこくなくて、味わいもさっぱりしています。しっかり脂が乗ったステーキなら、リブロースかサーロインがおすすめ。どちらも霜降りで脂が乗った部位ですが、サーロインの方が少しお高めで筋がなく、まさにステーキの王様です。リブロースは、より肩の方に近くよく動かす部位のため、場所によっては筋が気になることがあるかもしれません。

バラ

牛肉(バラ薄切り)

PIXTA

バラは、牛のおなか側、あばら骨の周辺の部位です。カルビとも称され、脂が多くこってりした濃厚なうまみが特徴です。脂が多くて硬さがあるため、ステーキにはあまり向きません。薄切りにして牛じゃがや牛丼にしたり、角煮などの煮込み料理に向いています。

バラ肉をさらに細かく分類することもあります。肩に近い側が「かたバラ」、お尻に近い側が「ともバラ」です。「ともバラ」をさらにおなか側と背中側に分けて、おなか側を「そとバラ」、背中側を「うちバラ(またはなかバラ)」と呼ぶこともあります。

また、肋骨(ろっこつ)の骨と骨の間のお肉は、中落ち(げた)と呼ばれ、骨の間なのでやわらかく良質なお肉です。

もも・そともも

牛モモかたまり

PIXTA

後ろ足のランプとすねの間、お尻から太ももにかけての部分です。ももの内側が「もも(うちもも)」、外側が「そともも」と呼ばれています。脂質が少なくてヘルシーな部位です。

もも(うちもも)は、脂肪が少なく雑味がないので、多様な牛肉料理に活用できます。赤身の大きな塊はローストビーフにしたり、細切りにして青椒肉絲(チンジャオロース)に向いています。

そとももは運動量が多く、筋肉質で硬い部位なので、薄切りにしてビーフストロガノフにしたり、ミンチにします。同じように硬い部位でも、スネ肉などは長く煮込むとやわらかくなりますが、ももは煮込むと逆に硬くなってしまうため、煮込み料理にはあまり向いていません。

ランプ

ランプ

PIXTA

サーロインとももの間、腰からお尻にかけての部位です。キメが細かくてやわらかく、ステーキ、たたき、ローストビーフなど、ほとんどの料理に使えます。

ヒレ

ヒレ

PIXTA

サーロインの内側、肋骨の内側に位置しています。脂肪が少なくやわらかいことに加え、1頭から取れる量が少ないため、高級部位の1つです。脂質が少ないため、煮込むと硬くなりやすいので、油で焼くか、揚げるのがおすすめです。

しらいさん「脂質が少ないので、脂っこさが苦手な人におすすめです。とにかくやわらかいので、歯が弱い方にも良いでしょう。牛カツにするのもおいしいですよ」

スネ

スネ

PIXTA

牛のふくらはぎなので運動量が多く、筋肉質で硬い部位です。長時間煮込むと、コラーゲンが分解されてゼラチン質に変化し、とろとろにやわらかくなります。シチュー、カレー、ポトフや煮込みに向いています。

ネック

牛の首に該当する部位で、運動量が多いのが特徴です。筋が多くて硬いものの、強いうまみがあります。スープや煮込みにしたり、ミンチに使う方法もあります。

【牛肉の部位ごとの特徴】ホルモンなどその他の部位

牛肉 内臓部位の名称

PIXTA

牛の内臓やその他の部位は、それぞれの部位に独自の食感や風味があり、さまざまな調理法で楽しむことができます。

タン(舌)

クセが少なくうまみが濃いため、焼き肉や煮込み料理のどちらにも適しています。使い勝手の良さが魅力です。厚切りにして煮込めばやわらかくなり、デミグラスや赤ワインで、洋風の味付けも相性が良いのが特徴です。

レバー(肝臓)

レバーの部位は、牛・豚・鶏いずれも使い方は似ています。鉄分やビタミンが豊富な栄養価の高い部位で、しっかりした食感とコクがあります。牛肉のレバーは、特にうまみが強いのが特徴です。ステーキとして焼いてもおいしく、またパテのように炒めて裏ごしするような料理では、レバーを洗わずに使ってレバー本来の濃厚な風味を生かすのがポイントです。臭みが気になる場合には、水や牛乳で軽く洗って下処理を施すと、より食べやすくなります。

ハツ(心臓)

筋肉質でプリッとした歯ごたえがあり、クセが少ないため塩焼きや串焼きにして、シンプルに楽しむのが向いています。また、さっとゆでて酢みそやゴマ油であえると、さっぱりとした冷菜としても味わえます。

ホルモン(小腸・大腸)

焼き肉にして香ばしさを楽しむのが定番ですが、大根などと一緒に煮込むと、甘みとコクが引き立ちます。脂分が多いため非常に傷みやすく、購入後はできるだけ早く調理するのが望ましい部位です。

コンロで焼くホルモン焼肉

PIXTA

センマイ(第三胃)

ザクザクとした独特の歯ざわりが特徴で、さっとゆでてからポン酢や酢みそであえ物にすると、爽やかな味わいになります。白黒のまだら模様を生かした、見た目のアクセントも楽しめる一品です。

ギアラ(第四胃)

赤くて厚みがあり、脂のうまみとかみ応えのバランスが良い部位です。センマイとよく似た使い方もできますが、焼き肉や煮込みで食べると、ジューシーさが際立ちます。

ハチノス(第二胃)

蜂の巣のような独特の形状とやわらかな舌触りが魅力で、煮込み料理に適しています。イタリア料理の「トリッパ」など、トマトベースの洋風煮込みにもよく使われます。

テール

硬いので煮込み料理に向いています。脂肪分があり、ブイヨンを取るのにも適しています。

牛の内臓は、部位ごとに異なる特徴があり、酢の物やあえ物、焼き物、煮込み料理など幅広い料理に展開できます。ただし、牛は反すう動物であり、食べた草を胃袋で何度も発酵させて消化する仕組みを持っているため、胃や腸などの内臓は酵素や微生物を多く含み、非常に傷みやすいものです。そのため、内臓は購入後できるだけ早く調理しましょう。

【牛肉の部位の栄養価】鉄分や亜鉛が豊富

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー
(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」([和牛肉]/かた/脂身つき/生, かたロース/脂身つき/生, リブロース/脂身つき/生, サーロイン/脂身つき/生, ばら/脂身つき/生, もも/脂身つき/生, そともも/脂身つき/生, ランプ/脂身つき/生, ヒレ/赤肉/生)よりウチコト編集部にて作成

牛肉の栄養で注目されるのは、鉄分が豊富なことです。特にヒレやももは鉄分の多く、次いでランプ、バラと続きます。動物性の鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれ、吸収率が高いことでも知られています。貧血の人にはうれしいポイントですね。

亜鉛の含有量で見ると肩がトップ。肩、肩ロース、ヒレ、ランプ、もも、そともも、と続きます。カルシウムが多いのは肩、肩ロース、バラ、ももになります。

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー

牛肉の部位ごとの栄養価・カロリー
(可食部100gあたり)
出典:文部科学省「食品成分データベース」([和牛肉]/かた/脂身つき/生, かたロース/脂身つき/生, リブロース/脂身つき/生, サーロイン/脂身つき/生, ばら/脂身つき/生, もも/脂身つき/生, そともも/脂身つき/生, ランプ/脂身つき/生, ヒレ/赤肉/生)よりウチコト編集部にて作成

たんぱく質が多いのは、ももとヒレ。脂質も少なくヘルシーな部位ですね。カロリーが高い部位は、リブロース、サーロイン、バラがトップ3。ランプ、肩、肩ロース、そともも、もも、ヒレと続きます。

牛肉はそのおいしさだけでなく、豊富な栄養価で注目されています。部位により、栄養バランスが異なるため、目的次第で選びたいですね。

和牛・国産牛・輸入牛の違いとは?

 Tボーンステーキ

PIXTA

本記事では、和牛を中心に牛肉の部位についてご紹介しましたが、牛肉には「和牛」「国産牛」「輸入牛」の3種類があります。

和牛とは?

「和牛」とは、厳密には日本の在来種をもとに改良された特定の品種に限られます。このうち約9割を占める黒毛和種は、サシが入りやすい体質を持ち、やわらかさと脂の甘みを持つ肉質を生み出します。エサにはトウモロコシや大麦などの穀物が使われており、「グレインフェッドビーフ」と呼ばれます。

国産牛とは?

「国産牛」は、日本国内で一定期間以上飼育された牛全般を指す言葉で、和牛以外の品種も含まれます。ホルスタインや、和牛とホルスタインの交雑種、海外の肉用種を日本で育てた牛も「国産牛」に該当します。これらの牛は、赤身の割合が多く、霜降りは控えめで、しっかりとした歯ごたえとうまみが特徴です。飼料は地域や生産者によって異なります。

輸入牛とは?

「輸入牛」は主にアメリカ、オーストラリア、カナダなどから輸入されています。エサも地域によって異なり、アメリカ産はトウモロコシなどの穀物肥育(グレインフェッド)が主流です。オーストラリア産やニュージーランド産では広大な牧草地を生かし、牧草肥育(グラスフェッド)が主流です。

穀物肥育(グレインフェッド)と牧草肥育(グラスフェッド)の違い

オーストラリアの牛

PIXTA

穀物肥育(グレインフェッド)の場合、うまみが強く、やわらかい赤身肉になります。霜降りの和牛が、その代表ですね。一方、牧草肥育(グラスフェッド)の場合、脂は控えめでさっぱり。やや野性的な風味と歯ごたえのある赤身肉が特徴となります。

おわりに

牛肉には多様な部位があることが分かりました。それぞれの部位の特徴が分かれば、料理の幅がぐっと広がりますね。

赤身肉や霜降り肉には、生食用のものもあります。外側だけさっとあぶって食べるのもおいしいですが、食中毒のリスクもあるので、衛生面には十分に注意してください。

ハンバーグ、ステーキ、ビーフシチューなど牛肉レシピまとめ

ハンバーグ

uchicoto

牛肉がある食卓は豪華に感じますよね。今回は人気の定番レシピであるハンバーグやステーキなどお祝いの日なんかにも活躍しそうな牛肉レシピをご紹介します。管理栄養士など食の専門家によるレシピです。

食卓が豪華に! 「牛肉」を使った人気の定番レシピまとめ

食卓が豪華に! 「牛肉」を使った人気の定番レシピまとめ

  • この記事取材先

    しらいのりこ

    料理研究家

    しらいのりこ

    夫のジュンイチ氏と二人でごはん好きのフードユニット「ごはん同盟」として活動中。近著に」「ストウブで米を炊く」(誠文堂新光社)、「スープジャーとおにぎり弁当」(成美堂出版)など多数。

    もっと見る

最新のガスコンロなら、料理を強力サポート!

デリシア調理イメージ

Rinnai

最新のガスコンロには、料理を強力にサポートする便利機能が満載です。
 
自動で火加減を調整する揚げ物・焼き物に便利な「温度調節」機能や、ボタン一つでガス火炊きのご飯が炊き上がる「自動炊飯」機能。お湯が沸いたり、設定した時間になると消火する「湯わかし」や「コンロタイマー」機能など、「ガスコンロ」には調理をサポートする機能がたくさんあります。(※)
 
また、“魚を焼く”イメージの強い「グリル」ですが、実は肉や野菜料理、トーストやピザ、揚げもののあたため直しにも使える万能調理器です。
専用容器対応のグリルでは、手軽にオーブン料理も楽しめますよ。(※)
 
ガスコンロで「おいしい」をもっと簡単に! レパートリーをグンと増やしましょう!
(※)搭載機能や機能名は機種によって異なります。

SNSでこの記事をシェア
FacebookX(旧Twitter)LinenotePinterest

コピーされました

公開日:2025.7.14

最終更新日:2025.7.14

※この記事に含まれる情報の利用は、お客さまの責任において行ってください。
本記事の情報は記事公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
詳しくは、「サイトのご利用について」をご覧下さい。

同じカテゴリの記事

広告)太陽光発電・蓄電池をご検討の方へ 無料訪問相談でAmazonギフトカード3,000円分プレゼント
広告)東京ガスの水まわり修理 水栓交換キャンペーン

お気に入り追加

追加した記事は、お気に入り一覧でご確認いただけます。