なぜ狩らないのに「紅葉狩り(もみじがり)」? その由来とは?
紅葉狩り(もみじがり)とは「色づいた木々を鑑賞する秋の行楽」のこと。「狩り」といっても、葉が赤や黄色に染まる様子を楽しむもので、果物狩りのように採取する訳ではありません。落ち葉を持ち帰る事が禁止されている場所もあります。なぜ「狩り」と呼ぶのでしょうか。
「狩り」とは、本来「獣を捕まえる」と言う意味で使われてきました。
その後、平安時代には、狩猟をしない貴族が美しい紅葉をめでるために野山をめぐるようになり、その様子が狩りに似ていることから、紅葉見物することを「紅葉狩り」と呼ぶようになったと言われています。
狩らないのに「紅葉狩り」と言うのは、貴族の風雅な遊びが由来だったのですね。
鬼女・紅葉を狩るから「紅葉狩り」という説も!
鬼女・紅葉を狩るから「紅葉狩り」という説もあります。
由来になった伝説は長野県長野市の戸隠山(とがくしやま)に残っています。
「戸隠山に住んでいた『紅葉』という鬼女が山を降りては村の人々を餌食にするため、当時の帝が平維茂(たいらのこれもち)に鬼退治を命じ、神剣で鬼女を退治した」というもの。
この伝説は、「紅葉狩」という有名な能の謡曲として今も語り継がれています。舞台となった戸隠山では、今でもこの伝説を語りつぐ「鬼女紅葉祭り」という行事が開催されています。
どうして「紅葉」と書いて「もみじ」と読むの?
モミジといえば赤く色づいた手の平のような葉を思い浮かべますが、これは「イロハカエデ」というカエデ科の植物のこと。実はモミジという品種は存在せず、「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」など何々モミジと呼ばれている木は全てムクロジ科カエデ属の植物です。
こうしたカエデ属の紅葉(こうよう)が特に見事なので、カエデ属の植物を「モミジ」と呼ぶこともありますが、秋に紅葉・黄葉する植物全般をさして、広く「モミジ」と表現します。
もともと「モミジ」とは、染料をぎゅっと揉んで染色するという意味の「もみづ(揉出)」という言葉を語源として、木々の葉が色づく様子を示す動詞だったそうで、「紅葉」と書いて「もみじ」と読むようになりました。
紅葉を楽しめる時期をどうやって予測してるの?
例年、メディアでは天気予報と合わせて紅葉の見頃の予測が紹介されますね。なぜ紅葉の時期を予測できるのでしょうか?
それは、紅葉は明け方の最低気温が6~7℃位になると始まり、その約20日~25日後に見頃を迎えるからです。
また、色づきの予測には、日中の天気・昼と夜の寒暖差・空気中の水分の3つの気象条件がポイントになっています。
鮮やかな紅葉になる条件
- 日当りが良い・・・赤や黄色の色素となる養分である糖分が活発に作られる
- 夜は冷え込む・・・夜の気温が高いと昼間作った養分を使って活動してしまい、鮮やかな色に紅葉しない
- 適度な湿度・雨の日がある・・・乾燥しすぎると紅葉する前に葉が枯れてしまう
同じ場所なのに毎年色の具合が違うのは、これら3つの条件の揃い方が毎年違うからなのです。これらの条件が揃いやすい渓谷や川沿いは、紅葉の名所として知られているところが多くあります。また、平地よりも標高が高い山地のほうが早く見頃になります。
2024年の紅葉の見頃はいつ?
日本気象協会によると、9月の気温は東・西日本では平年よりかなり高くなり、北日本も高くなりましたが、下旬に平年を下回る時期もあったため、山間部を中心に順調に色づきが進み、すでに見頃を迎えている地点もあるとのこと。この先10月の気温は高く推移し、東・西日本の太平洋側では日照時間が少なくなることから、昼夜の気温差が大きい日は少ないとみられますが、北日本や日本海側の地域では、高気圧に覆われて、晴れて夜間は冷える日が徐々に増える見込みのようです。11月になると東・西日本の太平洋側も晴れる日が多くなり、晴れた朝には冷え込む日がある想定です。今年の紅葉の見頃は、北日本と東日本では平年より遅く、西日本では平年並みか遅くなるとのことです。
※「紅葉見頃予想」は、カエデの木の大部分の葉の色が紅色になった状態を目安にしています。
出典:日本気象協会 tenki.jp「2024年紅葉見頃予想<第2回>」
紅葉(こうよう)するのはカエデの木だけ? 紅葉する木は100種類以上も?!
紅葉と言うと赤いカエデや黄色いイチョウをイメージする人が多いかもしれませんね。
一口にカエデ、イチョウと言っても様々な種類があります。
こちらはヤマモミジ。葉のギザギザが特徴です。
オオモミジはギザギザが少なめです。
他にイロハモミジやイタヤカエデなどもあります。
ちなみにカナダの国旗に使われているのは「サトウカエデ」だそう。なお、「〇〇モミジ」と呼ばれている木は全てカエデ科の植物です。
紅葉狩りの際に、カエデやイチョウの種類を調べながら鑑賞するのも楽しいかもしれませんね。
葉はどうして赤や黄色に紅葉するの?
ところでなぜ葉の色が変わり紅葉するのでしょうか?
通常は、光合成によってできた養分が葉から枝へと流れていくのですが、秋になって気温が下がりだすと、その動きが鈍くなります。すると、葉と枝の間に離層という組織が作られて、養分や水分を運べなくなります。
養分の流れが滞った葉は、葉を緑色に見せていた葉緑素が分解され、今まで見えなかった色素が浮き出てきます。
イチョウなど・・・元々葉に含んでいた黄色い色素(カロチノイド)が目立つようになり黄色く色づく
カエデなど・・・赤い色素(アントシアン)が生成され、赤く色づく
樹木の種類によって紅葉の色が違うのは、こうした現象だったんですね。
紅葉狩りできるのは秋だけじゃない?! 「春紅葉(ハルモミジ)」とは?
春にも赤くなるカエデがあるのをご存知ですか? これは「春紅葉」と言い、若葉を日差しから守るために起きる現象です。
他にも若葉が赤くなる木がありますよ。どんな木が赤くなるか、春の公園で探して見るのも面白いかもしれませんね。
紅葉は日本だけのもの? 海外でも紅葉狩りを楽しめる?
日本以外にも紅葉を楽しめる場所があります。紅葉が見られるのは、落葉樹が生息する東アジアの沿岸部と北アメリカ大陸の東部、ヨーロッパの一部など。カナダの西部に広がる「メープル街道」も紅葉で有名なエリアです。
しかし日本のように全土に渡って紅葉を楽しめる国は少ないんです。
日本は国土に占める森林の割合が3分の2と多く、様々な落葉樹が生えています。加えて、1日の寒暖差が大きいなど、葉が色づきやすい環境も整っています。
昔から日本で紅葉狩りが親しまれているのも、そうした背景があるんですね。
紅葉狩りの楽しみ方は色々! もみじを舌で味わう事ができる場所も?!
万葉集を見ると、人々は奈良時代から紅葉を楽しんでいたようです。平安時代の紅葉狩りでは、紅葉を鑑賞しながら宴を開き、和歌に詠む「紅葉合(もみじあわせ)」が貴族の間で流行したそうです。江戸時代には各地の大名が家来を引き連れて紅葉の名所を訪れます。これが紅葉狩りの普及のきっかけだとも言われています。
皆さんは紅葉をどんな風に楽しみますか? 紅葉狩りの楽しみ方をいくつかご紹介します。
紅葉狩りに出かける
沢山の紅葉した木が揃った山や街道は圧巻! ハイキングしたり、ドライブして車内から眺めたり、温泉から紅葉を楽しめるところもありますよ。高原や山へのお出かけは足元が滑りやすい場所がありますので注意してください。
また、お近くの公園で紅葉を眺めながらピクニックするのも良いですね。
インテリアに取り入れる
身近に紅葉を感じるには、美しい落ち葉をインテリアに取り入れるのもオススメ。手軽に楽しめますよ。テーブルコーディネートに取り入れれば、秋の雰囲気を感じられる素敵な食事の時間を楽しめますね!
食べる
大阪府北部の箕面市の名物は「もみじの天ぷら」。
「もみじの天ぷら」は、小麦粉に白ごまと砂糖を加えた衣をつけて揚げた、カリッと香ばしくてほんのり甘い仕上がり。その場で食べるだけではなくお土産として持ち帰ることもできるそう。紅葉を目だけではなく舌でも味わってみては?
紅葉狩りに手作りのお弁当を♪
秋らしいお弁当をもって「紅葉狩り」に出かけましょう。好きなおかずをたっぷり詰め込むだけではなく、イチョウやカエデの形に切った食材を使うと楽しいですよ。
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おわりに
万葉集には、「もみじ」を詠んだ歌が百首以上あるとか。色鮮やかに変化する木々の美しさには昔から多くの人が心を動かされていたようです。秋の風物詩である紅葉狩りをぜひ楽しんでくださいね!
参考: allabout暮らしの歳時記 三浦 康子「紅葉狩りの起源・豆知識…紅葉を狩ると言うのはなぜ?紅葉は鬼女?!」