「猫の介護」は何歳から意識すべき?

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日本で飼育されている猫の平均寿命は16~17歳程度で、最近では20年以上長生きする猫も珍しくないといいます。
「一般的には、猫の場合、7歳からシニア期に入るといわれています。人間でいうと40代後半くらいのタイミングですね。ライフステージとしては、7〜10歳が『プレシニア期』、10〜15歳が『シニア期』、15歳以上は『ハイシニア期』と呼ぶこともあります」(藤井先生)
猫を飼い始めたら、早い段階からこうした年齢の目安を意識しておくとよさそうです。
加齢によって猫の体はどう変化する?
まず現れやすいのが筋力の低下です。
「10歳以上の猫の90%以上に変形性関節症などの関節炎があるといわれています。ジャンプする回数が減ったり、高いところに登らなくなったり、夜に走り回ることが少なくなったりするのは、その代表的なサインです」(藤井先生)
猫は痛みを言葉で訴えないため、飼い主が気づくのは「階段を上るのがゆっくりになった」といったささいな変化であることが多いといいます。爪とぎをしているのに爪がうまく削れず太くなっている場合も、指の関節が痛んでいるサインの一つだそうです。
「視力や聴力にも変化が現れます。特に聴力の低下が先に進みやすく、呼びかけても起きなくなったり、関節炎のために抱っこを嫌がるようになったりすることも。16歳を超えるハイシニア期になると、夜鳴きや徘徊など、認知機能の低下によるとみられる症状が出る猫もいるそうです。体重減少も、加齢に伴ってよく見られる変化の一つといえます」(藤井先生)
シニア猫によく見られる病気
シニア猫に最も多い病気は慢性腎臓病です。
「腎臓病は、水を飲む量やおしっこの量が増え、毛艶がなくなり、体が細くなっていくことなどが注意すべきサインです」(藤井先生)
また、夜中に大きな声で鳴き続けるような場合は、甲状腺機能亢進(こうしん)症の可能性があるそう。
「甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることでハイテンションになり、食欲はあるのに痩せていくのが特徴です」(藤井先生)
関節炎が進むと、痛みによりグルーミング(毛づくろい)の回数が減ったり、排せつのポーズをとるのがつらくなって、トイレ以外の場所で粗相をしたりすることも増えてくるとのこと。
「このほか、糖尿病や消化器疾患、腫瘍、高血圧なども加齢とともに増える病気です。愛猫の体重を量る習慣がある飼い主が体重減少に気づいて受診し、腫瘍が見つかることもあります」(藤井先生)
愛猫が長生きするために気をつけたいこと
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猫の健康バロメーターとして、日々チェックすべきなのが「食欲」「飲水量」「排せつ」です。
「食欲については『3日以上食べない状態が続くとき』などが異常の目安で、受診を急いだほうがいい例です。また、飲水量は体重が約1kgの猫で50cc~60cc、4kgの猫で200cc~240ccが目安。高齢になると水を飲む回数が増えるのが一般的ですが、脱水になっていないかどうかを注意してあげましょう。排せつについては、尿の回数が増えますが、便は便秘になることが多くなります。2日便が出ない場合は、病院に相談してください」(藤井先生)
また、できるだけ毎日猫の体に触れてみることも大切だそうです。
「ブラッシングをしながら触ってあげることで、知らなかった傷などにも気づくことができます。猫は脱水や痛みがあるだけで、すぐに毛艶が悪くなってしまうので、日々の観察が大切です」(藤井先生)
そのほかに、「嘔吐の回数がいつもより明らかに増えたとき」も受診のタイミング。
「普段は嘔吐が月に2回程度なのに週2回に増えているというような場合は、様子を見ずに病院に行きましょう。また、発熱は家庭で体温計を使って確認するのは難しいため、耳や鼻息の温かさ、肉球の様子などから普段との違いを感じ取るのがポイントです。健康診断については、プレシニア期の7歳を過ぎたら年に2回程度の定期的な受診、年齢が上がるにつれてさらに頻度を上げて、ハイシニア期になる15歳以上は年3回、症状によっては2カ月に1回ペースで診てもらうのがベストかと思います」(藤井先生)
「猫の介護」ここがポイント!

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実際に介護が必要になったときには、どのような点に配慮すればよいのでしょうか。藤井先生に具体的なアドバイスを伺いました。
食事と水分補給をサポートする
「猫が自分で食べられる場合には、自分で食べてもらうのが基本です。寝たきりに近い状態になった場合は、誤嚥(ごえん)を防ぐための介助が必要になります。自分でなめられるならスープ状やペースト状のフードを、難しい場合はシリンジ(注射器)を使って口の横からゆっくり与えるといいでしょう。一度に与える量は少なめにして、1日の必要量を4〜6回程度に分けて食べさせるのがポイントです」(藤井先生)
市販の高齢猫用フードや介護用フードも多くの種類があるので、動物病院に相談しながら選ぶのがおすすめだそう。
排せつの介助やケアをする
排せつについても、自分でできるうちはなるべく自分でさせてあげるのが基本です。
「まだ動ける猫であればおむつを使うこともありますが、寝たきりに近い猫であればペットシーツを敷いて対応するのがいいでしょう。腎臓が悪い高齢の猫だと、1日に5〜6回ほどおしっこをすることもありますので、そのたびに交換してあげる必要があります」(藤井先生)
外出しなければならないときなど、目を離す時間が長い場合は、排せつする範囲を限定できるようにサークルケージなどを活用して対策するのも一つの方法だそう。
おむつを使うときは皮膚トラブルに注意する
おむつは便利な一方、かぶれやベルト部分のこすれなど、新たな皮膚トラブルの原因にもなります。藤井先生は次のような注意点を挙げています。
- 長時間つけっぱなしにしない
- 排せつ後は早めに交換する
- 皮膚が赤くなっていないか確認する
- おむつ交換の際には清潔な状態で付ける
- 嫌がる場合は無理に使わず、獣医師に相談する
「皮膚トラブルを防ぐためには、排せつ物が付いてしまったおむつを交換するだけでなく、おむつ交換時にぬるま湯などで体の汚れを洗い流し、キレイに乾かしてから新しいおむつを付けるようにすることも大切です」(藤井先生)
生活環境を見直す
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愛猫の介護が必要になったとき、あるいはその予防のためには、生活環境の見直しも欠かせません。
室温を見直す
介護が必要な状態の猫は、たとえ暑くても自分で涼しい場所に移動することができません。
「夏場なら人がやや暑いと感じる、目安としては室温27〜28℃前後の温度設定を意識しています。猫は犬に比べてエアコンの風そのものを苦手とすることも多いため、風が直接当たらない場所に居場所をつくってあげるとよいでしょう」(藤井先生)
家の中の段差などを見直す
猫が年を重ねてきたら、できるだけ室内をバリアフリーに近づけることが理想です。
しかし、猫にとって上り下りの「垂直運動」は大切な運動でもあります。
「シニア猫は高すぎる場所は登りづらいから登らなくなっているだけということも多いです。よくいる場所には途中に踏み台などのステップを一段加えて、段階的に上れるように工夫するのがおすすめです。2段階で上がれるようにすることで、年齢を重ねた猫でも動きやすくなりますよ」(藤井先生)
寝る場所や食事スペースを見直す
若い頃は高い場所を好んで寝ていた猫も、シニアになるとソファの上や人の近くの床など、低い場所を寝場所に選ぶようになる傾向があります。
「低めの場所、中間くらいの場所など、高さの違う寝場所を3カ所くらい用意して、今はどの場所を好むのかを見てあげるとよいでしょう」(藤井先生)
食事スペースに関しては、基本的には場所を変える必要はありませんが、冷蔵庫やパソコンなどの機械音を嫌う猫もいるため、水飲み場も含め、できるだけ静かな場所を選ぶとよいそうです。
また、食器の高さを見直すことも一案です。
「頭を下げずに食べることができるように食器の高さを調節すると、首の関節などへの負担を減らせます」(藤井先生)
寝たきりになった愛猫を介護するときのポイント

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猫が寝たきりになってしまうと、自分で体の向きを変えたり、毛づくろいをしたりすることも難しくなります。介護するときにまず意識したいのが、床ずれを防ぐことです。
「床ずれを防ぐためには、体位を定期的に変えてあげることが大切です。低反発で洗いやすい介護用マットも市販されているので、活用するのもよいでしょう。尿などでぬれた状態で放置しないなど、体の清潔を保つことも床ずれやおむつによる皮膚トラブルの予防につながります」(藤井先生)
自分でグルーミングができなくなるため、無理のない範囲でのブラッシングや、体を拭くケア用品を使ったお手入れで代わりにしてあげる必要もあります。
また、食事を与える際には、誤嚥に注意しましょう。
「シリンジで少量ずつ与えながら、猫がごっくんと飲み込むタイミングを見極めることが大切です。猫が飲み込むタイミングを見ながら少しずつうまく与えられるようになるのは、飼い主と猫との日々の練習の積み重ねだと思います。シリンジで食事をさせるときには体の角度にも注意し、クッションなどで支えながら自然な姿勢で食べさせてあげましょう」(藤井先生)
猫の介護を快適にする掃除のポイント

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シニア猫との暮らしでは、排せつの失敗に伴う掃除の負担が大きくなります。
加齢による粗相は、痛みで排せつの姿勢がとれなかったり、トイレに間に合わなかったりすることが原因になる場合が多く、若い猫の場合とは性質が異なるそうです。
「猫というのは、おしっこのニオイがその場に残っていると、同じ場所でまた排せつしたくなってしまう性質があります。汚れた場所はできるだけしっかり掃除することが大切です。おすすめは、100円ショップなどで購入できる安価なマットやシートを使い、汚れたらすぐに交換する方法です。なお、消臭スプレーは猫にとって刺激になる可能性があるため、使用はできるだけ避けたほうがよいでしょう」(藤井先生)
排せつを失敗する頻度が増えて、介護が必要な状態になってくると、掃除もより大変になってきます。家の中のニオイや汚れがとれにくいなど、困ったときにはプロに相談することも検討しましょう。
落ちない汚れはプロに依頼するのもおすすめ!
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おわりに
猫の介護が始まると、食事の介助や投薬、体を清潔に保つケアなど、飼い主が愛猫のために費やす時間や手間が大きく増えていきます。「大変だな、疲れたなと思ったら、遠慮しないで病院を頼ってください。その子と過ごす濃厚な時間は、選ばれた飼い主にしかできないこと。愛猫の介護を工夫すること自体を楽しんでほしいです」と藤井先生。日頃からいざというときに頼れる病院を見つけておくことが、シニア猫が安心して暮らすための一番の近道といえそうです。
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