愛猫との引越し、まず気をつけることは? 獣医師が解説する猫の特性

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「猫は小さな子ども(未就学児)と一緒。つまり、さまざまな変化や出来事に対して“自分でどうにかできる存在ではない”ということ。引越しという今までの日常とはかけ離れた状況になるからこそ、飼い主がいつも以上に愛猫を観察し、寄り添うことが大切です」(水越先生)
一瞬の油断が命取り!「逸走&迷子」の最悪の事態を防ぐには
猫は不安になると「隠れる」「逃げる=逸走」といった行動を取る生き物です。引越し前後は業者の出入りが激しく、空間も雑然となり、いよいよ猫は落ち着かなくなります。
「知らない人がホーム(猫にとって安全で安心できる場所)に入り込んでくることに、多くの猫は耐えられません。そのため、飼い主の手の届かない場所へ隠れて出てこなくなったり、扉や窓の隙間から脱走して、迷子になったりという危険性が格段にアップします」と水越先生は言います。
また、引越し時に気をつけなければならないのが、荷造り用の「段ボール」。狭い空間が大好きな猫にとって、段ボールは快適な場所。すぐに入ってしまうので、荷造り時は要注意です。「猫が入ってしまっていることに気づかず、梱包してしまった」というケースもあるそう。荷造り中の段ボールは、狭い空間を好む猫にとって格好の隠れ家。猫が入り込んでいないか、荷物を梱包する際は必ず確認しましょう。
引越し時の最大のトラブル「逸走」の防止策は、後ほど詳しくお伝えします。ぜひチェックして実践しましょう!
忘れがちな引越し手続きと新居での環境整備は早めに

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猫に関しては、犬とは違い引越しに伴う登録手続きなど、特に必要ありません。ただし、マイクロチップを装着している場合は、登録情報の更新を忘れず行いましょう。
そして、できるだけ事前に行っておきたいのが、引越し先での新しい動物病院をみつけること。水越先生は「病院探しは、現在お世話になっている、かかりつけ医に相談してみてもいいかも」とアドバイスしてくれました。全国的に獣医師同士のネットワークがあるため、他県でも、先生のつながりで病院を紹介してもらえる可能性もあるのだとか。
猫と引越し前に押さえておきたい注意点と準備リスト

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いざ引越しが決まると、何かと慌ただしくなります。気ぜわしく動く飼い主の様子や急激な環境変化に、一番戸惑っているのは愛猫です。
「猫はいつもと違う状況に、不安を感じているわけですから、できるだけ“普段通り”に生活することが大切です」(水越先生)
愛猫との引越しをスムーズに進めるために、引越し前(1カ月以上前~前日)にやるべきことを上にまとめました。このリストを参考に、準備を進めていきましょう。特に重要なポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
愛猫との引越し最大ポイント:安全な移動手段の確保と慣らし方

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環境変化に敏感な猫にとって、引越し時の移動は最もハードルが高いポイント。基本的には、飼い主と一緒に移動するのが無難かもしれません。
ただ、飼い主が引越し作業などで、当日も走り回っているような状態であれば、逆に猫の不安をあおってしまうことも。
猫の場合は、犬よりも逸走の危険性が高く、戻ってくる可能性も犬より低いことから、余裕がない場合はペットホテルやかかりつけの動物病院などに預け、引越し完了後に迎えに行く方が安全です。
「愛猫も飼い主も、落ち着いて移動できることを最優先させましょう。引越し当事者である飼い主が無理をせず、心に余裕を持って動けるような手段を選んでください」と水越先生は言います。
引越し時の必須アイテム! キャリーケースに普段から慣れさせておく
愛猫との移動では、どんな場面でもキャリーケースが必須。飛行機を使う遠方への引越しや、引越し業者・ペット輸送業者に依頼する場合も必要になります。引越し時に限らず、普段からキャリーケースに慣れさせておくと便利です(災害時にも役立ちます)。
「例えば、常にリビングにキャリーケースを置き、扉を開けたままにしておきます。キャリーに入れて、家の中で移動しながら慣れさせます。いつもそばにあると猫も慣れてきて、出たり入ったりくつろいだり、キャリーケース内が居場所の一つになります。」(水越先生)
引越し当日のストレス軽減に! 預け先を確保する方法も検討する
近距離の引越し&人に預かってもらった経験がある猫なら、慌ただしい引越し当日の移動は避け、近隣の知り合いや家族(実家など)、かかりつけの動物病院、ペットホテルに預けるという方法もあります。飼い主が落ち着いてから迎えに行くといいでしょう。
引越し準備中、愛猫にストレスをかけないよう静かに過ごす工夫
「猫はそもそも、単独行動する動物です。犬に比べると、そこまで人と信頼関係は築けません。だからこそ、猫にとってホーム、つまり家は自分が安心できる場所であるかどうか、がとても大切な要素になってきます」と水越先生。
そのため、人の出入りが激しくなる引越し時は、外部からの刺激も多く、猫には相当のストレスがかかります。業者が来るときや引越し作業をするときは、事前にどこか静かな部屋に避難させておくなど、できるだけ猫への刺激を少なくするように心がけましょう。
また、ケージをあらかじめ組み立てて設置し、猫をケージの中に入れておくことも逸走予防に役立ちます。ケージをシーツなどで覆って視線を遮断することで、いらぬ刺激を排除し、見知らぬ人が行き来する引越し作業の間も、落ち着いて過ごすことができるでしょう。
かかりつけ医を味方につける! 引越し前に獣医師へ相談するメリット

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「引越し前の比較的余裕がある時期に、かかりつけの動物病院に行っておきたいですね。愛猫の身体状況や性質を把握している、かかりつけ医は、飼い主にとっても心強い味方です。引越し先での病院探しや引越し時の注意点など、遠慮せずに助言を求めてみましょう」(水越先生)
猫の性質によっては、不安を抑える薬や落ち着きを取り戻すサプリメントなどを処方してもらうことで、引越し当日の飼い主の負担を減らすことができます。実は水越先生も何度も引越しを経験してきたそうで、薬やサプリメントを使用することで、愛猫と共に落ち着いて移動できたとか。
また、愛猫に持病がある場合は万が一に備え、かかりつけ医の指示のもと、入念に事前準備をしておきたいですね。
荷造り中の注意点:猫が入り込む段ボールにご用心

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先にも記載したとおり、猫は段ボールが大好き。気がつかないうちに引越し用段ボールに入っていることも多いので、荷物を入れ終えたら、すぐにしっかり中身を確認し、ふたを閉じて保管してください。
また、なるべくいつもと同じ環境を保つために、お気に入りのおもちゃや普段から使い慣れているグッズ類を梱包するのはできるだけ後にし、転居先でもすぐに出せるようにしておきましょう。
飼い主が意外に見落としがちなキャリーケースの不備
水越先生によると、キャリーケースの確認を怠っていたことで、事故につながることもあるのだそう。キャリーケースは、消耗品です。気がつかないうちに扉の金具が緩んでいたり、鍵が壊れていたりすることも。こうした小さな不注意が、逸走へとつながってしまいます。愛猫を安全に引越しさせるためにも、今一度キャリーケースを細部までチェックして、状態を整えておきましょう。
引越し先の下見は愛猫と一緒に! ストレス軽減につながるメリットも
猫を新居に入れる前に、ストレスケアのフェロモン製剤(スプレーやディフーザータイプあり)を家中に拡散しておくことで、猫の落ち着きを補助することができるそう。フェロモン製剤は動物病院で購入できるので、引越し前にかかりつけ医から購入し、猫の搬入前(できれば1日前、無理なら30分前くらい)から拡散しておくとよいですね。
また一軒家の場合は、天井や天袋など飼い主の手の届かない場所に入り込む可能性もあるのでご注意を。
猫と引越し当日に押さえておきたい注意点と行動リスト

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いざ引越し当日。気持ちがたかぶってあまり眠れなかったり、最後まで準備に追われていたり、落ち着きたくても落ち着けない状況になるでしょう。それでも愛猫には努めて冷静に、いつも通りに接することを心がけてください。
引越し当日は、愛猫にとって特にストレスがかかりやすい一日です。無事に乗り切るためにやるべきことを上にリストアップしましたので、ぜひ参考にしてください。特に気をつけたいポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
引越し当日が最も危険! 逸走防止策を徹底する

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「引越し当日は、最も逸走トラブルが発生しやすい、ということを肝に銘じておきましょう。特に、今まで誰にも預かってもらったことがない猫の場合、逃げ出す確率はグッと高まります。業者に預けるよりも、飼い主と移動する方がよいでしょう」 (水越先生)

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マイカー移動時のケアポイント:車酔いやパニックを防ぐ工夫

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車移動の経験が少ない猫の場合、車の環境そのもの(特有の匂いや音、振動など)が猫に緊張を与え、パニックや車酔いを引き起こしてしまうことも。
キャリーケースに布をかぶせて視界を遮る、エンジンの振動や音がダイレクトに伝わらないようキャリーケースは座席に固定するなど、できるだけ静かに落ち着いて過ごせるようきめ細やかな対応が求められます。スプレータイプのフェロモン製剤を車内に拡散しておくことも有効です。
猫と引越し後に押さえておきたい注意点と新生活への慣らし方

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新しい住まいに、飼い主が心躍らせる一方で、愛猫にとっては不安だらけの毎日になっています。今まで安心安全だった自分の「ホーム」がなくなってしまったのですから、落ち着けないのも無理はありません。
引越し後に大切なのは、できるだけ今までの習慣を変えないこと。愛猫にとって1日も早く新居がホームになるよう、寄り添ってあげること。焦らずじっくりと、愛猫と一緒に新生活を楽しんでいきましょう。
そのためにやるべきことを上のリストでまとめましたので、ぜひ参考にしてください。特に注意したいポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
引越し後、無理に新しい環境に慣れさせようとしない

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「環境に慣れるペースや安心感を得られる方法は、猫によってそれぞれ違います。間違っても無理に慣らそうとしないこと。焦らず、その子のペースで“大丈夫の経験”を積み重ねさせてあげることが大切ですね」(水越先生)
そして、引越し後も気をつけたいのが、逸走と迷子です。猫は犬に比べて、自分で自分の身を守る意識が強いため、恐怖や不安から離脱しようと隠れたり、逃げようとしたりする気持ちが強い傾向にあります。玄関や窓、ベランダなどは、猫が脱走できないようにしっかり対策しておきましょう。
例えば、引越しを機に家具やインテリアも含め環境を一新したくなるけれど、そこは一度立ち止まって。愛猫は自分の匂いがついたものに安心感を覚えます。使い慣れたソファやベッドなど、愛猫と一緒に過ごした場所こそ、愛猫にとって大切なゾーン。一気にすべて新しいものにするのではなく、段階を追って少しずつ買い換えていくようにしましょう。
愛猫のストレス行動のサインを見逃さない! 引越し後の具体的な対策
何日も隠れて出てこなくなったり、夜鳴きをするようになったり、なんとなく元気がなかったり。引越し後は、緊張と不安から、愛猫がいつもと違う様子を見せることも。そんなときは、飼い主は過剰に心配せず、無理に改善しようとせずに、静かに見守ることも大切だと水越先生。
一方、食欲がない、食べたものを吐くといった様子やそれが続くときは、「ストレスのせい」と自己判断することは危険なのだそう。「病気が疑われるため、できるだけ早く動物病院に相談することをおすすめします」(水越先生)
ストレス行動は、その猫の過ごしてきた環境・習慣によって異なるもの。まずはしっかりご自身の愛猫と向き合ってあげることが、新居で共に穏やかに暮らしていく第一歩になるはずです。
猫の引越しで気になるQ&A:獣医師が回答!

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猫を伴っての引越しで、よくある疑問について水越先生に伺いました。
Q.海外へ帯同したいときはどうする?
引っ越しが決まったらすぐに、渡航予定の大使館へ問い合わせましょう。国によって、必要な書類やワクチンの種類も異なるため、大使館の指示に従ってください。書類や準備の不備があると、許可が下りるまで時間がかかりますし、最悪の場合、許可が下りず予定通りに移動できないことも。余裕を持って準備するようにしてください。
Q.多頭飼いの場合に気をつけることは?
一頭飼いの場合と同じく、多頭飼いでも一匹一匹の性質にあわせて、環境の変化に対処することが前提となります。
Q.周辺環境や空間の変化は猫にどう影響する?
特に気をつけたいのが、郊外から街中へ引越す場合。都会では、車やバイクなどの往来、大規模な工事など、常に騒音にさらされています。人間よりも聴覚に優れた猫は、このような騒音にも恐怖を感じ、パニックになりがちです。遮音カーテンを取り入れたり、静かにこもれる場所を確保したり、愛猫が少しでも落ち着いて過ごせるよう工夫してあげましょう。
マンションから一軒家に引越す場合は、猫はその習性から今までなかった天井や屋根裏などに入ってしまうことがあるので、飼い主に手が届かないところはあらかじめ封鎖しておくと安心です。
逆に一軒家からマンションに引越す場合は、高い場所が好きな猫が登れるようなスペースがなくなる場合も。そんなときは、キャットタワーを設置するなどの工夫をしてみてください。
おわりに
飼い主にとっては、人生を変えるほどのイベントである「引越し」。不安がありながらも、期待の方が大きいかもしれません。一方猫にとっては、引越しそのものがストレスの源に。そのため、猫と安全に引越しするには、極力普段通りに過ごしながら、上手に環境をスイッチさせていくことが大事であるとわかりました。だからこそ、初動が肝心。つまりは、引越し後を見越して、事前準備をしっかり行うことです。そうすれば、飼い主も愛猫もストレスなく健やかに、新しい生活をスタートさせることができますよ。
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