愛犬を伴う引越しで注意すべきこと:獣医師が教えるトラブル回避術

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水越先生は「犬は小さな子ども(未就学児)と同じであると認識しましょう」と言います。つまり、いろいろなことに対して“自分でどうにかできる存在ではない”ということ。飼い主がそのことを常に念頭に置いて、愛犬をしっかり観察しながら寄り添うことで、引越し時のさまざまなトラブルも回避できそうです。
一瞬の油断で犬が逸走・迷子に! 引越し時のリスクと対策

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引越しという非日常的な場面(いつもとは違う状態)は、犬にとっては不安でしかなくなり、その不安から逃れるために「逃げる=逸走」という行動を取ってしまいがちです。引越し前後は業者の出入りが激しく、空間も雑然として落ち着かないですよね。それは、愛犬も同じなのだそう。
「犬にとって、知らない人が自分のホームに入り込んでくること自体がストレスになりますし、ドアが開けっぱなしになるなど、逸走して迷子になるリスクも、必然的に増えてしまうんです」(水越先生)
逸走の具体的な防止策については後ほどご紹介しますので、ぜひチェックしてください。
引越し後に困らない! 愛犬に関する手続きと環境整備のチェックリスト

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引越し先の自治体への登録変更とマイクロチップ登録の更新
人間は引越しにあたって、居住自治体に転出・転入届を出す必要がありますが、犬にも同様の手続きが必要です。犬の場合、転居から30日以内に、引越し先の市区町村窓口(保健所・役所)で「登録事項変更届」を提出しなければなりません。自身の転居届と同じタイミングで行うのがおすすめです。
マイクロチップを装着している犬は、登録情報の更新もお忘れなく。ちなみに、マイクロチップの登録変更が、転居先での手続きの代わりになるケースもあります。引越し先の自治体の制度を必ずチェックしておきましょう。
安心できる引越し先の動物病院を事前に探しておく
引越し先での新しい動物病院(かかりつけ医)を見つけておくと安心です。
「新しい病院探しは、現在お世話になっているかかりつけ医に相談してみるのも一つの手です。獣医師同士のネットワークがあるので、他県でも先生のつながりで、病院を紹介してもらえることもあります」(水越先生)
愛犬と安全に散歩できる引越し先周辺環境の確認
転居先の近隣環境(スーパーや各種病院、子どもの学校、最寄り駅までの道のりなど)を事前にチェックする際に、愛犬と散歩できる道や公園、犬にとって危険な場所などもあわせて確認しておくと安心です。
犬と引越しする前にやるべきこと・気をつけること

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引越しの前は、どうしてもバタバタしてしまいますが、そんな飼い主の様子に愛犬が戸惑い、ストレスを感じてしまうことも。引越し前の期間、飼い主はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
「特別なケアをするのではなく、できるだけ普段通りに生活することが重要」だと水越先生は言います。
愛犬との引越しをスムーズに進めるために、引越し前にやるべきことをまとめたのが上のリストです。このリストを参考に、準備を進めていきましょう。特に重要なポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
愛犬と飼い主、どちらも落ち着いて移動できる方法を考える
「犬目線で考えると、移動中も飼い主と一緒にいることが、一番落ち着くでしょう。ただ、飼い主が引越し作業などで、当日もテンパってしまうような状態であれば、引越し業者やペット専門の輸送業者に依頼する方が、安心かもしれません。また、ペットホテルやかかりつけの動物病院に預けることも、視野に入れましょう。飼い主が余裕を持って、スムーズに引越しできるような手段を選ぶのがベターですね」(水越先生)
クレートに慣れさせておく重要性
引越しで飛行機を使う場合や、引越し業者・ペット輸送業者に依頼する場合には、クレートは必須。そのため、普段からクレートに慣れさせておくことが重要なポイントになります。例えば自宅内でもクレートを使う、ケージの中で寝るようにするなど、囲いの中が安全で安心できる自分の場所であることを覚えさせてあげましょう。
お出かけ時は、クレートを使用するなど「クレートに入ること=楽しいこと」だと認識させておくと、移動がスムーズになるでしょう。
引越し当日は愛犬を預ける方法も検討する
近距離の引越しであれば、引越し当日は近隣の知り合いや実家など、愛犬が安心できる場所に預け、飼い主が落ち着いてから迎えに行くといった方法も有効だそう。
愛犬の性格・性質にあわせたストレスケアの工夫
人間と同じように、犬にもそれぞれの性格や性質に違いがあります。もともと怖がりな子や家族以外の人が苦手な子、環境の変化に弱い子など、その違いは千差万別です。また、多くの犬は歳を取ると頑固になる傾向もあります。
特に人の出入りが激しくなる引越し時は、どんな犬にとっても相当のストレスがかかります。業者が来るときや引越し作業をするときは、どこか静かな部屋に避難させる、ケージに入れておくなど、できるだけ犬への刺激を少なくするように心がけましょう。
引越しが決まったら、愛犬の性格・性質をもう一度振り返って、その子がどうすれば落ち着いて過ごせるのかを考えてみるのもいいですね。
かかりつけ獣医師に引越しについて事前に相談する

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愛犬の身体状況や性質を把握している、かかりつけ医を頼りにしない手はありません。引越しすることを伝え、新しい地域での病院探しや引越し時の注意点についても、アドバイスをもらっておくとよいでしょう。
水越先生も何度か引越しの経験があり、その際にはご自身のペットに、薬やサプリメントを服用させることがあったそう。
「不安傾向が強い犬の場合は、かかりつけ医と相談の上、不安を抑える薬や落ち着きを取り戻すサプリメントなどを処方してもらうこともできます。特に愛犬に持病がある場合は、急に体調を崩した場合の対処法なども、事前に確認・準備しておきたいところです」(水越先生)
引越し前に準備! 愛犬用の荷物と「慣れた匂い」の重要性

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なるべくいつもと同じように過ごすために、普段から使い慣れているおもちゃや愛犬のお気に入りグッズ類は、荷物からすぐに取り出せるようにしておきましょう。
引越しを機に、飼い主は家具も含め、いろいろなものを新調したくなりますが、犬は自分の匂いがついていないものに不安を感じます。今まで使っていた、慣れた匂いのもの(毛布やクッション、おもちゃなど)は処分せず、継続して使えるようにしてあげましょう。
クレートや首輪など犬用品の不備チェックは念入りに
「クレートやキャリーケース、首輪に不備はないか。その確認を怠っているケースが意外に多い」と水越先生は言います。例えばクレートの扉や首輪の金具が緩んでいたり、鍵が壊れていたりすることに気づかないまま使用し、その不注意が逸走を招いてしまうことも。クレートは、愛犬を安全に運ぶための大切なツールです。今一度隅々までチェックし、引越し時は万全の状態に整えておきましょう。
可能であれば、愛犬と一緒に引越し先を下見する

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「家を新築した場合など、引越し前に新居を訪れる機会があるのなら、ぜひ愛犬も一緒に連れていってあげてください」と水越先生。
引越し当日、いきなり新しい場所に連れてこられた愛犬のストレスは、ピーク状態になってしまいます。事前に少しでも新しい場所を一緒に観察していれば、愛犬は「ここに来たことがある」「ここの匂いを知っている」と感じ、ストレス軽減につなげることができるからです。
賃貸マンションへの転居など、引越し前に入室することが難しい場合でも、共用部分や物件の周辺を一緒に歩いてみるなど、できる限り愛犬と一緒に新居周りを確認しておきましょう。
犬と引越し当日にやるべきこと・気をつけること

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引越しは、その準備に右往左往しつつも、新しい生活の始まりに気持ちが高ぶる特別なイベントです。中でも当日は、忙しさもあって高揚感が抑えきれなくなるかもしれません。それでも愛犬には冷静に、いつも通りに接することを心がけるのがよいそうです。
引越し当日は、愛犬にとって特にストレスがかかりやすい一日です。無事に乗り切るためにやるべきことを上にリストアップしましたので、ぜひ参考にしてください。特に気をつけたいポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
引越し当日が最も危険! 逸走防止策を再確認しよう

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引越し当日は、逸走トラブルが最も発生しやすいため、特に注意しましょう。
また、基本的に愛犬の性格・性質にあわせて、当日飼い主にとっても無理のないように過ごすことがポイントです。
「全く誰にも預かってもらったことのない犬の場合、逃げ出す確率はグッと高まります」(水越先生)
その場合は業者に預けるより、飼い主と一緒に移動する方がよいでしょう。

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マイカーでの移動時に注意すべきこと

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普段から車移動に慣れている犬であれば、過剰に心配する必要はありませんが、車慣れしていない犬の場合は、きめ細やかな対応が求められます。
長距離になればなるほど、犬への負担も大きくなるため、できれば事前に少しずつ車でのお出掛けの機会を増やし、徐々に距離も伸ばしていくことをおすすめします。
マイカーを使って犬と引越すときの注意点は、小さな子どもを連れている場合と同じように考えるとわかりやすくなります。
昨今はドッグランがあるサービスエリアなども充実しているので、愛犬がストレス発散できるような移動行程を事前に考えておくと、飼い主も一緒にリフレッシュできてよいのではないでしょうか。
引越し後にやるべきこと・気をつけること

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いよいよ引越しが終わり、新生活がスタート。飼い主は新しい住まいにワクワクですが、愛犬にとって新居はまだ不安しかない場所です。
できるだけ今までの習慣を変えず、愛犬にとって1日も早く新居がホームになるよう、導いてあげることが重要ですね。そのためにやるべきことを上のリストにまとめましたので、ぜひ参考にしてください。特に注意したいポイントについては、このあと詳しく解説していきます。
新しい環境に慣れさせるために気をつけること
「人間にも言えることですが、環境に慣れていくペースは、犬によってそれぞれです。無理に慣れさせようとすると、かえって不安にさせてしまうこともあるので、焦らず、その子のペースで“大丈夫の経験”を積み重ねさせてあげることが大切です」(水越先生)
例えば、これまで長時間お留守番ができていた子でも、慣れない環境下では留守番自体のハードルが高くなることもあります。引越し直後は留守番させる時間をできるだけ短縮し、その後、段階的に少しずつ時間を延ばしていくといった配慮を。
このように、徐々に「大丈夫の経験」を積み重ねていくことで、その子の中で「新しい環境に対する安心感」が育まれていくのだそうです。
愛犬のストレスサインに注意! 引越し後の具体的な対策

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引越し後、愛犬が今までとは違う行動を起こす場合は、もしかするとストレスサインかもしれません。
「そんなときは、以前と環境面で変わったことがないかを考えてみてください」と水越先生。
「一例ですが、引越してから、夜寝るときに飼い主がそばにいなくなると、寂しがって鳴くようになったワンちゃんがいました。引越し前はマンションに住んでいて、飼い主さんとワンちゃんは近い部屋で寝ていたのですが、一戸建てに引越して、犬は1階のリビング、飼い主さんは2階の寝室で寝るようになって、距離が離れたことが原因でした。枕が変わると寝られない人がいるのと同じで、以前と違う環境では、犬も安心して眠れないんです」(水越先生)
愛犬がなじんでいるソファやベッドなどを、引越し時にすべて新しいものに変えてしまうことも避けた方がよさそうです。また、犬に安心感や落ち着きを与えるストレスケアのフェロモン製剤(スプレーやディフューザータイプあり)が存在します。犬を新居に導入する前に、フェロモン製剤を拡散しておくことで、犬に安心感を与えることができるとか。動物病院で購入可能なので、かかりつけ医にあらかじめ相談しておくといいかもしれません。
「ただし、引越し後、食欲がない、食べたものを吐くなど、目に見えて異常が確認される場合は、病気も疑われるので、できるだけ早く動物病院に相談することをおすすめします」(水越先生)
何がストレスになるか、どんなストレスサインを出すかは、その犬の過ごしてきた環境・習慣によって異なります。まずはしっかり愛犬と向き合うことが、新居で共に穏やかに暮らしていく第一歩になるはずです。
犬の引越しで気になるQ&A:獣医師が回答!

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犬を伴っての引越しで、よくある疑問について水越先生に伺いました。
Q.海外へ帯同したいときは、まずどこに相談すべき?
引越しが決まったらすぐに、渡航予定の大使館へ問い合わせてください。国によって必要な書類やワクチンの種類も異なるため、大使館の指示に従いましょう。書類や準備の不備があると、許可が下りるまで時間がかかったり、許可が下りなかったりする場合もあるため、余裕を持って準備するようにしてください。
Q.多頭飼いの場合の引越し注意点は?
基本的には、一頭飼いの場合と同じです。多頭飼いでも、一頭一頭の性質にあわせて、環境の変化に対処することが前提となります。
Q.周辺環境や気候の変化は犬にどう影響する?
都会・街中から自然豊かな郊外への移動は、さほど大きな影響があるとは考えにくいですが、郊外から街中へ引越す場合は注意が必要です。都会は交通量が多く、常に騒音にさらされています。郊外育ちの犬は、車やバイクの存在、騒音全般への耐性がないため、反射的に「怖い!」と感じパニックになりがちです。比較的静かな早朝や夜から散歩を始めてみるなど、工夫をしながら周辺環境に慣らしていってあげましょう。
気候の異なる土地に引越す場合も心配になりますが、室内飼いならさほど影響はないと言っていいでしょう。
マンションから一軒家への引越しなど、空間的変化についても、犬は猫のように天井裏へ隠れるなど建物の構造にあわせて移動することもないので、特に心配することはありません。ただし、一軒家の場合、階段の登り降りが犬種によっては身体へ負担をかけることもあるため、注意が必要です。
おわりに
人間にとっては、人生の一大イベントでもある引越し。一方、犬にとっては、できるだけ引越しを特別なことにせず、普段通りに過ごしながら上手に環境の変化に順応させていくことが大事であるとわかりました。飼い主も愛犬もストレスなく健やかに新しい生活をスタートできるよう、引越し前の準備からしっかり行っていきたいですね。
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