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入浴中に地震が起きたらどうする?! 備えと対処法を防災士が解説

入浴中に突然大きな地震が起きたら? パニックになる方も多いでしょう。慌てて外に出ようとして転び、ケガをする方もいるかもしれません。 地震はいつ起こるか予測できないので、さまざまなシチュエーションを想定しておく必要があります。今回は入浴中に地震が起きた場合の対処法や、いざというときに慌てないための備えについて、東日本大震災で被災し、熊本地震と令和2年7月豪雨も経験した 「歌う防災士しほママ」こと、柳原志保さんにお話を伺いました。

最終更新日:2025.3.26

目 次

入浴中に地震が起こると危険な理由

バスルーム

PIXTA

「入浴中は無防備なため、大きな揺れがあった時などは普段より怖いと感じると思います。しかし、お風呂やトイレは四隅に柱があり、構造的には移住室より耐震性が高いといえます。つまりお風呂という場所自体は比較的安全なので、落ち着いて行動してくださいね」としほママさん。

地震による危険性は、建物の耐震性によって大きく変わります。

「実際に大きな地震では、耐震性の低い古いアパートの1階がつぶれてしまった例もあります」(しほママさん)

しかし、古い建物だとしても、狭い空間は構造として丈夫です。「とにかく慌てないでほしい」としほママさんは強調します。

そのためにも、以下のような浴室の危険な点を把握しておくことが大切です。

脱衣している状態なのですぐに避難しにくい

入浴中に揺れを感じると誰もが慌ててしまいます。

「避難しなければと思っても、裸のまま、あるいはバスタオルを身体に巻き付けただけの状態で逃げるのは現実的ではないですよね。とっさにお風呂から出ても、寒い時期だと、身体を冷やしてしまい命の危険にもつながりかねません。避難するためには服を着る必要があるので、速やかな避難ができにくいです」(しほママさん)

浴室にはケガの原因になるものが多い

「一般的に浴室には大きな鏡やカミソリなど、ケガの原因になるものがあります。高い位置にシャンプーやボディーソープを置いている家庭では、大きな揺れによってそれらが落ちてくることも考えられます。また、窓のある浴室なら窓ガラスが割れるという危険もあるでしょう」(しほママさん)

浴室内はぬれているため、転倒などの危険がある

浴室の床は水にぬれていて滑るため、慌てると転倒につながることも。

「そもそも直下型地震の大きな揺れでは、すぐに歩いたり走ったりできる状態ではありません。実際に、熊本地震の時はすぐに動けませんでした。無理に浴室から出ようとすると、危険です」(しほママさん)

【入浴中に地震!】安全に避難するには?

避難場所の案内看板

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もしも入浴中に地震が起きた場合、どのように避難すればよいのでしょうか。しほママさんに詳しく解説してもらいました。

1. 浴室の出入り口を開ける

「上の階の重みによって浴室のドアなどが開かなくなってしまうこともあります。そのため、可能であれば、まず出入り口を開けて、避難経路を確保するとよいでしょう」(しほママさん)

しかし、浴槽に浸かっていたり、大きな揺れで立ち上がれる状況ではない場合もあります。揺れ方や、浴室のどこにいるかによって浴室の出入り口が開けられないこともあるので、その際は無理せず、まず頭を守り、姿勢を低くしてください。

2. 頭を守りながら、姿勢を低くして、揺れが収まるまで待つ

お湯につかっていた場合は、まず浴槽から出ないといけないと思うかもしれません。しかし、揺れ方によってそれは難しいのだそう。

「東日本大震災の時のような、だんだん大きくなる横揺れであれば、揺れが小さいうちに浴槽から出ることはできると思います。でも熊本地震のような、最初から下から突き上げる大きな揺れの場合は、立ちあがることも難しいでしょう。また、慌てて浴槽から出ようとすると、転倒することもあり危険です。
そのため、取りあえず座ったままで頭を守ってください。手近なところに洗面器やお風呂のふたなどがあれば、それで頭をガードしましょう。熊本地震では浴槽の中でこうして身を守った人もいます」(しほママさん)

浴槽の外で身体や髪などを洗っていたときに地震が起こった場合も、姿勢を低くして頭を守ることが基本だそうです。

「また、大きく揺れている最中は、立たなくても転倒の危険があります。そんな時は、バスタブの縁などにつかまるようにしてください」(しほママさん)

3. 揺れが収まったら、周囲の安全を確認してから動く

「どんなに大きな揺れでも必ずいったん収まります。怖いですが、慌てずに深呼吸して、自分に大丈夫だよと声をかけて落ち着かせてくださいね」(しほママさん)

揺れが収まったら、一呼吸おいてガラスの破片など危険なものがないか足元を確認しながら浴室を出ます。

4. 給湯器のスイッチを消す

多くのガスメーターには、震度5以上の大きな揺れを感知すると自動でガスが遮断される安全装置が付いています。しかし、念のため給湯器のスイッチも切っておきましょう。

5. 身体や髪を拭き、服を着て避難する

「夏はともかく、気温が低い時期に身体がぬれたままだと命の危険があります。実際、冬に起こった東日本大震災では、津波の被害に遭われた方が身体を拭くことができずに低体温症で亡くなったケースもあります」(しほママさん)

【入浴中に地震!】日頃からの備えが大切

スリッパ

uchicoto

地震に対する備えはしていても、入浴中に地震が起こることまでは想定していないという方も多いのではないでしょうか。
入浴中は無防備な状態で危険も多いため、日頃からどのような備えをしておくとよいのかをしほママさんに伺いました。

入浴時は脱衣所に服やスリッパを置くことを習慣に

屋外に避難しなければいけなくなることも想定して、入浴時には脱衣所に服などを用意しておきます。

「脱衣所に常時、家族分の避難用の長袖や長ズボンを置いておくというのは現実的ではないかもしれません。でも入浴後に着るものを用意してから入浴しましょう。最悪の場合、パジャマでも避難はできますから。
また、非常時に足をガラスの破片などから守るため、普段の入浴後には使わないとしても、靴下やスリッパなどを脱衣所に置いておくと安心です」(しほママさん)

スマートフォンや携帯電話は浴室のすぐ外に

「脱衣所にスマートフォンや携帯電話を置いておくことも大切です。連絡をとったり、情報を得られたりするだけではなく、音を出すことができ、ライトにもなります」(しほママさん)

しほママさんによると、実際に熊本地震で建物の中に閉じ込められてしまった方が、スマートフォンの音を鳴らすことで外にいる人に気がついてもらえて、救助されたケースもあるそう。また、夜の入浴時に停電したときにはライトが大いに役立ちます。

避難時の寒さ対策も心がけておきたい

「冬の地震では寒さ対策が重要です。脱衣所に携帯カイロを用意しておいたり、普段から脱衣所で電源不要の暖房機器を使用したりしていると、ヒートショック予防にもつながりますし、非常時に役立ちます」(しほママさん)

【入浴中に地震!】こんなときはどうする?

地震速報

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入浴中に地震が起きた場合の対応について、気になる細かな点についても、しほママさんにお答えいただきました。

Q. 子どもと入浴しているときに地震が起きた場合の注意点は?

A. 基本的には大人と同じです。まず頭を守ることが大切。日頃から子どもにも、「地震のときは頭を守る」という基本を伝えてください。

Q. シャンプー中に揺れがおきたらどうすべきですか?

A. シャンプー中でもまずは頭を守り、避難経路を確保します。揺れが収まったら、浴槽にお湯をためている場合は、そのお湯でシャンプーの泡をサッと洗い流します。その後、特に冬は体温を奪われるのを防ぐために、しっかりとタオルドライしてください。

Q. 浴室に閉じ込められたらどうすればよいですか?

A. これに関しては、その時の状況によってやるべきことが変わるので、いつでも通用するような正解はありません。
天井が落ちていないなら、私なら浴室のふたなどそこにある硬いものを使って出口を押します。そして、隙間をなんとか作って出られるようにしますね。

Q. 防災リュックは脱衣所に置いた方がいいですか?

A. 入浴中に地震が起きても、避難する際は玄関などの出口から出ますし、湿気が多い脱衣所に置く必要はないでしょう。

Q. 浴室から出たら、まず自宅のどこに避難すべきですか?

A. 自宅で過ごすなら、転倒しそうな家具や大きな窓などがなく、高い場所に重い物が置かれていない場所(安全ゾーン)に避難しましょう。余震によってガラスが割れたり、物が落ちてきたりすることもよくあるからです。
また、暖をとるためにも家族が一緒にいられる場所、出入り口に近い部屋もよいですね。

地震の時に家の中で【安全な場所】はどこ? 身を守るための安全対策とは?

Q. 普段から浴槽に貯水したほうがいいでしょうか?

A. これはケース・バイ・ケースです。貯水すれば生活用水を確保できますが、地震の大きさによっては、マンションやアパートの2階以上の部屋の場合、貯水していた水が下の部屋に漏れてしまうこともあります。また、小さなお子さんがいるご家庭では常時水をためておくと危険なこともあるでしょう。

おわりに

あってほしくないことですが、入浴中に地震が起こることもありえます。服を着ていない状態で大きな揺れを感じると普段以上に怖さがあり焦ってしまいますが、大切なのは落ち着いて行動することです。そのためにも普段から防災意識を持ち、正確な知識をもとに備えをしておきたいですね。

  • この記事取材先

    柳原志保(しほママ)

    防災・安心プランナー

    柳原志保(しほママ)

    宮城県多賀城市生まれ、熊本県和水町在住。2011年東日本大震災では自宅が大規模半壊し、2週間の避難所生活を送る。2014年に防災士の資格を取得後、2016年熊本地震、2020年熊本豪雨で自宅避難を経験。大災害の体験を『歌う防災士しほママ』の愛称で、エンターテイメントを用いてわかりやすく伝える講演やステージが人気。

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公開日:2025.3.11

最終更新日:2025.3.26

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