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避難所

災害時お風呂に入れないときの対処法は?【防災士が解説】

入浴は身体を清潔にすることはもちろん、心身のリラックスのためにも重要です。しかし、災害によって自宅が断水や停電した場合、あるいは避難所で過ごすことになると、入浴できない日が続くこともあります。風呂に入れないときにも衛生状態を保って、できるだけ快適に過ごすためにはどうすればよいのでしょうか。東日本大震災で被災し、熊本地震と令和2年7月豪雨も経験した「歌う防災士しほママ」こと柳原志保さんに、被災時の実情を踏まえたアドバイスを伺いました。

最終更新日:2025.3.11

目 次

お風呂に入れないとどんなことが起こる?

蛇口が故障して水道水が出ない時の女性の手

PIXTA

しほママさん自身も東日本大震災で被災した際は、10日間ほどお風呂に入れないという状況になったそうです。

「東日本大震災で被災したときは、冬だったので汗をかくことがあまりなかったのでまだよかったと思います。とはいえ、日中に汗ばむこともありましたし、赤ちゃんや子どもは汗をかきやすいため、うちの子もお風呂に入れず湿疹ができるなどしてかわいそうでした」(しほママさん)

身体のニオイや肌のトラブルはもちろん、特に髪の長い女性は髪が汚れてベタつくのをつらく感じることもあるかもしれません。

入浴できないことで衛生状態が悪くなると感染症のリスクが高まりますが、それ以外にもダメージがあるとしほママさんは言います。

「例えば、お風呂に入れないことでしっかり眠れなくなるということも起こりがちです。睡眠が足りないと身体だけではなくメンタル面にも悪影響がでてきます。お風呂に入れないくらいと思いがちですが、震災関連死につながることもある大きな問題なんです」(しほママさん)

お風呂に入れないときに役立つ便利グッズ

便利グッズ

提供:しほママ

災害によってお風呂に入れない状況になったときにも、できるだけ清潔を保ち、体や心を安定させるために、しほママさんは、熱源や水がなくても使えるパーソナルケアグッズを防災リュックに入れておくことをすすめます。

「水を使わないグッズではお風呂と同じようにすっきりとはいきませんが、それでもあるとないとでは大きな違いです」(しほママさん)

例えば、以下のようなグッズがお風呂に入れないときに役立ちます。
ドラッグストアやネットショップで手に入りやすいものなので、普段から準備しておきたいですね。

  • ボディーシート
  • 洗い流し不要のボディーソープ(ミストタイプ、泡タイプなど)
  • 水を使わないシャンプー(シートタイプ、スプレータイプなど)
  • パンティライナー/おりものシート

シートタイプとミストや泡タイプ、どれが便利?

ボディー用でも髪用でも、シートタイプとミストや泡タイプがあります。どれを選んだらよいのか迷ってしまいそうです。
実際に使ってみたしほママさんによると、「防災用リュックに入れて持ち出すことを考えると、ボトル入りの泡やミストタイプは重さが気になります。でも実際に使用してみると、シートタイプよりすっきり感がありますね」とのこと。

持ち出し用には軽くてかさばらないシートタイプが便利ですが、自宅避難の場合は重さより使い心地を優先してもかまわないため、できればいろいろなタイプを用意しておくのがよさそうです。

自宅を離れて避難する場合は、個々の防災リュックにはシートタイプを、家族で避難するなら一人がリュックの中にスプレーやミストタイプのものを入れておくということも考えられます。

「ボディーシート」選び方と使い方のコツ

ボディーシート

提供:しほママ

ボディーシートはドラッグストアや100円ショップでもさまざまな厚み、大きさ、香りのものが販売されているほか、防災用品として厚手で大判のものがラインアップされていることもあります。
ボディーシートの選び方や使用方法について、しほママさんに体験に基づいた意見を伺いました。

使いやすいのはノンアルコール、無香料タイプ

しほママさんによると、「スッキリしそうだからとメントールやミントなどを用いたボディーシートを選びがちですが、清涼感の強いタイプは身体を冷やすため寒い季節には不向きです。また、子どもやデリケートな肌の方は、香りが強いものや、刺激があるものを避けたほうがよいでしょう」とのこと。
防災用として備えるのなら、家族の誰もが使えるようにノンアルコールで無香料のボディーシートがよさそうですね。

「一般的なボディーシートのほか、赤ちゃんのおしりふきなら、肌にやさしく、デリケートゾーンにも使用できますよ。また、ボディーシートで顔を拭くこともあるため、乾燥肌の方は保湿成分が含まれた商品を選ぶとよいでしょう」(しほママさん)

大きさは使い方を考慮して選ぶ

市販のボディーシートは、ハンカチ程度からタオルサイズまでさまざまな大きさのものがあります。

「大判ボディーシートのメリットは、自分で背中なども拭きやすいこと。でも少ない枚数でもかさばるのが難点です。体を拭くのに家族の手を借りることができるのなら必ずしも大判ではなくても大丈夫です」(しほママさん)

水分量の多いものを選ぶ

ボディーシートは多くの種類が販売されていますが、使ってみて初めてわかる違いもあるのだそう。

「例えば私が使ってみた100円ショップのボディーシートは、ドラッグストアなどの商品と比較すると、水分量が少ないと感じました。そのため、拭く感覚が物足りないと感じる方もいるかもしれませんし、水分がとんですぐに使えなくなる可能性もあると思います」(しほママさん)

ボディーシートで拭くときは体の上から下へ

つい汗ばんだところから拭きたくなりますが、ボディーシートの使い方にはコツがあるそう。

「汗は上から下へ流れます。そのため、ボディーシートは一般的に体の上の部分から下に向かって拭いていくようにしましょう。顔、首、脇、身体、おなか、下半身、最後に足です。ゴシゴシと強く拭かずに、優しく拭きます」(しほママさん)

冬はボディーシートをカイロで温めてから使う

寒い時期にボディーシートを使うと、含まれる水分で身体が冷えてしまうこともあります。

「少量入りのパックを選び、袋ごとカイロで温めてから使うと体が温まるのでおすすめです」(しほママさん)

「洗い流し不要のボディーソープ」とは

ボディーシートとは違い、スーパーなどで見かけることは少ないですが、洗い流し不要で使えるボディーソープもあります。ミストタイプや泡タイプがあり、どちらも清潔なガーゼやタオルに含ませて身体を拭くという使い方です。
看護・介護用や被災地で使用することを前提とした商品が多いため、ノンアルコール、無香料で肌にやさしい成分のものがほとんどで、デリケートゾーンにも使用可能。体だけでなく髪も一緒に洗えるタイプの商品もあります。

「水分量も多いため、ボディーシートで拭くよりすっきりします。ただ重量がネックで、在宅避難に備えて用意しておくのはおすすめですが、持ち出すのは難しいケースもありますね」(しほママさん)

「ドライシャンプー」の選び方と使い方のコツ

ドライシャンプー

提供:しほママ

水を使わず髪を清潔にするドライシャンプーには、スプレー、ミスト、ジェル、シート、パウダーなどのタイプがあり、ドラッグストアなどで購入できます。

柳原さんは実際に使った経験から「スプレータイプやシートタイプのドライシャンプーは手に入りやすいですが、どちらも水で洗い流すシャンプーほどすっきりきれいになるわけではありません。しかし、髪が汚れてベタベタした状態だと気持ち悪いだけでなく、他人にそれを見られることも憂鬱になります。そのため、できれば自分に合ったドライシャンプーを防災用品として用意するようにしましょう」とすすめます。

タイプ別の特徴としては、直接髪や頭皮に吹き付けるスプレータイプのほうがシートタイプより爽快感があり、頭皮も一緒にきれいにしやすいそう。ただし、シートタイプより刺激を感じやすいので、肌がデリケートな方は注意してほしいとしほママさんは言います。

一方、シートタイプは刺激は少ないものの、スプレータイプより水分量が少ないため、洗浄力は落ちます。
また、頭皮をしっかり拭くのが難しいことも難点です。これに関しては、柳原さんは「目の粗いブラシにシートをかぶせて押し込んでからブラッシングすると、比較的頭皮もきれいにしやすいと思います」というアイデアを教えてくれました。

スプレータイプの場合は、最初にブラッシングしてから頭皮や髪に直接吹きかけ、その後、もう一度ブラッシングします。

「ロングヘアの方は汚れを防ぐためにも、避難中は髪ゴムでまとめている方が多いです。普段から多めに髪ゴムを用意しておくといいですね」(しほママさん)

女性は「パンティライナー」の使用もおすすめ

女性はデリケートゾーンの衛生面も気になります。

「被災時にはこまめに下着を取り換えることができない場合もあるので、パンティライナーやおりものシートなどを使うのがおすすめです。トイレのたびに取り換えれば清潔に保てます。薄手タイプだと1袋にたくさん入っていてリーズナブルといえるでしょう」(しほママさん)

ボディーシートやボディーソープには使用期限がありますが、パンティライナーには使用期限がない点も備蓄品として便利です。普段から使っている方もローリングストックのリストにいれておくとよいでしょう。

お風呂に入れないときは、お湯をわかして清潔を保つ

カセットコンロ

PIXTA

「お湯があれば、温かい蒸しタオルも作れて、体を冷やさずに拭いて清潔にすることができます。災害時には停電することも多いため、カセットコンロとガスボンベ、電池で動く石油ストーブなど、電気を使わずにお湯が沸かせるツールを用意しておきましょう。どちらも普段から使えるので邪魔にはなりません。

私が被災したときには、ボランティアの方が足湯を用意してくれました。足を温めると身体全体がぽかぽかするので、沸かした湯で足湯をするのもおすすめですよ」(しほママさん)

まとめ

災害時、お風呂に入れないことが続くと心身ともに気持ちよく過ごすことはできません。そんな中でもできる限り衛生的に過ごせるように選択肢を増やしておくことが大切です。家庭の防災のひとつとして「お風呂に入れないときの備え」をテーマに、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

  • この記事取材先

    柳原志保(しほママ)

    防災・安心プランナー

    柳原志保(しほママ)

    宮城県多賀城市生まれ、熊本県和水町在住。2011年東日本大震災では自宅が大規模半壊し、2週間の避難所生活を送る。2014年に防災士の資格を取得後、2016年熊本地震、2020年熊本豪雨で自宅避難を経験。大災害の体験を『歌う防災士しほママ』の愛称で、エンターテイメントを用いてわかりやすく伝える講演やステージが人気。

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公開日:2025.3.11

最終更新日:2025.3.11

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