台風や地震で断水に! 過去に起こった断水の状況とは?

Hiroko Igarashi
断水は台風や地震など大規模な災害で、水道管の破裂や浄水処理施設の停電などで起こります。給水設備のメンテナンスを目的として計画的に断水が実施される場合もありますが、困るのは突発的な断水ですね。
過去の大きな災害で、断水はどのくらい発生しているのでしょうか。また断水の期間はどのくらい継続したのでしょうか。

厚生労働省「水道行政の最近の動向等について」より
厚生労働省のウェブサイトでは、過去30年の地震で発生した断水の状況が公表されています。断水継続期間は2日から約5カ月。また、同資料では耐震化の遅れも指摘されています。水道管路の耐震適合率は約4割にとどまり、今後の大規模災害時には断水が長期化するリスクがあります。
断水が起きた場合に備えて、家庭では何を準備すれば良いのでしょうか。
断水に備えて、お風呂に水はためるべき?

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古くから「台風や地震が起きたら浴槽に水をためるべき」といわれますね。浴槽にためた水に衛生的な問題はないのでしょうか。またその際の注意点はどういったことなのでしょうか?
東日本大震災を福島県浪江町で被災し、避難所を含む五カ所を転々と避難した経験を持つ防災士の五十嵐浩子さんにお話を伺いました。

Hiroko Igarashi
五十嵐さん「私は災害時用にお風呂に水をためることはせず、普段から蛇口の水を貯水タンクにためています。子どもがまだ幼いのでお風呂の残り湯をためておくと転落の危険もありますし、残り湯には衛生面に問題があり、用途は限られます。災害時用にためておくなら貯水タンクの水の方が使い勝手が良いからです」
五十嵐家には20リットルの貯水タンクが8個あり、普段から水道水や湧き水をローリングストックしているそう。
蛇口から水を出してお湯に変わるまでの間など、ちょっとした水を無駄にせず貯水タンクにためておき、料理や飲み水には貯水タンクの水を使用します。
五十嵐さん「水道水は塩素の効果で腐りにくくなっています。常温でも3日間ほど保存できます。わが家では料理や飲用には、蛇口の水ではなくタンクの水を使っています。使い切れない時は洗濯や掃除に使うことができるので、古い水がいつまでも残ることもありません」
浴槽にためられる水の量は160〜200リットル。20リットルの貯水タンクを8〜10個使うとお風呂と同量の水をためることも可能ですね。
お風呂に水をためる際の注意点

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五十嵐さんによると、浴槽にためた水でも用途に注意すれば使えるとのこと。
五十嵐さん「災害時に一番困ったのは、水が使えないことでした。地震で砂壁から砂が落ち停電で掃除機も使用できず水を使って掃除できないことに困りました。次の日には顔が洗えないこと。日数がたつと頭や身体を洗えないこともストレスになりました。なので災害が起きた際は、断水してしまう前にきれいな浴槽に水をためておくことは良いかもしれません」
水をトイレに流すことに使用してはいけない

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断水時、ためていた水をトイレに流し、水圧で汚物を流す方法がありますが、五十嵐さんは避けた方が良いと言います。
五十嵐さん「昔は断水時、トイレに流す家庭が多かったのですが、排水管が破裂していたり、上下水道施設が被災していた場合、逆流してきたり破損箇所で汚水が出てしまうことがあります。そのため、今では災害による断水時に水を流さないのが常識です」
水を流したことが原因で上階の汚水で下の部屋が汚染されるリスクもあります。マンションなどの集合住宅では特に注意が必要です。
大きな災害が起きたら、トイレの水洗機能は使わず、家庭用の防災トイレを使うのが基本です。
入浴した後の残り湯ではなくきれいな水をためておく

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入浴後の残り湯を飲用や料理に使うのは、衛生面で問題があります。断水に備えて水をためるのであれば、蛇口からきれいな水をためておきましょう。ただ、入浴人数が少なく残り湯が比較的きれいな場合は、洗濯や掃除に使う方法もあります。ご家庭の事情や用途によって使える場合があるかもしれません。
浴槽にためた水は用途を絞って使用する
断水時に水は大変貴重なものです。用途を絞って使えば便利なこともあります。そのまま飲用や料理はできませんが、植物への水やりや洗濯、掃除などの用途には使用できます。
「暖かな日であれば、貯水タンクに移して日光に当てて温めておいて、身体を拭くのにも使えます」と五十嵐さん。用途がないのにためても意味がないため、ご自身の暮らしを振り返り、用途を想定してためておく必要があるそうです。

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なお、五十嵐さんは川の水でもろ過して飲めるという浄水ボトルも準備していると言います。
五十嵐さん「わが家では水道水をローリングストックで用意し、ペットボトルの水も常備しています。それでも汚れた水しか手に入らない場合が起こり得ます。今、釣りやキャンプの際に浄水ボトルを使って、川の水を飲んでみるというのも実験中です」
小さなお子さんがいる場合は浴槽に水をためない

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五十嵐さん「過去には小さなお子さんが浴槽に転落して溺死してしまう事故も起きています。ほんの数分、目を離しただけで、小さなお子さんは思わぬ行動をします。頭が重くて転落しやすいことや、溺れた時に静かに沈んでいく特性があるので、気づきにくく、大変危険です」
浴槽に水をためてふたをしておく方法もありますが、ふたの上に乗っかって浴槽に転落することも起こり得ます。小さなお子さんがいる家庭は、浴槽に水をためるのはやめましょう。
おわりに
お風呂の水をためることについてお話を伺いました。以前は飲み水としてお風呂の残り湯を活用することも想定されましたが、現代では貯水タンクや浄水ボトルなど多様な選択肢があります。
「災害時に一番困ったのは水ですが、飲料という視点ではジュース、コーヒーなどの嗜好(しこう)品も備えておくと安心です」と五十嵐さん。ご家庭によっても必要なものは異なるため、実際に起きた場合を想定して、普段から備えておくことが大切ですね。