昨今話題の「食用油の回収・リサイクル」とは?
多くの自治体で食用油は可燃ごみとして捨てる方式が主流ですが、自治体の中には、食用油の回収・リサイクルを推進するところも増えています。全国でも先駆けて「廃食用油のリサイクル」を進めてきた京都市の環境政策局循環型推進部 まち美化推進課の遠藤晃冬さんにお話をお聞きしました。
「1997年の12月に京都で開催されたCOP3※で『京都議定書』が採択されました。これは二酸化炭素を減らしていくために先進国の削減目標を定めたものでしたが、そのことをきっかけに京都市では温暖化対策に力をいれるようになりました。その取り組みのひとつとして廃食用油のリサイクルを続け、今に至ります」(遠藤さん)
※COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)
回収された食用油(廃食用油)はバイオディーゼル燃料に精製され、市バスやごみ収集車で軽油の代わりに使用されるそうです。
始まった当初は「回収拠点まで持ち込むのが手間で・・・」という声もありましたが、25年も経ち、今では食用油をリサイクルすることが当たり前のこととして浸透した京都市。「回収してもらえるのはとても便利」といった声が多く市民の方からも届くようになったそうです。
食用油の回収、今後はどうなっていく?
家庭にとって揚げ物の油の処理が手軽になる「食用油(廃食用油)の回収」。ごみを減らしてくれる上に、油は別の用途にリサイクルされます。メリットばかりに思えますが、この食用油(廃食用油)のリサイクル、今後は全国的に広がっていくのでしょうか?
全国油脂事業協同組合連合会の令和3年度のデータで見ると、現状、飲食店など事業用の廃食用油は9割以上が回収され、石けんなどにリサイクルされています。一方、家庭で排出された食用油は1割程度しか回収されておらず、可燃ごみとして捨てられたり、排水口に流されてしまっているのが現状です。
「廃食用油を、バイオディーゼル燃料だけでなく航空燃料としてリサイクルする取り組みが近年、世界的に注目されており、廃食用油を有価で取引する動きもあります。廃食用油を燃料としてリサイクルすることは、可燃ごみの減量だけでなく温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にもつながるため、将来的には全国的に広がっていくと思います」(遠藤さん)
京都市では市民の方々に協力いただきながら、自治体と民間の回収業者が主体となり協働で回収を行っているそう。長年、食用油の回収を行ってくる中で、この体制が実現したとのことです。油の回収は、こぼれた場合の清掃作業など管理面での負担も大きいため、長く回収を続けていくためには、自治体や市民がお互い協力しながら体制を作っていく必要があるとのことでした。
東京都ではどのような取り組みが進んでいるの?
東京都では、航空燃料の原料となる廃食用油の回収事業を事業者と協定を締結し、共同で取り組んでいます。
一つ目は、イトーヨーカ堂との事業で、食用油のリサイクルを希望する顧客に、店舗で専用リターナブルボトルを配布し、サービスカウンター等で回収する取り組みを都内9店舗で実施(令和5年12月現在)しています。回収された家庭系廃食用油は、吉川油脂と連携し、石鹸・インク溶剤等の製造へ活用されます。
二つ目は、日揮HD・コスモ石油・レボインターナショナルとの事業で、自治体と連携した定期回収や地域イベントでの廃食用油回収、廃食用油の利用に関する環境学習等を行っています。回収された家庭系廃食用油は、レボインターナショナルと連携し、バイオディーゼル燃料の原料として活用されます。
各社ともに、将来的には、回収された家庭系廃食油について、持続可能な航空燃料(SAF)の原料とすることも目指していると言います。
さらに、東京都では、こうした取り組み以外に、廃食用油回収および都民のSAF認知度の向上を目的として、動画作成し、住民への周知に取り組んでいます。
おわりに
捨て方が少し面倒な食用油ですが、今後は多くの自治体でリサイクルすることが当たり前になっていくかもしれません。リサイクルすることができれば、新しい燃料として生まれ変わることも期待できますね。
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