女性の肩こりに多い原因と注意したい兆候
そもそも肩こりというのは、血流制限(血流が滞ったり不足すること)によって筋肉が酸欠状態になって起こる痛みのことをいうのだそう。血流制限が起こる主な原因は、悪い姿勢を続けて筋肉が硬くなってしまうことです。
しかし、中村先生によると、血流の鍵を握るのが筋肉やホルモンであることから、女性特有の肩こりが起こる場合もあるといいます。
まず「女性特有の肩こり」がなぜ起こるのか、その原因について詳しく解説していきます。
女性特有の肩こりの原因1.筋肉量が少ない
意識的に鍛えたりケアしている場合を除き、一般的に女性は男性よりも筋肉量が少ないといわれています。筋肉量が少ないということは、筋血流量(筋肉に流れている血液量)も少ないということになります。
「血液は全身に酸素を送る役目があるため、筋血流量が少ないと運ばれる酸素の量も少なくなり、肩こりとして痛みがでる場合があります」(中村先生)
女性特有の肩こりの原因2.体の冷え
冷え性を自覚している女性は非常に多く、女性向けの冷え対策グッズなども市販されています。女性の冷えについて、また、体が冷えることと肩こりの関係について中村先生に聞いてみました。
「小学校高学年から中学生頃の時期に、男性と女性では体型が大きく異なっていきます。女性は男性よりも脂肪が多くなり、男性は女性よりも筋肉量・骨量が一気に増える時期で、男女の生物学的な差が非常に大きくなります。
基本、筋肉が多くなる男性が熱産生しやすいのに比べ、女性の場合は外気温が低いと皮下脂肪が保冷するため『冷え』を感じやすくなります。その結果、縮こまるなど崩れた姿勢になりやすかったり、動きが縮こまったりするため、血流制限などによって筋肉が酸欠状態になることで肩こりが現れてしまうのです」(中村先生)
女性特有の肩こりの原因3.ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスが乱れると、心身ともに影響を受け、肩こりの原因となってしまいます。
「ホルモンにはさまざまな役割があります。その一つに、全身の血流のコントロールがあり、私たちが意識しなくても『運動しているときは筋肉に血液を集め、内臓は休ませる』というような仕事をしてくれているんです。そのホルモンのバランスが乱れてしまうと、血流コントロールも乱れてしまいます。
そして、血流が乱れ、本来必要な血液が肩周りの筋肉に不足すると、酸欠状態から痛みを生じてしまうのです」(中村先生)
女性には月経周期があるうえ、更年期などにもホルモンバランスが乱れることがあるため、これらが肩こりの原因になるそうです。
女性特有の肩こりの原因4.ストレス
中村先生によると、原因3で説明したホルモンは、自律神経とも密に連携していて、どちらかが乱れるともう一方も乱れてしまう関係にあるそうです。
「自律神経は、ストレスによってバランスを崩しやすく、そうなってしまうと交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。
交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのように常に相反しているので、この切り替えがうまくいかないと疲労感や頭痛、肩こりなどを引き起こす可能性があります」(中村先生)
また、ストレスは女性ホルモンの分泌も低下させてしまうため、ホルモンバランスの乱れにもつながっていくそう。
肩こりの原因に密接な関係がある筋肉や血液量は、さまざまな体の機能によって支えられているので、どこかに支障があると他の場所にも影響がでてしまうということですね。
こんな生活習慣には要注意!
中村先生によると、肩こりは、ちょっとした生活習慣の積み重ねが原因で起こるケースも少なくないのだそう。肩こりに悩む人が気をつけるべき生活習慣を教えてもらいました。意識すれば改善できることばかりです!
姿勢が悪い
もはや現代病のようになってきた『スマホ首』に代表されるような、下向きの姿勢でいる状態は、肩こりを誘発する代表例です。
スマホやパソコンの画面を見るときの姿勢を思い返してみましょう。
まず知っておきたいのは、人間の頭は約4~5kgもの重さがあるということ。下向きの姿勢のときには、頭の重さを胸椎の部分で支えることになるのですが、少し下を向いただけで頚椎(首の骨)への負担は倍増していきます。
上の図の左側のように、まっすぐに見ているとき4~5kgだった頚椎への負担は、15度下を向いただけで12kgを超え、45度では22kg・・・。いま、この記事を読んでいる瞬間も、小学1年生を乗せているほどの重さが頚椎にかかってきているかもしれません。
その頚椎を支えているのは、僧帽筋をはじめとする首回りの筋肉です。いかに下向き姿勢が筋肉にとって過酷な状況であるかが分かります。
「画面を見ている時間が長いと眼精疲労にもつながります。眼精疲労は目の周りの筋肉のコリも原因のひとつなので、それが頭痛や肩こりにまで広がる可能性があります」(中村先生)
筋肉はそれぞれが筋膜などで関係しあっているため、目の周りの筋肉疲労が肩まで影響することがあるのですね。
重い荷物を同じ側の手や肩でばかり持っている
いつも同じ側で荷物を持っていると、姿勢が崩れてしまいがちです。このようなクセがあると、体の使い方にも偏りがでてきてしまうと中村先生は言います。
「例えばいつも左肩にバッグをかけて通勤していたら、きっと左手はほとんど使わないままです。すると右手側ばかり使うので筋肉の発達に差がでたり、骨格レベルでゆがんできてしまいます」(中村先生)
体のバランスが完全に左右均等な人はめったにいないそうですが、それでも過度に差があると、体に痛みが生じてくることがあるようです。
冷たい飲み物をよく飲む
上述したように、体の冷えは肩こりの原因の一つです。熱中症の危険があって一時的に体をクールダウンさせる必要がある場合を除き、冷たい飲み物をとることは体を冷やしすぎてしまう可能性があります。
「水分は体にとって、そして肩こりにとっても非常に重要な役割があります。しかし体や内臓が冷えてしまうほど冷たいものを飲むのはおすすめできません」(中村先生)
逆に、温かい飲み物を飲みながらリラックスすることはおすすめだそうです。
枕が合っていない
寝ている姿を横から見たとき、首が前に曲がってしまっていたら、それは枕が合っていないのだそう。
首が正しい姿勢になっていないということは、スマホ首のときのように首から肩にかけての筋肉をこわばらせてしまっています。
「枕自体がフワフワでも硬めでも、それはお好みで大丈夫です。ただ、頭を乗せたときに、首が前に曲がっていたり、逆に後ろに反りすぎていたら要注意です」(中村先生)
慢性的な運動不足
肩こりの予防や解消のためには、筋肉量とそこに流れる筋血流量を増やすことがポイントだと説明しました。逆にいうと、慢性的に運動量が不足している人は、肩こりが起こりやすくなります。
「運動が必要と言っても、『毎日ランニングを!』などということではありません。週に一度でもいいので、走ったりヨガをしたり、なんらかの運動をすることが理想です」(中村先生)
どうしても運動が苦手な人は、3秒ほど肩をグッと上げて静かに下げるという程度の動きを日常に取り入れるだけでも効果は得られるそう。
詳しくは次章の肩こり解消ストレッチでご紹介します。
【シーン別】肩こり解消ストレッチ
中村先生が提案する肩こりに効くストレッチをご紹介します。
肩こりは全身の筋肉が関係しますが、特に首、肩、背中、さらには頭の筋肉にポイントを絞ってみました。
「いずれも伸ばす動きは20~30秒、繰り返すのは2~3回程度にして、少し痛いけど気持ちいい程度の範囲で行ってください」(中村先生)
取り入れやすそうなものから実践してみましょう。
起床時にできるストレッチ
寝ている間に縮こまってしまった体の筋肉を伸ばします。
まずは20~30秒、大の字に手足をしっかりと伸ばしましょう。指先まで意識して伸ばします。
この際、肩甲骨の下に枕やタオルを入れておくと、より伸ばしやすいでしょう。
しっかり全体を伸ばしたら、右手で左膝を持ち右へ倒します。上半身は布団から離れないように注意しましょう。20~30秒ずつ2~3回行ったら、反対側(左手で右膝を左に)も同じように伸ばします。おなかや脇が伸びていきます。
身支度時にできるストレッチ
歯磨き中には片手を壁について胸を伸ばします。
肘から手までをまっすぐ壁につけて半歩前へ。そのまま体を正面に向けます。ゆっくりと胸を開くように動かし、20~30秒キープ。2~3回繰り返して反対側も同じように伸ばします。
通勤時にできるストレッチ
ポールなどにつかまって、背中を伸ばすストレッチです。
ポールを逆手で持ち、肩甲骨を後ろに引っ張るようにします。小さな動きですが背中が伸びているのを感じながら20~30秒キープ。ポールをつかむ位置は腰の前あたりから顔の前くらいまで少しずつ変えていくと、広範囲にある背中の僧帽筋などの肩甲骨の内側から肩の後方にかけての筋肉を伸ばすことができます。
デスクワーク時にできるストレッチ
デスクワーク中は首が凝りやすいため、首から肩周りにある、肩甲挙筋と頭板状筋を伸ばします。
右耳の後ろに左手をあてて、左前に少し頭を傾けます。その際、右手を腰の後ろに回すとより伸びていきます。20~30秒キープして、反対側も伸ばしましょう。
また、気付いたときに何度でも行いたいのが両肩の上げ下げです。ギュっと上がるところまで肩を上げ、ゆっくりと下ろしましょう。
家事(掃除機を使うとき)にできるストレッチ
掃除機を押し引きする際、脇を閉めてしっかりと前へ手を伸ばし、そのまま肘が背中のほうへ行くようにグッと引きます。
肩甲骨を前後に動かすことで首の下から背中にかけてある菱形筋や僧帽筋が伸びていきます。
お風呂でできるストレッチ
シャンプーしながら頭の横にある側頭筋をもみほぐしましょう。頭部の筋肉は目の周りの筋肉と密接に関わっているため、血流が滞って筋肉が硬くなると眼精疲労の原因にもつながります。
また、肩のストレッチも行いましょう。
両肩に両手を軽く乗せ、肘で大きな円を描くように回します。できるだけ前後上下に大きく、ゆっくりと回します。僧帽筋がほぐれていきます。
就寝前にできるストレッチ
ベッドに寝た状態で図の△部分に両手の親指をあてます。そのまま顔は大きく動かさずうなずく程度にすると程よい圧が指にかかります。
外から内へ、両手の親指を少しずつずらしながら行いましょう。ちょうど頭部の筋肉の分かれ目なので、痛気持ちいい程度の刺激で十分です。
ストレッチの注意点
ストレッチは肩こりの予防や解消のほか、体の柔軟性や血流をアップしてくれるなど、利点が多いものです。しかし、いくつか注意すべきポイントがあります。
例えば、もともと四十肩などで肩に痛みがある場合は、肩回しのようなストレッチや動きは痛みを悪化させてしまうので避けましょう。
同様に、妊婦さんなど腰痛がある人も、痛みを少しでも感じたらその動きはスキップします。
また飲酒しているときも注意しましょう。飲酒することですでに一時的に血流がアップしています。ストレッチはしても大丈夫ですが、運動や湯船への入浴は過度に血行を促進してしまうので行わないようにしましょう。
最後に、すでにどこかにしびれがある場合や、ストレッチ中にしびれを感じた場合は、動きを止め、念のために整形外科などの受診をおすすめします。
いずれのストレッチも「痛い」と感じたらやりすぎです。「少し痛気持ちいい」程度に行い、長く続けていくことが大切です。
おわりに
肩こりに悩む女性は少なくありません。ホルモンなど自分でコントロールが難しい原因もありますが、少し生活習慣を見直したり、日常にストレッチを取り入れて続けていくことが改善につながります。つらい肩こりを緩和するためにぜひ試してみてください。
ミストサウナをプラスしてストレッチをするのもおすすめ!
ミストサウナは、高温で低湿度のドライサウナと異なり、低温・高湿度で息苦しくならず、全身がじんわりと潤いに包まれます。
上のグラフは、入浴後の体の温かさを比較したものです。
ミストサウナ浴はシャワー浴よりも体の中まで入浴後の温まりが続きます。
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○各効果は個人により異なります。
○浴室の大きさにより、浴室のミスティの立ち上がり時間や浴室内の乾燥時間等が異なります。
○ミスティの注意事項等は取扱説明書をご参照ください。○画像はイメージです。実際の商品とは異なります。