コロナ禍で「自宅」が安心な環境として選ばれている
受験生はどこで勉強・自習をしているのでしょうか。東京ガス都市生活研究所が実際に試験を控えている人やそのご家族を対象に、「現在の自習場所」についてアンケート調査を行ったところ、自宅が85%と最も多く、塾や学校の自習スペースが10%前後、図書館などの公共施設、ファミレスやカフェといったスペースは5%以下という結果になりました。
この結果には、新型コロナウイルスの流行も影響しているようです。自宅を選んだ人の中には、「今までも勉強は自宅で行っていた」という人がいる一方、「コロナの感染が心配なので、極力自宅で勉強するようになった」という人も多く見られました。以前は自宅外で勉強していたけれど、「人との接触を出来るだけ減らすためにやむを得ない」という理由で自宅を選んでいる人もいるようです。人との接触を最小限に抑えられる自宅は、安心して勉強できる場所として選ばれていることがわかります。
自宅で勉強する際に気を付けていること・工夫していることとしては
- 帰宅時の手洗い・うがいの徹底
- 家族と離れて過ごせる空間の確保
- オンライン授業への対応のためWi-Fi環境の増強
- 誘惑になるPC・ゲームやスマホを部屋からなくす
- 気分転換のためのお茶、おやつタイムを設ける
などがあるようです。
一方で、感染リスクが少ない反面、家で勉強していると「集中力の維持がむずかしい」と悩んでいる人も多いようです。
そこで今回は、自宅だからこそできる環境作りのポイントを3つ紹介していきます。
自宅で勉強に集中するための3つのポイント
その1 自宅なら部屋の換気が自由に出来て、勉強がはかどる!
人が多く、換気の少ない環境で勉強していて、頭がぼーっとしたことはありませんか。学習塾など多数の人がいる環境で行われた実験では、換気量を増やすことでテストの得点が上がったという結果が出ています(参考文献1)。別のデータでは、室温が高くなりすぎると、脳内酸素消費量が増えてしまい疲労度が高まることが分かっています(参考文献2)。自宅であれば、そもそも人数が少ないため、大人数の場所よりは空気がこもりにくいですし、温度調節や換気を自由に行う事が出来るため、勉強するための適切な環境を整えやすいと言えます。
住宅内の換気の仕方は、「窓を対角線に開ける」「換気扇などを利用して換気をアシストする」といったコツがあります。適切な換気の方法については、下記の記事で詳しくご紹介しているので参考にしてみてください。
その2 学習効率アップには、頭寒足熱がおすすめ!
一方で、換気をすることで、冬は室温が下がってしまう心配もあります。学習効率を上げるためには、暑すぎても、寒すぎても良くありません。エアコンであれば、25℃前後が良いというデータもあります(参考文献1)。
さらに、頭をぼーっとさせないという意味では、昔から言われていることではありますが、頭寒足熱が有効です。足元を暖めることが出来る暖房があるのであれば、それらを使うことで、勉強のはかどる環境を作ることが出来ます。短期記憶力を測る実験によると、床暖房のような頭寒足熱型の環境下の方が、頭熱足寒型の環境下よりもテストの平均得点が高かったという結果も出ています(参考文献3)。
最近のエアコンは、足下に気流を送る機能や、顔への気流の直撃を避ける機能などがついた、高性能なタイプも出ているので、取り入れるのも良いかもしれません。床暖房の場合には、エアコンと比べ、室温が約4℃程度低くても、快適な温熱環境を作り出すことが出来るため、20℃程度の室温になるように設定すると良いでしょう(参考文献4)。
室温管理が自由にできるのは自宅だからこそ。部屋の温度にこまめに気を配ることで、自宅での学習効率をアップさせましょう。
その3 自宅学習だからこそ、シャワーや入浴で心と体をリフレッシュできる!
シャワーの活用法
簡単に頭をすっきりさせる方法として、シャワーが効果的であることをご存じですか?
明日は早く起きて勉強しよう! と決めて、なんとか朝起きたけれど頭がすっきりしない。そんな時にはシャワーを浴びてみましょう。
上の図のとおり、熱めのお湯でシャワーを浴びることで、シャワーの水流やお湯の温熱効果で交感神経の働きが活発になり※、血圧を上昇させ、身体の目覚めが促進されるという実験結果が得られています。
※入浴の事典 東京堂出版 阿岸祐幸 編(P208~209 白倉卓夫)
勉強中に眠くなった時にもシャワーの活用が効果的です。42℃の熱めのシャワーは頭をすっきりさせてくれます(参考文献5)。
集中力を上げるために、ついついカフェインを摂りすぎてしまうことが問題になっていますが、簡単に頭をすっきりさせる方法として、ぜひ「シャワー」を上手に使ってみてください。
「朝シャワー」についてはこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
入浴の活用法
勉強の後や就寝前など、リラックスしたい時や疲労感を軽減したい時には、ゆっくり湯船につかるのがおすすめです。
肩までお湯に浸かる全身浴は、お湯に浸かる面積が大きいため、「温熱作用」「水圧作用」「浮力作用」の3つの作用を大きく受けます。同じ温度と時間で入浴した場合、半身浴やシャワー浴よりも温熱効果が高く、短時間で体を温めることができ、筋肉疲労や脳の疲れの緩和に効果的です。肩まで温めるので、肩こりも和らぎます。
リラックスしたい時には、身体への負担が少ない半身浴がおすすめです。
身体を活性化させたいときには熱めのお湯、就寝前などリラックスしたいときにはぬるめのお湯、と覚えておくと役立ちます。
参考:東京ガス都市生活研究所 都市生活レポート「快適バスライフのすすめ」(2015年9月発行)
パパっとすぐに作ってあげられる、お手軽夜食レシピも!
受験生のいる家庭では、勉強がはかどる環境づくりとともに、心身の健康を維持する「食」のサポートも重要です。頑張っている子どもたちを応援するために、専門家による夜食レシピも参考にしてみてください。
おわりに
受験シーズン本番を迎えた今こそ、これまで以上に集中して勉強したいもの。そのために役立つポイントをまとめてみました。適切な換気や室温管理、シャワーなど、自宅で勉強しているからこそできる方法を駆使して、ゴールを目指してください。
参考文献:
- 村上周三ほか:『教室の環境と学習効率』、建築資料研究社、p.60、2007.10
- 田辺新一ほか:『快適な温熱環境のしくみと実践』、空気調和衛生工学会、p.170、2019.3
- 西川向一ほか:床暖房が学習能率に与える影響に関する研究、人間工学vol.35,No.3、p.177-184、1999
- 田辺新一ほか:サーマルマネキンの等価温度を用いた暖房の快適性評価と室内投入熱量、日本建築学会環境系論文集vol.79,No.706、p.1029-1035、2014
- 植田理彦:入浴の科学-健康への効果、フレグランス ジャーナルno.69、p.6-10、1984