重曹やクエン酸を使ったナチュラルクリーニングは「時短」の切り札!?
「自然派」というイメージから、丁寧な暮らしの代表のように思われがちなナチュラルクリーニング。
1998年に「重曹と酢での掃除」をテーマにして書かれた洋書を翻訳し、日本へナチュラルクリーニングを持ち込んだ第一人者でもある佐光紀子さん(以下、佐光さん)は、「ナチュラルクリーニングはとにかくラク。家事のしすぎを見直すきっかけになります」と語ります。
佐光さん「ナチュラルクリーニングは中和を利用したシンプルな掃除方法で、すすぎや水拭きがほとんど要りません。またつけ置きをすることで、ゴシゴシこする手間が最小限に。さらに、家中どこでも掃除ができるので、何本もあった洗剤を一掃できます。ものぐさな私が20年以上続けられているのは、ひとえにこの“ラクさ”によるものです(笑)」
「汚れを中和させスルッと落とす」のが、ナチュラルクリーニングの基本
ナチュラルクリーニングは、重曹やクエン酸など自然由来の素材をクリーナーに使い、その「性質」を利用して、汚れを中和させる掃除方法です。
中和させるには、まず、汚れの種類が酸性かアルカリ性かを知っておく必要があります。
佐光さん「家の中の汚れの多くは酸性です。キッチンの油汚れや油を含んだホコリ、手垢・皮脂汚れ、湯垢・・・。嘔吐物のニオイや体臭も酸性です。逆に、アルカリ性の汚れは、水まわりの白っぽい水垢や尿のにおい、ポットのこびりつきなど、数はかなり限られています。酸性の汚れにはアルカリ性のクリーナーを、アルカリの汚れには酸性のクリーナーを使って、汚れを落とします」
重曹、クエン酸、過炭酸ナトリウム・・・。それぞれの性質と特長は?
ナチュラルクリーニングに使われるクリーナーは、重曹、クエン酸、過炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ソーダの4つ。どれもドラッグストアや100円ショップで売られている、身近な素材です。
これらの違いについて、佐光さんに解説していただきました。
油汚れを落とす、アルカリ性の性質を持つ3つの洗剤の中で、最も強いアルカリ性なのが「過炭酸ナトリウム」。つけ置きだけで、こすらず汚れを落とすことができます。
セスキ炭酸ソーダは水に溶けやすいのがメリット。水に溶かし、スプレー容器に入れて拭き掃除に使います。
重曹は水に溶けにくく、研磨力があります。こすり洗いに力を発揮します。
クエン酸は、尿の臭いや水あかなどのアルカリ性の汚れに効果を発揮します。他には、上でご紹介したアルカリ性洗剤で汚れを落とした後にかけると、すすぎの代わりになります。
以下にて、それぞれの使い方を詳しくご紹介します。
つけ置き・殺菌が得意な過炭酸ナトリウム【アルカリ性】
2010年前後から注目されるようになった、ナチュラルクリーニング界のニューフェイス、過炭酸ナトリウム。「#オキシ漬け」のハッシュタグで知られる、酸素系漂白剤の主成分でもあります。
過炭酸ナトリウムの得意ジャンルは「つけ置き」。過炭酸ナトリウムをお湯とせっけんに溶かしてつけおきすると、急須の茶渋や布巾のシミなどがすっきり落とせます。
佐光さん「これまで重曹でこすり落としていた汚れが、過炭酸ナトリウムにつけ置きするだけでつるんと落ちます。ポイントは、30~50℃のお湯を使うこと。衣類の漂白・殺菌のほか、雑菌の繁殖が気になる布巾やスポンジの洗浄、バス小物のぬめり落とし、キッチンの排水口、黒カビ対策まで幅広く使えます」
【おすすめの使い方】
30~50℃のお湯に溶かして、食器や衣類のつけ置き洗いに。過炭酸ナトリウムは水にぬれると酸素が発生するため、水に溶かしてスプレー容器などに入れて保管するのはNGです。つけ置き液はその都度作ります。また、湿気に酸素が反応して破損の原因にならないよう、密閉容器を避け、気密性の高くないキャニスターで保管を。
水によく溶けるセスキ炭酸ソーダ【アルカリ性】
セスキ炭酸ソーダは、水に溶けやすいのが特徴。重曹や過炭酸ナトリウムのようにお湯を使わなくても、水に溶かしてスプレー容器に入れれば、セスキ炭酸ソーダ水としてお掃除に使えます。
佐光さん「セスキ炭酸ソーダは粉がすぐに溶けてしまうため、重曹のような研磨効果はありません。かといって、過炭酸ナトリウムほどアルカリ度が高いわけではなく、除菌や漂白もできません。過炭酸ナトリウムでセスキ炭酸ソーダの代用ができるので、私は重曹・過炭酸ナトリウム・クエン酸の3種類を使っています。水によく溶けるので、溶かしてスプレー容器に入れれば手早く使えるのが利点です」
【おすすめの使い方】
セスキ炭酸ソーダ小さじ1に対して水500mlの割合で水に溶かし、スプレー容器に。汚れにシュッと吹きかければ、住居用洗剤などの代わりに使えます。ただし、使った後そのままにしておくと白い拭き跡が出ることがあるので、クエン酸水をスプレーして中和し、乾拭きして仕上げます。
研磨が得意な重曹【アルカリ性】
4つのクリーナーの中で、最も硬い重曹は、研磨のパワーを発揮します。
油を吸収する力もあるので、ベトつき汚れにも使えます。せっけんと違って泡立たないので、ついかけ過ぎてしまう人がおおいのですが、少量を振ふりかけるだけでもしっかりと油汚れが落とせます。
佐光さん「プラスチックにキズのつかない研磨剤なので、指先にちょっと重曹をつけてこすり落とすと、すぐに汚れが取れるはずです。ただし、漆器などやわらかい素材は表面を傷めてしまうことがあるのでNG。生木やアルミに使うと、黒ずみます(アルマイトなどの合金は大丈夫です)」
【おすすめの保存法】
粉チーズ入れの空きケースに入れておくと、汚れにサッと振ふりかけるタイプのクリーナーに。重曹は湿気を含むと固まりやすくなりますが、棒などでつつけばすぐにくずせます。
アルカリを中和し、リンス効果もあるクエン酸【酸性】
ナチュラルクリーニングの素材で、唯一「酸性」のクエン酸。ザクッとした結晶状の粒で、水にさっと溶けます。水道水のミネラル分のこびりつき(水あか)や、ポットのカルキを溶かす効果があることも、よく知られています。
佐光さん「クエン酸はレモンや梅干しの酸っぱさのもと。お弁当に梅干を入れるのと同じように、雑菌の繁殖を抑える効果があります。また、意外と知られていないのが、リンス効果。重曹や過炭酸ナトリウムなどアルカリ性のクリーナーを使った後にクエン酸水をスプレーしたり、クエン酸水ですすぐと、アルカリが中和されてぬるつきがスッとなくなります」
【おすすめの使い方】
クエン酸小さじ1を水200mlに溶かして、クエン酸水に。スプレーボトルに入れて水まわりに備えておきます。キッチンを使い終わった後に、シュッとひと吹きすれば水あかのこびりつき防止に。アルカリ性クリーナーを使った後のリンスにも使えます。
化学の力で「すすぎ」が減るから、家事時間をカットできる
アルカリ性クリーナーを使った場所にクエン酸水を吹きかけると、アルカリが中和されて中性に。あとは、残った水分をさっと拭き取れば、お掃除は完了です。
この「法則」は住まいのあらゆる汚れに応用できます。例えば、水を流すことができないコンロやグリル、電子レンジ内部の掃除もOK。食器洗いにも応用できます。
佐光さん「洗剤のように泡立たないから、すすぎの手間が省けるんです。水でジャバジャバ流さなくていい、ドライに掃除ができるのが、ナチュラルクリーニングの真骨頂です」
【クエン酸水の使用に適したシーン】
●シンクのすすぎ
シンクは広いため、アルカリ性クリーナーで掃除したあと手で水をかけてすすぐと、すすぎにムラがでて白い粉が浮き出てしまいます。クエン酸でスプレーして中和し、乾拭きして仕上げるのが正解です。
●コンロ周りのすすぎ
コンロやコンロの周りの壁など、重曹で掃除したあとクエン酸をスプレーすると、重曹が泡になって消えるので拭き取ればおしまいです。
以下より実際に重曹、過炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ソーダを使った実践例をご紹介します。
【実践編1】カチコチの焦げつき鍋が重曹でピカピカに
盛大に焦がしてしまったステンレスの鍋。慌ててキッチンにあった食器洗い洗剤(中性洗剤)でつけ置きし、一晩おいてタワシでこすってみましたが、中央部以外はカチコチに焦げて固まったままでした。
そこで、重曹を使ってみることに。コゲが浸るほどの水に、大さじ2杯の重曹を入れ、点火し、沸騰させて1分ほどグツグツ煮ます。
その後一晩おいてみました。
一晩おいた後、重曹+水を捨ててコゲを指で触ってみると、つるんと気持ちいいくらいコゲがはがれます。
残ったコゲは、重曹を振りかけて古タオルでゴシゴシ。力をそれほど入れなくても、重曹の研磨効果で、するするとコゲが取れていきました。
このテクニックは、ステンレスのほか、ホーローやガラスにも使えるそう。鋳物のホーロー鍋などの汚れやコゲも、力を入れずにラクラクお掃除できますよ。
【実践編2】ぬるぬる排水口まわりを過炭酸ナトリウムでピカピカに
排水口のフタや生ゴミ受け、排水トラップにかぶせる椀型のパーツなどは、残菜のこびりつきや油汚れやカビ、雑菌などのぬめりがあり、できるだけ触りたくない場所。ですが、そのままにしておくと、悪臭の原因になります。
これらは、過炭酸ナトリウムとお湯を使ったつけ置き洗いで、あまり手で触れることなくキレイにすることができます。
【つけ置き洗いの手順】
1.バケツなど深さのあるものに生ゴミ受けなどを入れ、30~50℃のお湯を、生ゴミ受けなどがつかる深さまで入れる。
2.過炭酸ナトリウムを、お湯1リットルに対して小さじ1程度入れて溶かす。
3.2~6時間つけ置きする。
4.つけ置き液を流す。
排水口まわりは水をたくさん使う場所なので、つけ置きした部品をわざわざ水できれいにすすぐ必要はありません。
記者はクエン酸水の中和効果を試してみたかったため、過炭酸ナトリウムにつけ置きしたあとの部品へ、クエン酸水スプレーをシュッと吹きかけてみました。
すると、アルカリ性クリーナーを使った後の独特のベトつき感やきしみ感がなくなり、つるっとしたなめらかな触り心地に。
「これが中和か!」と実感できるほど、化学的な変化を目の当たりにしたのでした。
【実践編3】住まいの黒ずみをセスキ炭酸ソーダですっきり
敷居やスイッチの周りなど、足あかや手あかで汚れた部分は「セスキスプレー」で掃除をするとラクチンです。
セスキスプレーは、水500mlを入れたスプレーボトルにセスキ炭酸ソーダを小さじ1~2杯溶かしたもの。水に溶けやすいため、すぐに作ることができます。
汚れにセスキスプレーを吹きかけ、古くなった靴下のハギレでゴシゴシ。すぐにきれいになりました!
汚れが落ちたら、セスキのアルカリを中和するため、クエン酸水をスプレー。最後に水拭きをした後、乾拭きで仕上げました。気になっていた敷居の汚れが簡単に落ちて、大満足!
プロのハウスクリーニングで、ぬめりや悪臭を「出さない」住まいに
日々掃除をしていても、キッチンは気づかないうちに頑固な汚れがたまりがち。
そんな時は、一度ハウスクリーニングの専門業者にお願いしてみるのもおススメです。
東京ガスのハウスクリーニングは、自社研修を受けたプロが、コンロの天板洗浄やコンロ五徳の浸け置き洗浄まで面倒な箇所をまとめて徹底洗浄。
焦げ付きの気になる魚焼きグリル内も綺麗にしてくれます。
利用した方の中には、せっかくお金をかけて綺麗にしてもらったのだから、綺麗な状態を維持しようと感じる方も多いそう。
ご自宅向けにはもちろん、ご両親へのプレゼントにも喜ばれること間違いなしです。
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おわりに
重曹、クエン酸と聞くだけで「私には無理だ・・・」と思いがち。ナチュラルクリーニングは「手間を掛けること」の代名詞というイメージでしたが、佐光さんのお話をお聞きするほど、手間を減らし、ストックする洗剤の種類を減らすことができるのだということが分かってきました。ゴシゴシこする手間がなくなり、シンクや洗面台の下にある大量の洗剤たちが、すっきりと片付くのはうれしいですね。