テレワークという働き方が定着しつつある
コロナ感染拡大前には、なじみの薄かった在宅勤務制度ですが、今は働き方の選択肢の一つとなり、多くの方が利用されていると思います。東京ガス都市生活研究所の調査では、在宅勤務率は、新型コロナ感染拡大以前と比べると、約18ポイントの上昇となり、2020年6月以降は4割と変化が見られません。つまり、その方々は、自宅でのテレワークを何らかの形で取り入れ、働くことが定着しているといえるようです。
我が家のテレワークのお仕事環境をチェック
自宅でのテレワークは、時間の自由度があり、なじみのある空間で過ごせるため、リラックスして仕事ができるメリットがあります。一方で、自宅はオフィス環境と違い、働く場として十分に整っていない環境の中で業務を行うことに、不自由や不満を感じている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
テレワークを行う理想的な環境とは
オフィスの執務室には、机や椅子、PC関連機器、ネット環境、空調などが働きやすい環境として整備されています。一方、自宅はどうでしょうか。自宅で働くための必要な環境について、厚生労働省から、「明るさ(照明、自然光)」、「温熱環境(温湿度)」、「広さ」、「換気」、「設備(家具、家電、PCなど)」、「姿勢などへの配慮」などの推奨事項が示されています。
東京ガス都市生活研究所では、これらの厚生労働省の推奨環境を21項目の設問として、在宅勤務をされている方を対象に調査を実施しました。調査で得た回答を8つのグループに分類した結果をご紹介します。
座面の高さ、背もたれの傾き調整など椅子の機能に課題がある
在宅勤務者の回答からそれぞれの達成度を見てみると、作業環境の達成度が他より低い項目は、「広さ」と「椅子」に関する項目となりました。
特に、「椅子」に関しては、椅子の肘掛がない、傾きや高さの調整ができないことで達成度が低くなっています。
「肘掛け(ひじかけ)がある 37%」
「傾きを調整できる背もたれがある 37.8%」
「座面の高さを調整できる 41.5%」
多くの方がリビングやダイニングで仕事をされていたため、ダイニングチェアやソファでは、オフィス家具のような椅子の座面の昇降や背もたれの傾斜の調整機能がないことが影響しているようです。
しかし、姿勢を正すために、ちょっとした工夫をすることはできそうです。クッションや座布団などを使い、背もたれの角度や座面の高さを調整する。また、肘掛けがない場合は、机に腕がおけるような高さになるよう、座面を座布団などで調整するなど、手軽にできることから始めてはいかがでしょうか。
テレワーク時の住まいに関する不満“足元の寒さ”
先ほど紹介した在宅勤務を行う環境の達成度では、空調設備有りのポイントは高かったものの、使用実態について聞いてみると、空調に対して多くの不満があることが分かりました。
「足元が寒いこと 42.2%」が一番多く、次いで「冬季の光熱費がかかる 33.3%」、「在宅による光熱費が上がること 31.9%」となりました。在宅勤務の場合、長時間椅子に座ることになるので、代謝量が落ち、より足元の寒さが気になるのかもしれません。
築年数によって室内の温熱環境に差が!
次に、冬の暖房にエアコンのみを使用している人を対象に、足元の寒さがどの程度なのか、机の上の高さの位置の温度と足元の温度を測定させていただきました。
その結果を、築年数で1999年以前の「築深」、2000年~2009年を「築中」、2010年以降を「築浅」として3つのグループに分けました。すると、2000年以降の家は、その年以前の家と比べ、室温が高い傾向が見られます。また、足元温度(床面から10cm近傍)は、机上温度(1.1m)の温度と比べ、2.5℃前後低い結果となりました。
自宅でのテレワーク中の部屋の温度の実態、暖房方式で差があった
続いて、築年数の浅い住宅で、床面から部屋を温める「床暖房を設置している住宅」、「エアコンのみを使用している住宅」とを比較しました。
床暖房を設置している住宅では、エアコンのみに比べ足元が暖かく、足元の温度が平均して20℃を超えています。一方で、エアコンのみ設置している住宅では、足元の温度が平均で20℃を下回っていることが分かりました。自宅でのテレワーク環境の実測から、暖房方式の違いで足元の温度に差が出る結果となり、足元の寒さが不満というのも納得できます。
さらに足元が寒いと、仕事を行う上で、弊害もでてくるようです。
足元が冷えると作業効率が下がる?!
「机上24℃・足元温度22℃」の環境と、「机上・足元の温度23℃」の環境にて、タイピングや計算を行い、正打数および正答率を比較した研究では、足元の温度が高い(23℃)条件の方が、正打数・正答率が共に高い結果が示されています。ここからも、集中して仕事を行いたい場合は、足元を冷やさない環境をつくる、冷えをもたらさないことがポイントとなることが分かります。
床暖房があるお宅はぜひ活用していただき、ない場合でも、足元だけのヒーターマットを設置する、マットを敷く、スリッパをはく、ひざ掛けを使うなど、足元を温める工夫をしてみてください。
床暖房とエアコン暖房の「ふく射熱」「熱伝導」「対流」を組み合わせ、その相乗効果により、部屋の空気だけでなく、足元からも部屋が暖まります。※
※お部屋の暖まり方は、「住宅の断熱性能」「温水マットの敷設率」「エアコン性能」「お客さまの使用状況」などにより異なります。
床暖房は床面全体をほぼ均一に暖めるので、お部屋をムラなく暖めます。
床暖房なら床そのものが暖房なので、こたつやストーブのような暖房機器を置く必要がなく、お部屋を広く使えるのも特長です。
東京ガスでは、床暖房シーズンのガス料金がお得になる料金プラン「暖らんぷらん」もご用意していますよ。 この機会にぜひご検討ください。
在宅勤務での身体的な不満は、肩こりと眼精疲労
また、在宅勤務を行うことでの体調面での不満を聞いたところ、肩こりや眼精疲労に対して不満を感じているとの声が多くありました。オフィス環境と異なり自宅での作業では、姿勢が悪い状態でPC画面を長時間見ることで眼精疲労を引き起こしている可能性があります。
肩こりや眼精疲労を感じる方がいらっしゃるなら、PC画面との距離を確保するとともに、椅子と机の高さなどを見直し、PCを利用する時間やPCを使う環境を見直してみてはいかがでしょうか。
また、肩こりや眼精疲労を感じる場合は、入浴がおすすめです。体や目の周囲を温めることで、血行が良くなり、疲労や凝りの軽減が期待できます。
肩こりの緩和に「40℃の全身浴」
肩こりの緩和について実験を行ったところ、お湯の温度40℃に10分の全身浴で、肩こりが緩和する結果となりました。
肩まで浸かる全身浴は、温熱効果により血行が促進されたことによるものと考えられます。これからの寒くなる季節、ぜひ試してみてください。
眼精疲労軽減に「温かいシャワー」
また、目に直接温かいシャワーを当てることで、シャワーの温熱効果により目の疲れを早期に軽減させる効果が期待できます。
目が疲れているという人は試してみてはいかがでしょうか。
おわりに
在宅勤務制度を上手く活用できれば、時間の自由度ができワークライフバランスを保つことができます。新たな働き方の仕組みを無理せず継続していくには、現在の環境の負の部分を解消していくことが大切です。今一度、自宅の仕事環境を見直してみてはいかがでしょうか。
調査概要:
都市生活研究所 在宅勤務時の温熱環境実測調査(2021年2月)
一都三県在住 20~60代男女 週2日以上在宅勤務実施者 n=135
執筆者:小泉 貴子 東京ガス都市生活研究所 統括研究員/一級建築士