便利な湿気取りグッズ。使い方を間違えるとカビやダニの原因に・・・
収納していた靴や衣類にカビが生えていた。梅雨時や夏、布団のダニが気になる。いつの間にか壁にカビが・・・。住生活ジャーナリストの藤原千秋さんによると、湿気がたまりやすい家の場合、意識的に湿気取りをしないと、こうしたトラブルに直結するそうです。
「まずは窓を開けて換気し、部屋の湿気を外に逃がしましょう。換気するだけで部屋の湿度はかなり下がります。1日2回は窓を開けて空気の入れ替えを。ジメジメした部屋は、除湿機やエアコンを使って部屋の湿度を下げます。湿気取りグッズは、扉のある収納や湿気が気になる収納ケース内で、局所的に使用しましょう」(藤原さん)
湿気がたまりやすい家の特性とは?
藤原さんによると、土地や建物の構造、住む人のライフスタイルにより湿気のたまりやすさは異なるそう。湿気がたまりやすい家には、以下の特性があるとのことです。
・住宅の位置が崖の下、暗渠(あんきょ)の近く
・マンションの低層階
・築1〜2年のマンション(内部の湿気が乾くまで1年かかる)
・観葉植物が多い家
・家族がフルタイム出勤など、家を空けている時間が多い
「湿気がたまりにくい家の場合は、換気だけでOK。湿気がたまりやすい家の場合には、除湿機やエアコン、湿気取りグッズを上手に活用する必要があります」(藤原さん)
湿気取りグッズの効果とエアコン・除湿機との比較
藤原さんによると、湿気取りグッズは、その種類ごとに効果も適した使い方も異なるそう。除湿効果で比べると、除湿剤がトップ、次が乾燥剤の順になります。またエアコンや除湿機のように部屋のような広い空間を除湿する効果は期待できないとのこと。以下にて詳しくご紹介していきます。
【湿気取りグッズの種類1】「除湿剤」は扉のある収納で使う
白い粒状の除湿剤は、塩化カルシウムを主成分としたもの。空気中の湿気を吸い込むと溶ける性質があります。藤原さんによると、本体の重さの3〜4倍もの水分を吸収してくれるそう。除湿の効果が水分量で判断できるのがメリットです。
「湿気取りグッズの除湿剤をベッドの下や部屋の片隅に置く人がいますが、このように空間の中に置いておいてもあっという間に溶けてしまって全く効果は得られません。本来、こうした除湿剤は扉のある収納の中で使うものなんです」(藤原さん)
除湿剤が適した場所
以下のような狭くて密閉された空間を除湿したい際に使います。
・キッチン下収納
・玄関の靴箱
・扉付きのクローゼット内
除湿剤の廃棄方法
液体化した除湿剤(塩化カルシウム)は危険性が少なく、排水口から捨てることが可能だそう。ただし、アルカリ性が強いので水道水を流しながら廃棄する必要があるとのことです。またゼリー状に固めるタイプの場合には、自治体により廃棄方法が異なるのでお住まいの地域の自治体へご確認ください。
【湿気取りグッズの種類2】乾燥剤は収納ケース内や物の除湿に
「シリカゲル(二酸化珪素)」や「生石灰(酸化カルシウム)」を主成分とした湿気取りグッズは乾燥剤です。
シリカゲルが吸収する水分量は本体の5割ほど、生石灰は本体の3割ほどに過ぎず、除湿剤よりさらに小さな空間で有効な湿気取りグッズです。
密閉した缶や収納ケース内の物を湿気から守るのに使用します。乾物などの食材や靴・衣類、カメラなどの湿気対策に便利です。また、布団の下に敷いたり間に挟んで使用することも可能です。
乾燥剤が適した場所
・乾物やお菓子が入った密閉した缶やケースに入れる
・カメラなどカビを防ぎたいものを密閉ケースに入れる際に使う
・収納しておく靴の中に入れる
・収納する衣類の間に挟む
乾燥剤の廃棄方法
藤原さんによると、シリカゲルは乾燥させたり加熱することで、再利用が可能だそうです(※)。廃棄する際は、生石灰は水に濡れると発熱するので、水分に気を付けましょう。なお、廃棄については各自治体によって異なりますので、お住まいの地域の自治体へご確認ください。
※シリカゲルには2種類あり、乾燥させるタイプと加熱させるタイプに分かれています。詳しくはメーカーにご確認ください。
靴のカビを防ぐ! 正しい乾燥剤の使い方
靴は履いた後すぐしまわず、2~3日陰干しして、除湿剤を入れてから靴箱へしまいます。
しばらく収納しておく場合にも、カビを防ぐために靴の中に乾燥剤を入れておきましょう。
一旦生えてしまったカビは取り除くのが困難です。上手に乾燥剤を活用できるとよいですね。
【湿気取りグッズの種類3】備長炭などの炭、除湿効果は薄い!?
備長炭などの炭を湿気取りに使う人もいます。炭は木を高温で焼くことで内部に空洞ができたもの。水分やニオイを吸い取ってくれるグッズとして、古くから日本では重宝されてきました。
藤原さんによると、炭は古来の通気性の高い住宅で使われていたもので、消臭効果はあっても除湿効果はそこまで期待できないそう。インテリアや消臭グッズとしての活用が適しているようです。
【湿気取りグッズの種類4】珪藻土の除湿効果は?
バスマットで人気の珪藻土グッズ。厚みをもたせた多孔質の素材なので、調湿機能を期待できます。ただし、藤原さんも過去に使用したことがあるそうですが、きちんとお手入れしないとカビやすいので注意が必要だそう。
建材などとして多量に使用する場合は別ですが、部屋全体の除湿は期待できないのではないか、とのことです。
湿気取りグッズでは部屋などの空間を除湿することはできないことがわかりました。それでは部屋全体を除湿したい場合はどうすれば良いのでしょうか。
【部屋の除湿対策1】換気する
部屋のような広い空間を除湿するのであれば、換気が一番です。湿気のたまりにくい部屋であれば換気だけで十分です。1日に数回窓を開けて新鮮な空気を取り入れましょう。
24時間換気のシステムをつけっぱなしにして切らない。キッチンの換気扇で常時換気モードを使う。給気口をふさがない、なども大切です。
【部屋の除湿対策2】除湿機・エアコンを使用する
湿気がたまりやすい家の場合、換気だけでは不十分で、エアコンや除湿機を使う必要があるそうです。
「基本、エアコンをかければ冷房でも暖房でも湿度は下がります。エアコンで冷房をかけると、湿った空気を冷やして結露させ、乾いた冷たい空気を室内に排出してくれます。結露させた際に出てきた水分は、室外のドレンホースから排出されます。暖房の場合、室温が上がれば、空気が保持できる水の量(飽和水蒸気量)が増えるので、相対的に湿度は下がります」(藤原さん)
湿度(相対湿度)とは、空気が保持できる水分量に対する実際の水分量のこと。そのため、温度が上がれば同じ水分量でも湿度が下がり、除湿効果が期待できるのですね。
「除湿機の場合は同じように空気中の水分を結露させて取り除きますが、その水分はタンクにたまる仕組みです。たまった水は自分で廃棄する必要があります」と藤原さん。
目で見て水分量が把握できるのは分かりやすいですね。湿気のたまりやすい部屋の場合、驚くほどの速度で水分がたまっていくそうですよ。
なお、ここでご紹介いただいたのは、コンプレッサー方式の除湿機ですが、温度を下げて湿度を下げるので夏向きです。冬に効果が高いのは、ヒーターで暖かい空気をつくって乾燥させるデシカント方式の除湿機だそう。最近は両方の方式で切り替えられるハイブリッド方式の除湿機が人気だそうですよ。
【部屋の除湿対策3】室内干しには要注意
室内干しをするのによく乾く部屋はどこだかご存じでしょうか。
藤原さんによると、答えは和室や寝室。畳や障子、布団がたっぷりと水分を吸収してくれるためです。でもこうして水分を吸収したことで、ダニやカビの増殖の原因につながります。
室内干しでは洗濯物から大量の水分が放出されます。東京ガスの調査では、5kgの洗濯物を洗い、脱水して干した際の水分量はなんと約3リットル。ダニやカビの繁殖は、健康被害につながるので避けたいところです。
藤原さんが愛用しているのは、浴室暖房乾燥機。
「私は室内干しするなら浴室暖房乾燥機を使います。洗濯物の湿気を部屋の中に拡散しないで済みますし、乾燥までの時間がきちんと読めるのがありがたい。そして、浴室の場所は、洗濯機が置いてある脱衣所からすぐ! ランニングコストは多少かかりますが、動線が短く、家事の効率化ができるのでとても助かっています」(藤原さん)
浴室暖房乾燥機は、電気式とガス式があります。東京ガスがおすすめするガス式浴室暖房乾燥機「ホットドライ」の情報は、以下でご紹介しています。
浴室暖房乾燥機がないご家庭では、必ず除湿機やエアコンを活用し、短時間で上手く乾かすよう心掛けるのが基本だそうです。
おわりに
室内の気になる湿気。ジメジメした空間はダニやカビの増殖の原因になる他、健康にも影響が出かねません。除湿剤や乾燥剤などを上手く使って快適な空間を手に入れたいですね。