防災士に聞く! 最適な食料備蓄量はどれくらい?
地震、台風、豪雨はいつ起こるか分かりません。災害の影響で物流が止まり、コンビニやスーパーに行っても、欲しいものが手に入らないという可能性も考えられます。「もしも」の時に困らないために、ご家庭でどんな食料をどれくらい備蓄しておけばいいのでしょうか? また備蓄しておく際に、どういったポイントに気を付ければいいのでしょうか? 料理研究家で防災士でもある島本美由紀さんにお話を伺いました。
―― 災害時に備えて、どれくらいの水や食料を備蓄しておく必要があるのでしょうか?
水や食料品の備蓄量の目安は、1人あたり7日分程度です。以前は3日分程度といわれていましたが、近年では大規模な災害に備えて7日分の備蓄をおすすめしています。つまり、「家族の人数×7日分=備蓄量の目安」です。
水であれば、大人1人あたり1日3リットルが必要といわれていますので、例えば4人家族であれば、「3リットル×7日×4人=84リットル」の備蓄が必要です。
食料については、災害発生後の2日間は冷蔵庫にある食品を食べ、3日目以降に備蓄している非常食や日常食でしのぐことを考えると、最低でも5日分程度は備蓄しておきたいものです。
もちろん、上記は目安ですので、家族構成や住居、地域の特性によって必要な備蓄食料の種類や量は異なります。自分や家族にとって必要なものを考えて、日ごろから備えておきましょう。また、定期的にチェックし、必要に応じて入れ替えることも大切です。
備蓄しておくべき食料を選ぶポイントとは?
―― いざ備蓄するとなると、どういった食料をそろえればいいのか迷われる方もいらっしゃると思います。備蓄する食料を選ぶ際のポイントを教えてください。
備蓄する食料を選ぶ際のポイントは、「非常食」と「日常食」をバランスよく取り入れるということです。「非常食」と「日常食」について、以下で詳しくご説明します。
「非常食」とは?
「非常食」とは、アルファ化米やレトルトおかゆ、缶詰パンなど、非常時の備えとして用意し、主に災害時に食べる食品で、賞味期限は3~5年のものが大半です。「非常食はおいしくない」と思われがちですが、近年はさまざまな企業がおいしい非常食を販売しています。ぜひ一度、購入して、召し上がってみてください。
「日常食」とは?
「日常食」とは、肉や魚などの缶詰、レトルトカレーや冷凍食品 など、日常的に食べる食品の中で、災害時の備蓄食料としても活用できる食品です。普段から食べ慣れている食品なので、非常時でもいつもの味が楽しめ、食事へのストレスを軽減することができます。賞味期限は6カ月~2年程度ですので、少し多めに買い置きするようにして、期限の近いものから日常的に食べていき、食べた分だけまた買い足す「ローリングストック」を実践しながら、上手に備蓄していきましょう。
「非常食」と「日常食」をうまく組み合わせながら、家族の人数にあわせて上手に備蓄していくことが大切です。
備蓄しておきたい! 7つの食品をご紹介
―― では、具体的にどういった食料を備蓄しておけばいいのでしょうか?
備蓄しておいていただきたい食料の種類としては、下記の7つがあります。
1.飲料水
水の他、普段飲み慣れたお茶やコーヒー、野菜ジュースやスポーツドリンクなどもストックしておくのがおすすめです。水については、2リットルのペットボトルの他、軽くて使い勝手のよい500ミリリットルボトルも用意しておくとよいでしょう。
2.主食
エネルギー源となる炭水化物。研がずに炊ける無洗米や腹持ちのよい切り餅、ゆで時間が短いパスタやそうめんなども備蓄食料としては最適です。
3.缶詰・瓶詰
常温で長期保存が可能な上、調理せずにそのまま食べられるものが多いので、おすすめです。栄養が偏りがちな非常時にも、魚や豆の缶詰でたんぱく質を、果物の缶詰でビタミンなどを補うことができます。
4.レトルト食品・フリーズドライ
常温で長期保存が可能な上、収納もコンパクトにできます。そのままでも食べられますし、主食から副菜までバリエーションも豊富です。
5.調味料
調理時の味付けはもちろん、缶詰やレトルト食品に加えることで、味を変えて楽しむことができます。ストレスを感じやすい災害時だからこそ、味噌や醤油・塩などを使い、自分好みの味にしたり、時には違った味にしてみたり、食事でストレスを削減することができます。
6.お菓子
緊張した状態が続く災害時。チョコレートや飴などから糖分を補給することで、脳の働きも活性化します。日ごろから好きなお菓子をストックしておきましょう。
7.冷凍食品
自然解凍できるものや冷凍野菜を常備しておきましょう。冷凍庫にたくさん詰めておくことで、停電時にも庫内の食料が溶けにくくなります。
備蓄食料を収納する際のポイントとは?
―― 備蓄食料を収納する場合のポイントはありますか?
せっかく備蓄食料を用意しても、「どこに何を備蓄したか覚えていない」「気付いたら賞味期限が切れていた」というのもよくある話です。準備した備蓄食料を収納する際は、下記3つのポイントを意識しましょう。
【ポイント1】賞味期限は目立つところに記載
表示の小さい賞味期限は、目につきやすい場所に書き直しておくことで確認しやすくなります。収納場所にテープとペンなどを一緒に置いておけば、新しく食料を追加した場合にもすぐに書き込めて、書き忘れがないのでおすすめです。
【ポイント2】収納ルールを決める
「賞味期限が近いものを手前にする」「右側から使っていく」など、収納のルールを決めることで、管理がしやすくなります。
【ポイント3】水は分散収納がおすすめ
収納場所は一カ所に固めるのではなく、分散しておきましょう。備蓄していたとしても、水を置いていた部屋に家具が倒れて入れないなどの事態が発生する可能性もあります。各部屋に水を収納しておくのがおすすめです。
普段から実践しておこう! 冷蔵庫の停電対策
―― 先ほど、災害が発生したら、はじめの2日間は冷蔵庫にある食品から食べることをご紹介いただきましたが、その際に気を付けるポイントはありますか?
災害が発生し停電が起こってしまっても、冷蔵庫のドアを開けなければ、しばらくは冷気を保つことができるので、何度も開けずに計画的に開けるようにしたいですね。そのためには、冷蔵庫の中に何が入っているのか、常に把握しておくことが大切です。また、停電が起こった場合に慌てないように、日ごろから下記のような対策をしておくとよいでしょう。
【ポイント1】冷凍室にはたくさん詰めておく
スペースの7~9割を目安に詰めておきましょう。冷凍庫の中に食品をたくさん詰めると、凍っている食品自体が保冷剤代わりになるため、溶けにくくなります。
【ポイント2】ペットボトルに水を入れて凍らせておく
凍らせたペットボトルは停電時に保冷剤の代わりになるため、冷凍室の保冷効果が高まります。
【ポイント3】製氷機の氷は満タンにしておく
災害時に氷をポリ袋に入れれば、保冷剤として活用できます。溶けた後は飲み水としても利用できます。
「もしも」に備えて「いつも」に取り入れるのがおすすめ!
東京ガスでは防災レシピの情報サイト「日々のごはん と もしものごはん」では備蓄品をアレンジしたアイデアいっぱいのレシピをご紹介しています。また、もしもの時の対処方法や便利グッズなどをまとめた冊子「こころとおうちに備えて安心『日々のごはん と もしものごはん』」も無料でダウンロードすることができます。
おわりに
近年、自然災害に対しての危機意識は高まっていますが、いざという時のために十分な準備ができているかというと、不安な方も多いのではないでしょうか? この機会にあらためて、ご自宅の食料備蓄を見直してみましょう。
参考:パイインターナショナル「もしもに備える! おうち備蓄と防災のアイデア帖」