そもそも「食品ロス」とは?
「食品ロス」とはまだ食べられるのに廃棄される食品のことです。
日本では平成29年度に、年間2,550万トンの食品廃棄物等が出されていますが、その24%にあたる約612万トンが食品ロスと言われています。さらにその食品ロスのうち、約284万トンが家庭から発生するもので、例えば4人家族だと毎年約6万円相当の食べられる食品を捨てていることになります。
家庭での主な食品ロスの原因として、「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」があげられます。「直接廃棄」は、買いすぎや長持ちしない保存方法が原因で、「食べ残し」は、作りすぎや好き嫌いが原因となります。また、「過剰除去」は調理技術の不足や過度な健康志向が原因です。
食品ロスが増えると、どのようなことが起こるのでしょうか? また、私たち一人ひとりが食品ロス削減のために何かできることはあるのでしょうか? 料理研究家で食品ロス削減アドバイザーとしても活躍する島本美由紀さんにお話を伺いました。
節約にもつながる?! 食品ロスを削減するために私たちにできること
―― まず初めに、食品ロスが増えると、私たちの暮らしにどのような影響があるのか教えてください。
食品ロスが増えると、環境面や経済面などで多くの影響があります。まず、食品ロスを可燃ごみとして燃やすことで、CO2が排出されてしまうだけでなく、焼却後の灰の埋め立てなども必要となるため、環境への負荷がかかります。また、多くのごみを処理するためのコストも発生してしまいます。
食品ロスとは、食べられるはずだった食品を捨てているということですので、食品ロスを減らして上手に食べきることで、無駄な買い物を減らすことができるかもしれません。食品ロスを抑えるための日々の取り組みが、環境負荷軽減への配慮につながるだけでなく、家計の節約にもつながる可能性があるのです。
―― 節約にもつながるとなれば、ぜひ試してみたくなりますね。では、家庭で食品ロスを削減しようとする場合、どのようなことを行っていけばいいのでしょうか?
家庭においてもさまざまな場面で工夫をすることで、食品ロスを削減することができます。
「買い物時」「収納時」「調理時」の3つに分けて、それぞれのポイントをご紹介します。
家庭でできる! 買い物時の工夫
買い物をした後に、冷蔵庫に同じ食材があったことに気づき、食材を余らせてしまうケースがあります。買い物前に冷蔵庫内を携帯電話のカメラ機能で撮影しておくのがおすすめです。
また、必要な分だけ買って、食べきりましょう。安売りなどでまとめ買いをしたものの、使いきれないまま期限が過ぎてしまい、捨ててしまうというのもよくある話です。必要な時、必要な分だけ買ったほうが結果的にお得な場合もあります。
お店で買い物をする際、賞味期限がより長いものを買おうと、棚の奥から食品を取ることもありますが、すぐ使う予定のものは棚の手前から取りましょう。そうすることで、お店での賞味期限切れによる食品ロスを防ぐことができます。
家庭でできる! 収納時の工夫
まずは食品を種類(カテゴリ)分けしましょう。食品庫は調味料、麺類、飲みもの、粉もの、非常食などカテゴリを分けて収納することで、量が把握できます。記載されている保存方法とは異なる方法で保存すると、食材の劣化が早くなる場合があります。正しい方法で保存することで、食材をおいしく食べきりましょう。
冷蔵庫内も同様に、定番食材、調理予定の食材、賞味期限切れの近いもの、食べかけのもの、小さいものなどに分類して収納しましょう。また、詰め込みすぎずフリースペースを確保しておくことで、収納状況が把握しやすくなります。冷蔵庫に保存する食材は7割を目安としましょう。さらに収納場所だけでなく、「賞味期限が短いものを手前に置く」「右側から使っていく」など、収納におけるルールを決めておくことも大切です。
家庭でできる! 調理時の工夫
一度に食べきれない野菜は、下処理をした上で小分けして冷凍や乾燥保存し、食材を長持ちさせる工夫をしましょう。少しだけ残っている食材を新たに買い足した場合は、残っている食材から使いきることが重要です。
「作りすぎてしまって残してしまった」という経験がある方も多いかと思います。体調や健康、家族の予定も配慮し、状況に合わせて食べきることができる適正な量を作るようにしましょう。それでも残ってしまった料理は、リメイクレシピやアレンジレシピで、楽しみながら食べきることがおすすめです。
実は食べられる! 捨てられてしまいがちな野菜の部位とは?
―― 実は食べられるのに、捨てられてしまっている野菜の部位が多いと聞きました。どんな野菜に捨てられてしまっている部分が多いのでしょうか?
家庭内の食品ロスの3割を占めている「過剰除去」ですが、そのうちの3割が野菜です。野菜や果物の皮を厚く剥きすぎたり、取り除きすぎたりしている方も多いと思います。野菜の皮や種など、食べられないと思っていた部分にこそ、実は大事な栄養が詰まっているので、捨てずに調理して、食品ロスを減らしましょう。ここでは、食べることができる野菜の部位の一例をご紹介します。
ピーマンの種とワタ
種とワタを取り除いて調理することの多いピーマンですが、丸ごと食べることができます。種とワタには血液をサラサラにする効果のあるピラジンが豊富に含まれます。
ブロッコリーの茎
花蕾の部分よりも、ビタミンや食物繊維が多く含まれると言われています。固い外側を剥き、薄切りやみじん切りにして調理することでおいしく味わえます。
キャベツや白菜、レタスなどの外葉や芯
葉物野菜は、外側の何枚かを捨ててしまうという方も多いのではないでしょうか? しかしながら、ビタミンCが豊富に含まれるため、よく洗って調理するのがおすすめです。また、芯にもカリウムなどのミネラル類が含まれるため捨てずに使いましょう。
にんじんの皮とヘタ
にんじんは中心よりも外側の方が、栄養分が豊富と言われています。皮はβ-カロチンが含まれているので、剥かずに調理するのがおすすめです。また、消化酵素が豊富なヘタも、土の汚れを取り除いて細切りにして食べることができます。
この他にも、長ねぎの緑の部分やほうれん草の根元、れんこんの皮なども、栄養豊富で食べられる部位のひとつです。
野菜の皮を丸ごと食べることについては、残留農薬が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在使用されている農薬は、健康や環境に影響を及ぼすようなものではないと国から認められていますし、残留農薬の基準値も厳格に定められていますので、安心して食べることができます。
おわりに
日ごろから意識して取り組むことで、環境はもちろん、節約にもつながる食品ロス削減。今まで捨てていた野菜の部位を余すことなく使うこと、収納ルールを定めることなど、ちょっとした工夫で改善できるポイントはたくさんあります。ぜひご家庭で取り組んでみてください。
参考:小学館「野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!」
参考:環境省「食品ロスポータルサイト」