あせもの種類は3種類
子どもはもともと体温が高く、遊んでるうちに汗をかくことも多いですね。汗をかいた後で身体を掻いていたり、あせもになってしまったということはないですか? かゆみを我慢できない子どもを見て、病院に連れていった方がいいのか、もう少し様子を見た方がいいのか迷うこともあるかもしれません。 そもそもあせもにはどんな種類があるのでしょうか? 予防法や受診の目安など、あせもに関する疑問を皮膚科医の廣澤朋子先生(以下、廣澤先生)に伺いました。
―― あせもにはどんな種類がありますか?
(廣澤先生) 一口にあせもといっても、実はあせもには3種類あります。
かいた汗、アカや汚れで皮膚表面の汗管が詰まることが原因となって起こる水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)という白いあせも、そしてちょっと深いところの汗管が詰まる紅色汗疹(こうしょくかんしん)という赤いあせも、もっと深いところが詰まる深在性汗疹(しんざいせいかんしん)と呼ばれるあせもがあります。
通常私たちが目にするのは、白いあせもと赤いあせもです。汗管の深いところが詰まってしまうことでできる深在性汗疹は、熱帯地方に多いあせもです。
―― 日本でよくあるのは白いあせもと赤いあせもなんですね。この2つは違うものですか? それとも白いあせもがひどくなると赤いあせもになるのでしょうか?
(廣澤先生) この2つはちょっと違うものなんです。皮膚の浅いところで汗管が詰まって起こるのが白いあせもで、それが悪化して赤くなることはありません。
皮膚の表面に近いところの詰まりは、清潔なタオルなどで拭くと取れます。一方、自分では取れない少し深いところが詰まると赤いあせもになります。
あせもは子どもに多いというのはホント?
―― 子どもにあせもが多く、大人にはあせもが少ない印象があるのですが、実際はどうでしょうか?
(廣澤先生) 汗を作る汗腺の数は生涯変わらず、子どもも大人も同じ数です。だけど、子どもは身体が小さいので、汗腺の密度が高くなります。
また、子どもは自律神経が発達途中で、大人に比べて体温調節がうまくできません。子どもは汗をかくことでしか体温調節ができず、さらに汗腺の密度が高いです。新陳代謝も良いので汗をかきやすく、あせもになりやすい、という特徴があります。
また、汗をたくさんかくからあせもになる、というわけではありません。たくさん汗をかいてそのままにしておくと、汗管が詰まってしまいあせもになってしまうのです。
―― 汗をかいたあと放っておくと、あせもにつながってしまうんですね。だから肘の内側やひざの裏など、皮ふが重なり汗がたまりやすいところがあせもになりやすいんですね。
(廣澤先生) あと、髪の毛の生え際や赤ちゃんの首なども汗がたまりやすく、あせもができやすいですよ。
あせもの予防法はあるんですか?
―― 汗をかいた後に「清潔にしておく」ということが大切なんですね。あせもにならないための予防法はありますか?
(廣澤先生) 高温で湿度が高い環境があせもの原因になるので、屋内で過ごすのであればエアコンなどで気温や湿度を調節するのがいいですね。
また、外出時にはこまめに汗を拭いてください。最近の肌着は汗を吸い取る機能が優れていたり、乾きやすいものがあるので、そういった素材を選ぶとよいでしょう。そして、通気性のよいゆったりした服を選ぶというのもお勧めです。
また、濡れたタオルで肌の表面を拭いてあげると、肌表面の汗管の詰まりが取れるのでおすすめです。ほかには、汗をたくさんかいた時には着替えたり、シャワーを浴びることができる環境なら、ぬるめのシャワーを浴びて洗い流すことが、あせもやあせもからくる湿疹を防ぐことにつながります。
シャワー後の肌は乾燥しやすくなっています。肌は乾燥するとバリア機能が低下し、あせもができやすくなったり、かゆみの原因になるので、しっかりと保湿ケアをしてください。
―― 乳児、幼児と大人であせも予防の対策には何か違いがありますか?
(廣澤先生) 基本的な対策は同じです。
汗をかく環境を避けるというのもひとつですし、汗をかいたら拭き取る、できれば着替える・シャワーを浴びるなどは同じです。
ただ、子どもの方が新陳代謝が高く汗をかきやすい身体であり、乳幼児だと汗をかいても周りにうまく伝えられないこともあるので、大人が気を付けてあげなければなりません。30分ごと、1時間ごとに様子を見てあげる、おむつをしている赤ちゃんだとおむつの中が蒸れてしまうこともあるので、夏場は特に大人が注意を向けることが大切ですね。
あせもで病院に行くタイミングはいつ?
―― 気を付けていても、あせもになってしまった時はどうしたらいいのでしょうか?
(廣澤先生) 白いあせもはかゆみはなく、細かい水ぶくれがたくさんできている状態ですが、放っておいても数日で治ります。白いあせもで水ぶくれになっているな、と思ってもあわてなくて大丈夫です。
一方、赤いあせもにはかゆみがあります。早めに病院でお薬をもらう方がいいですね。掻きこわしてしまうと、ひどい湿疹になったり、ばい菌が入ってとびひになり、治療が必要になることもあります。
―― 放っておいても治るあせももあると聞いて、少し気が楽になりました。それでは病院に行く目安を教えていただけますか?
(廣澤先生) 赤いあせもができて、かゆみがあれば皮膚科を受診することをお勧めします。あせもができている範囲が狭い場合は、塗り薬で炎症を抑えるとかゆみが治ってきます。ただ、全身にかゆみが広がったり、かゆみがひどい場合には、かゆみを抑えるための薬を飲むこともあります。
―― アトピー性皮膚炎の子どもの保護者からは、夏場にアトピー性皮膚炎かあせもか見分けがつかず受診を迷うという声も聞かれます。アトピー性皮膚炎とあせもの見分け方や受診のタイミングを教えてください。
(廣澤先生) アトピー性皮膚炎とあせもは、見分けるのがむずかしいのですが、アトピー性皮膚炎の子どもはもともと皮膚のバリア機能が弱く、あせもにもなりやすいです。軽いあせもでも掻き壊して悪化したり、汗にアレルギー反応が起こったりするケースも珍しくありません。そのため、アトピー性皮膚炎のお子さんでしたら、症状が気になるときには早めに病院を受診するのがお勧めです。
外出しなくてもあせもに注意?
―― 夏場は屋内で過ごしていれば、あせもになりにくいですか?
(廣澤先生) 夏は「保育園や幼稚園に行く」、「近くに買い物に行く」だけでも汗をかくことが多いです。あせもは外遊びだけが原因なわけではありません。屋内で過ごすことが多くてもちょっとした外出をする際にはあせもに注意してください。
―― 冬場でも、あせもになるのでしょうか?
(廣澤先生) そうですね。暖房のかけすぎや厚着をすることで汗をかき、あせもにつながることがあります。外で遊ぶ時にはちょうどよくても、外遊びから屋内に戻ったときや、買い物などでコートを着たまま屋内と屋外を出入りするときには注意が必要です。特にショッピングモールなどでコートを着たままでいると、コートの内側が汗で蒸れていることがあります。周りの大人が子どもを気に掛けることが大切です。
昔と比べて、空調がよく効いているので、特に買い物をするときの上着の着脱に気を付けてあげてください。
乳幼児の肌ケア、実は保湿が大切
―― 最後に、子どもの肌ケアについて大人から気を付けてあげられることはありますか?
(廣澤先生) 子どもは、思春期を迎える頃までは、皮脂分泌が少ないため、皮膚を守る力が大人に比べて不足しています。お肌を守るために保湿をしてあげることが大切です。
―― 子どものお肌は柔らかくて潤って見えるのに、保湿が大切なんですね。
(廣澤先生) 産まれたときから保湿が大切で、スキンケアをすることでアレルギーの予防にもつながります。少し保湿をしてあげることで、皮膚の表面に膜ができるので、アレルゲンから皮膚を守ってあげることができますよ。
―― 保湿にはどういうものを使えばいいのでしょうか?
(廣澤先生) 皮膚科で出される保湿剤・処方薬には、ヘパリン類似物質という成分が入っている保湿剤があります。
市販のものでも同じようなものがありますし、また皮膚にもともとあるセラミドという成分が入っているものもよいでしょう。皮膚のバリア機能も高まり、汗からも皮膚を保護します。いずれもベタつかないローションタイプのものを使うようにするとよいでしょう。
おわりに
子どもの身体にあせもを見つけたら焦ってしまいがち。でも、白いあせもは数日で自然に治ると聞くと、少し安心しますね。
とはいえ、あせもにならないように、お肌を清潔に保つことが大切なようです。こまめに拭いたり、着替える、お風呂に入ったりシャワーを浴びることで身体を清潔にすれば、快適に過ごすことができますね。