「同居より近居」「遠居より近居」を望む、現代の家族像
核家族が増えている昨今、親世帯と子世帯が1つ屋根の下に住む「同居」は、約25年間で30%近く低下しました。その代わりに増えているのが、親と子が1時間ほどの距離に住む「近居」という形です。
お互いの生活習慣の違いは、ときにトラブルの元にもなります。干渉しすぎることなく、ほどよくプライバシーを大切にしながら、いざというときに駆け付けたり、子育てを助けてもらったり・・・。家族関係の新しい形として、「近居」はすっかり定着した感があります。
緊急時や介護など、近居に明確なメリットを感じているのは子世帯
注目点は、子世帯のほうがより明確に近居のメリットを感じ、目的を持っているところ。
親世帯の回答では「特に理由はない」「相手世帯が近くに住むことを希望しているから」が子世帯より多く、近居を望むのはどちらかといえば子世帯のほうであることが伺えます。
子世帯は、突然の病気やケガ、老後のサポートなど、具体的な目的をもって近居を選んでいることが多いようですね。
近居にデメリットも⁉ 子世帯は理想と現実のギャップを感じる傾向に!?
相手との関係についての理想と現実を示したのが、上記の2つのグラフです。
親世帯、子世帯ともに「お互いに干渉しすぎない関係」を理想としているのが見て取れますが、現実を見てみると、親世帯の7割以上は干渉しすぎない関係だと感じているのに対し、子世帯は6割程度へ減少。「実際に住んでみたら、思った以上に関わりが深くなっている!?」という現状が見えてきます。
近居の理想と現実の2つのグラフを、数値化して比較したものが上記の図です。子世帯の方が理想と現実のギャップが大きくなっていることが分かります。親世帯、子世帯の共通点は、「お互いに気を使いすぎない」「苦しい時こそ一緒に助け合える」「何事も本音で話し合える」が理想に追い付いていないということです。加えて親世帯は、「付かず離れずの一定の距離をおく」のギャップも大きくなっています。親世帯は子世帯と付かず離れず接したいのに対し、子世帯は親の干渉が気になっているようですね。
「近居」の満足度については、親世帯のほうが高めです。子世帯のほうが積極的に近居を望む反面、理想とする姿や目的が明確な分、現実とのギャップが生まれ、満足度が低くなってしまうのかもしれませんね。
【近居の実態】「娘近居」は「息子近居」の2倍以上に
今回のデータは、一都三県(関東)に在住の20代~70代既婚女性にアンケートをした結果です。地域による違いはありますが、娘の親の近くに住む「娘近居」は、息子の親の近くに住む「息子近居」の2倍以上という結果に。
一口に「近居」とくくられがちですが、娘近居と息子近居はそれぞれに状況が異なります。
ここからは、娘近居と息子近居の違いについて、データを紐解いてみたいと思います。
比較1 近居を選んだ理由 娘近居は「孫の成長を見たい」息子近居は「親への気配り」
娘近居と息子近居で大きな差が見られるのは、親世帯の「孫の成長を見たかったから」。娘近居の親は孫の成長を見ることが近居の大きなモチベーションになっていることが伺えます。
子世帯で大きな差が見られた項目を見ると、娘近居では「何かあったときに駆けつけたい」「長く住んだ地域から離れたくない」「親世帯とのつながりを保ちたい」といった意見が並び、息子近居では親への気配りから近居を選択したことがわかります。
比較2 相手と会う頻度 娘近居では週1回以上会う世帯が約5割、息子近居では約2割
娘近居と息子近居の相手世帯への移動時間は、特に差はなくおおむね1時間以内。一方、互いが行き来する頻度には2倍以上の違いが出ました。親世帯からすると、娘世帯の方が遠慮なく接することができるのかもしれませんね。
比較3 交流の内容 娘近居は交流内容が多彩、息子近居はお祝い事が多い
電話やメールをする、出かけたり、お茶やおしゃべりをするなど、娘近居の交流はあらゆる項目でポイントが高くなっています。一方、息子近居はお祝い事で会う機会が娘近居よりも多いという結果に。娘近居は日常的に多彩な交流をし、息子近居はハレの場の交流を重視していることがわかりますね。
比較4 理想と現実のギャップ 娘近居より息子近居のほうがギャップが大きい
親世帯と子世帯の「理想と現実のギャップ」については、冒頭にふれたとおり。これを娘近居と息子近居でさらに分析してみると、なんと息子近居では、親世帯にも子世帯にも共通して大きなギャップが見られました。
親世帯では、「悩みを相談し合える」「何事も本音で話し合える」「お互いに気を使いすぎない」が特に息子近居ではギャップが大きいようです。
子世帯について見ると、娘近居でギャップが大きいのは「お互いに気を使いすぎない」です。娘世帯と親世帯はコミュニケーションが活発ですが、育児支援の割合も大きくなっていることから、親に対し気を使う場面が多いのかもしれません。一方息子近居は、全ての項目で現実が理想に追い付いていない状況です。特に、「付かず離れず一定の距離をおく」「何事も本音で話し合える」「苦しい時こそ一緒に助け合える」「お互いに干渉しすぎない」はギャップが大きくなっています。
「思っていた姿と違う」ということが起こりがちな、息子近居。自分のためではなく、相手への配慮として近居を始めた結果、思い描いていた理想に届かないというミスマッチが起こってしまうのかもしれません。
調査報告にはこのほかにも、娘近居と息子近居のそれぞれの交流内容の違いなど、詳細なデータも。ぜひご覧ください。
詳しいレポートの結果は以下をご覧ください。
おわりに
子育てにおいても、仕事や家庭においても、どんなことにも理想と現実のギャップは必ずあるもの。親子ともにメリットが多い「近居」にも、同じことが言えるのかもしれません。家族の形は、それぞれのライフステージや時代によってどんどん移り変わっていきます。お互いの幸せを考えて、満足できるポイントを探りたいものですね。