子どもは熱中症になりやすい!? 注意すべき理由とは?
子どもは「熱中症になるリスクが高い」と言われています。子どもを熱中症から守るためには、どのような対策が必要なのでしょうか? 日本気象協会の気象予報士 瀬田繭美さん(以下瀬田さん)に伺いました。
瀬田さんによると、子どもが熱中症にかかるリスクが高いと言われる理由には、主に3つの要因があるそうです。
【子どもの熱中症のリスク要因1】大人より“地面に近い”
(瀬田さん)まず、子どもは大人と比べて身長が低く身体が地面に近いことがあげられます。太陽からの熱は、地面に吸収された後それが放射されるという仕組みのため、地面に近いほど気温は高く、また地表からの照り返しの影響を受けやすいんです。ある実験では、大人の顔周りの気温が32℃の場合、幼児の顔周りは35℃にもなっていました。子どもをベビーカーに乗せている場合でも、座面は地表から50cm程度と地面に近いので、注意が必要です。
【子どもの熱中症のリスク要因2】体温の調整機能が未発達
(瀬田さん)子どもは、体温の調整機能が未熟です。体温を下げる大きなカギの一つとなるのが汗ですが、子どもはとりわけこの“汗をかく”機能が未発達。汗に含まれる水分が皮膚から蒸発する際、気化熱の働きで体温を下げるのですが、子どもはうまく汗をかくことができないため、体に熱がこもりやすくなってしまいます。
【子どもの熱中症のリスク要因3】体調の変化に自分で気づきにくい
(瀬田さん)子どもの場合、熱中症の知識がなかったり、遊びに夢中になっていたりして体調の変化になかなか気づけないということがあります。特に乳幼児の場合、暑さやのどの渇き、体調の変化などを、まだ上手に言葉で伝えられないということも。
また、大人だと体調の変化をおぼえると上着を脱いだり、休憩したり、水分をとったりするなど自分で対処できますが、子どもの場合、自分だけではそれがなかなかできません。
子どもが熱中症になった時に見られる症状とは?
ーーー実際に熱中症になると、どのような症状が見られるのでしょうか。
(瀬田さん)一言で熱中症と言っても、立ちくらみや体のだるさ、足がつる、頭痛、吐き気や嘔吐、発熱など、さまざまな症状があります。ひどくなると、意識が朦朧として呼びかけに応えなくなったり、フラフラしてまっすぐ歩けなくなったりすることもあります。
ーーー子どもの熱中症に特有の症状はあるのでしょうか。
(瀬田さん)子どもならではの症状というよりは、やはり子どもの場合、自分で体調の変化に気づきにくく、症状を上手く言葉にできないことも多いので、「いつもと様子が違う」ことに大人が注意してあげる必要があります。
例えば、「顔が赤い」「汗をかいている」などもそうですし、「呼びかけた時に普段と違う反応がないか」も気をつけてください。熱中症になりかけている時、子ども本人は気づいていなくても、身体にだるさや倦怠感があるはずで、どことなく「声をかけた時に反応が悪い」「口数が少ない」といった行動の変化があらわれるはずです。暑い時期はこまめに声をかけて、様子を見てあげてください。
普段と少しでも違う様子が見られたら、すぐに涼しい場所に連れて行って水分補給をさせてください。
子どもの熱中症を防ぐには、どのような対策をすればいい?
ーーー子どもの熱中症を防ぐ対策について、教えてください。
(瀬田さん)熱中症を予防する対策としては、以下の4つがあります。
【子どもの熱中症対策1】暑さに身体を慣れさせる
(瀬田さん)気温の変化に対し、身体が慣れるまでには時間がかかります。そのため、夏に向かう5〜6月といった涼しい時期から、定期的に軽い運動を行って汗をかくようにすると良いでしょう。それにより、身体が暑さに慣れやすくなります。きつい運動である必要はなく、軽く身体を動かして汗をかけば十分です。夏になってからであれば、暑い日の運動は危険なため、涼しい日や気温の低い時間帯を狙って運動すると良いですね。
【子どもの熱中症対策2】水分補給のクセをつけさせる
(瀬田さん)幼児は大人と比べて体内水分量の比率が高く、1日に出入りする水分量が多いといわれています。「喉が渇いた」というのは、すでに軽い脱水症状が出ている証拠なので子どもが喉の渇きを訴えなくても、こまめに水分補給させて、その習慣をつけさせてあげてください。
水分補給の量は年齢だけでなく、体型や環境、またその日の体調などにもよるため人により異なります。さらに暑い時や運動した時は、汗で出ていった分を補うため、普段以上の水分補給と適度な塩分補給も必要になりますので注意してください。
【子どもの熱中症対策3】服装にも注意!
(瀬田さん)服装は通気性や速乾性に優れたものを選びましょう。汗を吸ったまま身体に張り付いたり、乾きにくい衣類は、体温調節のためにはマイナスです。また、襟ぐりや袖、足首にゆとりがある方が、体から熱や湿気を逃がしてくれるのでより涼しく感じます。外出の際は、ぜひ帽子もかぶせてあげましょう。
ーーー新型コロナウイルスの影響で、夏に子どもがマスクをつけたまま遊ぶケースも多く見られます。マスクをつけた場合の注意点はありますか。
(瀬田さん)厚生労働省も、マスクをつけている場合、熱中症のリスクが高くなるおそれがある、としています。ですから、子どもがマスクを装着している時は、普段以上に様子をチェックする必要があります。
周りに人がいない場合は、マスクを外すように伝えておくことも大切です。またマスクをしていると水分補給が面倒になりがちですが、いつも以上にこまめな水分補給を心がけてあげてください。
熱中症が疑われたらどうする? 応急処置の方法は?
ーーー熱中症かもしれないと思った場合、どのような処置をすれば良いでしょうか。
(瀬田さん)体調がおかしいと思ったら、ただちに涼しい場所に移動します。一番良いのは冷房の効いた室内ですが、屋外にいる場合には木陰など、直射日光が当たらない場所に移動しましょう。
次に、身体が熱を放出しやすいように衣服を緩めます。ベルトがあれば外し、脱げる服なら脱がせます。
その後、濡れたタオルや氷、保冷剤などを使って身体を冷やします。保冷剤などで冷やすときのポイントは、首の付け根、脇の下、太ももの付け根など、太い血管が走っている場所に当てること。近くに自動販売機やコンビニがあれば、冷たいペットボトル飲料や氷を購入し、利用すると良いでしょう。
体温調節のためには、汗で失った水分・塩分の補給も大切です。普通の水よりは、塩分の入った経口補水液やスポーツドリンクがオススメです。
ーーー応急処置では対処できず病院に連れて行く必要があるのは、どのようなケースでしょうか。
(瀬田さん)ポイントは「意識があるか」と「自力で水分が摂れるか」です。嘔吐した後や意識がない場合は、無理に水分を与えるとのどに詰まるリスクがあるので、控えます。意識がないまたは意識がおかしい場合はすぐ救急車を呼びましょう。嘔吐などにより自分で水分補給ができない場合も、病院で点滴してもらう必要がありますのですぐに病院へ連れていきましょう。
気温25℃でも注意が必要!? 熱中症に注意すべき環境とは?
ーーー気温など、熱中症に注意すべき環境について教えてください。
(瀬田さん)活動を始める前に、「暑さ指数(または熱中症情報)」(以下WBGT)をチェックするようにしてください。暑さ指数とは、気温、湿度、熱環境(地表からの照り返しや日射など)、風の有無の4つの要素を取り入れた指標です。
気温の高さは当たり前に感じるかもしれませんが、湿度にも注意が必要です。湿度が高いと、汗が蒸発しにくく、体温が下がらないからです。気温が25℃でも湿度が80%以上あると、暑さ指数が警戒ランクに入ります。7月の東京の平均湿度は約70%なので、湿度を警戒すべき日はかなりあります。また、晴れている日よりも曇っている日の方が、湿度が高くなる傾向にあります。
さらに、熱環境である地表からの照り返しや日射もリスク要因です。アスファルトの上は照り返しが強いので、芝生や土の上よりも注意が必要となります。
風が吹くと気化熱で体温が奪われ、涼しく感じますね。つまり、無風の環境では熱が体内にこもりやすくなるため、注意が必要ということ。一方で、風が強くても外気温が高いと熱風になるので、この場合は逆効果になります。風の有無と、その風が“熱い”かどうかというポイントは、意識したいところです。
「暑さ指数」は、環境省ウェブサイトで公開されているので、お出かけ前にチェックする習慣をつけましょう。また、日本気象協会の天気予報専門メディア「tenki.jp」では、「熱中症情報」の予測を公開しています。お出かけの予定を決める際にはぜひ参考になさってください。
室内での熱中症のリスクとは? 子どもやお年寄りをどう守る?
ーーー室内での熱中症の事例もあります。室内ではどんなことに気をつければ良いのでしょうか。
(瀬田さん)「暑さ指数」は屋外の環境を想定しているため、室内にいる時は参考にできません。閉め切った室内は危険なので、こまめに換気し、適度に冷房をかけるようにしましょう。またカーテンやブラインドを使って日差しを遮るのも効果的です。
こういった対策を実施した上で、温度と湿度には十分注意してください。温度計や湿度計を目に見える場所に置いておくのがオススメです。最近は温度や湿度を感知し、アラートを出してくれるセンサーも市販されているようです。こうしたグッズを活用するのもひとつの手ですね。
おわりに
大人より暑さに弱い子どもたち。しっかり熱中症対策をさせて、元気に過ごせると良いですね。
参考:日本スポーツ協会「子どもの体温調節」
ガス漏れだけでなく熱中症の警報もできる!?「快適ウォッチ」とは?
快適ウォッチ※1は、火災※2、ガス漏れ、不完全燃焼(CO)に加え、暑さ指数(WBGT※3)を算出し、熱中症の危険がある状態やインフルエンザなどにかかりやすい乾燥の警戒度をランプと音声でお知らせする警報器です。お客さまの暮らしがより快適になるようにサポートします。
※1 快適ウォッチは、新コスモス電機(株)の登録商標です。
※2 火災警報機能はXW-726SとSC-715Tに搭載。
※3 温度と湿度から「暑さ指数(WBGT)」(暑熱環境下におけるリスクの度合いを判断するために用いられる指標)を算出し、熱中症の危険がある状態をお知らせする機能です。
※4 空気が乾燥したインフルエンザなどにかかりやすい状態をお知らせする機能です。
冬はヒートショックにご用心。「ヒートショック予報」
冬の入浴事故を少しでも減らすために、東京ガスは日本気象協会と協力して、「ヒートショック予報」を開発しました。
日々変化する気象の予測情報に基づいたヒートショック予報は、全国の市区町村ごとの予報を日本気象協会が運営する天気予報専門メディア「tenki.jp」でご覧いただけます。
※毎年10月頃から3月頃まで提供しています。
ヒートショックについて楽しく学べる情報サイト「STOP! ヒートショックSTATION」!
東京ガスはヒートショック対策の啓発を目的とした企業協働の活動「STOP!ヒートショックプロジェクト」を幹事企業として推進しています。
このプロジェクトは、協賛企業が協働で行う社会貢献型啓発プロジェクトです。ヒートショックのリスクと対策の認知度をより高めるために、様々な啓発活動を実施しています。
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