半身浴ってどんなもの?
「半身浴」はみぞおちあたりまでお湯に浸かる入浴法です。38℃~40℃のぬるめのお湯に胸から下の部分だけ浸かり、ゆっくりと時間をかけて体を温めていきます。
美容やダイエットのために行っている人も多いようですが、全身浴よりも体への負担が少ないことから、昨今では血圧や心臓に負担をかけたくない高齢者や、お湯の圧迫感が苦手な人に半身浴がおすすめされています。
入浴の方法はさまざまありますが、それぞれに効果や得意分野がちがいます。
全身浴・半身浴と心拍数
人間の身体には、日中には交感神経が働いて活動的になり、夜には副交感神経が働いて身体を休めるという仕組みがあります。交感神経が優位になると、心拍数が上がり血圧も上がって体が活性化した状態に。逆に副交感神経が優位になると、心拍数が下がって筋肉も弛緩するなど、リラックス状態になります。
入浴法によって、交感神経を刺激するもの、副交感神経を優位にするもの、など、それぞれ効果が違うため、上手に使い分けることが「入浴上手」のポイント!
では、それぞれの特徴について、東京ガス都市生活研究所の実験結果をみていきましょう。
【半身浴の効果】リラックスするなら半身浴!
上のグラフは全身浴と半身浴の心拍数を比較したものです。
40℃10分の全身浴と38℃20分の半身浴を比較した結果、半身浴では入浴中の心拍数は下がっています。これは、全身浴よりもぬるめの半身浴の方が温熱作用が穏やかなため、副交感神経が優位に働きリラックスしていることを示しています。
半身浴は体が温まらない!?実は全身浴と差はほぼなし
全身を温めてくれる全身浴に対して、ぬるめのお湯に下半身だけ浸かる半身浴は、体を温める効果は弱いのでしょうか。
上記のグラフは、40℃のお湯で10分全身浴した場合と、38℃のお湯で20分半身浴をした場合を比較したもの。ぬるめのお湯で半身浴を行った場合、入浴時間を長めにすることで、全身浴と温まりにほとんど差がないことがわかっています。
半身浴でも全身浴でも、入浴時間を調整することにより、身体を温める効果があることがわかりますね。
【全身浴の効果】短時間で体を温めるなら全身浴! 水圧&浮力で疲労緩和も
肩までお湯に浸かる「全身浴」は、お湯に浸かる面積が大きいため、温熱作用、水圧作用、浮力作用を大きく受けます。
そのため、同じ温度と時間で入浴した場合、半身浴やシャワー浴よりも温熱効果が高く、短時間で身体を温めることができ、疲労緩和などにも効果的です。また肩まで温めるため、肩こりが和らぐというデータもあります。
全身浴は「脳の疲れ」にも効く!?
精神疲労(脳の疲れ)も全身浴で緩和することができることが明らかになっています。
精神疲労の指標である「フリッカー値※」を使って入浴の効果を東京ガス都市生活研究所・千葉大学が検証したところ、シャワー浴や入浴なしの場合に比べて、40℃10分の全身浴は精神疲労が軽減する結果となりました。
※フリッカー値:点滅する光の点滅の間隔が長くなったり短くなったりする中で、点滅が連続して見える周波数の値を示し、脳の疲労を測定する。疲労タスク前後のフリッカー値を測定し、疲労の蓄積を確認できる。
【シャワー浴の効果】朝の目覚めにはシャワー浴。水流&熱刺激で活性化!
上のグラフは同じ温度・時間でのシャワー浴と全身浴の血圧の変化を調べたもの。シャワー浴は交感神経を刺激し、血圧を上げて朝の目覚めを助けてくれる効果があることがわかっています。
起きても目覚めが悪く、やる気が出ない・・・という方はこの交感神経のスイッチが入りにくくなっているのかも? 朝、熱めのお湯のシャワー浴をすると、シャワーの水流やお湯の温熱作用で交感神経の働きが活発になり、血圧を上昇させ、目覚めを助けてくれます。
朝のシャワー浴は体臭防止に効果あり!?
体臭は皮脂や汗、古くなった角質細胞(垢)が皮膚の常在菌によって分解されて発生するといわれています。
朝41℃(やや熱め)のシャワーを1分浴びた場合、5分浴びた場合、シャワーを浴びなかった場合を比較すると、時間の長さは関係なく、朝シャワー浴をした場合のほうが皮脂量を抑制できることがわかりました。
皮脂の多い部位は、顔・頭・胸・背中。熱めのシャワーでさっと流しておくだけでも、気になる皮脂臭が防げそうですね。
【入浴法の効果とまとめ】半身浴は時間があるとき、リラックスしたいときに有効!
入浴法によって得意分野はさまざまあることがわかりましたね。
時間があるときに本などを持ち込み、のんびりとリラックスタイムを満喫できるのが半身浴。
時間がないときに全身を効率よく温められるのが全身浴。
体をすっきり、さっぱりと活性化させてくれるのがシャワー浴。
これらの興味深いデータのほかにも、東京ガス都市生活研究所のレポートには、最近人気の「ミスト浴」や、さまざまな薬湯の種類が掲載されています。
半身浴でゆっくりと温まりながら、ぜひ読んでみてくださいね!
おわりに
半身浴は上半身がお湯に浸からないため、寒い日は肩が冷えてしまわないよう工夫も必要です。タオルを肩にかける、暖房で浴室を暖めるなどして、体を冷やさない対策もお忘れなく! 全身浴、シャワー浴と上手に使い分けながら、暮らしに取り入れてみてくださいね。
※ご自身の健康状態や室温・温度差を考慮した上で、安全に配慮して入浴ください。