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【専門家に聞く】疲れ目になる!? ブルーライトの最新情報とおすすめの対策&回復法とは?

スマホやパソコンから発せられる「ブルーライト」。体内リズムの乱れや眼精疲労など身体への様々な影響が知られてきているなか、SNS等でその真偽が議論を呼ぶこともあり、「本当はどうなの?」と改めて気になる方も多いのではないでしょうか。そこで、専門に研究されている綾木雅彦先生にお伺いしました。

最終更新日:2024.1.22

目 次

ブルーライトは本来「体内リズムの調整役」。夜浴びると時差ボケに?

暗い寝室でスマートフォンをいじる女性

PIXTA

―「ブルーライト」という言葉は一般に広く知られるようになってきました。目に悪いなど「悪者」なイメージがありますが、本来はどのようなものなのでしょうか。

綾木:ブルーライトは太陽光に含まれており、そもそもは体内時計を調整して健康を維持する重要な役割があります。ブルーライトが目に入ってはじめて、脳が昼と夜を判別し、睡眠ホルモンの分泌をストップさせます。ですから、朝起きてから十分に太陽の光を浴びるとすっきりと起きられますし、脳が目覚めることで、すべての内臓がその日の活動を始めるのです。

一方、日没後にブルーライトが目に入ると体内時計が狂ってしまい、寝つきが悪い・眠りが浅い・朝起きられない・昼間ぼーっとするなどの症状が出てしまいます。これは夜ブルーライトを浴びたことで、脳が昼間と勘違いして、十分な睡眠ホルモンが分泌されないことから起こります。いわば「時差ボケ」と同じ症状です。

特に子どもは瞳が透き通っていることから、大人の2~3倍のブルーライトが入り、長時間のスマートフォンやゲームが情緒不安定や成績にも影響することが最近の研究でわかってきました。

ブルーライトにより目の痛みやドライアイの悪化なども

目の疲れを感じる女性

PIXTA

―では、ブルーライトについてよく聞く「疲れ目になる」「肩こりなどの原因になる」といった影響は、どのように引き起こされるのでしょうか。

綾木:ブルーライトそのものが目への作用が強く、波長が380~500nm(ナノメートル)と短い光なので、瞳孔を縮める作用があり、これが疲れ目の一因となります。そして、最近の研究からブルーライトの青色の波長そのものが、目の痛みの神経を刺激することもわかってきました。

明るいモニターで仕事をすると、約3割くらいの人が目に痛みを感じると推測されます。また、光のエネルギーが強いことから、角膜(くろめ)や涙の性状を傷めてドライアイを悪化させることもわかっています。
また、近年学校の照明がLEDにどんどん変わっていますが「目が痛い」「頭が痛い」と訴える子どもも増えていると聞いています。

目に見える光とエネルギーの強さの図

―昨年、SNSを中心に「本当は、無害なのでは?」といった話が拡散していましたが、先生はどのように見ていらっしゃいましたか。

綾木:大きな誤解です。あれは、米国の眼科学会が「ブルーライトでは失明しない」と見解を出したことが、一部解釈の誤りも含め飛躍してしまい、拡散されたものです。この件についてはブルーライト研究会のホームページに詳細が載っています。
ブルーライトのエネルギーが強い光であることは確かで、さきほどもお話ししたように、ブルーライトによる眼精疲労やドライアイの悪化や網膜への悪影響は科学的事実であり、失明につながりかねない長期的な影響がこれから懸念されます。

ただ、ブルーライトによる症状には個人差があり、何時間浴びても「全く影響を感じない」という人もいるため、これが先に述べた誤解にも間接的につながっていると思います。

ブルーライトが一番強いのはやっぱりスマホ!?暗がりでの使用は特に注意

ベットでスマートフォンを操作する女性

PIXTA

―ブルーライトの波長やエネルギーが目に悪い影響を及ぼすということですが、使用する機器やデバイスによっても違いがあるのでしょうか。

綾木:多くのLED照明とスマートフォンははどちらも青色と黄色の光を人工的に混ぜて白色光を作っており、いずれもブルーライトの量はかなり多いです。そして、太陽光・LED照明・スマートフォンを比較した場合に、最もブルーライトの成分が多いのはスマートフォンです。

しかも、光のエネルギーは距離が近いほど強くなります。テレビは少なくとも1~2メートル離れて見ると思いますが、スマートフォンやタブレットは寝転がってみると10cmくらいまで近づいてしまうこともあり、目に入るエネルギーはテレビの数十倍にもなります。特に暗い部屋では、瞳孔が広がっている状態なので、さらにブルーライトを多く吸収してしまいます。

LED電灯の光の分光分布

LED電灯の光の分光分布の図

出典:少年写真新聞社 小学保健ニュース No.1176付録 「ブルーライトと子どもへの影響」

スマートフォンの光の分光分布

スマートフォンの光の分光分布の図

出典:少年写真新聞社 小学保健ニュース No.1176付録 「ブルーライトと子どもへの影響」

眼科医オススメのブルーライト対策とは?

ブルーライトカット用品・アプリを使用する


アイウェアやデバイス用のシート、アプリなどはもちろん効果があると思います。また、スマートフォンやタブレットの場合は、画面の光量を落とすだけでも全然違います。就寝2時間前には切り替えるのをお勧めします。

目を保護する栄養をサプリから摂取する

サプリメントと読書セット

PIXTA

網膜を守る作用をもつ栄養成分を摂取するのも効果的です。特に「ルテイン」は“食べるサングラス”ともいわれ、ブルーライトからも目を守ってくれます。食品だけでは十分とれないので、サプリからの摂取がおすすめです。

日光浴で体内リズムを調整する

カーテンを開ける女性

PIXTA

夜ブルーライトを浴びてしまい、朝起きにくいなどの症状が出る場合は、朝起きてからかならずカーテンをあけるなどして、30分ほど太陽の光をあびると良いです。すっきり感が全然違いますし、寝付きも良くなりますよ。

蒸しタオルや42℃シャワーは目の回復に効果!ワイパーのように瞳をツルツルに。

―それでも疲れてしまった目を回復させる方法はありますか?

「温める」ことが効果的です。手軽な方法として、蒸しタオルや温めるアイマスクは、目の表面を健康な状態に戻すほか、光を遮る効果もあり、リラックスも期待できます。

アイマスクをする女性

PIXTA

―東京ガス都市生活研究所と千葉大学が行った調査では、疲れ目の状態で「目をつむり、目に42℃のシャワーを当てる」と、すっきり感が増加し、しょぼしょぼ感が減少。また、視力回復にもつながるといった効果(疲れ目対策にはシャワー! 効果的な温度は何度? 【調査結果あり】)が検証されています。これについて先生はどう思われますか?

綾木:温かいシャワーを目に当てることが、疲れ目に効果的だというのは大いに有り得ると思います。しょぼしょぼ感の減少は、涙の中の水分と油分が均一にまざり、成分が整うことが理由と考えられます。

「シャワーによる眼の疲労緩和効果」の図

東京ガス都市生活研究所調査「シャワーによる眼の疲労緩和効果」より

綾木:視力回復については、瞳の表面がしっとりツルツルになることで起こっているのでしょう。
車のウインドウをイメージしてもらえればわかると思いますが、水滴があちこちについていると、なかなか見えづらいものですよね。
これと同じように、精密なレンズである瞳は、疲れ目になると涙が不均一で、目の表面がデコボコしており見えづらいのです。目をつむってシャワーを当てることでデコボコが減り、瞳の表面がツルツルと均一になると考えられます。

「視力変化量の推移(両眼平均)」の図

東京ガス都市生活研究所調査「シャワーによる眼の疲労緩和効果」より

おわりに

ブルーライトは本来、体内リズムを調えてくれる、健康に必須の環境成分。日中の過度の使用と日没後の使用が疲れ目や睡眠不足に影響してしまいます。自分に合った対策法や、目の回復法を取り入れて、ブルーライトとうまく付き合いたいものですね。

参考資料:少年写真新聞社 小学保健ニュース No.1176付録 「ブルーライトと子どもへの影響」

  • この記事取材先プロフィール

    綾木雅彦

    おおたけ眼科つきみ野医院 院長/慶應義塾大学 医学部 准教授 

    綾木雅彦

    略歴
    1982年 慶應義塾大学医学部卒業 
    1994年 ハーバード大学留学
    2013年―現在 慶應大学医学部特任准教授
    2017年―現在 おおたけ眼科つきみ野医院院長
    資格:医学博士、眼科専門医、抗加齢医学専門医、産業医、睡眠健康指導士、小型船舶一級操縦士、PADIダイブマスター

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公開日:2017.11.14

最終更新日:2024.1.22

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