冬の光熱費はなぜ高い? 冷房費より暖房費がかかる理由は?
暖房を使う冬は、夏に比べて電気代が高くなる家庭が多いのではないでしょうか。総務省のデータを見ても、夏よりも冬のほうが光熱費が高い傾向にあることがわかります。
冬の光熱費のなかでも大きな割合を占めるのが暖房費。冷房費より暖房費が高くなる理由のひとつが「気温差」です。冬は、部屋の中と外での気温差が大きく、エアコンの場合、設定室温になるまでの時間が、夏に比べると多くかかります。そのため消費電力量も増え、その分電気代もかかってしまう傾向にあります。
また、冬は日照時間が短いため、部屋の照明をつける時間が夏よりも長くなります。さらに寒いときは部屋の中にこもりがちに。家で過ごす時間が長くなれば、暖房や照明を使う時間ものび、その分電気代も掛かってしまいますね。
【暖房費節約術その1】暖房器具を上手に使う
皆さんはどんな暖房器具を使っていますか? 家庭用の暖房器具には「エアコン」「ストーブ」「ファンヒーター」などさまざまな種類がありますが、今回は使っている人が多い「電気エアコン」「ガスファンヒーター」について、効果的な使い方を和田さんに伺いました。
電気エアコンの上手な使い方
電気代が高いイメージのあるエアコン。1時間当たりの電気代は3.8~43.7円と、機種によって幅があります。
参考:Panasonic 「よくあるご質問 【エアコン】1時間あたりの電気代の目安(品番別)」
政府は平成17年度より冬の地球温暖化対策として「ウォームビズ」を提唱しています。その内容は、「冬の暖房時の室温は20℃を目安に、暖めすぎないようにしましょう」というもの。
それでは、エアコンでの暖房時に無理なく快適と節電を両立させるためには、どのようにすればいいのでしょうか。
1. 風向きを「下」に設定する
暖かい空気は軽いため、室内の上部にたまりやすい性質があります。
エアコンは部屋の高い場所にあるため、エアコンで暖房する際は風向きを「下」に設定します。
2. 暖房は切らずに設定温度を下げて調整
エアコンは立ち上げ時に最も電力を使うため、つけたり消したりしないほうが良いというのは、冷房も暖房も同じです。
暖房時には「外気温と設定温度の差が大きいほど、エアコンの立ち上げ時に大きな電力がかかる」という特徴がありますが、和田さんによると「いったん暖まった部屋なら、室温を維持するのにさほど電力はかからない」とのこと。
「ずっと暖房している部屋にいる日は、暖まってきたと感じたら、エアコンを切るよりも、エアコンの設定温度を下げるのがおすすめです。30分程度の外出であれば、エアコンはつけっぱなしで出掛けても大丈夫。それ以上長く出掛けるなら電源を切ってしまいましょう」(和田さん)
やってはいけないのは、「暖まったからエアコンを消す」「寒くなったからまたエアコンをつける」と、運転のオンオフで調整すること。設定温度で調整するようにしましょう。
3. 温湿度計を活用する
「エアコンは進化が目覚ましく、製造年や機種によって能力が異なりますし、部屋の広さにエアコンが対応しているかどうかでも変わります。そのため、エアコンの設定温度をどうするかより、実際の室温をモニターする方が暖めすぎを防ぎ、節約もできます。そのためには、温湿度計を置いていただき、実際の室温を目で確認してください。温湿度計は100円ショップ等でも手に入ります」(和田さん)
温湿度計の置き場所
「外気の影響を受ける窓際や暖房の風が直接当たる場所を避け、人の目線から腰ぐらいの間の高さで、部屋の真ん中にあると理想です。ダイニングテーブルの上に置くのもよいでしょう」(和田さん)
4. フィルターをこまめに掃除する
フィルターが目詰まりしていると風量が落ちてしまうため、余計な電力がかかります。
「エアコンを毎日使うなら、2週間に1回程度フィルター掃除をすると、節電・節約になります。フィルターにほこりがついていると、エアコン内部にほこりを吸い込むことになり、カビっぽいニオイの風が出てきたり、熱交換器の中を空気がうまく循環しないため余計な電力がかかります。フィルター掃除は節約にとても重要です」(和田さん)
最新機種のエアコンでよく見かけるのが「お掃除機能」。お掃除機能付きエアコンなら、フィルター掃除をしなくて良いと思いがちですが、注意点があるそうです。
「エアコンのお掃除機能には、2タイプあります。フィルターについたホコリを除去するだけのものと、内部の熱交換器も洗浄するものです」(和田さん)
フィルター掃除機能で除去したほこりはダストボックスに溜まるため、定期的なお手入れが必要です。また、キッチンが近くにある部屋のエアコンは、調理時にでる油煙も吸い込んでいます。油がついたフィルターは、エアコンのお掃除機能だけできれいにするのは難しいそう。
「揚げ物調理をよくされる方で、LDK(リビングダイニングキッチン)にエアコンがある方はお掃除機能に任せっぱなしにせず、フィルターを定期的に外してしっかりお掃除してください」(和田さん)
エアコンのお掃除方法については、こちらの記事でご紹介してします。ぜひ参考にしてくださいね。
「エアコンのニオイが気になる! 」フィルター掃除で十分!? 効果的なお手入れとは?
5. 室外機の風通しをよくする
室外機はエアコンの心臓部。もっとも重要な役割を果たしています。その空気の流れを妨げないよう、本体の前側、後ろ側、左側としっかりスペースが確保されていることが大切です。
「室外機を地面に置いている場合は、積もった落ち葉や伸びた雑草で空気の出入りがふさがれていないかチェックしてください。室外機の下が土なら、泥水のはねがついていないかにも注意を」(和田さん)
室外機は雨にぬれることを想定して作られているため、雨程度の水ならかけても大丈夫とのこと。
「ぬらしたブラシでこすり洗いしたり、最後に水で流したりして、室外機もお手入れしてください。ただし、熱交換器の部分を強くこすったり、高圧洗浄機やホースなどで水圧をかけることは避けましょう」(和田さん)
室外機の掃除方法についてはこちらをご覧ください。
掃除しないと近所迷惑に? エアコンの室外機の掃除方法と騒音対策
ガスファンヒーターの上手な使い方
ガスファンヒーターは、暖房能力の高さが魅力です。スイッチを入れると約5秒で点火するという、立ち上がりの速さにも特徴があります。暖められた空気が部屋中に効率よく広がり、隅々まで一気に暖めることができます。また、燃料を補給する必要もありません。そんなガスファンヒーターをよりエコに使う、おすすめのポイントをご紹介します。
1. 窓際に設置する
ガスファンヒーターの設置場所は、なるべく窓際に、また本体の背を窓に向けるようにして設置すると、暖房効率が良くなります。
「具体的には、窓に向かって温風が出る配置にすると、ファンヒーターから出た暖かい空気が窓に当たって冷やされて部屋の下層部に溜まり、上下の寒暖差が大きくなってしまいます。これをコールドドラフト現象といいます。
窓を背にして置けばファンヒーターの反対側は壁なので、冷やされることなく上下の寒暖差が起こりにくくなり、暖房効率が良くなります。
点火すると約5秒で温風が出ます。寒い外から帰ってきても、お部屋がすぐに暖まるのが魅力。もしガス栓の位置が窓から遠い場合は、長いガスコードを使ってなるべく窓際に置くとよいでしょう」(和田さん)
2. 省エネ運転機能を活用する
ガスファンヒーターには、部屋が暖まりすぎないように自動で燃焼量を調節してくれる「エコ運転機能」や、人がいなくなると暖房を弱めたり停止してくれる「オートオフ機能」などが搭載されている機種もあります。
このような省エネ機能がついている場合はぜひ活用しましょう。
3. フィルターをこまめに掃除する
エアコンと同様、ガスファンヒーターもフィルターの定期的な掃除が大切です。掃除機で背面のフィルターと温風が出る吹き出し口のホコリを吸い取りましょう。ガスファンヒーターの性能をフルに活用できます。
ガスファンヒーターのお手入れ方法については、以下の記事で詳しくご紹介しています。参考にしてみてくださいね。
【メーカーに聞く】ガスファンヒーターの寿命は? 長く使うためのお手入れ方法も紹介
【暖房費節約術その2】「暖房効率」を上げる
暖房器具を上手に使う他に、部屋をひと工夫し暖房効率を上げることで、節約につながります。
暖房効率を上げるコツ1. 部屋の空気を攪拌する
冬は部屋の上下で寒暖差が大きく、暖かい空気が上にたまりがちです。サーキュレーターやシーリングファンなどで空気を攪拌すると良いでしょう。
サーキュレーターを使う場合は、天井に向けましょう。
「シーリングファンは風向きを変えられます。上向きでも下向きでも空気を攪拌できるのですが、冬は冷たい風が直接当たらないように『風向きを上に(夏は風向きを下に) 』するのがおすすめです」(和田さん)
風向きにひと工夫することで、より快適に過ごせそうですね。
暖房効率を上げるコツ2. 窓ガラス用断熱シートを貼る
窓ガラス用の断熱シートは、外からの冷気の流入をおさえる効果があります。気泡緩衝材タイプ、ミラータイプ、柄入りなどさまざま。和田さんによると、貼り方も、粘着テープを使って貼るタイプ、水でぬらして貼るタイプがあるとのことです。
作業性も異なるので、ご家庭に合ったものを選びたいですね。
暖房効率を上げるコツ3. カーテンを効果的に使う
部屋の温度を保つためには、冬は室内側、夏は室外側で工夫するとよいでしょう。
例えば夏は窓の外によしずやグリーンカーテンを設置すると室温の上昇がおさえられることが知られていますが、冬はカーテンや窓まわりを工夫して、暖気をできるだけ逃さないようにしましょう。
「例えば、温かい飲み物を魔法瓶に入れておけば、長く保温できますよね。部屋も同じです。魔法瓶をイメージして、カーテンを効果的に使い部屋の暖気を外へ逃さないように、また冷気がすき間から入りにくい部屋を目指しましょう」(和田さん)
効果的なカーテンの選び方を教えていただきました。
窓にあったカーテン丈
「窓サイズに合わないカーテンは、すき間から暖気が逃げてしまいます。掃き出し窓であれば、床につくぐらいの長いカーテン丈がおすすめです。カーテンが窓を覆いきっていないと、すき間から暖気が逃げてしまいます」(和田さん)
カーテンの生地
和田さんによると、やはり厚手の生地がおすすめなのだそう。
蓄熱カーテンや保温カーテンなどの商品もあるので、そういうものを選ぶのもいいですね。
カーテンを買い替えなくてもできる方法も
カーテンレール等に簡単に付けられる「断熱カーテンライナー」をつける方法もあります。断熱カーテンライナーとは、窓とカーテンの間に取り付けるビニール素材の布のこと。床に10cm〜15cmほど垂らしておくことで、窓からの冷気をシャットアウトします。
もっと手軽にできる方法として、カーテンの丈を伸ばす、窓枠にすき間風防止シールを貼る、窓枠にパネルを置く、カーテンの下にすきま風防止クッションを置くなどもおすすめです。
暖房効率を上げるコツ4. フロアマットやラグを敷く
和田さんによると、フロアマットやラグを敷くことは、室温を下げにくくする効果があるとのこと。
ただし、床暖房を使用しているときには逆効果。床暖房は床からの輻射熱などで部屋を暖めるため、ラグなどを敷くと暖房効率が下がってしまいます。
暖房効率を上げるコツ5. 加湿して体感温度を上げる
湿度が高いと体感温度があがり温かく感じられるため、加湿器の併用も有効です。冬は湿度40〜60%を目指して加湿しましょう。
ガスファンヒーターは、燃焼時に水蒸気がでるため乾燥しづらいという特性があります。一方、電気エアコンは特に乾燥しやすいので、長時間エアコンを使うときは注意してください。
【暖房費節約術その3】ムダな暖房をしない
普段何気なく使っている暖房器具。もしかしたらもったいない使い方をしていることも。さらなる節約ポイントをご紹介します。
利用シーンに合った暖房器具を使う
暖房をつけるのは短時間? 長時間? 部屋にいる人数は1人? それとも家族が集まっていますか?
暖房器具は大きく3つに分けられます。シーンによって使い分けるのがおすすめです。
- 対流式(温風式):暖かい風を出して空気を対流させるもの。エアコンやファンヒーターなど。
- 輻射式:暖房器具の輻射熱によって暖める機器全般。
- 伝導式:器具自体が熱くなり触れることで暖を得るもの。ホットカーペット、電気毛布など。
「家族でリビングにいる時ならエアコンなど対流式のものが効率がいいですが、吹き抜けもある大空間に1人でいるならエアコンはもったいないでしょう。
輻射式暖房はすぐ温かくなり、軽くて持ち運びしやすいものが多いのが特徴です。寒いキッチンで作業するときや、トイレや脱衣室などには輻射式暖房がおすすめです」(和田さん)
切タイマーや人感センサーをうまく利用する
暖房は、消してもしばらく部屋の暖かさが続きます。寝る30分前に暖房が切れるように『切タイマー(おやすみタイマー)』を上手に使えば節約につながります。
また必要な時だけ暖房したい部屋なら『人感センサー』付きの暖房器具がおすすめです。消し忘れを防ぎ、余計な電気代がかかりません。子ども部屋にも適しています。
暖房便座や温水洗浄便座の使い方に注意
便座の暖房温度は一度設定してしまうと、そのまま変更しない場合が多いですが、なるべく低めに設定すれば省エネ効果が期待できます。
また、温水洗浄便座のふたは、開けたままにしていると電力を消費してしまいます。使用していない時にはふたを閉めましょう。
参考:東京ガス「ウルトラ省エネブック」
節約アドバイザーに聞く! 暖房費節約Q&A
和田さんに、暖房費の節約に関する疑問に答えていただきました。
Q1. 古い暖房器具は買い替えた方が節約になる?
総務省の2023年(令和5年)3月度の消費動向調査によると、ルームエアコンの平均的な寿命は13.6年で、買い替え理由の65%が「故障」です。
参考:内閣府「消費動向調査 令和5年3月実施調査結果」
もしお持ちの暖房器具が、製造から10年以上たっているものであれば、壊れる前に省エネ機能の高い最新の暖房器具に買い替えるのも良いでしょう。
冷蔵庫、エアコン、テレビ、温水洗浄便座、照明器具の5製品については進化が目覚ましく、新旧製品で消費電力に差があります。家電の買い替えでオトクになる電気代がシミュレーションできる環境省のサイトも参考になるので、買い替え前にはぜひチェックしたいですね。
また、省エネ家電の購入費用を助成している自治体もあります。買い替え前にリサーチしてみましょう。
参考:環境省 省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」
Q2. ひとつの部屋で暖房器具を併用するのはNG?
暖房器具にはそれぞれ特徴があり、例えば、ガスファンヒーターは立ち上がりが早く部屋を急速に暖めるのに向いていますが、定期的な換気が必要で、一日中つけていると光熱費もそれなりにかかります。エアコンはある程度温まった部屋をキープするのが得意です。そのため、部屋が暖まるまではガスファンヒーター、ある程度暖まったらエアコンに切り替えるなど、適切に併用すると良いでしょう。
Q3. エアコンの電気代をさらに節約する方法はありますか?
フィルターの定期的なお掃除は自分でできますが、エアコン内部の定期的なメンテナンスを行うことで、エアコンも長持ちし、結果的に節電・節約になります。内部クリーニングは自分で行うのは難しいので、プロに依頼しましょう。
エアコン内部の清掃はプロにお任せ!
梅雨から夏、冬と使用頻度の高いエアコン。いざ使おうとしたらなんだかカビ臭い・・・という経験はありませんか?
カビの繁殖や汚れの蓄積を防ぐには、定期的に専門業者にクリーニングをお願いするのがオススメです。
東京ガスのハウスクリーニングは、自社研修を受けたプロが、フィルターやカバーはもちろんフィルターの奥にあるアルミフィンやファンについたカビ等の汚れも、専用の洗剤と高圧洗浄機を使って徹底的に洗浄してくれますよ!
ご自宅向けにはもちろん、ご両親へのプレゼントにも喜ばれること間違いなしです。
Webで簡単にお申し込みできます。ぜひお試しください!
おわりに
暖房費の節約について節約アドバイザーの和田さんにお話を伺いました。暖房器具の特性を理解して暖房効率を上げることで賢く節電・節約したいですね。