ガスファンヒーターを安全に使うためには?
スイッチオンから約5秒で温風がでるガスファンヒーターは、寒い冬にお部屋を暖めてくれる優れもの。他の暖房に比べて乾燥しにくい、ニオイが気になりにくい、などのメリットもたくさんあります。冬には欠かせない! という方も多いのではないでしょうか。
便利なガスファンヒーターは安全に使いたいもの。使用していて、「ニオイが気になる」「音がうるさい」など、不具合が生じたら、故障かどうかをチェックする必要があります。
ガスファンヒーターをはじめ、温水空調分野の住宅設備機器の製造、販売を行う株式会社ノーリツさんに、ガスファンヒーターの寿命や故障のサイン、長く使うための掃除方法などをお伺いしました。
ガスファンヒーターの寿命は何年?
まずは、気になるガスファンヒーターの寿命について伺いました。
(ノーリツさん)「設計上の標準使用期間は製造から10年です。ただし、10年はあくまで標準的な環境で使用した場合の寿命です。実際にはご使用いただく環境はご家庭ごとに異なりますので、設計上の標準使用期間より早く劣化が起きてしまうこともあります」
設計上の標準使用期間とは、一定の使用条件の下で使用した場合に、安全に使用することができる期間のこと。ノーリツさんによると、ガスファンヒーターに限らず、多くのガス機器や家電機器は10年程度が寿命の一つの目安となることが多いようです。
参考:経済産業省「長期使用製品安全表示制度」
ガスファンヒーター、10年を超えたら点検を!
先述したように、ガスファンヒーターの寿命は環境によっても左右されますので、10年を超えたからといって「処分しなくてはいけない」というわけではないそうです。
「ただ、安心して機器をお使いいただくためには、10年をめどに点検や取替をお勧めしています」とノーリツさん。
(ノーリツさん)「長く使用すると、どうしても内部に埃がたまりやすくなり、ニオイや異音など、経年による不具合が発生しやすくなります」
もし、ご自宅で使用しているガスファンヒーターが10年ほど前に購入したものであれば、一度点検の実施を検討してみてもよいですね。
これって故障? ガスファンヒーターの買い替えの目安は?
標準使用期間は10年ですが、使用環境によって大きく寿命が異なるガスファンヒーター。「まだ10年経っていないけれど、変な音がする」「点火ができない」などの症状がある場合は、故障かもしれません。
故障や経年劣化のサインを見逃さないように、ノーリツさんに4つの症状について教えていただきました。
【故障や経年劣化のサイン1】異音がする
運転開始時・使用中・停止中などガスファンヒーターの状態により、チェックするべき音は変わります。
ただ、共通して言えることは、普段しないような音が鳴ったら要注意です。
《経年劣化のサイン》
・点火時:普段はしない大きな音がする
・暖房運転中:普段はしない大きな振動音がする
《下記のような音は異常なし》
・燃焼開始時:ピー、ヒュー、ポー、キーン、といった笛が鳴っているような音
・暖房運転開始時、運転中:コツン
・暖房運転開始時、運転中:ボッ、といったコンロの火が付くときのような音
・暖房運転中:パチパチ、といったコンロの火が付く直前のような音
・運転停止後、燃焼開始時:カンカン、チリチリ、コツンコツン、といった金属がきしむような音
【故障や経年劣化のサイン2】異臭がする
異臭に関しても、普段しないようなニオイがしたときは要チェックです。
《異臭がするときのチェックポイント》
・適切に換気を行っていますか
・機器に合ったガスコードを使用していますか
・ガスコードがしっかり差し込まれていますか
それでもニオイが収まらない場合は、故障を疑った方がよいでしょう。
また、物が焼けたような異臭の場合は、機器内部に埃が詰まっている可能性があるかもしれません。販売元に機器内部の掃除を依頼するようにしましょう。
(ノーリツさん)「大前提になりますが、ガスファンヒーターを使用するときには1時間に1~2回、それぞれ1~2分程度換気を行う必要があります」
換気を行わないと、一酸化炭素中毒につながりかねませんので、くれぐれも注意しましょう。
【故障や経年劣化のサイン3】点火できない
点火ができないときは、まず下記を確認しましょう。
《点火ができないときのチェックポイント》
・ガス栓が全開になっていますか
・ガスコードが折れ曲がったりしていませんか
・しばらく使用していなかったり、ガスコードを外したりしましたか
・マイコンメーター(ガスメーター)が作動していませんか
・運転停止をした後に、すぐに再運転しましたか
ガスファンヒーターは、ガスコードをつないでガス※を機器に送りこんで使用するものです。ガス栓が全開になっていなかったり、しばらく使っておらずガスコードが空気を含んだ状態になっていると、点火するために必要なガスが機器本体に届かず、点火しづらくなります。
また、運転停止をした直後は機器内部の温度を下げるために吹き出し口から風が出ているので、しばらく置いておき、送風が止まってから再度電源を入れましょう。
上記を確認した上で、数回操作をしても点火できない場合は、故障の可能性が高いといえます。
※都市ガス、プロパンガスなど、ガスの種類に合った機器をご使用ください。
【故障や経年劣化のサイン4】風量が弱い/暖まりにくい
風量が弱かったり、暖まりにくいときには、まず下記を確認しましょう。
《暖まりにくいときのチェックポイント》
・設定温度が低くないですか
・窓や扉が開いていませんか
・エアフィルターに埃やゴミがつまっていませんか
・部屋の広さと機器の暖房能力が合っていますか
・スポット運転(部分的に暖める暖房機能)のようなモードになっていませんか
エアフィルターが目詰まりを起こしている場合は、取り外して掃除を行うことで改善することがあります。また、ガスファンヒーターには部屋の広さごとに適したサイズが存在します。
掃除の仕方や、お部屋に合ったガスファンヒーターの選び方は、記事の後半をご覧ください。
ガスファンヒーターが故障したら・・・
上記のチェックポイントを確認しても調子が悪い・・・という場合は、故障してしまっている可能性が高いため、修理を依頼する必要があります。
東京ガスでは、給湯器やコンロなどのガス機器のトラブルの修理サービスを承っております。24時間365日予約受付、当日の駆けつけも可能です。
東京ガスグループ※修理スタッフが、お客さまに最適なトラブル解決方法をご提案します。
※東京ガスグループとは、東京ガスライフバル、エネスタ、エネフィットのことです。
ガスファンヒーターを長く使うためのコツ
先ほどご紹介したように、ガスファンヒーターの設計上の標準使用期間は10年ですが、使い方によっては、寿命が短くなる可能性もあります。長く使うために行いたいお手入れについて、ノーリツさんに教えていただきました。
フィルターの清掃
(ノーリツさん)「ガスファンヒーターでお手入れができるのは、エアフィルターと機器の外側の部分です。エアフィルターは大抵ガスファンヒーターの背面に付いており、取り外しが可能です」
このエアフィルターには埃がたまりやすいのですが、現在販売されている多くのガスファンヒーターでは、お掃除のタイミングをランプの点灯やエラーコードなどで教えてくれます。エアフィルターの埃は、掃除機などで取り除けばOK。
汚れが気になる方は水洗いをしてもよいそうですが、くれぐれもよく乾かしてからセットするようにしてください。外側については、汚れが気になるときやシーズンの変わり目などに埃を布で払う程度でも十分だそうです。
使わないシーズンの保管方法
シーズン外のガスファンヒーターの保管方法にもコツがあるのでしょうか?
(ノーリツさん)「布やカバーで上から覆うだけでは、下のすき間から埃が侵入してしまいます。埃がたまってしまうと、久しぶりに使用するときに故障の原因になりかねません。おすすめの方法は、購入したときの外箱を保管しておき、シーズンオフの際はその箱にしまうことです」
購入したときの箱を処分してしまった場合は、まるっと全体を覆えるほどの大きさの袋などで、しっかり口を縛って保管しましょう。
ガスファンヒーターの買い替え時のポイント
どんなに大事に使っていても、寿命はきてしまうもの。買い替えるときにチェックしたいポイントについても、ノーリツさんに教えていただきました。
【買い替え時のチェックポイント1】ガスの種類を確認
ガスファンヒーターを選ぶ際に、最初に確認したいのがガスの種類です。
ガスの種類は、都市ガスかプロパンガスの2種類があります。ご自宅で使われているガスの種類に合っていないガスファンヒーターを使ってしまうと、火災や不完全燃焼を起こす可能性があるので大変危険です。必ず、ガスの種類を確認するように注意しましょう。
【買い替え時のチェックポイント2】部屋の広さに合ったものを使用しよう
ガスファンヒーターには、エアコンと同様に、部屋の広さごとにサイズの目安があります。対応畳数よりも広い部屋で使用すると出力が不足して、なかなか部屋が暖まりにくくなってしまいます。
広さとサイズの目安は下記の通りです。
・20号 暖房のめやす:木造7畳まで・コンクリート9畳まで
・35号 暖房のめやす:木造11畳まで・コンクリート15畳まで
・50号 暖房のめやす:木造15畳まで・コンクリート21畳まで
ガスファンヒーターの暖房のめやすは「温暖地」を基準※にしています。「温暖地」とは室内外温度差が15℃の地域(東京、名古屋、大阪など)を指します。温暖地の「木造」とは木造戸建住宅、「コンクリート」とはコンクリート集合住宅を指します。いずれも一重窓で断熱材なしの建物です。
※一般社団法人日本ガス石油機器工業会の自主基準によります。
(ノーリツさん)「効果を高めて使いたい場合は、使用する部屋よりも広い部屋の対応畳数のものを選ぶとよいでしょう。余力をもって運転することで、燃費が良くなる効果もありますよ」
【買い替え時のチェックポイント3】ガス栓に合わせたガスコードを用意しよう
ガスコードは、ファンヒーターを取り扱っている東京ガスライフバル、エネスタ、エネフィットや家電量販店などで販売されています。
(ノーリツさん)「ガスコードは、必ずその機器のガスの消費量と見合ったものを選びましょう。ガスの流れる量が不足して、機器の性能が発揮できなくなってしまいます」
また、置き場所にあった長さを選ぶのもポイント。長すぎると、コードが曲がったり折れたりしやすくなってしまいます。
【買い替え時のチェックポイント4】機能や利便性で選ぶ
「10年前のものと、デザインはもちろん、性能が格段に良くなっています。軽くなって持ち運びやすくなったものもありますね。せっかく買い直すのであれば、ぜひ機能面にも注目してみてください」とノーリツさん。
例えば、ノーリツさんの製品の中には、人感センサーを備えているものがあり、「人がいなくなってから30分経過で控えめ運転に切り替え、その後30分経過で自動消火する」といった機能があるそうです。無駄な暖房や消し忘れを防ぐことができるので、燃費が抑えられてガス代・電気代の節約にもつながりますね。
【番外編】買い替えるときは、処分の手配も忘れずに!
買い替えをするときには、これまで使用してきた機器の処分も一緒に済ませてしまうと楽ですね。
通常の暖房器具は粗大ごみに分類されることが多いのですが、自治体によって不燃ごみになる場合もありますので、必ず確認し、正しい方法で処分をしましょう。
ガス会社によっては買い替えのタイミングで引き取ってくれることもあるので、相談してみてもよいでしょう。
参考:東京ガス「ガス機器の処分方法」
おわりに
ガスファンヒーターの寿命や掃除方法、買い替え時のポイントについて、株式会社ノーリツの関東支社都市ガス営業部の仲宗根さん・マーケティング企画部企画室の河合さんにお話を伺いました。きちんとお手入れをしてあげれば10年程度はもつガスファンヒーター。事故防止のためにも、正しい使い方やお手入れ方法を実践することが大切だということが分かりました。異常を感じたら、まずは取扱説明書を確認し、販売店やガス会社に連絡するなど、適切な対応を取りましょう。