子連れ家庭は「いつ」避難すべき?
子連れの避難は、大人だけの避難に比べて時間がかかります。
まず初めに、子連れ家庭が避難するべき「タイミング」について知っておきましょう。
台風や水害等の予想のできる災害時では、自治体等から避難情報が発信されます。
子連れ家族が避難を始めるべきタイミングは、「警戒レベル3. 高齢者等避難」の段階です。
【警戒レベル1. 早期注意情報】
・今後、気象状況が悪化するおそれのある段階
・災害や避難への心構えをしておく
【警戒レベル2. 大雨・洪水・高潮注意報】
・気象状況が悪化した段階
・気象の最新情報を常にチェックしながら、いつでも避難できる準備をしておく
【警戒レベル3. 高齢者等避難】
・災害のおそれがある段階
・高齢者、障害者、子連れ家族など、避難に時間がかかる人は、避難を開始する
【警戒レベル4. 避難指示】
・災害のおそれが高い段階
・全員が必ず避難を開始する
【警戒レベル5.緊急安全確保】
・すでに災害が発生している、又はすぐにでも発生する危険な段階
・もはや安全な避難は難しいため、可能な範囲で少しでも命が助かりそうな場所へ行く
参考:内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
上記からも分かる通り、「警戒レベル4. 避難指示」の段階だと、時間がかかる子連れ家族の避難は間に合わない可能性があります。
また、「警戒レベル5. 緊急安全確保」の段階では、もはや安全な避難は難しく、命の危険がある状態です。
小さなお子さん連れでも安全に避難するためには、必ず「警戒レベル2. 大雨・洪水・高潮注意報」の段階で避難の準備をし、「警戒レベル3. 高齢者等避難」で避難を開始することを覚えておきましょう。
なお、2021年5月に「避難情報に関するガイドライン」が改定され、従来の「避難勧告」という段階は廃止されていますので、ご注意下さい。
子連れで「どこに」「どうやって」避難する?
子連れで避難するための「場所」は?
避難する場所は、基本的に各家庭の住所番地に合わせて、最寄りの小中学校等が指定されています。
ただし、緊急時には瓦礫や道路の陥没で、道が通れなくなっている場合も考えられます。複数の避難所を調べておくことをおすすめします。
各自治体のWebサイト等で、防災マップやハザードマップが公開されていますので、必ず確認しておきましょう。
東京都内であれば、自宅の住所から最寄りの避難所・避難場所・給水拠点を調べるサイトもあります。
参考:東京都防災マップ:避難所を地図から検索
また、小さな子どもがいる場合、色々な人が大勢集まる指定の避難場所よりも、知り合いの家や、プライバシーが確保できる場所の方がいい場合もあります。
そんなときは、「安全な親戚・知人宅への避難」や、「安全なホテル・旅館に泊まって避難」という方法もあります。
あらかじめ、ハザードマップで安全かどうかを確認し、どこに避難するのが最善か考えておきましょう。
また、自宅の上の階に避難する「屋内安全確保」という選択肢もあります。
ただしこれは、ハザードマップ等を確認の上、
- 「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っていない
- 想定される「浸水の高さ(深さ)」よりも、部屋の位置が高い
- 想定される「浸水継続時間(水がひくまでの時間)」の間の食料や水、および電気・ガス・水道・トイレの代替手段が確保できている
という3つの条件をクリアしている場合のみに使える手段です。
また、土砂災害が想定される区域では、原則として「屋内安全確保」はできません。
必ずその区域外に避難しましょう。
参考:内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」
子連れで避難場所まで「行く方法」は?
子連れで避難する場合、「子どもを抱っこして徒歩」が原則です。
車や自転車は、災害時には交通を混乱させたり駐車場所がなかったり、瓦礫や濁流によって、いつもは通れる道が通れなかったりする可能性があります。
ちなみに、津波などスピードが重要な場合の避難では、専門家の間でも車を使うべきか否かの議論がありますが、原則としては「徒歩(走る)」と言われています。
ベビーカーも、停電で普段使えるエレベーター等が使えなかったり、瓦礫で道が通れない可能性があるため、使うのは避けましょう。
避難用の荷物もあるため、「抱っこ紐」を使える年齢なら使うことがおすすめです。
また、抱っこの場合でも、何があるか分からないため「靴」は履かせていきましょう。
子連れの避難「荷物チェックリスト」
避難には、最も危険な期間に避難するための「一次避難」と、被災からの復興が長期化した場合の「二次避難」があります。
迅速に避難するためにも、「一次避難」のための荷物では、子連れで持って行けるカバン(リュックや肩掛けバッグなど)と量に絞り、子どもを抱っこしたり手を引くのに両手を使えるようにしましょう。
そして、避難生活が長引きそうな時に「二次避難」のための荷物を自宅に取りに行くようにします。
さらに、出先で被災して緊急避難する必要があったときのために、普段持ち歩くバッグにも、「携帯用防災グッズ」をポーチ等にまとめて持ち歩く習慣を付けておくと、より安心です。
「携帯用防災グッズ」に関しては、下記記事をご覧ください。
防災ボトルや防災ポーチなど外出時の災害に役立つ【携帯用防災グッズ】の作り方
一次避難用の荷物チェックリスト
◆最低限必要なもの
まず最低限必要なのは、「防災情報を得るためのもの」「避難場所まで無事に辿り着くためのもの(避難所に行くまでに必要なもの)」です。
これらは、普段持ち歩くバッグにも「携帯用防災グッズ」として、できるだけ入れておくと安心です。
□携帯ラジオ
□乾電池・携帯電話用充電器
□懐中電灯・ヘッドライト
子連れ避難を想定すると、両手を塞がないヘッドライトが便利です。
□防災マップ・避難マップ
□ホイッスル(閉じ込められた時等に鳴らす)
□スリッパ(室内の怪我帽子や防寒に)
□応急手当用品(絆創膏、ガーゼ、消毒綿、テープ、常備薬等)
□衛生用品(ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、生理用品等)
□水、非常食(簡単に食べられるもの)
□携帯トイレ
□携帯用ブランケット・アルミ製保温シート・カイロ等
□現金・小銭
□パーソナルカード(家族の写真、連絡先、持病等を書いたカード)
□貴重品類(通帳、印鑑)
◆子連れの場合に必要なもの
□母子手帳、お薬手帳
□抱っこ紐(子どもの靴も)
□スーパーのレジ袋・ビニール袋
簡易トイレ、お皿、古布と合わせてオムツの代わりなど、様々な応用ができます。
(参照:家族を守るために!【ポリ袋】で簡単にできる9つの防災ワザ)
□タオル、バスタオル
□服や下着などの着替え
□オムツ・おしりふき
□授乳用ケープ
□粉ミルク、哺乳瓶、ミネラルウォーター
ストレスで母乳が出なくなる可能性もあります。
□レトルトの離乳食
□絵本やおもちゃ、子供のお菓子
◆できれば入れておきたいもの
荷物を持って子どもを連れて避難できるかを現実的に考えた上で、入りそうなら入れておければ理想な物です。
まずは避難が先決なので、持ちきれないと判断すれば、二次避難用の荷物に入れましょう。
□ヘルメット・防災頭巾
□軍手・毛布
□ライター・ロウソク
□水・水筒
□非常用食品(缶切、食器等も)
□歯ブラシ
□マスク
□ナイフ
□衣類
また、子どもがリュックを背負える年齢であれば、「子ども用の非常用持ち出しバッグ」を作って、自分の分は自分で持てるようにするのもオススメです。
子どもと一緒に中身を入れれば、防災意識を高めることもできますね。
二次避難用の荷物チェックリスト
二次避難用に、一次避難用のものとは別途、自宅に備えておきたい荷物です。
「子どもも含めた人数分のもの」「子どもも飲める・食べられるもの」を用意するのを忘れないようにしましょう。
特に、子どもが乳児だったりアレルギーがある場合は、避難所の備えで対応しきれない場合もあるので、しっかり備えておきましょう。
食品や消耗品については、家に常に予備や備蓄として多めに用意しておく「ローリングストック」がおすすめです。
【注目の備蓄法】食べながら備える&消費期限切れも防ぐ!「ローリングストック法」とは?
◆水・食料
□水(飲料水、調理用など)
□主食(レトルトご飯、麺など)
□主菜(缶詰、レトルト食品、冷凍食品)
□缶詰(果物、小豆など)
□野菜ジュース
□加熱せず食べられる物(かまぼこ、チーズなど)
□菓子類(チョコレートなど)
□栄養補助食品
□調味料(しょうゆ、塩など)
◆生活用品
□カセットコンロ・ガスボンベ
□簡易トイレ
□予備の乾電池、予備バッテリー
□ビニール袋、大型ビニール袋
□食品包装用ラップ
□トイレットペーパー
□予備の生理用品
□使い捨てカイロ
□ラテックス手袋
◆子連れの場合に必要なもの
□オムツ・おしりふき
□粉ミルク、哺乳瓶、ミネラルウォーター
□絵本・おもちゃ
□子ども用のおやつ
おわりに
もちろん、避難所には緊急備品や配給がありますが、家族のプライベートスペースがなく、子どもにとってもストレスになる場合があります。
自宅が安全だと分かった時点で、自宅に戻って避難生活を続けたり、自家用車で避難生活をするという選択肢もあります。
その場合に備えて、自宅にも十分な防災グッズを用意しておくと安心です。
いざというときに家族を守れるよう、しっかり備えておきたいですね。
参考:東京都防災ホームページ「東京防災」
参考:国立保健医療科学院:あかちゃんとママを守る防災ノート(PDF)