鍵をなくした!? 気付いた時の探し方
外から帰って家のドアを開けようとしたら鍵が見当たらない。そんな時はパニックになりがち。でも、普段から鍵をなくした時にどうするべきかをしっかり頭に入れておけば、トラブルを防いでスムーズに対応できます。
鍵職人として長いキャリアをもつ金庫・鍵のスペシャリストであり、多くのメディアで活躍されている玉置恭一さんに、鍵をなくした際の正しい対処法を伺いました。
最初に教えていただいたのが、鍵をなくしたことに気付いた時の探し方です。
1. まずは身の回りを探す
外出時に家の鍵を携帯している場合、多くの方は上着のポケットやバッグのポケットなど、決まった場所に入れているのではないでしょうか。
「注意していただきたいのは、いつもと違う上着を着ていたり、普段持たないバッグを使っていたり、キャリーケースなどを持参して旅行した時です。そうした場合は、自分でもどこに入れたか忘れることはよくありますので、くまなく荷物やポケットを探してみるとよいでしょう」(玉置さん)
「なくした! 」とパニックになると冷静な判断ができなくなってしまいがちですが、まずは一度落ち着いて、上着やバッグの中身を確認しましょう。
2. 立ち寄ったお店などに尋ねる
自分の服や持ち物をくまなく探しても鍵が見つけられない場合は、職場や学校、立ち寄った店などに落とし物として保管されていないかを確認しましょう。
「電話などで問い合わせするほか、なくしたと思われる場所に行って自分で探す場合は、自分が座った席や動線を確認させてもらいましょう」(玉置さん)
鍵をなくした時に家に入る方法は?
探しても鍵が見つからない場合、家に入るためにはどうすればよいのでしょうか。
防犯を考えて置き鍵をしていない方の場合、他に鍵を持っている家族の帰宅を待つ、という方法もありますが、できるだけ早く安全に解錠するためには、建物の管理者にマスターキーで開けてもらうか、鍵開けの専門家に頼むことになります。
賃貸住宅の場合は、大家さんや管理会社に連絡する
賃貸住宅の場合は、大家さんや管理会社がマスターキーを保管している可能性があります。そのため、連絡すればマスターキーを使って家の鍵を開けてもらえます。
覚えておきたいのは、賃貸住宅の鍵は大家さんや管理会社の所有物だということ。そのため、紛失した際には連絡する義務があります。
持ち家の場合は、鍵開けの専門家に依頼する
鍵開けの専門業者に電話で解錠を依頼すると、まず、到着予定時間を伝えてくれます。解錠の所要時間は多くの場合、30分~1時間程度です。
また、鍵の種類にもよりますが、解錠の相場は出張費込みで1万円~3万円程度が一般的だそう。
「鍵をなくした方が解錠を依頼した場合、緊急を要する状況を悪用して法外な金額をふっかけられてしまう恐れがあるため、気を付けていただきたいです。鍵開けはインターネットで調べた業者に依頼することも多いと思いますが、サイトには『6,000円~』と掲載されているのに、実際に依頼すると『20万円です』と言われてしまったケースも。クーリングオフの対応が不適切で業務停止命令を受けた業者もいますが、会社名やサイトを変更して再び同じ行為を繰り返しています」(玉置さん)
このような悪質な業者に解錠を依頼して、住所や氏名が知られてしまうことも非常に危険といえるでしょう。
悪質な業者を避けるためのポイントを、玉置さんは次のように教えてくれました。
「口コミNo.1」「依頼件数〇〇万件」「お客様満足度100%」といったサイトでのうたい文句を鵜吞みにしない
「残念ながら現状では、インターネットの情報のみで良心的な業者を見極めるのは難しいでしょう。『口コミNo.1』『依頼件数〇〇万件』『お客様満足度100%』と書いてあっても嘘である可能性もあるからです」(玉置さん)
できる限りネームバリューのある大手の業者に依頼する
「インターネットで検索して、パッと見の金額だけで判断してしまうこともあるかと思います。しかし、大切なご自宅の鍵なので身元がしっかりしている業者に依頼するという意味で、できれば名の知られた大手の会社に頼むと安心でしょう。鍵開けの業者は小規模なところが多いですが、全国に加盟店があって地元の業者を派遣してくれる会社もあります」(玉置さん)
見積もりやキャンセルが無料の業者に依頼する
「自宅に入れないお客さまが慌てていることに乗じて、いざ鍵を開ける際に法外な金額を要求する悪徳業者もいます。事前に見積もりを書面に出して説明してくれて、キャンセルが無料か、しっかりとした規定を設けている業者だと安心して依頼できますね」(玉置さん)
基本、サイトで相場とかけ離れた金額を提示している業者は、警戒したほうがよいと玉置さんは言います。
「とはいえ、この業界は大手があまり参入していないので、地域によっては業者を見つけにくいでしょう。前もって安全に鍵開けを依頼できる業者を探しておくことも大切です。見積やキャンセル料金が無料の業者を選定して、電話依頼の段階で見積が無料だときっちり確認しておくことをおすすめします。いざ法外な金額を言われても、キャンセルできるようにしておきましょう」(玉置さん)
鍵をなくしたら、届出や防犯対策も忘れずに
鍵をなくしてしまったら、鍵を探したり、鍵開けを依頼するだけではなく、その後の届け出や防犯対策も忘れずに行いましょう。
警察署・交番に紛失届を提出
一通り探してみても鍵が見つからなかった場合は、最寄りの警察署や交番に紛失届を提出しましょう。届けを出しておけば、紛失物として届けられた場合に連絡してもらえます。
保険会社に連絡する
契約している保険の内容にもよりますが、火災保険で鍵開けや鍵穴(シリンダー)の交換費用がカバーされる場合があります。余計な出費を抑えられますので、必ず確認しましょう。
鍵穴(シリンダー)を交換する
鍵をなくした場合、鍵穴部分は交換すべきなのでしょうか?
玉置さんによると、「たとえ鍵が手元に戻ったとしても、一瞬でも他人の手に渡り、他人の目に触れた場合は交換をおすすめします」とのこと。
保険でカバーされない場合、急な出費は痛いですが、玉置さんは、鍵を交換した方がよい理由を次のように説明します。
「ほとんどの鍵には鍵番号が刻まれており、その番号から合鍵が作れるのです。実際に、女子学生の鍵を盗み見して合鍵を作り、部屋に侵入した男子学生が逮捕された事件も起きています。また、合鍵を作ってもすぐに侵入せず、相手が油断した頃に侵入するケースもあります。
何かあってからでは取り返しがつきませんので、鍵をなくした場合には、最悪の事態を想定していただきたいと思います。また、鍵を交換する場合は、今の玄関ドアに適合するシリンダーを選定するのは困難で、交換作業にも時間がかかります。自分で行うと鍵の交換に失敗してしまうこともあるため、作業に慣れているプロに頼むのがおすすめです。
防犯面や交換費用の面から見ても、直接鍵部分を触る鍵開けや鍵穴交換を依頼する業者は、信頼できる業者を慎重に選定すべきだと分かっていただけるでしょう」(玉置さん)
最近のシリンダーはチェンジキーという、シリンダー交換をしなくても鍵を変更できるものがありますが、まだそれほど普及していないので、全てのタイプで交換と考えて良いと玉置さんはアドバイスします。
玉置さん「交換する際は、ディンプルタイプの防犯性の高いものを推奨します。また、再度鍵を落とす心配がある方は、デジタルロックなど鍵を使用しないタイプへの交換を検討しても良いでしょう」
子どもに伝える「鍵をなくした時にすること・してはいけないこと」
子どもに鍵を渡していると、なくしてしまうこともあり得ます。「鍵をなくさないように気を付けて」と言い聞かせるだけではなく、万が一なくしてしまった場合にはどうすればよいのかを、あらかじめ教えておくことが大切です。
普段から子どもに伝えておきたい「鍵をなくした時にすること・してはいけないこと」を、玉置さんに伺いました。
子どもに伝える「鍵をなくした時にすること」
安全な場所に移動する
家族がすぐに自宅に帰れない、あるいは、連絡がつかない場合は、安全を確保できる場所に移動するように教えておきます。移動場所としては、学校、友達の家、近所の交番や親戚の家、マンションの場合は管理室などが挙げられます。
地域によっては、子どもが駆け込める「子ども110番の家」「子ども緊急避難の家」などが設置されているので、その場所もあらかじめ確認しておきましょう。
あらかじめ決めた人に連絡する
家族の携帯番号や勤務先の電話番号など、鍵をなくしてしまった時に連絡するところをあらかじめ子どもに伝えておきます。「学校やお友達の家に行って、電話を借りてお母さんの電話番号にかけてね」と、具体的に伝えておくのも効果的です。
万が一、頼れる場所がなかった場合のことを考え、事前に公衆電話の使い方を伝えておくのもおすすめです。自宅近くの公衆電話の場所を書いたメモと一緒に、テレホンカードを持たせておくのもよいでしょう。
鍵探しは決められた時間内で
子どもなりに責任を感じて、自分で鍵を探そうとする場合も少なくありません。落としたと思われる場所を遅くまで探し回るのはより危険が伴います。小学校低学年の場合は、探さずに、まず安全な場所に移動するよう伝えましょう。小学校高学年の場合は、鍵を落としてしまっても、外で鍵を探すのは「〇〇時まで」など時刻を決めておき、その時間がきたら諦めて安全な場所に戻るように伝えておきましょう。
子どもに伝える「鍵をなくした時にしてはいけないこと」
木の枝や針金などで鍵を開けようとする
「私たちがテレビで鍵を開けているのを見てまねしてしまうのか、子どもが木の枝や針金などで鍵を開けようとして、鍵穴につまらせてしまったという解錠ご依頼はとても多いです。当然ですが、開けられませんので『やってはダメ! 』とはっきり教えておいてください」(玉置さん)
鍵をなくしても、自分で開けるという選択肢はないことを伝えておきましょう。
無理に家に入ろうとする
鍵が閉まっていない2階の窓から入るために壁をよじ登るなど、施錠された家に無理に入ろうとするのは大きな危険を伴います。ケガをする可能性だけではなく、住宅の破損を招くこともあるので、無理に入ろうとしてはいけないと伝えてください。
知らない大人に助けを求める
鍵をなくして困っている様子の子どもに声をかける、悪意ある大人もいるかもしれません。子ども自身が不安から見知らぬ人に声をかけてしまうことも考えられますが、不用意に助けを求めることは危険だと話しておきましょう。
鍵をなくしたことをSNSなどに投稿する
SNSでは、何かをなくした方が広く情報を求める投稿が見受けられます。しかしそれは、誰がどこで何をなくしたかを不特定多数の人に伝えることになり、実は危険。子どもがスマートフォンを持っていてSNSをやっている場合、鍵をなくしたことをSNSに投稿してはいけないと決めておきましょう。
子どもと一緒に鍵を探すコツ
子どもが鍵をなくし、本人が探しても見つからなかったという場合、もう一度一緒に探してみましょう。
持ち物の中を改めてチェックする
ランドセルの決まった場所に入れている場合などは、いつも持たないバッグに鍵を入れると使い慣れていないことから紛失につながってしまうことが多いようです。子どもが「そこは何回も見た」と言っていても、今一度一緒にチェックしてみましょう。
物を出し入れしたタイミングを思い出して探す
「お子さんの場合でも大人と同様、鍵をなくすのは、基本的には物を出し入れしたタイミングです。いつ、どこで、物を出し入れしたか記憶をたどっていきましょう」(玉置さん)
子どもと一緒に振り返り、探すべき場所を突き止めていきましょう。
子どもが通った場所、立ち寄った場所を確認して探す
子どもが歩いたルートをたどって、一緒に探すことも効果的です。学校や習い事の場所、友達の家、駅など、子どもが立ち寄った場所で連絡がつくところには、鍵がないか尋ねてみましょう。
おわりに
これまで多数の鍵をなくした人を助けてきた金庫・鍵のスペシャリストである玉置さんに、鍵をなくした時の対処法などを詳しく伺いました。専門業者への解錠依頼についても、慌てて悪意ある業者にだまされたり、さらなる危険な状況を招いたりしないために、十分に注意を払う必要があるというお話にも納得です。
家の鍵は、家族の財産と命を守る大切な砦。安全な暮らしのために、子どもを含め家族全員で鍵の紛失への危機感を持ち、鍵をなくした時の対処法などの情報を共有しておくようにしましょう。