料理だけじゃない! ラップは幅広く活用できる万能アイテム
電子レンジで食べ物をあたためる際に使ったり、食べ残しのおかずを包んだり、使わない日はないラップ。
実は食品以外にも、さまざまな活用法があります。
20年以上前から暮らしのコツを発信・伝授してこられた、住まい方アドバイザー・近藤典子さんによると、ラップは「掃除によし! 防災によし!」の万能アイテム。
近藤さんのラップを使った生活術を、【掃除】【防災】の視点からご紹介します。
【ラップ活用法1】「ラップ湿布」で油汚れやカビ掃除に
キッチンのガスコンロや換気扇、壁はベタベタとした油汚れが残りがちですね・・・。落ちにくい油汚れもラップを活用すると時短&ラクラクになります。
「油汚れはなぜ落ちにくいか。それは、油にホコリが付着して固まってしまっているため。こんなときはまず、洗剤をしっかりと汚れになじませて、コチコチになった汚れをやわらかくするステップが必要になります」(近藤さん)
そこでおすすめなのが「ラップ湿布」。汚れに直接洗剤を吹きかけたら、すぐにラップを密着させてフタをし、液だれを防ぐ掃除法です。
「家の中の汚れは酸性の汚れです。汚れ(油)と水をなじませるために洗剤を使うわけです。でも、洗剤には水分も含まれているので、汚れに直接吹き付けるだけだとすぐに乾燥してしまうんですね。ラップは水を通さないため、洗剤をかけた上にラップで“湿布”をしてあげれば、水分が蒸発してしまうのを防げて、洗剤と汚れがなじむのを助けてくれるのです。洗剤をかけた部分をラップで覆って10分もすれば、しつこい汚れにもしっかりと洗剤がなじみますよ」(近藤さん)
「ラップ湿布」の手順はとても簡単。
1. 壁面などの油汚れに、霧吹きか水を含ませたスポンジで水を少量なじませる。
2. さらに油汚れ用洗剤(アルカリ性)を吹き付けて上からラップで覆う。
3. 10分ほど放置。汚れを浮かせたら、覆っていたラップを丸めてスポンジ代わりにしてこする。
4. 水拭きをしたら完了!
ガンコなベタつきが「つるん!」と落ちる感触は、爽快そのものです。
「ラップ湿布」はカビ取りにもオススメ!
ラップ湿布は油汚れだけでなく、カビの除去にも応用できます。
写真は、ユニットバスの継ぎ目に生えてしまったカビ。毎回カビ取りのたびに、液だれと戦いながら、大量のカビ取り剤を消費していました。
ラップをペタリと貼れば、液だれなし! 使った量はいつもの1/3程度です。
また、カビ取り中やカビ取り後は、塩素系洗剤の独特のニオイが気になりますが、ラップ湿布のおかげで液も少量で済み、揮発も少なかったせいか、ニオイ残りが少ないのも嬉しいポイントです。
【ラップ活用法2】ラップをスポンジに
「家事の時短を考える上で、見落としがちなのが“道具を洗う手間”です。油ものを食べた食器を洗ったスポンジには、油がベッタリ。ヌメリのある生ごみトレイや排水口などは、掃除専用のスポンジやブラシでキレイになったとしても、今度はそのスポンジを洗わなければいけませんよね。汚れの度合いによっては、汚れを落とすよりも、道具をキレイな状態に戻すほうに時間がかかったりして・・・。スポンジやブラシを洗うのって、時間も水ももったいないと思うんです」(近藤さん)
そこで活躍するのが、ラップ。
ラップは水を含むとやわらかくなる性質があります。また、クシャクシャに丸めると、ほどよく空気を含んで泡立ちも抜群! 表面を傷つけることなく掃除ができます。
しかも掃除に使ったラップスポンジは、そのままゴミ袋へポイ。あっという間に掃除完了です。
「わざわざ新しいラップを使ってスポンジを作らなくていいですよ。その日に出た使用後のラップを使えば、ゴミの有効活用になりますから」(近藤さん)
台所用スポンジは雑菌が繁殖しているという指摘もあり、衛生面が気になっている人もいるのではないでしょうか。その日に使い終わったラップをスポンジとして使い、毎回使い捨てにしてもいいですね。
ラップスポンジで排水口を掃除!
普段は食器を洗い終わったあと、シンクや排水口を掃除専用ブラシで掃除しています。が、確かにコレ、ブラシに残菜や油汚れが残ってしまって、キレイにするのに一苦労なんです。雑菌が繁殖していそうであまり触りたくないし、置き場所にも困っていました。
その日に使ったラップ2枚を丸め、台所洗剤をちょっぴり付けて、ゴシゴシ。おお!想像以上に泡立ちがよく、手になじむ大きさで洗いやすいです。スポンジやブラシに比べて、細かいところにも手が届いていい感じ。
使い終わったらそのままゴミ袋へポイ。これが最高です。廃物利用&水の節約で、罪悪感もなく二重に爽快に。
【ラップ活用法3】災害時、ラップで食器をくるめば繰り返し使える
さて、ここからは防災・災害グッズとしてラップを使う方法を近藤さんにご紹介いただきます。
まずは、1995年の阪神・淡路大震災以降、注目されるようになった「食器に巻く」方法。
食器が汚れることなく、ラップを外せば何度も使えるので、避難所で過ごす際やライフラインが寸断されていて食器洗いができないときに役に立ちます。
「ラップは水を含むと柔らかくなるため、肌あたりのやさしいスポンジになります。被災地などでお風呂に入る際、体を洗うのにも重宝します」(近藤さん)
【ラップ活用法4】災害時の埃よけや小分け袋に
災害下で支給されたものや、荷物をひとまとめにしておく際、小分けにする袋やポーチがないときにもラップは役立ちます。
「ラップは密閉力があり、いろんなサイズにも対応できますので、家族の分のお箸やスプーンをくるっと巻いてひとまとめにしておいたり、赤ちゃんのオムツをまとめておいたりと、衛生的に保管したいモノを束ねるのに便利です。災害下や避難所などはどうしてもホコリが立ちますが、ラップはホコリよけとしても活躍します」(近藤さん)
【ラップ活用法5】災害時には紐の代わりにも!
ラップを応用した梱包材も、最近はホームセンターなどでよく見かけるようになりましたね。くるっと巻き付けるだけでラップ同士がピタッと密着するため、ヒモのように結んで固定する必要もありません。
「ラップのすばらしいところは、箱にカッターがついているということ。ハサミ要らずなんです。ラップひとつあれば他の道具が要らないという点も、防災グッズとして優れている点だと思います」(近藤さん)
また、ラップはギュッと握って細くまとめると、驚くほど強度のあるヒモになります。
「さらに強度を出すなら、ラップでつくったヒモを三つ編みにしてみてください。ちょっとやそっとでは切れない、頑丈なロープになります」(近藤さん)
【ラップ活用法6】傷口をラップで包んで衛生的に
「包帯がない!」というときにも、ラップが代用できます。
「ラップは水を通しません。ということは、汚れも入りにくいですよね。包帯がない、洗濯できないというときは、傷口をきれいにして包帯代わりにラップを巻けば、傷口を汚れや雑菌から守ることができます」(近藤さん)
骨折などで腕をつる必要がある場合にも、ラップは三角巾の代わりに使えます。
「あくまで応急的なものですが、災害下ではとにかくモノがありません。ラップは、薄い、軽い、密着する、水を通さない、道具がいらない、束ねれば強度が出せるなど、さまざまな機能があるため、いろんなものの代用に幅広く使えます。
東日本大震災では私も、大型バンに山ほどラップを積んで被災地に支援に行きました。被災地では、ラップを壁に貼ってホワイトボードの代わりにしたり、名札の代わりにしたりと、とても役立ちました」(近藤さん)
【ラップ活用法7】ラップで体を包んで防寒する
災害はいつ起こるかわかりません。着の身着のままで避難した際、ラップをひと巻きするだけで、防寒具として活用することもできます。
「効率よく体をあたためるなら、首、手首、足首などをラップでふんわり包みましょう。それだけで服を1枚着たようにあたたまります。寒さは体力を奪います。マフラーやフットウォーマーがないときは、ぜひラップを活用してください」(近藤さん)
ラップをふんわりと巻くと、体とラップの間にあたたかい空気の層ができます。また、水分が体から熱を奪って蒸散するのをとどめておけるので、あたたかさを感じることができるようです。
ラップはどれでもOKなの? 素材やサイズの選び方のコツ
掃除に防災にと用途多彩なラップですが、素材はどのようなものが適切なのでしょう。
ラップの素材は大きく分けて3つあります。
1. 張りのある素材感でニオイ移りがしにくい「ポリ塩化ビニリデン」(サランラップ、クレラップなど)
2. 伸びがよく器にくっつきやすく、業務用にも使われる「塩化ビニル樹脂」(ファミラップ、ダイアラップなど)
3. 安価で環境にやさしく野菜や果物を包むのに適した「ポリエチレン」(ポリラップ、ハイラップなど)
でも、近藤さんによると「掃除や防災に使うなら、どの素材でも同じ」とのこと。
素材にこだわる必要はなく、また、わざわざ掃除用・防災用のラップを買いそろえる必要もなく、普段キッチンで食品用に使っているラップをそのまま使ってOKです。
「ラップって皆さんそれぞれに好みがあるでしょう? 特に災害下では、自分のお気に入りのものが身近にあるだけで、精神的なストレスが軽減されます。災害下の急場をしのぐためには、50m巻のラップが1箱あれば十分です。愛用しているメーカーのラップを1箱、防災袋に入れておきましょう」(近藤さん)。
粗品でもらったラップを防災袋に・・・という人も多いようですが、実は逆! 災害下こそ、好きなものに囲まれている必要性があるのですね。
「いただきもので好みに合わないラップは、むしろ日々の調理や掃除で使ってすぐに消費してしまいましょう。サイズは、30㎝幅の大きめのものが多用途に使えていいですが、こだわる必要はありません。幅が足りなければ重ねて使えばいいだけなので、あるものをそのまま活かしてくださいね」(近藤さん)
おわりに
身の回りにあるものを応用して、別の用途を生み出すのは「暮らしのだいご味!」と近藤さん。ラップの持つ「水・油を通さない」「密着する」「薄くてやわらかい」という機能は、どんなものにも幅広く使える可能性でいっぱいです。暮らしの中をあらためて見つめて、自分流のラップ活用術を生み出せたら素敵ですね。