お風呂の「カビリスク」に注目
住まいのカビに悩む場所No.1といえば浴室。
カビ胞子は常に空気中を浮遊していて、次の4つの環境条件がそろうと増殖します。
- 70%以上の湿度
- カビの栄養となるものがある
- 20〜40℃の気温
- 酸素
梅雨から夏にかけての浴室は、この4条件がそろいやすくなるため、カビが増殖しやすい環境になります。
そこで、重要なのが「カビ予防」です。
クリーンな浴室を維持するための具体策を、チャンネル登録者数28万人を超える人気YouTuberでもあるお掃除職人きよきよさんに伺いました。
お掃除職人直伝! カビを防ぐ「入浴後のちょこっとお手入れ」
「新築やリフォーム、あるいはハウスクリーニング直後のきれいなお風呂を、どうしたら維持できますか?」お掃除職人きよきよさんのもとには、最近このような相談が寄せられるそうです。これに対してきよきよさんは、「入浴後のちょこっとお手入れ」が大切だと言います。
お風呂上がりに「汚れ流し・水を切る・十分な換気」という3つのルーティンを日々行うもので、特殊な洗剤や道具が必要なものではありません。重要なのは「お手入れのタイミング」と「湿度をコントロールする」ことだそうです。
一体どんなポイントに気を付ければよいのでしょうか? 詳しく教えていただきました。
【入浴後のちょこっとお手入れ1】お風呂上がりにカビのエサをシャワーで洗い流す
シャワーを使ったり体を洗う際に壁や床に付着する皮脂やシャンプー類の泡には、カビが増殖する時に必要な栄養分が含まれているので注意が必要です。
「お風呂から出る前に、お湯のシャワーで壁や床についた汚れ、つまり『カビのエサ』をサッと洗い落とす、このひと手間をかけることが、カビ予防につながります」(きよきよさん)
【入浴後のちょこっとお手入れ2】カビやすい場所の水分を拭き取る
きよきよさんによると、一般的なユニットバスであれば、平らな部分は水切りワイパー、浴室の角やドアのジョイント部分、蛇口の裏側など細かい部分は吸水クロスなどを使ってサッと水を切るような感じで拭き取るだけで、カビ予防効果があるとのこと。
「最近のユニットバスは、汚れが付着しづらい材料や、水をはじきやすい材料を用いるなど、カビの発生リスクを抑える工夫をしたものも増えていますが、カビやすいタイル仕上げの床や壁、換気能力が不十分な換気扇しかないお風呂もまだまだ多いので、自宅のお風呂のカビやすい場所がどこなのか確認しておくとよいでしょう」(きよきよさん)
【入浴後のちょこっとお手入れ3】浴槽のお湯は冷める前に抜き、浴室を乾燥させる
きよきよさんによると、カビ予防の観点からはお風呂のお手入れは浴室の温度が下がる前に済ませると効果的だそう。
「コーヒーをこぼしてしまった時に、すぐに拭き取ればきれいに取れるのに、時間がたってからシミを落とそうとすると手間取るのと同じで、最後に入った人がお風呂のお湯を抜きながら浴室内の水分を拭き取り、その後換気扇、浴室暖房乾燥機などをフル活用して浴室の湿気を取り除くのがポイントです」(きよきよさん)
「カビない生活習慣」を身につける
「カビのないお風呂を維持するためには、『入浴後のちょこっとお手入れ』と同時に『カビない生活習慣』を定着させることも大切です」ときよきよさん。
そのための具体的な方法を伺いました。
【カビない生活習慣1】週に1回、視点を変えてお風呂のカビをチェックする
きよきよさんによると、週に1回は乾いた状態のお風呂でカビやすい場所をチェックすると、お風呂のカビ予防効果UPにつながるそう。
「お風呂が乾いた状態でないと、見えない汚れというものがあるんです。特に、蛇口の裏側やカウンターの裏側は鏡を使ってチェックしましょう」(きよきよさん)
カビが見つかった時は広がらないうちに落としておくのがおすすめなのだそう。
実際にウチコト編集部が実践してみました!
きよきよさんのアドバイスを踏まえて、カビチェックを行ってみました。
きよきよさんから「『入浴後のちょこっとお手入れ』とはまた違った視点でチェックすると新たな発見がありますよ」とアドバイスいただいたので、実際に鏡を使ってカウンターの裏を見ると、気がついていなかった「カビ」を発見。きよきよさんに教えてもらったように、ナイロンタオルで擦ると簡単にカビが取れました。ナイロンタオルは薄いので、指先の延長のように作業がしやすく、細かい場所の汚れまでうまく除去できます。体を洗うものとは別にカビ掃除用にナイロンタオルを常備したいですね。
他に確認した箇所は、以下の通りです。普段とは視点を変えることの大切さを実感しました。
【カビない生活習慣2】温湿度計で温度と湿度を「見える化」する
「カビ発生リスクを『見える化』するためには、浴室に温湿度計を置いて湿度をチェックするのも一案です。浴室内の湿度が下がりにくい場合は、普段よりも換気時間を長くしたり、扇風機やサーキュレーターの力を借りて空気を動かしたり、除湿機を使うなどの湿度コントロール対策を行う目安にもなります」(きよきよさん)
実際にウチコト編集部が実践してみました!
入浴前・入浴直後・入浴30分後の温度と湿度は、実際どう変化しているのでしょうか? 浴室暖房乾燥機のあるユニットバス(窓なし)に温湿度計を置いて計測してみました。
「乾燥」運転を始めると湿度が急激に下がり、30分後には湿度が42%まで下がりました。
一般的に快適な湿度は40~60%といわれており、浴室暖房乾燥機の「乾燥」運転を使えばその条件をクリアできることが分かりました。
【カビない生活習慣3】換気扇や浴室暖房乾燥機をフル活用する
「お風呂の換気扇は24時間ONにして常に湿気を排気するようにします。浴室暖房乾燥機があればお風呂が完全に乾燥するまで『乾燥』運転をフル活用しましょう。パワフルなガス温水式であれば1時間ほどでカラッと乾燥できますよ。浴室の換気扇にはホコリが集まりやすいので、浴室ドアの給気口・換気扇のフィルターやカバーの掃除も忘れずに」(きよきよさん)
建築基準法の改正により、2003年以降の住宅には24時間換気システムの設置が義務づけられていますが、それ以前に建てられた住宅の浴室であっても、カビ予防の観点から換気扇は常にONにしておきましょう。
浴室暖房乾燥機の「乾燥」機能を活用しよう!
ご自宅に「浴室暖房乾燥機」が設置してある場合は、「換気」より「乾燥」機能を使って湿気が残らないようにするのがおすすめです。
「換気」は空気を入れ替えるだけですが、「乾燥」運転は換気をしつつ温風によって水分を払うので、浴室全体をより確実に、より早く乾燥させることができるのでおススメです。カビやぬめりの発生を抑えることができるので、お風呂掃除の手間をグーンと軽減します。
上の図は浴室のカビの生え方を比較実験したものです。
「何もしない」浴室にカビが生えるのは当然のことですが、「換気だけ」していてもカビは生えてきます。それに比べて「浴室乾燥」をすると、すばやく湿気が取り除かれ、カビが生えにくくなることが分かります。
「浴室乾燥」は浴室をカラッと乾いた状態をキープできるので、カビの発生も抑えて浴室のお掃除の手間をグンと減らし、浴室や浴室まわりの湿気による腐食も防げるので、家を長持ちさせるのにも役立ちます。
夜に洗濯と入浴をした場合、就寝中に洗濯物と浴室を一緒に乾燥するのも経済的でおすすめです。
一年中「家事楽」に活躍する「浴室暖房乾燥機」については下記リンクをぜひご覧ください。
【カビない生活習慣4】浴槽にお湯をためたままにしない
きよきよさんによれば「掃除をしても、いつの間にかカビが生えてくる」という場合は、残り湯を翌日までためておく習慣があったり、常に浴槽にお湯をはっている24時間風呂だったりすることが多いのだそう。
「非常時や防災用、あるいは洗濯用にお風呂の湯を浴槽にためる習慣があると、風呂ふたをしていても常に浴室内の湿度が高く、カビが増えやすい環境になります。カビ予防を優先するなら、お風呂のお湯は最後に入った人が抜いて、浴室全体をできるだけ乾燥させるという生活習慣が大切です」(きよきよさん)
【カビない生活習慣5】浴室内には必要なモノだけ置く
「カウンターの上に、使い終わったカミソリ類やシャンプーボトルなどを置いたままにすると、容器の下にせっけんカスがたまり、それがカビのエサになります。不要なモノは処分してスッキリしたお風呂にしておきましょう。掃除のしやすいきれいなお風呂にすることがカビ予防につながります」(きよきよさん)
以下の記事では、浴室にものを置かない吊り下げ収納の方法をご紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
水まわりが劇的に片付く! 吊り下げ収納アイデア9選
お風呂のタイプに合ったお手入れのコツを見つけよう
床や壁をタイルで仕上げた在来工法の浴室から、浴室暖房乾燥機付きのユニットバスまで家庭のお風呂にはいろいろなタイプがあり、換気環境もさまざまです。
「入浴後のちょこっとお手入れのルーティンは同じですが、例えば、浴室の窓を大きく取り、床や壁をタイルで仕上げたお風呂は窓を大きく開けて換気するため、冬になると窓一面が結露してカビが発生しやすいことから、梅雨時よりも冬場のカビ対策がポイントになります。自分の家のお風呂のどの部分がカビやすい場所なのかを把握して、カビやすい場所は常に乾燥させるようにしましょう。天井などのカビが心配な場合は、くん煙タイプの防カビ剤を併用するのもよいと思います」(きよきよさん)
浴室別のお手入れ方法の違いを知ろう!
浴室によって、お手入れ方法にどのような違いがあるのでしょうか? 以下の2つの環境で比較してみました。
A 浴室暖房乾燥機のあるユニットバス(窓なし)
入浴後は、「乾燥」運転を実施
B 換気扇のないユニットバス(窓あり)
換気扇がないので、入浴後は窓を開けて換気
浴室ごとの湿度を計測
浴室別の違いを知るために、それぞれの浴室の湿度を計測した数値が上のグラフになります。
Aの浴室で乾燥運転を始めると湿度が急激に下がり、30分後には湿度が42%まで下がりました。
一方、窓をあけて換気するBの浴室は入浴後30分たっても湿度は77%。計測したのが雨の日だったためか、外気の湿度も高く、高温多湿の状況が続きました。
浴室別「入浴後のちょこっとお手入れ」のポイント
最初にご紹介した「入浴後のちょこっとお手入れ」ポイントの「1.お風呂上がりにカビのエサをシャワーで洗い流す」と「3.浴槽のお湯は冷める前に抜き、浴室を乾燥させる」は浴室の環境が変わっても同じですが、「2.カビやすい場所の水分を拭き取る」については、浴室にあったお手入れ方法がカビを発生させないために必要なようです。以下にポイントをまとめました。
A 浴室暖房乾燥機のあるユニットバス(窓なし)
入浴後に浴室暖房乾燥機の乾燥運転を使用すれば水分を拭き取る必要がないので、特に気になる鏡や蛇口まわり、排水口付近だけ拭き取る。(作業時間は30秒ほど)
B 換気扇のないユニットバス(窓あり)
窓を開けて換気をするため、窓際と浴室ドアまわりがカビやすいので、ナイロンタオルや水分が多い時には吸水クロスも併用しながら拭き取る。平らな部分と鏡は水切りワイパー利用すれば時短効果が期待できる。(作業時間2分ほど)
湿度が70%を超える日が続く時には、サーキュレーターや除湿機器を使うなどの対策が必要になりそうです。
浴室ごとの特性を知って、カビない環境を維持したいですね。
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おわりに
「カビ予防は虫歯予防と似ています。普段からこまめにきちんと手入れをして、カビない生活習慣が定着すれば、お風呂のカビは予防できるものです」ときよきよさん。
そのためにはお風呂の手入れを家族でシェアするのもよいでしょう。お掃除職人直伝のカビ予防法で、快適なバスタイムを手に入れましょう!
参考:お掃除職人きよきよ「毎日がピカピカになる『水まわり』の洗いかた」,興陽館,発行日(2023/03/15)